パーティクラッシャー!?〜魔王を倒すため選ばれし勇者と旅をしている僧侶だが、最近パーティ内不純異性交友がけしからん!   作:無能な葦

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取引を。

「聞け! 賊ども……!」

 

 縛り上げられ身動きの取れない賊たちに、私は腹から声を張り上げた。

 

「縄をほどき助かりたくば、取り引きだ!」

「取り引き……だとぉ……」

「クソ坊主! 弱みにつけこみやがって。それが神のしもべのやることかよぉ!」

「この期に及んでなにが目的だ!」

 

 賊どもの猛反発の声を右から左に聞き直す。

 私は、ただ、厳かに、嘆息し。

 口を開く。

 

「光の神ルクスは、正義と審判の神でもある! 審判で裁かれるのは、罪の数。では、罪とはなにか。約束の破断にほかならぬ! 世界と人、国と民、ヒトとヒトとの約束事。それをどれだけ守れたかで、審判の結果は変わるのだ」

 

 私の説教に、賊どもは一瞬静まる。

 私は説教が得意なのだ。深く張りのある低い声が、実にそれっぽくひとの耳に沁みるのである。

 

「おまえたちは選ぶことができる。このまま、ここでドラゴンに焼き殺されるか。それとも、私と約束を交わし、それを守るか」

「と、取り引きって言ったな……具体的になんなんだよ!」

 

 頭目らしき男が先を急ぐように聞いてくる。

 そう、悠長にしている場合ではないのだ。

 いまにもブレスが……いや、ベルラが奮戦してくれていた。ドラゴンに組み付き、空中でくんずほぐれつ暴れていたのだ。

 まだ少しは時間を稼げそうだ。

 

「私がおまえたちの縄を解いたら、おまえたちは城壁をのぼり、バリスタを操作するのだ」

 

 この砦の城壁には、バリスタが置かれているのだ。

 対魔獣用の……いや、つまり、あれはこのドラゴン用の兵器だったのかもしれない。

 上空では、なおも暴れるドラゴン。

 

「な、冗談じゃねえ……! そんなことして、ドラゴンに狙われたら……」

「どうせこのままでいれば焼き殺される」

 

 狼狽え躊躇う賊たちに、私は努めて冷ややかに告げた。

 頭目と、何人かがひそひそと囁き合う。

 

「わかった、いいだろう。のってやるよ、神官様……」

「だが、あれで倒せるのか……! 飛び回るドラゴン、簡単に仕留められるとは……」

「仕留めなくとも良い。ほんの少し、飛ぶ力だけでも削ぎ落とせれば。そうすれば」

 

 私は、信じている。

 

「私の勇者と、その仲間たちが! 必ずや仕留める!」

 

 神に選ばれし勇者を。

 

「ほどくぞ。良いな、約束だからな。もしここで私に襲いかかってみろ、恐ろしい天罰がくだるのだぞ」

 

 私は、まず頭目の縄に手を掛けた。

 

 内心、信じてはいなかった。

 

 縄をほどき自由にしたら、こいつらは、ここぞとばかりに私をボコボコにして逃げ出す気がしてならない。

 

 嫌だった。

 

 しかし。勇者もマレフィアも見つからないいま、ベルラひとりでドラゴンをどうにかするのが難しいのは火を見るより明らかだ。

 

 これは、賭け――だった。

 

「さぁ、ほかの者の縄もほどいてやれ」

 

 ザク、と縄を切り落とし、頭目を自由にする。サク、サク、とほかの者たちの縄も。

 自由になった者が次々と手分けして縄をほどき、やがて賊どもはみな自由になっていった。

 そして――

 

「へっへ。このクソ坊主が……野郎ども、やっちまえ――!」

 

 嗚呼! 

 

 やはりか!

 

 凶悪な男たちが、いつの間にか手に手に武器を持ち、私を取り囲んでいた。

 

 終わった。

 

 ドラゴンではなく、賊に袋叩きにされて私の旅は終わるのか。

 

 神よ――

 私は、祈った。

 

「ギャオオオオン……!」

 

 響き渡る雄叫び。

 

 突如、カッ――と猛烈な熱と光が爆ぜ、ドォォオン! と広間が消し飛んだ。

 

 ほんの数秒前まで、賊どもが縛り上げられ転がっていた辺りである。

 

「……!」

「……ひ」

 

 賊たちはそのドラゴンブレスの威力に、固まっていた。

 

 私も恐れ慄いていた。

 

 しかし、この機を逃してはならない! これぞ神の思し召し! 一気に畳みかける!

 

「天罰だ。約束を破るからだぞ。だが、これは神の慈悲である。一度は見逃した。さぁ、次は、ないぞ……」

 

 低い、沁み渡るような厳かな声で告げる。

 賊たちは、恐れ慄いたように武器を手放した。

 

「さぁ、バリスタがおまえたちを待っている。行け。配置に着くのだ!」

「へ、へいっ!」

「待て、何人かは残れ。おそらく、私の仲間がどこか、瓦礫の下敷きになっているかもしれない!」

 

***

 

 賊たちが城壁にのぼり、バリスタを操作する。ドラゴンから追い落とされたらしいベルラが、ぐるぐると唸っていた。私は彼女に近づく。

 

「ベルラよ……」

「なんだ。オマエ、生きてたか。でも弱いのやつじゃま。ひっこんでろ」

 

 ベルラは普段以上にシンプルに辛辣だった。

 しかし、私もここで引くわけにはいかない。

 

「聞け! ……ベルラよ。いま、バリスタを操作している。あれを打ち込むことで、ドラゴンを引き摺り下ろすことができるはずだ。ベルラよ……飛んでさえいなければ、おまえの爪でも牙でも、貫けるな?」

 

 ベルラは、耳をぴんと立てて眼をギラリと光らせた。

 

「ドラゴン、おとすだな? いいぞ。オマエにしては、やる」

 

 ニヤリとした笑みは、少女にしては全く可愛げがなかった。

 

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