「ダクネス……帰ってきませんね…」
「ああ、流石に心配になってくる」
僕らは今屋敷にてやることも無くゆっくりしていた。流石にヴィルガクスと戦った後でクエストを受ける気もない。めぐみんもそうみたいだ
「それにしたって大変だったんだなそっちも」
「うん、カズマくんたちもお疲れ様」
どうやらカズマくんたちの方も大変だったみたいだ。
「レン、いるかい?」
と、寛いでいるとミツルギくんが来た
「ああミツルギくん、ごめんもしかして扉ノックしてた?」
「ああ、留守かと思ったんだがアクア様の声は聞こえてね、君から勝手に入っても良いと言われてたから入ったんだ」
「おいおいミツルギ、レンに何か用か?」
「うん、元々ミツルギくんとは模擬戦をしようとしてたんだ。ごめんミツルギくん、実は昨日ヴィルガクスっていうとっても強いエイリアンと戦ってさ」
「そうだったのか…なら今日は無理か」
「せっかくだしミツルギくんもゆっくりしていきなよ」
「いやそういう訳には……」
ミツルギくんが遠慮していると、勢いよく扉が開かれる
「大変だ!大変なんだ!!」
そこには綺麗なドレスを着た女性がいた。姿こそ見覚えはないが、声で判別はできた
「「「「誰?」」」」
カズマくんたちが声を揃えて言う。ミツルギくんはまだ分かるが、流石に仲間を判別できないのはどうかと思う…
「ダクネスさんだよ」
全員が驚愕する、そうしてめぐみんがダクネスさんに近づく
「おかえりなさいダクネス、まずはゆっくりとお風呂に入って、心と体を癒してください……」
「な、何を言ってるんだ?そりゃ風呂には入りたいが、今はそんなこと言ってる場合ではなくてだな…」
めぐみんが優しい目でそう言う、アクアさんがいつの間にかダクネスさんの隣に移動しており、ダクネスさんの服を撫でる
「間違いないわ……高級品よ…うぅ」
「苦労かけたなぁ…ダクネス……」
アクアさんとカズマくんが泣いていた。わけがわからないような顔をするミツルギくんに説明する、実はカズマくんは勝手な推測でダクネスさんが傷モノにされたと思い込んでいた。もちろんそんな事実はないのだが、やはり長期間帰っていないと邪推してしまうものだった
「そうか……大変な目にあったんだね…まずは湯船に浸かろう、話はそれからでも遅くは無いはずさ」
まさかのミツルギくんまでもがカズマくん側だったとは……いやまぁ確かにそう思ってしまうのは仕方ないが…
「な、何を勘違いしているんだ!領主に弄ばれたとでも思っていたのか!?流石のやつもそんな度胸はない!それよりもこれを見てくれ!」
と、1枚の紙を見せてくる。そこには好青年が映っていた。しかしカズマくんはそれを受け取るとビリッと破いてしまう
「何をするだー!?」
「すまん、イケメンだったから反射的に…」
「アクア様、修復は出来ますか?」
「任せなさい!」
ミツルギくんが破れた紙をアクアさんに渡し、アクアさんはその紙を修復する。
「それにしてもこの男性がアダプールのご子息ですか……」
僕はとある考えを持ってしまうが、あまりに失礼なため口にはしなかった
「分かるよレンくん、似てないね」
「ええ、全く似てませんね」
そんな僕の心を見透かしたミツルギくんとめぐみんが代わりに口にした。僕が我慢した意味よね
「あいつはレンの猶予を伸ばすことを条件に私に見合いを申し込んでな……私が帰ってこなかったのも、それをどうにか阻止しようとしていたからだ、私の父もアダプールはともかく、息子のことは高く評価しているのだ……一番乗り気なのが、私の父なのだ…頼む!父を一緒に説得してくれないか!」
なるほど…こちらも大変な思いをしていたが、ダクネスさんも大変な思いをしていたのだな
しかし疑問点が浮かび上がる。なぜダクネスさんは乗り気では無いのだろうか、正直ご子息に問題は見当たらないような気もする。ダクネスさんの父親が乗り気なのも、アダプールに比べマトモであるからが理由として考えられる。
そんなこんなで悩んでいると、カズマくんが叫ぶ
「これだぁぁあああ!!」
と、アクアさんがせっかく直した紙をまた破いた。とりあえずどんな考えが浮かんだのか僕らは聞くことにした
-このすば-
「見合いを受けろだとぉ!?」
「ダクネスがこのまま冒険者をやめてもいいんですか!」
「正直その考えはどうかと思うぞサトウカズマ」
アクアさんが破けた紙をみて泣いてる中、ダクネスさんとめぐみん、ミツルギくんがカズマくんの考えに苦言を呈す。
「落ち着けって、あのな?今回の見合いを断ったところで、あの領主は相当の無理難題をふっかけてくるに決まってる!だから受けた上で、それをダクネスの家の名前が傷つかない程度にぶち壊すんだ」
なるほど、カズマくんはそういう考えの元の作戦だったようだ。
「それだ!!それで行こう!だったらお見合いの度に家に戻っていちいち父を張り倒さなくても済む!」
まさかいちいち父親のことを張り倒しに行ってたのか……流石に可哀想だ…そんな話をしていると
「シロサキレン!シロサキレンはいるか!」
この声はセナさんか…僕は外に出て応対する
「どうかされましたか?」
「街に雑魚モンスターが蔓延っていて、手を貸していただきたい」
なるほど、名誉回復のためにも受ける必要はありそうだ
「待ってください、雑魚モンスターが蔓延ってるんですよね?」
と、カズマくんがセナさんに聞く
「ああそうだが?」
「だったら、めぐみんお前の爆裂魔法の出番じゃないか!これはお前にしか頼めないことなんだ……最強の爆裂魔法使いのお前にしか…!」
「私にしか……し、仕方ありませんね!では早速行きましょう!」
んん?なぜめぐみんに行かせようとするのだろうか…このクエストくらい僕一人で何とかなるのだが…
「ミツルギ、お前も行ってこい」
「え?僕が行くのに」
「いや、レンはこっちだ」
「……レンくん、そっちは頼んだよ」
ミツルギくんはそう言うと、めぐみんと一緒に雑魚モンスター討伐へと向かうのだった
「………」
「レン、そんなにめぐみんが心配か?あの男がいるんだ、負けることは無いだろう」
「いやまぁそうなんだけど…」
とてもこの感情は表にも口にも出すことは出来ない、僕はこの気持ちを押し殺し、カズマくんたちとダクネスさんの実家へ向かうのだった
-このすばっ!-
ダクネスさんの実家へと向かいダクネスさんの父親にあっていた。とてもダンディなお人だった
「ほ、本当にいいのか…?ララティーナ……」
「はいお父様。ララティーナは此度の見合いを受けようと思いますわ」
新鮮味があるダクネスさんのお嬢様言葉にカズマくんとアクアさんは笑いを堪えている。流石に失礼だと思う
「それで、こちらの方は……?」
「あ、わ、私の冒険者仲間です。今回のお見合いに臨時の執事とメイドとして同伴させようと」
「そうか、だとしたら着替える必要があるな」
僕らは部屋に通され着替える
「おい似合ってんなレン」
「そう?」
アクアさんはメイド服で僕とカズマくんはスーツだ。鏡の前出整えている。
「おおちゃんと似合ってるじゃないか、一流の使いっ走りにも見えんぞ」
「あら、カズマさんこそ背伸びしてる執事見習いに見えるわよぉ?」
「おぉお前、そういうこと言っていいのか?もしもここじゃなかったらすごいことしてるぞ?なぁララティーナお嬢様」
「ら、ララティーナお嬢様はやめろ!」
アクアさんとカズマくん、ダクネスさんの喧騒が微笑ましく思う
「まぁまぁダクネスさん…ここは抑えて」
ダクネスさんを落ち着かせると、僕らはお見合い相手を待つこととなる。
「それにしても、受けてもらって嬉しいよララティーナ」
そう父親が言うが、ダクネスさんの様子がおかしくなる
「ふ、ふふ……嫌ですわ、ララティーナは見合いを前向きに考えると言っただけですわ。そして考えた結果!やはり私には嫁入りは早いという結論に至りました!ぶっ壊してやるぅ!こんな見合い!ぶっ壊してやる!!」
「ら、ララティーナ……」
娘の豹変ぶりにドン引きするお父様
「はしたない言葉遣いはやめてください。お嬢様……先方に嫌われてしまいますよ」
「キサマ、裏切る気か!?」
「今の私は臨時執事。お嬢様の幸せが自分の望みです」
「カ、カズマ君…!」
「カズマキサマァ!!」
と掴みかかるダクネスさん
この阿鼻叫喚の中、扉が開かれる。そこに居たのは領主のご子息、名はバルターと言う。その瞬間ダクネスさんが走っていく
「お前がバルターか!私の名はダスティネス・フォード・ララティーナ!私の事はララティーナ様と__」
「お嬢様!お足元にご注意を!」
と、カズマくんがダクネスさんのスカートの裾を踏んで転ばせる
-このすば-
「手助けしてくれるのではなかったのか!」
とある一室にて、僕らは話し合いをしていた
「お前、名前に傷がつかない程度ってのを忘れてるだろ」
「確かにね……ダクネスさん、お見合いが嫌なのは分かるけど…流石にね?」
「ぐっ…だがいいではないか!悪評が立てばもう嫁の貰い手など無くなる!冒険者稼業も気兼ねなくできる!私は親に勘当されるのも覚悟の上だ!それでも生きようと無茶なクエストを受けて、力及ばず魔王軍の手先に捕らわれ……色々されて…私はそんな人生を送りたい!!!!」
「…………」
「おいアクア……こいつ、やっぱりあのバルターに貰われた方が幸せじゃないか?」
「の、ノーコメントでお願いするわ」
なんとも言えなくなる僕ら
「大体、あの男は私の好みではない……」
「好みでは無いの?」
「当たり前だ!人柄が良く、誰に対しても怒らず、努力家で、最年少で騎士に叙勲された腕も持つ……」
ん?聞いてる限り問題は無いと思うが
「な、なぁ…それって非の打ち所がない、まさに最高なんじゃねぇのか?」
アクアさんがカズマくんの言葉に勢いよく頷く
「どこが最高だ!貴族ならば貴族らしく!常に下卑た目を浮かべていろ!あの曇りもない真っ直ぐな視線はなんだ!もっとこう……よくカズマがするような、舐め回すような視線で見られないのか!!」
「み、みみみ見てねぇし!」
「誰に対しても怒れない!?バカが!失敗したら、お仕置と称してメイドにあれこれやるのは貴族の嗜みだ!そもそも、私の好みはあのようなできる男とは正反対!外見はパッとせず、ガリでも太っていてもいい、私が一途に思っているのにすぐほかの女に行ってしまうような、意思の弱いやつがいいな!年中発情して、スケベそうなのは必須条件だ!それで人生を嘗めていて、それを社会のせいにして一切働きもせずに私に言うのだ! おいダクネス、お前のそのスケベそうな体を使って金を稼いでこい。 んぅぅぅ!!!」
「……もう何も言えない…」
こうして僕らは、お見合いを継続するのだった