「ここが件のお屋敷?」
「ああ、めちゃくちゃ立派な屋敷だな」
突然だが僕らは立派な屋敷の門の前にいた。ことの発端は数時間前に遡る
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「こんにちはウィズさん、今日も魔晶石買いに…ん?」
「なるほど……それは困りましたね」
「せやろせやろ?ホンマ大赤字、勘弁して欲しいわ」
ウィズさんが眼帯を付けた人と話をしていた。確かあの人ベルディアとの戦いでもいた冒険者なはず
「お?誰やアンタ、客やったら堪忍やで、今ビジネスの話しとるさかい」
「いえ、お気になさらず…」
「あ、レンさん……そうですゴロウさん!このお方のパーティに依頼してみてはいかがでしょうか?」
「ん?なんやウィズの姉ちゃんが頼れる程の男なんかいアンタ」
「え?まぁ……これでもベルディアや初心者殺しなども討伐してますので…」
「ん?んん??」
ゴロウさん、と呼ばれた人物は僕の顔を見る
「なんやアンタ、噂のヒーローやないか!やねんやったら最初からそう言わんかい!」
そう言い僕の背中を思い切り叩く、びっくりしてむせる
「ほんならコイツに頼むとするわ、おおきにな!ほな」
「え、あ、ちょウィズさん!?」
僕はそのままズルズルと引きずられギルドへと持っていかれる
「話を要約しますと、元貴族の別荘に悪霊が住み着いてるので除霊をしてもらいたいと…」
「せやせや!簡単な話やろ?」
元はウィズさんに頼もうとしていたが、店番で忙しいウィズさんの代わりとして自分たちに白羽の矢が立ったということだ
「そんなのタダで受けるわけないでしょ!」
「だぁれもタダや言うとらんで?その屋敷の悪霊ババっと退治してくれる言うんやったら……その屋敷、お前らに売ったってもええで」
その言葉にアクアさんとカズマくんは前のめりになる
「ま、マジですか!?」
「せや?俺が嘘つく男やと思うか?」
確かに嘘をつくような人に見えない、凄く怪しくはあるけど
「なら今日よりそのクエストに当たる形でも大丈夫なのか?」
「アンタらが良かったらな、どうや?悪い話やないやろ?」
こうして僕たちは不動産社長 ゴロウさんに連れられ、幽霊屋敷に向かったのだった
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「見た目はいい屋敷ですね、早速掃除していきましょう」
「だな……って何やってんだアクア?」
アクアさんの方を見ると、両手を突き出して神妙な面持ちをしていた。
「霊視してるのよ」
「できるんだ」
「当たり前よ、私女神よ?」
「なんや嬢ちゃん女神かいな、その割には色気っちゅーもんが足りんな、こりゃ女神言うても駄女神やな!」
「違ぇねーっす!だははは!」
ノールックでカズマさんに蹴りを入れるアクアさん
「うんうん、見える、見えるわ。この屋敷には貴族の隠し子が幽閉されていたようね。悪霊ども以外にもその子が幽霊となってこの屋敷にとりついてるわ。名はアンナ=フィランテ=エステロイド……」
突然そんなことを語り始めるアクアさん、そのまま長々とアンナさんの細かな背景を語り出す
「なんでそんな事細かに…」
カズマくんは呆れ顔で屋敷の門を開けた。同じく呆れ顔のめぐみんとダクネスさんもカズマくんに続いて入る
「ほな頼んだで」
「はい、また近況報告させていただきますね」
ゴロウさんはそのまま去っていった、僕もアクアさんの話を聞きたかったがめぐみんが呼んでるので屋敷に入ることにした
-このすばやぁ!-
「だぁーー疲れたぁーー」
「お疲れ様カズマくん」
「流石にここまで広いと疲労が溜まるな」
「ですね……ですけどほんと広いお屋敷ですねぇ」
掃除をあらかた終えた僕ら4人(アクアさんはまだ門前で霊視している)はリビングでくつろいでいた
「思ったより綺麗だったよな」
「聞いた話だと、たまにゴロウさんも寝泊まりしてたから掃除はしっかりしてたみたいだよ?」
「え、あの人ここに住んでたんですか?」
「もうあの人が除霊をすれば良いと思うのだが……」
「どうやら霊は拳で殴れないから苦手なんだってさ」
「へぇー……案外面倒臭いだけかもしれねぇぞ?」
「有り得ますね」
僕らがそんなことを話してるとアクアさんも中に入ってくる。そのタイミングで部屋割りも決めることにした
「しかし本当に分かりませんねぇ」
「何がだい?」
「幽霊ですよ、アクアの霊視というのが本当ならば、なぜあのゴロウさんは早めに対応しなかったのでしょうか」
「んー……確かに」
単純に放置していた可能性が大いにありそうだが、真相はゴロウさんのみぞ知るということだ
「まぁこれで、お互い部屋でゆっくりできますね」
「ん?ああまぁ確かに」
……何故だろう、なんだか寂しさを覚える
「……ねぇめぐみん」
「はい?」
「…暇な時めぐみんの部屋行ってもいい?」
「え?」
いやいや何を言ってるんだ自分、女性の部屋に入っていいわけがないだろう
「ごめん、今の忘れて」
「…フフッ、レン」
めぐみんはいたずらに微笑む
「私も同じこと言おうとしてました、ホント私たちって似たもの同士ですね?」
その微笑みに何故だがドキっとする僕であった
その後夜になると、リビングにてあらかじめ買ってきた食材で料理をすることとなった
「はい料理やったことある人ー」
「あるわけないじゃない」
「そうだな……あまりないな」
「私はありますよ」
「ああ僕も料理できる」
「お、じゃあめぐみんとレンに任せようかな?」
「ちょっとカズマさぁん?自分から話題振ったのに自分は料理出来ないんですかー?プークスクスw」
「るせぇ!インスタントしか作ったことねぇわバーーカ!そもそもそんな事したことねぇお前が俺の事バカにしてんじゃねーよ!」
「カズマくんもアクアさんもお腹すいてるからイライラしてるんだね」
「普通にいつも通りですけどね」
僕とめぐみんはお互いに連携しながら料理を作り、僕らは自分の部屋へと戻るのだった
「ふぅ……部屋もこのくらいでいいか」
本棚を整理し自分が持ってきた本を並べきりベッドで横になっていた
「………え?僕一人っ子だったのになんで1人が寂しくなってるんだ?」
慣れって怖いなぁと感じていると、
「ふわぁああああ!?わぁああああ!」
アクアさんの悲鳴が聞こえてきた。僕は急いでアクアさんの部屋へと向かう
「アクアさん!?大丈夫!?」
「レン、来なくて大丈夫だくだらないことだ」
「くだらないってなによ!!私にとっては異常事態よ!」
聞いた話によると、どうやらアクアさんのお酒が何者かに空にされた
「とにかく!私はこの家中にいる悪霊を全員シバキ回してくるわ!」
そう言いアクアさんは部屋を飛び出していった
「どうしたんだカズマ」
「アクアは一体どうして血眼になってターンアンデッドを?」
「あいつの大事にしていた高級シュワシュワが何者かに空にされたんだってよ」
「「なんだそんなことか」」
「2人とも…」
「ま、そういうことだわ、解散解散」
カズマくんの一言で解散し自室へ戻る皆
「………暇だしめぐみんの部屋に行こうかな」
僕はそう思い立ち部屋を出ようとする
「……いやでも急に行っても困るか…」
そう思いベッドに寝転がる
「………いやでも暇だしな…」
立ち上がり部屋を出ようとする
「…………いやでも」
そう思いベッドに……
「いや何やってんだ僕……別にめぐみんの部屋に行くだけだよな……」
おかしな話だ、何故こうも上手く足が進まないのだろう
「ええい、ここでうだうだしても仕方ない、僕はめぐみんの部屋に行くぞ」
僕は部屋を出てめぐみんの部屋の方向へ向かおうとする
「あっ、レン…」
「め、めぐみん…」
なんと目の前にめぐみんがいた
「あ、えと……どうしたのめぐみん?何か…」
「い、いえ!その用事がある訳でもなくてですね?その………」
すこし言い淀んでからめぐみんは口を開く
「レンに会いたくなって…」
「へ!?」
顔を赤くするめぐみんと、これまた同じく顔を赤くする僕
「レンは、会いたくありませんでしたか…?」
「そ、そんな事ない!僕も会いたかった!」
声が裏返ってしまった、とても恥ずかしい
「そう、ですか…では部屋にお邪魔しますね?」
「う、うんどうぞ……」
僕はめぐみんを部屋に招きいれる
「…」
「…」
特に会話が発生せず、何故か同じ布団の中にいる。なぜこうなったのか
「レン」
「ど、どうした?」
「……約束してください、もう絶対あんな無茶はしないと」
めぐみんの方を見ると、めぐみんは僕の方を見つめていた
「……私…もうレンに会えないと思ったら……胸が苦しくなって……だからもう、レンを失いたくないんです」
意を決したように、めぐみんは更に言葉を続ける
「私は……貴方の事が好きです、私の夢を真っ直ぐ応援してくれて、私のことを真っ直ぐ見てくれる貴方が…とても……好きです」
なんてことだ、僕はいつの間にかめぐみんに恋を抱かれていたのか……いや、恐らくはきっと
「…めぐみん、僕も君のことが好きだ、僕の夢を真っ直ぐ応援してくれて、僕のことを真っ直ぐ見てくれる君が…とても……好きだ」
同じ時に、同じ所を好きになったんだ。僕と君は
「フフッ、本当に私たち似たもの同士ですね」
めぐみんはそう笑う、僕もそうだね、と返事をし微笑みかける
「これからが大変ですね、カズマたちにはどうします?」
「カズマくん、多分僻むかな……」
「でしたら言わない方がいいですね」
お互いに笑いかける、だけど僕はだんだんと笑みが無くなる
「?どうかしましたか?」
「………うしろ」
「へ?」
めぐみんも後ろをむく、そうそこに居たのは
こちらをジロリと見る西洋人形たちだった