「前々から思っていたのですが、レンは私を子供扱いしていませんか?」
「え?」
めぐみんさんがパーティに加わり数日経った頃、冒険者ギルドに向かう最中にめぐみんさんからそう言われた
ちなみにカズマくんとアクアさんは馬小屋で寝泊まりをしているらしく、流石にめぐみんさんも馬小屋なのはどうかと思った僕は自分が宿泊してる部屋を大半めぐみんさんに貸してる状態だ
「えと………と言いますと?」
「最初だってそうです、無意識かもしれませんが私に目線を合わせたり、食事の時も栄養バランス云々や寝る前に歯を磨けや……」
確かに思い返せば、身長が身長故にめぐみんさんを子供扱いしていたのかもしれない
「いやでも、めぐみんさん」「それもです!」
途中で遮られてしまった
「そのめぐみん"さん"も距離等を感じます!」
「え、えぇ……でもほら、カズマくんもアクアさんもそう呼んでるし……」
「と・も・か・く!!子供扱いしないでください!あと私のことは呼び捨てで結構なので」
「う、うーーん………わかった…」
誰にでも"くん"や"さん"付けする日本での癖がここに来てトラブルになるとは思いもよらなかった、まぁめぐみんさん_めぐみんの性格を考えると色々と思うところもあるのだろう
「全く……まぁ…感謝はしていますが、ヒーローなんでしたらもう少しドンと構えてくださいよ」
「それは難しいかな、こんな性格だし」
そんなこんなで冒険者ギルドについた僕とめぐみん、席にはアクアさんとカズマくん、それと見知らぬ金髪の人がいた
「おはようございますカズマ、アクア」
「おはようカズマくん、アクアさん、そちらの人は?」
「あ、ああ……」
「私はダクネス、クルセイダーだ」
クルセイダーって確か上級職だよな、だとするなら結構良い感じに見えるのだがそうでもないのだろうか
「クルセイダーって、上級職じゃないですか!」
「あ、ああまぁ……」
あ、カズマくんの目が死んでる、多分そういうことなんだろうな
「……2人とも、ちょっといいか」
カズマくんが神妙な面持ちに戻り僕とめぐみんを席に促す
「どうしたんだい?」
「今のうちに言っとくぞ、俺たちは将来的には魔王を倒すつもりでいる。正直自分でも無茶で無謀だとはわかっているが、それでも俺たちには魔王を倒さなきゃいけない理由がある。」
まぁ確かにそうだろう、何も僕ら転生者はセカンドライフを送るためにこの世界に来たわけじゃない
「おいめぐみん、いいのか?一日一発しか魔法が打てないような魔法使いが魔王に挑んで勝てると思うか?降りるなら今の内だぞ」
そうめぐみんに問いかけるが、
「いいじゃないですか!魔王を倒した爆裂魔法使いとその仲間、紅魔族的にすごくポイント高いですよ!」
めぐみんはいつも通りのテンションでそう返す
「おいダクネス、お前は良いのか?防御しかできないとか向こうにとっては都合のいいサンドバッグにしか思われないだろうし、下手すれば奴らにつかまって」
え、防御しかできない?それはちょっと困るやもしれない、そう考えているとダクネスさんは、
「いいじゃないか、むしろ望むところだ。騎士として魔王を打倒せんとする者を放っておけんしな。べ、べつに魔王軍から辱めを受けられるとか思ってないぞ?つかまってあんなことやこんなことをされるんじゃないかとか思ってないからな、うん」
前半部分はかっこよかったのに、後半で台無しになってしまった、ともあれめぐみんと同様に魔王を倒すという意思は固いようだ
「お前はどうなんだレン、正直お前の能力なら今からでも他のパーティに行っても」
「ダメですよ!レンは私の大切なパーティメンバーですので!!」
何もめぐみんだけの僕では無いのだが、めぐみん的にも宿を貸してもらってる僕がいなくなるのは避けたいのだろう
「大丈夫だよめぐみん、僕はここ以外のパーティに移る気はない、それに魔王は必ず討伐しなくちゃならない存在だ、カズマくんがそこまで決意を固めてるのならそれを手助けしたい」
「まぁそこまで言うなら……」
「私と同じように立派な信念を持っているのだな」
「当然です!レンはヒーローですので!」
ワイワイと盛り上がりを見せる目の前で、僕は誓う、必ずこの4人だけでも護って見せようと
もう二度と誰も失いたくないから
-このすばっ-
「なぁ、スキルってどうやって習得するんだ?」
僕たちに魔王討伐の意思を確かめた日から一夜開けた次の日、冒険者ギルドでご飯を食べていたアクアさん、めぐみん、僕の3人にカズマくんが尋ねる
「スキルの習得?そんなもの、冒険者カードに記載されているスキルから……ああ、そういえばカズマは冒険者でしたね」
めぐみんは食器を置きカズマくんに説明する
「冒険者は他の職業の人にスキルを教えてもらい、それで初めて覚えることができます。なので全てのスキルを覚えることが可能なのです。まぁ割り振るポイントは本職よりも多くなりますが」
そこが欠点ですねと付け加えめぐみんは食事を再開する、なるほどそうだったのか知らなかった
「へー、てことはめぐみんに教えて貰えば俺も爆裂魔法を使えるようになるのか」「その通りです!!」
カズマくんの呟きにめぐみんは前のめりになる
「その通りですカズマ!必要になるスキルポイントはバカみたいに多いですが、アークウィザードを除いて唯一爆裂魔法を使えるのが冒険者です。爆裂魔法を覚えたいのならいくらでも教えます。というか覚えましょう。ほかに覚える価値のあるスキルなんてあるのでしょうか、いやない!さあ!私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!」
そう早口で捲し立てるめぐみんを宥めつつ僕は疑問を口にする
「でもさ、中級魔法や初級魔法を取得できないほどのポイントとなると、多くのスキルポイントが必要なんじゃないの?」
「正解よレン、冒険者が爆裂魔法を覚えようとしたら、10年ぐらいスキルポイントを何も使わずにずーーっと貯めてようやくってところじゃないかしら」
「待てるかんなもん、なぁアクアお前なんか役に立つスキル覚えてないか?」
「しょ~がないわねぇ~、言っとくけど私のスキルは半端じゃないわよ?本来ならそう簡単に誰かに教えていいスキルじゃないんだから、そこちゃんと覚えておきなさいよね」
もったいぶりながらアクアさんは、水の入ったコップをカズマくんに持たせ、スキルの説明を始める
「いい?この種をコップに入れるの、そうすると水を吸った中の種がにょきにょきにょきっと」「だァれが宴会芸スキルを教えろつったこんの駄女神がぁっ!!」\げんこつ/
ちなみに宴会芸スキルは5ポイントで習得できるらしい
「ったく………レンは何のスキル覚えてるんだ?」
「へ?スキルなんて覚えてないよ」
「………まぁお前はエイリアンヒーローだもんな、力があって羨ましいぜ」
「あ、いや別にそんなつもりじゃ……」
「カズマ、流石に大人気ないですよ…」
「うっせぇやい、あーあ便利なスキルねぇかなぁ」
「ねぇねぇキミ、キミがダクネスと組んだっていう人?」
カズマくんの後ろから銀髪の女の人が声をかけてくる。ダクネスさんを知ってるということはお友達なのかな
「え、あ、そうっすけど」
「急にゴメンね?スキルでお悩みみたいだったからさ?有能なスキルが欲しいなら盗賊スキルなんてどうかな?」
盗賊スキル、確かに痒いところに手が届くようなスキルが沢山ありそうだ
「盗賊スキルってどんなのがあるんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!盗賊スキルは便利だよ、敵感知に罠感知、潜伏とか窃盗とか、覚えておいて損はないスキルばかり!ついでに言うと必要なポイントも少なくてすむ!どう?今ならクリムゾンビア1杯とお安くしとくよ?」
「マジすか!?すんませーん!この人にクリムゾンビア1つ!」
こうして上機嫌になったカズマくんは盗賊のクリスさんと一緒にどこかへ行った
-このすばっ!-
「…………何があったの?」
カズマくんとクリスさんが戻ってきたのだが、何故だかクリスさんは涙目だった
「ぐすっ……スティールを教えて実践させてみたら………パ、パンツ盗られて……ひぐっ、返してって言ったら金払えって……」
「………」
めぐみんもアクアさんも僕も、冷ややかな目でカズマくんを見つめる
「いや、返して欲しかったらパンツの価値分の金を払えっていっただけで」「お金払ったら『お前がこのパンツにかける価値はそんなもんか?』って言われて……」
「カズマくん、流石に擁護できない」
「待ってくれよ俺は無実だ!!」
「クリスさん、うちのカズマくんがご迷惑おかけ致しました。これはその、謝罪の気持ちです」
「え、いや流石にお金を貰う訳には…!」
「カズマくんの責任は僕の責任でもありますので……!今回はこれで事を収めていただけませんか?」
「……せっかくですけど受け取れません、お金が無いからって人にたかるなんて冒険者の風上にもおけません」
「…クリスさんがそういうなら……」
「さて、じゃあ私は稼ぎに行くから!」
そう言うとクリスさんは去っていった
「さてカズマくん?」
「マテマテマテマテマテ!そもそもスティールってのはランダムなんだよ!」
「うーん、そこまでいうなら僕にスティールを使ってみてよ」
そう言うと僕はポケットから財布と鉱物を取り出す
「まぁどっち取ってもプラスになるからやり得じゃない?」
「よぉし、これで俺の無実を証明してやる!スティール!」
眩い光とともにカズマくんの手に握られていたのは、僕の財布でも鉱物でもなく、黒い布だった
「ん?なんだこれ」
「…………あの……スースーするので返してくれませんか……?」
僕は瞬時に理解し、カズマくんから布を取りめぐみんの手に握らせ、僕のつけてるコートをめぐみんの腰に巻かせる
「ホンッッットにバカじゃないの!?」
「違うんだって!!俺は無実だぁ!」
そんなことを宣うカズマくんの声を遮り
《緊急クエスト!!緊急クエスト!!街の中の冒険者たちは、至急ギルドに集合してください!繰り返します!》
「今年も来たわねキャベツ狩り」
そう言うアクアさんに、僕とカズマくんは目を見合わせこういう
「「キャベツ狩り……??」」
久々に出た、素っ頓狂な声だった
【次のページ】
「キャベツってあれだよな?野菜のキャベツだよな?」
カズマくんは3人に聞くに聞く
「ええそうですよカズマ、緑で丸いあのキャベツです」
「ああ、噛むとシャキシャキしてて美味しいあのキャベツだ」
「キャベツがどういうもんかは知ってるわ、じゃあなんだ?緊急クエストっていうのはキャベツの収穫なのか?農家でも手伝うのか?」
「カズマは知らないのも無理ないわね、多分レンも知らないわね?」
アクアさんの問に頷き返す
「いい?カズマ、レン…ここのキャベツはね」
職員が大きな声で叫ぶ
「皆さん!お集まりいただきありがとうございます!もうお気づきかと思いますが、今年もキャベツの収穫時期がやってきました!今年のは出来が良く、1玉1万エリスとさせていただきます!すでに住民の皆さんには避難していただいております。この檻の中にできるだけ多くのキャベツを捕まえて収めてください!尚、今回の報酬は後日まとめてのお支払いとさせていただきます!」
「なるほど飛ぶのね」
察した僕を横目にカズマくんは『なんでお前適応できるん?』という顔をしていた
_拝啓、お父さん、お母さん、元気にしていますか
「ぐぁぁあ!!」
「くそっ!味方がやられた!衛生兵ー!」
_俺はこのファンタジーじみた世界で変な仲間と元気に暮らしています
「カゴテリーキャベツは俺のものだー!」
「このキャベツまだまだ地味すぎるゼ、もっと腕にシルバーMAKUTOKASA☆」
_役に立たない元女神のアークプリースト、頭のおかしいアークウィザード、どこか危ない匂いを感じるクルセイダー、そしてエイリアンヒーローの冒険者の仲間と共に、日々クエストに挑んでいます
「ナッシュ、こんな時君がいてくれたら」
「やっちゃいなよ!そんなキャベツなんか!」
「やって見せろよマフティー!」
「なんとでもなるはずだ!」
「キャベツだと!?」
_ちなみに今日の天気は
「いいやあれはキャベツだ、私がそう判断した」
「ダブスタクソ親父!」
_曇り時々キャベツです
「日本に帰りてぇ…」
-このすばぁあ!-
「納得いかねぇ、たかがキャベツ炒めがなんでこんなに美味いんだ。納得いかねぇ……!」
キャベツ狩りが終わった夜、街の至る所でキャベツ料理が振る舞われていた。羽振りがいいのでクエストに参加していたカズマくんだったが、どうやら軽く後悔しているようだ。とても可哀想
「まぁまぁ、でも凄かったじゃないかカズマくん、教えて貰ったばかりの盗賊スキルをあんな風に使いこなすなんて」
僕がそう言うと、うむ、とダクネスさんが続ける
「私がキャベツに囲われて袋叩きにされていた時、さっそうと現れるや否や襲いかかるキャベツを次々と収穫していったからな。礼を言う」
ダクネスさんの言う通り、あれはさながらまるで……
「カズマ、私の名において貴方に、華麗なるキャベツ泥棒を」「やっっかましいわぁ!!」
当分カズマくんはキャベツは懲り懲りだろう、可哀想なカズマくんなのであった