平穏を求めてる者が行く教室へ   作:阿院修太郎

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こんにちは♪初めまして。


1話

 

4月。

 

俺こと、神谷迅(かみやじん)は『東京都高度育成高等学校』に入学する日である。

 

 

東京都高度育成高等学校─────ここは、

東京の埋立地に日本政府が作り上げた、未来を担う人材を育成する名門校である。希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校。

3年間外部との連絡を断たれ、学外に出るのを禁止された、全寮制の学校であるが、敷地内は60万平米を超えるようなひとつの小さな町になっており、そこでは何一つ不自由なく暮らすことが出来る。

 

ここに通う理由は、平穏で普通の学生生活を送りたいと思ったから。

 

ここなら、いくらあいつらでも迂闊に手は出せないだろう。

 

クラス表を確認しに掲示板の方に目を向けると

 

「…Bクラスか」

 

自分のクラスを確認もしたし、人混みを避けて教室へ向かう。

 

教室へ入ると、7割近くの生徒がおり、中には既にグループのようなものが形成されているところもあった。

 

自分の座席だけを確認して席に移動して腰を下ろす。窓際の一番後ろとは一般的に当たりの席だよな。

 

などこの時間をどう使うかと考えていると、チャイムが鳴るギリギリに誰かが俺の隣の席に着席した。

 

隣人はさてどんな人だろうか…… ツインテールに水色のインナーカラーの髪、そして目つきが鋭い女子生徒であった。

 

「俺は神谷迅だ。よろしく」

 

とりあえず隣人に声をかけてみることに

 

「っぜ……」

 

「はい?もう一度言ってくれないか?」

 

「うっぜえって言ってんのよ。あんたと仲良くする気ないから話かけてくんな」

 

俺は早速友人作りに失敗したみたいだな。なぜかわからないがな。だが、名前だけでも教えてもらいたい。切実に。

 

「……そうは言ってもこれから少なくとも1年間、名前すら知らずに隣の席で過ごすのは居心地は悪くないか?」

 

「っち、……姫野ユキ」

 

ナチュラルに舌打ちをされたが教えてくれたのだからよしとしよう。

 

何も焦る必要はないのかもしれない。最低限、隣人との関係構築はできた……はずだ。

 

そうこうしていると、1人の大人の女性が教室に入ってきた。

 

緩くウェーブがかかったロングの茶髪にラフな服装。何がとは言わないが大きいな。

 

「このクラスの担任になった星之宮知恵でーす!普段は保健室で保健医やってるから気軽に来てね♪さっそくだけど学校のルールが書かれた資料渡すから後ろに配っていってね〜」

 

前から資料が配られる。それからこの学校のシステムについて色々と説明があった。

 

要点をまとめると。

 

・3年間クラス替えはなく、担任も変わらないこと。

 

・生徒全員が寮生活を義務付けられ、在学中例外を除き外部との連絡を禁じること。それは肉親であっても例外ではない。

 

・また許可なく敷地外に出ることも禁じられている。一方で数多くの施設があるので生活するにも娯楽にも困らない。

 

・そしてSシステムの導入。

 

生徒全員に学生証と一体化している端末が配布される。

 

「全員に10万ポイントが支給されてあると思うから確認してね~!1ポイント1円の価値だよ〜。この端末に学校から毎月1日にポイントが支給されるからね~。ちなみに学校内で買えないものはないから使い道はちゃんと考えてね~」

 

その一言に、教室中がざわついた。俺もその1人なわけだが。

 

「ポイントの支給額に驚いた?この学校は実力で生徒を測るの〜。入学を果たした君たちに対する評価みたいなものだよ〜」

 

気になる点がないと言われると嘘になる。

 

世間に疎い俺でも、無償で生徒に毎月10万もばら撒きする学校はこの学校以外にないだろう。

 

そして実力で生徒を測るという言葉。ならこの監視カメラもその実力を測る指標の一つなのかもな。

 

「……質問はないみたいだね〜」

 

言い終えると、星乃宮は教室の外へ出ていった。

 

「みんな〜、ちょっといいかな?」

 

各々放課後の計画について語りあってる中、薄いピンク色のロングヘアーをした女の子が教壇に立った。

 

「私はみんなと仲良くなりたいし、みんなにも仲良くなってほしい。だから、自己紹介をして友達になれたらって思うんだけど、どうかな?」

 

「「賛成!!」」

 

ほとんどの生徒が賛成をして、自己紹介をする流れになった。これに関しては俺も願ったり叶ったりだったりする。

 

「……はあ。……だる」

 

隣人である姫野はそう不満を漏らす。

 

「まず私からやるね、私は一之瀬帆波って言います、目標はクラスメイト全員と仲良くなる事で、その後は他のクラスの人とも仲良くなりないな。これから3年間よろしくお願いします」

 

こう言う奴がクラスの中心人物になるのだろう。

 

「私は網倉 麻子~!よろしくね!」

 

「し、白波 千尋です……。よ、よろしくお願いします!」

 

そこから、流れるように行われた。どうやら全員が参加するようで異常なほどの協調性の高さだな。

 

俺の番はまだのようだし、周りの自己紹介を聞いて少しでもサンプルを集めていた。

 

「俺は柴田颯だ。高校ではサッカー部に入りたいと思ってる。よろしくな!」

 

「神崎隆二だ。よろしく頼む」

 

様々な自己紹介を聞いてわかったこと、ほとんどの生徒が名前だけではなく、趣味や目標などを語っていた。

 

だが、俺には趣味もなければ、特技もない、目標すらないのだ。話すことがないのである。

 

「じゃあ、次はそこの君、お願いできるかな?」

 

おっと!もう俺の番か。

 

「えっと、神谷迅です。まあ、その、仲良くなれるよう頑張るので、よろしくお願いします」

 

疎に拍手が飛び交う。

 

どうやら俺は失敗したようだ。

 

姫野は笑いを堪えるのに必死であった。お前の笑顔が見れたと思えば自己紹介にも価値があったというものだ。いや、全然良くはないが……。

 

「うん!よろしくね!神谷君」

 

さらに数人後、姫野の番が回ってきた。

 

「姫野ユキ。3年間よろしく」

 

「うん、よろしくねユキちゃん!」

 

「俺と変わらないじゃないか」

 

俺は小声で姫野に語る。

 

「っぜ……。話かけんな」

 

どうやら俺が考えている以上に人間関係は難しいようだ。

 

その後入学式が行われた後、その日は解散となった。

 

各々が寮へ戻る者、施設を見て回る者と、思い思いに動き出す。

 

俺は部屋に戻る前に、日用品を揃えるため、興味もあった敷地内のコンビニへ寄ろうと思っていた。誰かと一緒にか?生憎友達作りに失敗した俺にそんな人はいない。自分で言ってて悲しくなってきたな。

 

「……最悪。運悪すぎ」

 

コンビニの中に入ると、姫野と鉢合わせする。

 

「そんなに警戒するな。さすがの俺でも傷つくぞ」

 

「うっぜえ」

 

姫野は商品を確認しながら、俺に言った。

 

手に取ったシャンプーなどの日用品を、次々と籠の中に入れていく姫野。何も考えずに選んでいるのかと思いきや、そのどれもが安価なものばかりを選定していた。

 

「ポイントはあるんだ。もう少し品質にこだわってもいいんじゃないか?」

 

例えばと俺は高価そうな商品を手に取って見せる。

 

「……余計なお世話」

 

そう吐き捨てるように言う。

 

「それにお金はいつ必要になるか分からないでしょう」

 

いつまでも突っ立てんじゃねえよと言いた気な冷ややかな視線を向けてくる。

 

「そうだな」

 

俺はそう言って店内を見渡す。

 

「これ、どういうことだと思う?」

 

「……無料!?」

 

コンビニの隅に置かれた一部の食料品や日用品が無料と書かれたワゴンの中に詰められていた。『1ヶ月3点まで』添え書きまであった。

 

「無料コーナーって敷地外のコンビニにもあるのか?」

 

「あるわけないでしょう!」

 

まるで信じられないものを見るような目で睨まれる。

 

「だよな」

 

俺は即座に肯定する。

 

「どうせポイントを使いすぎた人への救済措置でしょう」

 

姫野の言葉は、妙に現実的だった。

 

「……かもな」

 

俺はワゴンの中身を見つめながら、小さく呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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