地球が終わるとされるX DAYに誰も避妊などしません。
ところが、隕石は激突しなかったのです。その結果、10ヶ月後に大量の出産ラッシュが起こり、病院だけでは捌ききれない事態に!?

せめてパーテーションのあるところで出産したいという熱き物語です。

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地球が終わるとされるX DAYに誰も避妊などしません。
ところが、隕石は激突しなかったのです。その結果、10ヶ月後に大量の出産ラッシュが起こり、病院だけでは捌ききれない事態に!?

せめてパーテーションのあるところで出産したいという熱き物語です。


パーテーション出産

むかーしむかしのお話です。アメリカの宇宙研究所の発表により、地球に隕石がぶつかり、人類が死滅する日が発表されました。

 

人々は混乱しましたが、その日、すなわちXデーを過ぎても、地球に隕石はぶつかりませんでした。

 

隕石がぶつかるというのは、計算ミスによる世紀の大誤報だったのです。

 

そのXデーから280日後に、何が起きたか分かりますか?

赤ちゃんがめちゃくちゃ生まれるのです。

そうです。

Xデーにコンドームをつける人などいないのです。

 

Xデーの280日後、またはその近辺の日付に生まれる赤ちゃんたちの人数は凄まじく多くなるので、病院だけでは数が足りないということになりました。

そこで政府は案を出しました。

 

その日の近辺で出産をする人たち全員に抽選をして、抽選に当たったら病院で生むことが出来るというシステムです。

要するにクジです。

 

病院で出産する権利を勝ち取れなかった人には、まだチャンスがあります。

もう一度抽選を行い、見事当選した人は、中学校の体育館で出産することが出来るのです。

 

もちろん、ちゃんとパーテーションがあります。それにすらハズレてしまった人にもまだまだチャンスはあります。

 

さらに抽選が行われ、見事当選した人は、公園で出産することが出来るのです。

 

もちろん、公園で生む場合にも、医療関係者もいますし、パーテーションはありますし、ブルーシートも下に敷かれます。

 

もともとその公園にいたホームレスの方々の中には、その日は、一時的に退去してくれるという優しい人もいました。

 

さて、ここに一組のカップルがおりました。

 

「僕たちは、あのXデーの日に、コンドームをつけてヤッたから、こいつらとは違う」という変なプライドを持っているカップルでした。

 

なので、抽選が行われる会場で他のカップルに挨拶をされても、ちょっと無視したりしてました。

 

 

「こんにちは」と挨拶されたのに「ウッス」と返したりしていました。

実は、コンドームはつけて性行為をしても、妊娠を防ぐ確率が100%ではないのです。

 

他の会場の人たちは全員「そりゃあ、つけませんよねえ」という価値観で一致しており、同じTシャツを着てたりしました。

 

 

「気持ちいいからつけまへん」という文字がプリントされたそのTシャツは、会場内で販売されており、みんなそれを買っていました。

 

Tシャツの裏側には『地球最後の日と思って毎回ヤッてまっか?』というメッセージもプリントされておりました。

 

コンドームをつけていたカップルは、少し浮いていました。

 

「僕たちは、ちゃんとつけたんだから、神様は見てるはず。ちゃんとつけたんだもん」

「そうね。私たちは、アホな隕石の誤報を鵜呑みにせず、ちゃんとつけたんだから、こいつらとは違うわね」

 

「そうだよ。きっと病院で生むことができるよ」

 

そして、二人は見つめ合い、キスをしました。

キスをしてるところを、係員にケツを蹴られました。

「おい、浮かれヤリチンと浮かれヤリマン!早くクジをひけ!」

 

そうです。人数が人数なので、係員たちはピリピリしているのです。

 

ケツを蹴られた嫁は、不服そうに、舌打ちをしながら、クジをひきました。

二枚とってしまって、どっちかを落とす感じになりました。

 

「こっち!」と気合を入れて、クジの紙を開けると、そこには「病院は、他の人に譲ろう」と書いてありました。

 

夫婦二人はブチ切れました。

俺たちは、つけたのに、妊娠したんだぞ!

なぜちゃんとつけてる俺たちが体育館で、変なTシャツを着てるこいつらが病院で出産できたりするんだ!!!!

 

 

係員が警棒を持って現れました。

 

「うるさい!この浮かれヤリチンと浮かれヤリマンめ!」

 

嫁と夫は、ボコボコに殴られ、つまみ出されました。

 

「あと、体育館と決めつけるな!それすら、もう一回抽選がある!」

 

カップルは、涙で顔をグシャグシャにしました。係員につまみ出される途中に、耳に入ったウワサです。

 

「グッズを買えば、いいとこで生む倍率が高くなるのを、まだ知らん奴がおるみたいでかわいそう」

 

「ホンマやな。知らん奴おるみたいやな。こういう時、社交的じゃない奴は、マジで損してるよな」

 

夫婦は家に帰ってから、思い出しました。そう言えば、抽選のクジを入れている箱を思い出してみると、夫婦がひいたやつは、100均で売ってるようなやつでした。

 

あの【気持ちいいからつけまへん】と書かれたTシャツを着てる人間には、竜宮城で乙姫様から渡されるような、おせちが入ってるお重(じゅう)みたいな重たそうな抽選箱が出されていたのでした。

 

 

だから、わたしたちは、抽選でハズレたのか!!!夫婦は唖然としました。

悔しい気持ちで、一週間の間、毎晩泣きながら暮らしました。

 

さて、いよいよ、また抽選の日がきました。せめて自分の子供は、屋内で産みたい。そう思ってる人たちがまたゾロゾロと体育館に集まっています。

 

 

まずは、そこの中学校の校長先生の挨拶から、抽選大会は始まります。

 

「みなさん、こんにちは」会場のカップルたちが「こーんにちわあああ」と大きな声で挨拶を返します。

 

 

コンドームをつけたのに妊娠したカップルは、「こいつらとは違う」というプライドがあるので、プイッとしていました。

 

「みなさんは、この東中学校の体育館で出産できることを望んで、ここに来られてると思います。

 

ここで出産出来る人は本当に幸せです。中学校の体育館はこのように広いですが、心配しないでください。

 

当日は、パーテーションがたくさんあります。パーテーションの設置、お湯の準備、食事のお世話などは、地元の工業高校の男子生徒たちがボランティアで行ってくれます。

 

さらに、ブルーシート、毛布の支給もあります。安心して出産することができます。

 

ところが、それは抽選で当選した人のみです。それでは、物販スタート!!!」

 

 

校長先生の掛け声とともに、東中学校の吹奏楽部によるファンファーレが鳴り響きました。

 

ゾロゾロと、物販に並ぶ人たち。コンドームをつけたカップル(以下、ゴムカップル)は悩みました。

 

ゴム夫(ごむお)はゴム子に話しかけました、「ど、どうしよう。一応、買う?家に帰ってから捨てたらいいし」

 

 

ゴム子は、怒りました。

 

「わたしたちは、ちゃんとゴムをつけたのに、『気持ちいいからつけまへん』なんて書いたTシャツを買うわけないわ!!」

 

「そ、そうだよね」ゴム夫は、そう答えました。

 

 

『気持ちいいからつけまへん』Tシャツやら、帽子、パーカー、さらには、『気持ちいいからつけまへんコンドーム』という、なんだか分からない商品まで販売されていました。

 

 

ゴムカップルは、それらには目もくれず、抽選のクジを引きました。

ゴム子が、二枚とってしまって、どっちかを落とす感じになりました。

 

「おめでとうございます」という係員の声で、当選したのかと思いました。

 

しかし、係員からは「2等のポケットティッシュです」とポケットティッシュが手渡され、そのティッシュの中には、“お前たちは公園で産め”というメッセージカードが入っていました。

 

ゴムカップルは、また一週間泣きじゃくりました。

 

さらに、公園で生む権利すら、またまた抽選があることも知らされました。

 

公園で生む抽選に、ハズレてしまった場合は、なんと、高速道路の分岐点のとこに赤いコーンをいっぱい立てて、その中で産まないといけないのです。

 

 

この日から、仲の良かったゴム夫とゴム子は、ケンカをするようになりました。

 

「ゴム子、グッズを買おう。倍率を上げるためだよ」

 

「いやよ。あんな【気持ちいいからつけまへん】Tシャツを8500円で買うなんて!絶対にイヤ!」

 

「ゴム子、オレがお金は出すし、その日だけ一瞬着て、家に帰ったら二人で燃やそう」

 

「イヤよ!わたしたちは、ちゃんとゴムをつけたのに!!」

 

 

「オレはゴム子のためを思って言ってるんだぞ!!ゴム子に、パーテーションのあるところで、産ませてあげたいんだ!」

 

 

「パーテーションって言うな!わたしは、公園なんかでそもそも産みたくない!!」

 

「じゃあ、パーテーションなしで、高速道路のとこで生みたいのかよ!」

 

ゴム夫が大きな声で怒鳴ると、ゴム子は泣きだしました。

 

「大きな声を出さないでよ」

 

「ごめんごめん。でも、高速道路なんかイヤだろ?そうだ!こうしよう!!『気持ちいいからつけまへん』Tシャツの中で、ローマ字で【Kimochi E-kara Tsukemahen】と書いてあるやつ。

 

あれを買おう。ローマ字のやつならいいやろ?」

 

ゴム子は泣き喚きました。

 

「ローマ字のやつならいいやろ?なあ、ローマ字のやつならいいやろ?」

言いながらゴム夫も泣きだしました。

 

 

「ローマ字のやつならいいやろ?う、う、う、ウエーン」

 

 

そうなのです。

ローマ字のやつやからいいという問題ではないのです。

 

それにローマ字のやつは28000円するのです。

みんな、本当はそんなTシャツを着たくないという心理を分かっているので、足元を見た値段になっているのです。

 

「ローマ字のやつとか、Tシャツとか二度と言うな!」とゴム子は、二人でディズニーランドに行った時の写真立てを投げつけました。それが、ゴム夫の目のところにあたり、ゴム夫は悶絶しました。

 

 

「お前、抽選の時、毎回二枚取ってしまってから、どっちか一枚落とす感じにしやがって!!このボケ!!その、落とす時に、当選してるほうを落としてるんやろ!!」

 

そう怒鳴ってしまったあと、ゴム夫は「いや!今のはウソ!ごめん!本心じゃない!」

 

そう言ってゴム子を抱きしめようとしましたが、ゴム子は、手を振り払い、おいおいと泣き続けるのでした。

 

 

さて、いよいよ、また抽選の日がやってきました。

 

せめてパーテーションのあるところで生みたいと思っているカップルが続々と公園に集まっていました。

 

抽選大会は、まずは、ホームレスのオッサンの挨拶から始まります。

 

 

「みなさん、こんにちは。今日は、この公園で子供を生みたいカップルが集まっていると聞いています。

 

この公園には、当日は、パーテーションが用意されます。

屋台も出ます。安心して生むことができます。

 

屋台は、フランクフルト、金魚すくい、射的、など様々な出し物があります。

 

ぜひ、みなさん、高速道路なんかではなく、公園で産んでほしいと、わたしはそう思っています」

 

ホームレスの話を聞いていた聴衆の一人が「話し方うまいな、この人」とポツリとつぶやきました。

 

ゴム子は、「どこがやねん」と思いました。

ホームレスの挨拶が終わり、物販スタートの掛け声とともに、行列が出来ました。

 

ゴム夫は、物販ではなく、抽選ブースのあるテントのほうに向かおうとしましたが、自分の手を引っ張る人がいます。

 

ゴム子です。

 

「ゴム子?」

 

「ゴム夫さん、わたしが間違えいたわ。変なプライドで、損をし続けることに巻き込んでしまって、ごめんなさい。

 

わたし、物販の商品を全部買うわ!!

 

全部着て、必ず、このパーテーションとブルーシートのある公園で生みましょう!!!」

 

ゴム夫は、涙ぐみました。

 

 

「ゴム子、強くなったな」

 

 

「わたし、もうすぐ、お母さんですもの!」

 

そう言って、二人がキスをしました。その、二人がキスをした口のところに、ちょうど隕石がぶつかってきて、地球は、爆発しました。

 

金持ちも、貧乏人も、プライドが高い人も、低い人も、みんな平等に死んでしまいましたとさ。

 

 

 

おしまい。

 

 




芸人、ネタ作家、短編小説家。“理系の変な奴”は自分で髪の毛を切ります。それが私。ついでの用事が二個ないとお墓参りに行かないです。
Twitter、noteなど色々やってます。

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