パーティクラッシャー!?〜魔王を倒すため選ばれし勇者と旅をしている僧侶だが、最近パーティ内不純異性交友がけしからん!   作:無能な葦

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カネンスキー2

 

 

 

 

 

 私の問いかけに、カネンスキーの唇が震えていた。

 ベルラが今にも飛び掛かりそうな低い体勢を取る中。

 

「じ……冗談じゃねえ……!」

 

 ビリッと、その声は空気を揺るがせ鼓膜を震わすほどの大音声だった。

 カネンスキーの焦茶色の瞳に宿るのは、怒り、憎悪、そうした感情の色。

 

「不死王の配下だと……俺が!? 冗談じゃねえ。俺は……俺は、ヤツを……!」

 

 ぶっ殺してやるんだ――!

 

 カネンスキーの、興奮にひっくり返って掠れるほどの、それは、血反吐を吐かんばかりの想いの吐露だった。

 我々は、誰も、なにも言えずに。

 ただ息を呑み、カネンスキーを見つめる。

 

 カネンスキーは、ゆっくりと深呼吸をして、話し始めた。

 

「俺はラベスタに生まれ育った。ファルア一の大都市ラベスタに。魔王支配のあとも、ファルアの領主さまだけは……最後まで……諦めなかった……」

 

 魔王君臨から十八年。

 魔王が現れて最初の数年は、世界中が戦に巻き込まれるばかりだった。

 各国がそれぞれに軍を配し、侵略してくる魔族と魔物たちに対抗し……そして、ことごとくが敗北した。

 ヒューマン、エルフ、獣人の同盟が成立しいっときは善戦するも、それもやがて競り負けていった。

 いつしか、国々は軍を引き、それぞれの領土に引きこもって防衛戦に徹するようになり……

 

「でも、ある時……ファルアの領主さまが居なくなってしまった。側近だった奴らが代役しだして、そのうちいつの間にか……不死王……ヤツが……!」

 

 ファルアの領主の座に収まっていた、という。

 

「不死王は、普通の武器じゃ倒せない。傷一つつけられない。俺のオヤジも暗殺に失敗した。だから」

「勇者の宝剣なら倒せるだろう、と……? だが、あれは誰にでも扱えるものではないぞ」

「僕たち……ラベスタを目指したのは、不死王を倒すためなんです。だから、僕が」

 

 代わりに、と言いかけた勇者の言葉が途切れる。カネンスキーの怒りに満ちた眼差しが勇者を睨み付けたのだ。

 

「何が倒すだ……! おまえらよそものは、そうやって……口当たりのいいことばかり言って……危なくなったらすぐ逃げ出す! ラベスタはおまえらの街じゃないから!」

 

 カネンスキーの言葉には、計り知れない憤りと嘆きがあった。

 ただ察せられるのは、過去にも打倒や協力を申し出た者たちが居たということ。そいつらが結局は逃げ出し……その結果、街に、人に、果たしてどんな恐ろしい報復があったかは想像すらしたくはないが。

 

「実際的な話として……」

 

 黙って話を聞いていたマレフィアが、いつも通りの落ち着いた声で話を引き継ぐ。

 

「使いこなせるの? あなたに。フォルトの剣が。やってやるって息巻いて突っ込んでいって、使いこなせず返り討ちで無駄死に。晴れてアンデッド軍団の仲間入り。……って、ならない自信、ほんとうにある?」

 

 冷静。かつ、冷酷。辛辣なほどに、しかし、それは的確な指摘と言えた。

 カネンスキーも押し黙る。

 

「ただ強くて特殊な武器さえあれば、どうにかなるような相手だって……思える?」

 

 なおも追撃。

 マレフィアの声はどこまでも落ち着いている。なんだったらちょっと優しげだ。

 カネンスキーはぐっと眉間に皺を刻み、項垂れた。

 

「か、カネンスキーさん……。僕は、僕たちは……僕だって、不死王は許せない。だからラベスタに向かうんです。だから……僕たち……きっと、協力できる。協力、させてください……カネンスキーさんたちの戦いに。不死王を倒す、ために……」

 

 勇者が一歩前に出て、片膝をつく。

 項垂れるカネンスキーを真っ直ぐ見据えて、訥々と、言った。

 カネンスキーがゆっくりと顔を上げる。

 

「僕が、あなたたちの剣になります。全部、すぐに信じてくれとは言いません。でも、少しでもいいと思ったら、この手を……とってほしい」

 

 勇者が、手を差し出す。

 カネンスキーは。

 

「……縄、ほどいてくれねぇかな? それならさぁ」

「あっ……!」

 

 くしゃりと笑った。

 

***

 

 カネンスキーと勇者が改めて握手をする。

 それは感動的なシーンだった。

 勇者よ、いつの間にかすっかり身も心も強くなって……

 

「よる、あける……」

 

 ベルラが、白み始めた東の空を見上げてぽつりと言った。

 まさか、そんなに時間が経っているとは。

 

「……あ~なんか。悪かったなぁ? 徹夜させちまって。へへ」

 

 カネンスキーが、すっかり憑き物の落ちたような軽やかな雰囲気を取り戻し言った。

 ヘラヘラと笑うその顔、軽く殴りたい気もする。

 

「眠い、が……一刻も早くラベスタに向かおうか」

「そうね……賛成」

 

 欠伸を噛み殺しながら、マレフィアが頷き、勇者が馬車の用意を始める。

 

「ベル、腹へった……」

 

 ベルラの哀しげな声。

 

「馬車の中で干し肉でも齧りましょ。街につけば何か食べられるわよ。食べられるわよね?」

「うぇ……!? あ、あぁ! もちろん! ちゃんと用意しますとも。へへ~」

 

 マレフィアに睨まれ、カネンスキーが狼狽える。さてはビビっているな。わかるぞ。マレフィアの威圧はさりげなく強い。

 

「じゃ、じゃあ俺も……出発準備の手伝いでもしよっかなぁ」

 

 そそくさと離れようとするカネンスキー。その時だった。やつの懐から、ゴロリと何かが転がり落ちる。

 

「おい、何か落とし……ひぇ」

「なによ変な声出し……うそでしょ!?」

「あっ……それは……!」

 

 私とマレフィアの慌てる声に、ベルラと勇者が何事かとやって来る。

 カネンスキーが大いに狼狽える。

 

「ど、ドラゴンの卵……!」

 

 私とマレフィアの声が綺麗にハモったのだった。

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