「この資材、ここに置いときますね」
「おう助かるよ!ありがとな!」
魔王軍幹部の襲撃から何事もなく5日が経過した頃、僕はフォーアームズに変身し街の仕事を手伝っていた。あの時勢い余って大勢の冒険者の前で変身してしまったが、意外と皆の飲み込みが早く受け入れられた。そうして暇さえあれば街の手伝いをすることにしたのだ。
「……今にして思えばあのデュラハン、僕の攻撃が読めてるかのような動きだった……」
僕はあの時の戦いを思い返しながら分析をする。あのカラクリを解かない限りは勝ち目はないだろう、どうしようかと悩んだが答えは出ぬまま変身が解除される
「そろそろ戻るか…」
「やれやれ、ここにいたんですね」
ギルドに戻ろうとした矢先、めぐみんがやってくる。どうやら僕のことを探していたようだ
「ああめぐみん、どうしたんだい?」
「アクアが受けたいクエストがあると言っていたのでレンを探していたのですよ」
なるほど、以前一部の借金を肩代わりしたので残りの借金を払うべくクエストをやる気になったのだろう。中々に良いことだ。
「分かった、ちょうど仕事も終わったところだし向かうよ」
「……レン、大丈夫ですか?」
と、イキナリめぐみんは僕の心配をしてくる。はて、何か心配をかけさせるようなことをした覚えもなく僕は首を傾げる。
「特に体調が悪いとかはないよ?フォーアームズに変身して作業してたから体力も問題ないし…」
「そうではなく、あのデュラハンとの戦いのことです、まだ気にしているのですか?」
ああなるほど…どうやらめぐみんに隠し事は通用しない様子
「まぁ………気にしてないと言えば嘘になるかな、少なくとも僕はエイリアンヒーローの力があった、人を…仲間を守れるくらいには強いと自負していた……なのにあのデュラハンには到底及ばなかった…」
僕は己が感じていることをそのままめぐみんに吐露する
「もしも本気であのデュラハンが仕返しに来ていたら……今でも夢に見てしまう、皆が殺されていたかもしれないという光景を…」
「……レン、気にするなとはいいません、確かにレンがあのデュラハンとマトモに戦えなかったのは確かです…ですけど、こうして私たちは生きています。生きているということは成長出来るということです」
その言葉に僕はめぐみんの顔を見る、真っ直ぐと、僕を見つめていた
「私は信じています、レンなら必ずあのデュラハンにも……魔王にも勝てるヒーローになれると!」
「…ありがとうめぐみん、何だかお姉さんっぽいな」
「お姉さんっぽいというより、私には妹がいますので長女ですよ」
「え"?」
「おい今何を見て姉ではないと判断したか聞かせて貰おうじゃないですか」
いつもの調子に戻っためぐみんにポコスカ殴られながら僕とめぐみんはギルドへと向かった
-このすば-
「こうして見ると、ダシを取られてる紅茶のティーバッグみたいだね」
「言うなレン、俺もそう思ってたんだよ」
今僕たちが何をしているのかというと、アクアさんが見つけたクエストは湖の浄化クエストらしく、報酬は30万エリスととても羽振りがいいらしい。
「そういえば聞いてなかったんだけどカズマくん、この浄化はどのくらいかかるの?」
「半日らしいぜ」
「ほへぇ半日もかかるのか……アクアさんも大変だな…」
「………半日だぜ?長いと思わねぇか?」
「そうかな……こういう水質が変化してしまった湖全体を浄化するとなると、普通なら1日はかかるんじゃないかな……」
「そうよわかってるじゃないレン!私"だから"半日なのよ!カズマさんはホント何にも分かっちゃいないんだから!」
「アイツ自分は檻で守られてるからっていい気になりやがって……」
「まぁまぁカズマくん……」
そう、今アクアさんは檻の中に入り湖の真ん中で浄化魔法をかけている、なぜそんなことをしているのかと言うと…
「カ、カズマー!なんか来た!いっぱい来たー!」
汚染された湖にはブルータルアリゲーターというワニのようなモンスターが住み着いており、とても危険だからだ
「アクアー!ギブアップなら言えよー!」
「だだだだ誰が言うもんですか!せっかくの30万エリスがひぃぃぃい!?」
こりゃ見てられない……せっかくアクアさんが自主的にクエストを受けたんだ、手助けしてあげよう
「僕が行くよ」
「え?つっても相手は水の中だぞ?ヒートブラストとフォーアームズは無理なんじゃ」
「大丈夫、その2人以外にもあと8人エイリアンヒーローはいるからね」
そう言い僕はオムニトリックスを叩き、半魚人のエイリアンヒーロー_リップジョーズに変身する
「水の中ならこのリップジョーズが相手さ!」
僕は湖の中に入り魚の尾びれでブルータルアリゲーターに急接近、そのまま鋭い牙や爪でブルータルアリゲーターを攻撃する
「よよよよくやったわレン!そのままの調子でひぎぃぃい!?今メキって音がしたぁ!?今檻からなっちゃいけない音がしたぁ!レン早く何とかしてぇ!!」
「そうは言ってもちょっと数が多い…!耐えてくれアクアさん!」
できる限り檻に近いブルータルアリゲーターを優先的に撃破し、檻にこれ以上ダメージを与えないよう立ち回る
そんな攻防を数分続けた後、段々と湖の色が澄んだ青色になっていきブルータルアリゲーターも去っていく
「お仕事完了っと」
湖の中で変身解除されぬように早めに陸上へと上がる、ちょうどそのタイミングで変身が解除される
「まさかヒートブラストやフォーアームズ以外にも戦えるやつがいたなんてな」
「ふふん、私は名付け親なので10種類のエイリアンヒーロー全て知っていますよ!」
めぐみんがドヤ顔するが、実は9種類だったりする。最後の1種類は中々変身することが出来ないのだ。
「アクアさんは大丈夫かな……」
アクアさんの方を見ると、ボロボロになった檻の中にポツンと体育座りをしていた
「アクアさん……?」
「ひぐっ……ぐすっ……えぐっ……」
よく見ると、めちゃくちゃ泣いていた
「…カズマくん……」
「…ああ、流石に……」
カズマくんも流石に居た堪れなくなったのか、アクアさんの方に向き直る
「アクアー!その、お前よく頑張ったからさ!こっちで相談したんだけど、今回の報酬30万エリスはお前が全部受け取ってもいいってさ!」
ダクネスさんとめぐみんも頷く、もちろん僕も頷く、しかしアクアさんは一向に出てくる気配がない
「あの、アクアさん?」
「………って」
「え?」
か細い声でアクアさんは言った
「檻の外は怖いから……このまま連れてって……」
どうやら今回のクエストでアクアさんのメンタルはブレイクされてしまったようだ、恐らくもう二度と自主的にクエストを受けたりなんかしないのだろうかと不安になりながらも、檻を台車に乗せ街まで運ぶのだった
-このすばぁ-
「……ねぇアクアさん…もう街まで来たんだからさ…そろそろ檻から出よ?」
「嫌よレン、この檻の中こそ私の聖域なのよ…何人足りとも邪魔させないわ」
虚ろな目でアクアさんはそう答える。正直周囲の目線が痛いのでアクアさんには悪いけど出てもらわなきゃ困るのが本音だ(どの道檻も返却?しなきゃいけない)どうしたものかと考えていると、前方から男性が近づいてくる
「め、女神様!?女神様じゃないですか!どうしてこんな所に!?」
剣を携えた金髪の男性がアクアさんにそう言いながら檻を力でねじ曲げ中に座り込んでいるアクアさんに手を伸ばす。ブルータルアリゲーターでも壊せなかった檻を軽々ねじ曲げるなんて、フォーアームズ並の怪力の持ち主なのかもしれない。そんなことを考えているとダクネスさんが男の手を掴む
「おい、私の仲間に馴れ馴れしく触れるな。貴様何者だ?知り合いにしては、アクアはお前に反応すらしていないが?」
確かにダクネスさんの言ってることは正しい、一方的な知り合いの可能性も否定はできない。しかし男はそんなダクネスさんを一瞥すると心底呆れた様子で首を横に振る。その様子に明らかにダクネスさんは苛立ちを隠せない様子だった。
「あのアクアさん?知り合いなんですか?」
僕は堪らずアクアさんに聞く、こういうのは本人に聞いた方が早い。
「……?誰?」
しかし当の本人であるアクアさんは覚えていない様子で、男は驚愕していた
「何言っているんですか女神様!僕です、御剣響夜ですよ!貴女様にこの魔剣グラムを授けて頂いた!」
「……?」
アクアさんは尚も首を傾げている。もしかしてアクアさんは自分が送り出した転生者を覚えていないのではなかろうか、確かに女神は多忙なのかもしれないし数多の転生者を送り出したのかもしれないが、あまりにも可哀想だ。
「おい、こいつ多分日本人だろ?特典らしいものも持ってるし…転生者じゃねぇのか?」
そうカズマくんがアクアさんに耳打ちする。するとアクアさんはミツルギくんの魔剣を見る
「………………あぁ!確かにいたわね!」
どうやら本当に忘れていただけのようだ、若干戸惑いながらもミツルギくんはアクアさんに笑いかけた
「お久しぶりですアクア様、貴女に選ばれた勇者として、魔王を倒しこの世界に平和をもたらすため日々精進しています。職業はソードマスター、レベルは貴女様から授かった魔剣のおかげで37まで上がりました。」
なるほど、少なからずアクアさんの言葉を天命とし頑張っていたのは素直に凄いことだ
「所で……アクア様はなぜ地上に?そもそもなぜこんな檻に閉じ込められていたのですか?」
イキナリ確信をつく疑問をこちらに投げかけてくる。まさか自分から檻に入りましたと言っても信じないだろうし、アクアさんを信仰…いや、あの態度は盲信と言っても差し支えないだろう。あのような態度である限りこちらの言い分をまともに聞くことは出来ないだろう。
だがしかし、ここではぐらかすのもややこしくなる、僕はカズマくんに説明を任せることにした
「バカな!?君は何を考えているんだ!女神様を特典としてこの世界に引き込んだだけでも失礼に値するというのに、あろうことか今回のクエストで檻に閉じ込めモンスターが襲いかかってくる湖に浸けただと!?」
ミツルギくんはカズマくんの胸ぐらを掴み言葉を吐く、僕はその仲裁にはいる
「ミツルギくん落ち着いて!カズマくんも悪気があったわけじゃなくて、安全に作業するために取った作戦なんだよ!それになんだかんだアクアさんも楽しくやってるから!」
「そ、そうよ!それに今回のクエスト報酬金額全額くれるっていうのよ!30万よ30万!」
流石のアクアさんもマズさを悟ったのか、カズマくんの肩を持つ。しかしそんな僕ら2人の意見もお構いなしにミツルギくんは話を続ける
「アクア様、こんな男にどう騙されたのか知りませんが、今の貴女様の扱いは不当な扱いです。貴女様自身の価値とまるで釣り合ってなどいない!それにそんな目にあって、たった30万…?貴女様は女神様なのですよ?それがこんな………ちなみに、今はどこで寝泊まりを?」
ミツルギくんの言葉にアクアさんが若干引き攣りながら答える
「う、馬小屋……だけど」「はぁ!?」
ミツルギくんのカズマくんを掴む手が明らかに強くなる、これ以上はダメだと思った僕は無理にでも引き剥がそうとする、その時それよりも早くダクネスさんがミツルギくんの腕を掴む
「おいいい加減その手を離せ、お前はさっきから何だ。カズマとは初対面の様だが、礼儀を知らないにも程があるだろ」
普段攻撃を受けるだけで楽しそうなダクネスさんが、静かに怒っていた
ミツルギくんはカズマくんの胸ぐらを掴んでいた手を離すと、興味深そうに僕たちを一瞥する
「クルセイダーにアークウィザード、それに今話題のエイリアンヒーロー……君はパーティメンバーには恵まれているんだな。それなら尚更だよ、君はアクア様やこんな人達を馬小屋なんかに寝泊まりさせて、恥ずかしいとは思わないのか?さっきの話じゃ就いてる職業も最弱職の冒険者らしいじゃないか、彼女達に無理ばかりさせて自分は楽ができるなんて、君の運の良さは相当凄いんだろうね」
僕とめぐみんは別の宿なんだけどね、それを訂正する空気じゃないので心の中で思うだけなのだが……それにしても後ろのダクネスさんとめぐみんの視線が怖い。振り向きたくない……と、ここでふと気になったことをアクアさんに耳打ちで聞く
「アクアさん、この世界の冒険者って馬小屋で寝泊まりが基本なんでしょ?僕とめぐみんは1部屋の相部屋だし…」
「ああそれね、多分魔剣で無双したからお金に困ったことないのよ、あーヤダヤダ」
な、なるほど……つまるところミツルギくんは自分の物差しでおかしいと判断しているのか…流石にカズマくんが可哀想だ。
「君たち、今までこの男のせいで苦労してきたみたいだね。これからは僕のパーティに来るといい、勿論馬小屋なんかで寝かせないし、高級な備品も買い揃えてあげよう。というか、パーティ編成的にも良い感じじゃないか、僕の仲間の戦士とクルセイダー、そして盗賊とアークウィザードにアクア様、そしてどの場面にも対応できるエイリアンヒーロー。前衛も後衛も揃っているし、まるであつらえたみたいにピッタリなパーティ編成じゃないか!」
どうして自分も入っているのだろうか…それに僕も冒険者なのにカズマくんだけ悪く言われるのもおかしな話だ。
多分ミツルギくんの中では『悪人に騙されて嫌々パーティを組まされている人達四人を助け出し自分の仲間に加える、仲間加入イベント』と見えているのだろう。
無論僕らの出す結論はNOである。そうしてその場を離れようとしたのだが、
「悪いが、アクア様をこんな環境の中に放っておくわけにはいかない」
そう言いながら魔剣グラムを引き抜く
「悪いことは言わないよミツルギくん、今すぐ回れ右して帰ろ?」
僕はなんとか穏便に済ませようとミツルギくんに話しかける、だけどミツルギくんはそんなのお構いなしに剣をこちらに向ける
「アクア様を放っておけないと言っただろう!それに…何故そんなにあの男の肩を持つ?貴方ほどの力を持つ人ならあんな男のところにいない方がいい。あんな男_」
「守る価値もない悪人じゃないか」
「あ"?」
なんで自分の物差しでした物事を測れないようなやつに、ここまで仲間を侮辱されねばならないのか、心の中にどす黒い物が渦巻き、何かがキレた
俺はオムニトリックスを叩き、唯一変身出来なかった最後のエイリアン_ゴーストフリークに変身する
「な、なんだそのヒーロー」
「フハハハハハ!ヒーロー?笑わせるなよ3流剣士!お前の前にいるのはヒーローなんかじゃない、ゴーストフリーク様ダ!」
俺は霊体化しミツルギの腕の中に入る
「なっ!?」
そのまま魔剣グラムを、ミツルギの喉元に持っていく
「うっ…!?腕が…!?」
「ドウダ?怖いか?今まで積み上げてきたものが壊れるッテノハどういう感覚ナンダ?なぁ俺に教えてくれよ、それとも目の前にいる悪人に助けをモトメルカ?」
霊体化しているのでカズマたちが何をしているのかは分からないが、こいつを助ける通りなんてないだろう、俺はそのまま魔剣グラムをミツルギの喉元に
「スティール!」
突き立てようとしたその瞬間、魔剣グラムはミツルギの手から消えていた
「あっ…ぐっ……」
「チッ」
俺はミツルギの体から出て状況を確かめる、ミツルギの取り巻きはミツルギを介抱し、カズマは魔剣グラムを手に持っている。
「アア……セッカクノイケニエガ…」
その時だった、終わりのアラームが鳴り響く
「グ……ア…!セッカクノチャンスガ……!モドリタクネェ…!」
オレハサイゴマデテイコウスルガ、テイコウモムナシクモトニモドル
「うわ!?」
空中で変身が解けた僕は地面に叩きつけられかける、それを間一髪でダクネスさんが受け止めてくれる
「大丈夫かレン!」
「い、痛い……鎧が…」
「が、我慢しろそのくらい!」
僕は目の前の光景が理解出来ず、口にする
「えっと……何があったの?」
「アアクソ……ダガマァイイ……ツギコソハカナラズ……」
揺らめく影のように…幻は霧のように消えた