なんだかんだ自分たちの住む家を入手する事に成功した僕たち、冬の間は特に良いクエストも無いため、僕らはただ暇を持て余していた。
「何か暇を潰せるような面白いことないかなぁ」
僕はそんな事を言いながら街を散歩していた。ちなみにめぐみんは家で丸くなっている。猫みたいで可愛かった
そんな時ふと路地裏に目がいく、何の変哲もない路地裏だが、そこに見知った人物がいるのを発見する。僕は迷わず声をかける
「ダストくんにキースくんにカズマくんじゃないか」
「「「ちょわ!?」」」
某学級委員長のような驚き方をした3人は、恐る恐るこちらを振り返る
「な、なんだレンか……」
「ふぅ…他の奴に見られたかと思ったぜ…」
「まぁレンなら口も硬ぇしいいか」
3人はそれぞれそういった反応を見せる。
「何をしていたの?何か面白そうなものでもあった?」
僕がそんなことを聞くと、3人は目を見合わせこう言う
「いいか……ここからは男の世界だ…遊び半分で行くような場所じゃないんだ」
ダストくんが真剣な目つきでそう言う、僕は少し興味が湧いてきたので
「それなら大丈夫、僕はいつだって真剣だからね」
そう言葉を返すと、納得したのか話し始める
「実はな……この街にはサキュバスたちが経営している、まさしく夢のような夢を見せてくれる店があるんだよ」
ダストくんの説明にキースくんが続ける
「そこではサキュバスたちが俺達男どもの発散したくても発散出来ないのを夢を見させてくれることで精気を抜いてくれるんだよ」
なるほど、つまるところそういう店というわけか…確かにリーンさんやめぐみん、ウィズさんのような可愛い人は大勢いる。そんな人達に劣情を抱くのも1人の男しては理解できる
「実は俺もさっきダストとキースに話を聞いて入るところなんだよ、そんでその時にお前が来たわけだ」
なるほど、それじゃあお邪魔しちゃったかな
「いい機会だ、お前もこのサービス受けてみろよ」
ダストくんがそんな事を言う
「え、僕も?」
「カズマから聞いたぜ?パーティメンバーの誰ともそんなイベント起きないってな、お前もそう言う口なんだろ?」
まぁ否定はしないが、僕の場合は別にまだそういう目で彼女を見ていないというのが大半を占めているのだが…
「とりあえず行ってみようぜ、正直なところあの屋敷で俺一人だけサービスを受けるのもどうかと思ってたんだ」
「うーん…まぁわかった」
少し興味が出てしまった僕はOKし、3人と一緒に件の店に入るのだった
-このすばぁ!!-
「いらっしゃいませー!」
店に入ると、僕らを出迎えたのは角や羽がある女性だった。どうやら本当にここはサキュバスたちが働く店のようだ。ふと店内を見渡すとそこかしこに男性客がいた。
横を見るとダストくんとキースくんは鼻の下を伸ばし魅了されてるようだ。カズマくんも似たような感じだった
「お客様は、こちらのお店初めてでしょうか」
その言葉に僕らは頷く。それを見た女性は続けて
「では、ここがどういうお店で、私たちが何者かもご存知ですか?」
その言葉にも頷くと、その答えに満足したのかメニュー表を持ってくる
「御注文はお好きなのをどうぞ、勿論無理に御注文なさらなくとも大丈夫です。こちらのアンケート用紙にご希望などを書いていただいたなら、会計の際にお渡しくださいね」
僕はアンケート用紙に目を通す
「あの、夢の中の自分の状態や、性別とか外見というのはどういう意味でしょうか」
当然初めての利用なので分からないことは聞く、女性は答える
「状態というのは、王様や英雄となってハーレムを作りたいや、四肢を拘束された状態で楽しみたい等そういったものですね」
なるほど
「性別や外見は、自分が女性になって楽しみたいといった人や、幼い少年になって強い女性に無理やり…という方もいらっしゃいます」
そんなところまで設定が可能なのか…思ったより夢の内容は融通が効くようだ
と、僕の質問を終えると、キースくんが手を挙げる
「あの、この相手の設定ってのは、どこまで……」
「あなたの想像できる限り、どこまでもです。性別も外見も、あなたにどのような感情を抱いているか、どういう関係なのか。何でも、誰でもです。実在していなくても構いません」
なるほど、そんなところまで設定できるのか
さらにダストくんが口を開く
「相手がどんな年齢でも大丈夫ってことですか?その、俺はそういうのを指名する気はないんですけど念の為……」
「大丈夫です。上でも下でもお好きなように」
僕はとてもとても迷った、迷った挙句に記入したアンケート用紙を僕らはお会計の時に渡す
「では皆様3時間コースなので、一人五千エリスとなります」
3時間で五千エリスなのか、なるほど確かにこれなら通い続ける人が出るのも納得できる
「では最後に、お泊まりのご住所と本日の就寝予定時刻をお願いします。その時間帯に当店のサキュバスが就寝中のお客様の傍へ行き、希望の夢を見せて差し上げますね」
「ねぇカズマくん、そうなると屋敷に来るわけだね」
「そうなるな」
「じゃあアンナさんにバレちゃうね、そうなるとアンナさん経由でアクアさんにもバレちゃうね」
そう言うとカズマくんはハッとする
「そうじゃねぇか!どうすんだよ!?」
「ご自宅が難しい方にもサービスを受けてもらうため、おひとりで1泊できる宿がございますよ」
「それだ!!夜中に抜け出してその宿に行けばいいんだ!」
そこまでしてサービスを受けたいのだろうか…まぁ僕も五千エリス支払うのだからせっかくだしその宿に1泊するとしよう
「最後に、お酒などはなるべく控えてくださいね。完全に意識がない状態ですと、夢を見せることができませんので」
女性の忠告を受け、僕らは店を出る
「じゃ、じゃあこれで解散ってことで……」
「お、おう!達者でやれよ!」
「じゃ、じゃあな!またこいつをネタにして酒でも飲もうぜ!」
落ち着かない僕らはそのまま解散する運びとなる。カズマくんはとても満足気な顔をしているが、僕は少し罪悪感を覚える。
「あんな内容、書くべきじゃなかったかな……」
僕が書いた相手の設定、それはめぐみんだった。
「はぁ…」
僕はため息をつき、カズマくんと家へ帰るのだった
-このすば!-
「レン、おかえりなさい」
「うんただいま」
「あれ、レン…カズマとクエストでも行ってました?」
そんな事を聞かれ僕は首を傾げる
「ん?どうして?」
「いえ…悪魔っぽい魔力がレンとカズマから感じまして……気のせいでしょうか」
カズマくんが青ざめている。ここは上手く誤魔化すしかないか
「ああ……二人で受けれるクエストがあってね、そこに悪霊系のモンスターがいたんだ。僕もたまには変身しないで戦ってたから恐らくその時に…」
「そうだったんですね、それなら良かったです」
めぐみんの疑念も晴れたようだ、僕とカズマくんは胸を撫で下ろしていたら、アクアさんが満面の笑みでこちらに駆け寄る
「ねぇねぇカズマ!レン!これみなさいよ!」
そう言うと僕とカズマくんを引っ張る。リビングの机には霜降りガニとお酒があった
「これどうしたの?」
「私の実家から送られてきたんだ」
ダクネスさんがリビングに来て説明してくれる。どうやらダクネスさんの実家が日頃のお礼を込めて送ってきてくれたらしい
「へぇ……結構お高いんじゃない?こんなのをプレゼントできるなんて、ダクネスさんの実家は裕福な家庭なんだ」
「いやまぁ…私の実家の話はいいじゃないか、それより手伝ってくれないか、時間も良い頃合いだしな、ご飯にしよう」
僕は食器などを並べ、アクアさんは高級酒をグラスに注ぐ
「カニ、食べたことないんだよね」
「実際ところ私も食べたことはありません、ですから楽しみです」
準備が終わった僕らは早速頂くことにする。カニの足から身を取り出して食べる
「んっ!」
口に入れた瞬間、ブワッと旨みが口に広がる。こんなに美味いのは食べたことがないくらいだった。
「美味しいね」
「はい!」
めぐみんもとても満足しているのか満面の笑みだった
「これホント美味しいわね!」
「ウメェウメェ!俺の語彙力じゃ伝えらんないくらいウメェ!」
アクアさんとカズマくんも大喜びだった。ダクネスさんもとても喜んでいる
「それにしたってこのカニにこの酒もあうなぁ!」
ん?お酒…?あの女性がお酒は控えて欲しいと言っていた気もするが……まぁいいか、僕はどの道飲めないから関係はない
「めぐみんもレンも残念ねぇ、このお酒を堪能出来ないんですから」
「紅魔族はこの歳でも成人として扱います!子供扱いは辞めてください!」
そうは言っても世間一般的な話をするとまだ成人ではないため、めぐみんにお酒は飲ませられない。
「いやぁこれなら何杯でも飲めるなぁ!」
カズマくんはカニとお酒を交互に口に入れていた。いい食いっぷりで少食な僕も食べすぎてしまいそうなほどの食いっぷりだった
夕ご飯から数時間後、僕は酔っ払ったカズマくんを連れて宿へと向かっていた
「飲んしまったぜ…へへっ」
「忘れてたよねカズマくん」
「あんなの誰が断れんだよぉ、サキュバスさんのサービスはいつかまたリベンジしてやるからな!」
カズマくんはそんな決意を秘めつつ、僕と一緒に宿へと向かうのだった
-このすば-
当たり一面満開の花でいっぱいだった。僕はバルコニーのロッキングチェアに座り、外を眺めている
「いい風が吹きますねぇ…」
隣には膝に猫を乗せ僕と同じように外を眺めている彼女だった
「ああ……とってもいい風だ」
「ねぇレン、貴方は今…幸せですか?」
唐突に彼女がそんな事を聞いてくる
「何を言ってるんだ……僕は、君と居られてとても幸せだよ、君はどうなの?」
僕の問に彼女は笑って答える
「そんなの決まってるじゃないですか、私も」
「とっても幸せですよ、レン」
満面の笑みでそう言う彼女_めぐみんと顔を合わせ
「__リアルすぎるでしょ」
僕は目を覚ました、あまりにもリアル過ぎてなかなか引いてる自分がいる。
「…いつかそんな生活ができるといいんだけどな……」
たまに考えてしまう、もし魔王を討伐したとして、そうなれば僕ら転生者は一体どうなってしまうのだろうかと、僕らがこの世界に転生してきた理由は魔王を討伐するため。その目的である魔王が討伐されたとなると僕らがこの世界に滞在する理由は無くなってしまうわけで…
「…………嫌だな」
僕は自分で思ったよりも、彼女と別れるのが嫌みたいだ、女々しくなったものだなぁと自分を嘲笑するように笑い、僕は起き上がる
「カズマくん、ちゃんと夢見れたらいいんだけど…」
そんなことを気にしてると、
《デストロイヤー警報!デストロイヤー警報!機動要塞デストロイヤーがこの街に接近しています!冒険者の方々は直ちにギルドまで集合してください!並びに、住民の方々は避難の準備をしてください!繰り返します!》
そんな緊迫したアナウンスが流れてきたのだった。