あの後ミツルギくんはカズマくんに謝罪をし帰っていった。魔剣グラムも返したそうだ。
「そんなことがあったんだ…」
「お前本当に覚えてないのか?」
「うん全く」
僕はカズマくんにあの時何があったのかを全て聞いた。僕が変身出来なかったはずのゴーストフリークに変身し、ミツルギくんを殺そうとしたこと、そして戻りたくないと呟いたこと。正直にわかには信じ難い事だった。
「レン……」
「めぐみん?」
「本当に…大丈夫、なんですよね?」
「ああうん…今は大丈夫だよ」
「……」
あの日からめぐみんの僕に対する態度も変わってしまった。相当怖い思いをさせてしまったのだろう。
「大丈夫よ!所詮はゴーストなんでしょ?私の神聖魔法でサクッと成仏させてあげるわ!」
「ああ、その時はお願いしようかな」
アクアさんの軽口が良い緩衝材になるとは思いもよらなかった。
「しかし……あれは本当にレンだったのか、今でも疑問に思う」
「おいおいダクネス、まさかエイリアンヒーローがレンの人格を乗っ取ったって言うのかよ」
「有り得ん話ではないだろう?そのえいりあんひーろーというのはよく分からんが…降霊術でも、魂に肉体が負け人格が変わるのはよく聞く話だ」
なるほど確かにダクネスの言うことは正しいのかもしれない、オムニトリックスでの変身は正直なところ謎が多い。僕の認識はただそのヒーローに変身していると思っていたのだが、もしかしたら違うのかもしれない。
「ともかく…当分変身は禁止かもしれん」
「え"?」
「当たり前だろう?ゴーストフリークだけが危険だと分からないじゃないか」
「でも今までフォーアームズもヒートブラストも乗っ取ることは無かっただろ?」
「その甘さが危険なんだ、分かってくれレン」
ダクネスさんが真剣な目で僕に言う
「……正直なところ、あの時のレンは……とても恐ろしい怪物に見えた。クルセイダーなのにも関わらず足がすくんで動けなかった」
「ダクネスさん…」
「もしまた同じことがあれば………」
「俺も正直そう思う」
「カ、カズマくんまで…」
でもそれほど、皆僕のことを心配してくれているのか……そう考えると嬉しいのだが、余計な心配をかけさせてしまっているなと自己嫌悪に陥る、そんな中だった
《緊急!緊急!冒険者の皆様は直ちに武装し街の正門前に集まってください!》
僕らがここに来てから3度目の緊急連絡。一体何があったのかと疑問に思っていると
《特に、冒険者サトウカズマさん、シロサキレンさん一行は大至急でお願いします!》
なるほど、どうやらまた僕たちは何かをやらかしたみたいだ。顔を見合せ急いで正門前まで駆けるのであった
-このすばぁ!-
「おいあいつ、この前のデュラハンじゃねぇか?」
既に集まっていた冒険者たちの視線の先には先週現れたデュラハンがいた。しかも今回は以前のように1人ではなく、朽ちた鎧を身にまとったアンデッドの軍団を連れていた。そしてやはりと言うべきかデュラハンは僕たちを探していたらしく、僕たちを見た途端叫びをあげた
「なぜ誰も城に来んのだこの人でなしどもがぁぁあ!!」
何やらデュラハンの怒りを買っていたらしく、デュラハンはとてもきれていた。
「あのデュラハンさん?何故そんなお怒りに……あの後爆裂魔法も放っていませんよね?なので城に行く理由が無いと言いますか…」
僕が1歩前に出てそうデュラハンさんに言うと、デュラハンはわなわなと震えながら声を荒らげる
「もう爆裂魔法は放っていないだと!?何を白々しい!そこの頭のおかしい紅魔族の娘はあれからも毎日欠かさず打ち込みに来ておるわ!貴様保護者なら把握しておけ馬鹿者!」
「え?ん?え?」
頭が真っ白になる、まさかそんなわけがないと思いめぐみんの方に目を向けると、めぐみんは目を逸らす
「め、めぐみん……?嘘だよね?」
「ち、違うのですレン!別にレンと行きたくなくなったわけではなくてですね!レンは絶対行かせて貰えないと思い……その……」
「爆裂魔法を打つだけなら荒野でもいいでしょ!?」
「ダメなのです!1度知ってしまったら……忘れられないんです!あの城へと打ち込んだ爆裂魔法の威力は!」
出来れば早急に忘れてもらいたいことだ、しかしそうなると帰りは誰かにおぶってもらう必要があるわけで…
「この中に1人、共犯がいます」
僕がそう言うとアクアさんが目を逸らす
「お前かぁぁあああ!!」
アクアさんの横にいたカズマくんがキレる
「だってだってぇ!!アイツのせいでろくなクエスト受けれないんだもん!腹いせがしたかっただけだもぉん!」
「ちったぁ反省しろやこの駄女神がぁあ!!」
「ま、まぁ……爆裂魔法の件はこの際置いておこう…何より俺が頭に来てるのはなぁ!貴様らが自分の仲間を平然と見捨てたことだ!こうしてデュラハンになる前はこれでも真っ当な騎士であったつもりだ、その俺から言わせれば仲間を庇って受けたあの女は、素晴らしい騎士の器だったというのに_」
「い、いやぁそこまで言われると……照れるな」
敵のデュラハンさんに褒められ照れるダクネスさん、それを見てデュラハンさんは
「あ、あれぇぇええーー!?」
素っ頓狂な声を上げた。
「な、なぜ貴様生きている…!?」
兜に隠れて顔は分からないが、声色から非常に驚いていることが分かる。
「何何?私がダクネスの呪いを解いたと知らずに1週間ずーっと待ってたの?プークスクスw超受けるんですけどー!ww」
流石の魔王軍幹部もまさか女神がいるなんて思いもしなかっただろう。
「………おい、その気になればこの街にいる全員を呪い殺すことだってできるんだぞ?いつまでも見逃すと思うなよ?」
アクアさんの煽りにキレたデュラハンさんは不穏な空気を醸し出す。だがしかしアクアさんはそんなことは露知らず、
「見逃す気がないのはこっちの方よ!光になりなさい!ターンアンデッド!」
神聖魔法をデュラハンさんに向け放つアクアさん、そんなもの意に介さないかのような態度でその場にただづむデュラハンさん
「魔王の幹部がプリーストの対策もしないで戦場にたつとでも思っていたのか?俺含めここにいるアンデッドナイトは全員魔王様のご加護による神聖魔法に対して強い抵抗をmギャアアアァァァァーーー!!」
しかしそんな態度はなかったかの如く黒い煙を上げながらデュラハンはのたうち回る
「ね、ねぇカズマ!レン!変よ!効いてないわよ!」
「いや効いてるだろ、ギャーって叫んでたし」
「僕も効いてると思う…」
よろめきながら立ち上がるデュラハン
「は、話は最後まで聞け……この魔王軍幹部のベルディア、魔王様のご加護と俺自身の力が合わさればそこいらのプリーストの神聖魔法なぞ恐るるにに足らん!……のだが、お前本当に駆け出しか?」
抱えていた首を傾けるベルディアさん
「占い師がこの街に光が落ちてきたと騒ぐから調べに来たのだが…いっそのことこの街ごと消すか……?…………いや!わざわざこの俺が手を出すまでもない!お前ら!この街の奴らに地獄を見せてやれ!」
そう言ってアンデッド軍団を前進させる
「おいアイツアクアの魔法にビビりやがったな!自分だけ安全なとこにいて部下使って襲わせるつもりだ!なんて汚ぇ野郎だ!」
「フザケンナー!」「ナニガキシダー!」「タタカウッテレベルジャネェゾ!」
「ええいやかましい!!最初から我1人だけで戦うつもりだったわ!こういうのは雑魚を蹴散らしてから大物に挑むのがじょうせ」
「ターンアンデッド!!」
「ぎぃやぁあああああああ!?!」
ベルディアの言葉を遮りアクアさんが神聖魔法を放つ、先程と同様に黒い煙を上げながら転げ回る
「くっ!話は最後まで聞けと言っただろう!お前ら!この街の連中を皆殺しにしろ!」
「っ!」
僕は変身をしようとオムニトリックスに手をかける、だがそれをダクネスさんが遮る
「レン、お前は街の戦えない人たちを安全な場所に誘導するんだ」
「なっ!?僕は戦える!」
「レン!」
僕の腕を掴むダクネスさんの腕が、震えていた
「……………頼むよ」
弱々しく、そう呟くダクネスさんの言葉を…否定出来なかった
「……分かった…」
僕は戦線を離脱し、街の方へと駆け出した
-このすば-
「皆さん早く!教会に行けば安全ですので!押さないで!」
僕は街中で冒険者ではない人たちを避難誘導していた。なので今外の状態はよく分からない
「………」
正直気が気ではなかった。力があるのに、変身できるのに、見てることしか出来ない
「……」
いや、もしかしたらこれでいいのかもしれない。僕が居なくともカズマくんたちならなんとかするだろう、そう自分の心に蓋をしようとした時だった
「諦めんのか?」
後ろから、僕に言葉が投げかけられる
「貴方は…?」
「俺の事なんかどうだっていい、お前は諦めんのか?って聞いてんだ」
俺よりも遥かに大きい巨体のその人物は、俺の心を見透かしているかのような言動をする
「…仕方ないですよ、皆からあんなに心配されて、これ以上迷惑かけれないです」
「迷惑、ねぇ……んじゃお前はもうヒーローを辞めんのか、たかだか1回の挫折で」
「っ……貴方に何が!………いや、その通りですよ、僕はもう嫌なんです…またあの力が来たらと思ったら…」
「だったら強くなるしかねぇだろ」
単純明快な答え、それを言った男は言葉を続ける
「勿論強くなるってのは単純な力もそうだが、一番は心だ、心を強くすりゃいいんだよ」
「心を……」
「ああ、まずはお前がどうしたいかだ」
自分がどうしたいか……そんなのずっと決まっている
「僕は……みんなを守りたい、このエイリアンヒーローの力で…守りたい」
「……言えたじゃねぇか、じゃあこんなとこでしょげてんじゃねぇよ」
男は僕の背中を叩く
「行けよヒーロー、仲間を守んだろ?」
「っ、はい」
僕はカズマくんたちのところに駆け出していく
「ったく、折角力を貸してんだからよ、頼むぜヒーロー」
これから成長する1人の男を、赤い人型のエイリアン_テトラマッド(フォーアームズ)は満足そうに見送った