「どうだカズマ、レン、キャベツ狩りの報酬で修理に出していた鎧を強化してみたのだが……似合っているか?」
「成金趣味のお偉いさんが付けてそうな鎧だな」
「…….私だってたまには素直に褒めてもらいたいのだが……」
キャベツ狩りの報酬が参加した冒険者全員に配られた。昼間から酒を飲み明かす者、装備を新しくした者、借金の返済にあてる者、貯金する者、皆思うままに報酬を使っていた。
「レンは……」
「ハァ……ハァ……こ、このマナタイトでできた杖の艶……!たまりません……!」
「うんすごい、凄いねめぐみん、それ言うのもう10回目だよ……え、どうしたのダクネスさん?」
「いや、うん………なんでもない」
「レン?聞いてますか?」
「ああうん、聞いてるよ」
僕は朝からめぐみんの新調した装備の感想を聞かされていた
「なぁぁあああんでよぉおおおおおお!!」
そんな中、アクアさんの悲痛な叫びが聞こえてくる
「一体どうしたんだろう」
「気にすんな、どうせくだらねぇことだろ」
カズマくんは飲み物を飲みながらそう言った、数分後にアクアさんはトボトボと戻ってきた
「お、おかえりなさいアクアさん……」
「………」
「ど、どうだったんだ?アクア?」
「……………」
「ア、アクア…?」
僕とダクネスさんとめぐみんの3人が気にかける
「……ね、ねぇカズマさん?カズマさんって今回の報酬はおいくらだった?」
「ん?200万」
「「「「にひゃ!?」」」」
流石の僕も驚きを隠せなかった凄いなカズマくん
「ち、ちなみにレンは」
「いやぁカズマくんよりは少ないよ……150万」
「「「ひゃくご!?」」」
驚かれてしまった…
「……カズマさんってとっても」「貸さねぇぞ」
早い…アクアさんの言動が読めたのか素早くカズマくんは拒否する
「うわぁぁぁぁん!!お願いよカズマさぁぁん!!私今回稼げるって思ったからいっぱいツケてたのよぉ!!」
「だぁうっせぇな!そもそもお前の自業自得じゃねぇか!たかってくんじゃねぇよ!」
「じゃあレン!!お願いよレン!!150万もあるならちょっとくらい誤差でしょ!?」
「え、えぇ……」
カズマくんは無理だと見切りをつけて僕に標的を変えたアクアさん
「ダメですよアクア、レンは貯蓄しないといけないんです」
「なぜめぐみんが断るんだ?」
「へ?いやその…」
「い、色々あるんだよダクネスさん、というか今回いくらだったの?そんなに少なくないでしょ?」
「…………5万」
「5万!?」
カズマくんにした驚きとは逆方向の驚きを見せる。何をしたらそんな金額になるんだ??
「それはおかしいです、アクアは人一倍捕まえていたではないですか」
「私が捕まえてたの……大半がレタスだったらしくてね…?キャベツに比べて換金率が低いらしいの……」
これは少しアクアさんに同情せざるを得ないきがする……でもカズマくんは首を横に振る
「それでもツケを作ったのはお前だろ、こういう時だけ俺らを頼ってんじゃねぇよ!」
「お願いよカズマさぁぁあん!!」
見かねた僕はアクアさんに提案する
「じゃあこうしようアクアさん、ツケを全額払うことは出来ないけど、一部は出します。そして残ったツケ分は何かクエストを受けて返してしまいましょう」
「ほ、ホントに?手伝ってくれるの?」
涙目になりこちらを見つめるアクアさん、それに頷き肯定する
「うわぁぁぁぁん!レンありがとぉおおお!アンタは絶対幸せになるわ!水の女神である私が保証するわ!」
「レン……あんましアクアを甘やかすなよ…」
「いやぁあまりにも可哀想だったから…」
「全くレンは……」
こうして僕らはアクアさんの借金を返せるような手頃クエストを見繕おうと思ったが魔王軍幹部がこの街の近くに住み着いた影響でクエストがなかったのでアクアさんは崩れ落ちていた
-このすば!-
こうしてやることが急になくなってしまった僕たちは各々やりたいことをしていた。
アクアさんはバイトに行き、カズマくんはその監視、ダクネスさんは実家に帰省していた。そして僕とめぐみんというと
「もうちょい遠くに行く?」
「ええ、この近くで爆裂魔法を打ってしまうと守衛さんに怒られてしまうので」
1日1回爆裂魔法を打つのが日課らしく、そのノルマに付き合って欲しいとの事だった
「あ、あそこのさ……お城?あそこなんてどう?」
「おお!いいですね!」
めぐみんは新調した杖を取り出し詠唱を始める
「紅き黒炎、万界の王。天地の法を敷衍すれど、我は万象昇温の理。崩壊破壊の別名なり。永劫の鉄槌は我がもとに下れ!エクスプロージョン!」
轟音と共に目の前の大きな城に爆裂魔法が直撃し、めぐみんは地面に倒れる
「ナイス爆裂めぐみん」
「フフッ」
「さてじゃあ帰ろう」
「おっと待ってくださいレン、せっかくですし他のエイリアンヒーローにも名前をつけさせてください」
そういえばめぐみんはダイヤモンドヘッドという名前を考えてくれたんだった
「分かった、かっこいい名前で頼むよ」
「任せてください!!私の天才的な頭脳をフル回転させていい名前をつけて見せましょう!」
こうして僕とめぐみんは1日1回爆裂魔法散歩を日課で行い、僕の9種類のエイリアンヒーロー全てに名前がついた
そんなある日の事だった
《緊急!緊急!全冒険者の皆様は直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門まで集まってください!繰り返します!》
久々にギルドでゆっくりしていたところ街中にアナウンスが鳴り響いた。すぐさま街の正門に向かうとそこに居たのは、凄まじい威圧感を放つモンスターがいた。
「あれは…デュラハン?」
「おかしいですね…どうしてデュラハンがこの街に?」
各々が疑問を口にする中、デュラハンが言葉を発する
「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍幹部のものだが………」
プルプルと震えだし、大声を発する
「まままま、毎日毎日毎日毎日!!俺の城の近くで欠かさず爆裂魔法を打ち込む大馬鹿は、誰だぁあああああ!!!」
もしやしなくとも僕とめぐみんのせいなのか
-このすば-
「おいレン、めぐみん集合」
「はい」
「はい……」
カズマくんの招集に、めぐみんは悪ぶれることなく、僕は罪悪感からカズマくんから目を逸らしながら集まる
「どういうことだ」
「どういうことも何も、あのデュラハンの城に爆裂魔法を打ちました」
「毎日か!?本当に毎日か!?」
「ええ」
「レン!!」
「ご、ごめんカズマくん……止めれなくて…それにあの城に誰かが住み着いてるなんて思いもよらず………」
カズマくんは深いため息をつく、申し訳なさから交渉を名乗り出た僕はめぐみんと一緒にデュラハンの前に行く
「お前らが……! お前らが、毎日毎日俺の城の近くではた迷惑な行為をしている大馬鹿者か!俺が魔王軍幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら、堂々と城に攻めてくるがいい!その気が無いのなら、街で震えているがいい!何故こんな派手でありながらも陰湿な嫌がらせをする!この街には低レベルの冒険者しか居ない事は我々も知っている!路傍の石だと思って見逃してやっていれば、調子に乗って毎日毎日爆裂魔法を打ち込みやがってっ!!頭おかしいんじゃないのか、貴様らっ!」
デュラハンが言ってるのはご最もでもある、誰でも自分の自宅にそんな物騒なもの打ち込まれたら嫌になる
「めぐみん、流石に謝ろ…?」
しかしめぐみんは口を開く
「我が名はめぐみん、アークウィザードにして爆裂魔法を操るもの…!」
「…めぐみんってなんだ、バカにしてるのか」
「ち、ちがわい!」
めぐみんの名乗りを受けたデュラハンに突っ込まれながらも、めぐみんは気を取り直し口を開く
「我は紅魔族の者にして、そしてこの街随一の魔法使い。我らで魔法を放ち続けていたのは、こうして魔王軍幹部の貴方をおびき出す為の作戦……! まんまとこの街に、一人でノコノコ出て来たのが運の尽きです!」
「め、めぐみん!?なんで喧嘩を売ろうとするの!?」
「離してくださいレン!こういうのは舐められたらおしまいなのです!!」
めぐみんを宥める僕を哀れむような目をしながらデュラハンは言葉を発する
「まぁいい、とにかく俺はお前ら雑魚共に何かするためにこの地に来た訳ではない。この地には、ある調査に来たのだ。しばらくはあの城に滞在する事になるだろうが、これからはあの災害をまき散らすのは止めろ。爆裂魔法も撃つんじゃない。いいな?」
なるほどそれがデュラハンの思惑なのか、でもめぐみんのことだから
「それは、私に死ねと言っている様なものなんですが。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」
「お、おい、聞いた事ないぞそんな事。貴様、嘘つくなよ!」
やっぱりこうなるよね…とりあえず仲裁に入ろう
「と、とりあえずデュラハンさん…今回ここに来たのは調査のためで僕たちに何かをしようというわけじゃないんですね?」
「貴様は…」
「あ、めぐみんの保護者みたいなものです…御無礼をお詫び申し上げます……」
「ほう」
デュラハンは僕の何処かを見ている……もしかしてオムニトリックスを見ている…?
「これ以上あの城の付近で迷惑行為をしなければ、この件は不問にしようと思ったが気が変わった……それを渡してもらおうか」
「オムニトリックスを!?」
何故デュラハンがこれを…まさか魔王軍はオムニトリックスの存在を知っているのか?
「それを土産にすれば魔王様も喜ぶだろう……さぁそれを渡せ」
「レ、レン……」
不安そうな顔でめぐみんが僕を見る
「渡すわけないでしょ!」
僕はオムニトリックスを叩き、4本腕の赤い人型エイリアンヒーロー_フォーアームズに変身する
「オラ!!」
「おわ!?」
先制攻撃で、デュラハンに殴り掛かる
「クッ!モンスターに変化したか!」
「モンスターじゃない!フォーアームズってめぐみんがつけてくれたカッコイイ名前があるんだよ!」
フォーアームズお得意の拳をデュラハンに叩き込んでいく、最初こそデュラハンは押され気味だったが、戦闘経験の差からか段々とそれも覆されてくる
「ハハハ!どうしたフォーアームズ!その程度か!」
「グッ…!(明らかに戦闘経験の差が歴然だ…!)」
「レン!」
「クソッ!」
「その程度か……エイリアンヒーローの力を使えると聞いていたが…それくらいならば魔王様の脅威にはならんだろうな」
「な、何だと!」
「まぁいい、ここは一旦去ってやろう……だが!このまま去るのも魔王軍の名折れ!よって貴様には屈辱を味あわせてやろう!」
「っ!」
デュラハンは人差し指をめぐみんに向ける、僕は咄嗟にめぐみんの前に立つ
「汝に死の宣告を!!お前は1週間後に死ぬだろう!!」
めぐみんを庇いデュラハンの呪いを受けようとした、しかし僕の前にダクネスさんが立つ
「ダ、ダクネスさん!」
僕が叫ぶ中、ダクネスさんの体が一瞬黒く光る
「…ふむ……何ともないようだが…」
「その呪いは、今は何とも無い。本来はそこの男に当てるつもりだったが、これもまた面白かろう。このままではそのクルセイダーは1週間後に死ぬ。ククッ、それまでその女騎士は己の死の恐怖に怯え、苦しむ事となるのだ。めぐみんと名乗った紅魔族の娘よ。一週間のあいだ、仲間の苦しむ様を見て、自分の行いを悔いるがいい。俺の城にちょっかいをかけなければ何事もなく平穏に過ごせたというのになぁ!」
デュラハンは馬に跨り去ろうとする
「そこのクルセイダーの呪いを解いて欲しくば、俺の元にやってくるがいい! 城の最上階にある俺の部屋まで来る事が出来たなら、その戦い振りを評価して、クルセイダーの呪いを解いてやろう! ……だが、城には数多くのトラップが仕掛けてあり、俺の配下のアンデッドナイト達がひしめいている。この街にいるような駆け出し冒険者のお前達が、果たして俺の所まで辿り着けるかな? クククククッ、クハハハハハハッ!」
その言葉に僕は__俺は声を荒らげる
「待てっ!ここで俺と戦え!俺はまだ負けちゃいない!!戦ってダクネスの呪いを解け!!」
しかしデュラハンはそんな言葉を聞く耳も持たず、帰路へとつく
「クソッ!クソッ!クソォ!!」
怒り任せに俺は地面を殴りつける、己の不甲斐なさに、どうしようもなく苛立ちを覚えたからだ。そうして活動限界の音がなり赤い光と共に元の姿へと戻る
「ダクネス…」
「レン、私は大丈夫だ…それに仲間を守るのはクルセイダーの役目だ、私はお前やめぐみんが無事ならそれで」「それじゃあダメなんだ!」
自然と、俺の目には涙が溢れていた
「誰1人欠けちゃいけないんだ!誰も守れないなら俺は……」
「レン……」
罪悪感からか表情が暗いめぐみんの顔を見て、僕は我に返る
「っ……ごめん、でも僕の本音だ…僕は人を助けるヒーローになれたんだ、なのにそんなヒーローが幹部1人とすらマトモに戦えないなんて……ハハッ…ヒーロー失格さ」
「そんなことありません!」
卑屈になる僕を、めぐみんは否定する
「相手が魔王軍幹部なのですから仕方がないです!それにレンは私のヒーローです!他の誰かが否定しても、私はレン"しか"ヒーローになれないと思います!」
「僕しか……か…」
その言葉に僕は嬉しくなる
「話は終わったか?じゃああのデュラハンをぶっ飛ばしにいこうぜ」
カズマくんがそう言ってくる
「いいのかカズマくん…これは」
「レンの問題だって言うつもりか?冗談言うなよな、元はといえば管理できなかった俺の責任でもあるんだよ、たまには俺らにも頼れよな」
「ならば私も行こう、タンクは必要だろ?」
「もちろん私も行きますよ、城の中では活躍できませんが、外の敵は私の爆裂魔法で一掃します」
みんな思い思い言葉を口にする
「みんな……わかった、じゃあみんなで」「セイクリッド・ブレイクスペル!」
僕らの思いがひとつになった次の瞬間、アクアが魔法を唱える。淡い光がダクネスさんに降り注ぎ、恐らく呪いは消え去った
「デュラハンの呪いなんて私がパパっと解呪できるわよ」
「「「「えぇ……」」」」
肩透かしをくらったような気持ちになる4人であった