目次の前にも書きましたが、作者のイナイレやブルロの知識はにわかとなっています。調べながら書いていますが、設定などで変に思うところがあるかもしれません……それでも大丈夫な方は、どうぞご覧ください。
第1話 孤独の天才
「いよいよだな……」
「うん……」
とあるスタジアムのロッカールームで、2人の少年が話をしていた。1人は銀色の髪に灰色の瞳をした少年で、もう1人は水色の背中まで伸びた髪を後ろの低い位置でまとめ、澄んだ青い瞳をした中性的な少年だった。
少年たちは立ち上がると、ロッカールームを出ていく。そうして、2人でフィールドへ向けて歩いていていると……
「……ありがとう」
「ん?」
「僕をこのチームに入れてくれて」
水色の髪の少年が銀色の髪の少年に向け、そう言ったのだ。
「いや、それはこっちのセリフだ。おかげで俺たちはここまで来られた……それに俺もみんなも、サッカーをもっと楽しめるようになった」
「!……なら、入った甲斐があるかな」
そんなやりとりをしていると、フィールドへの入口へと到着した。2人はその前で一度立ち止まると……
「さて……今日も頼んだよ、天才!」
「そっちもね、ストライカー!」
互いにそう言ってから、フィールドへと歩き出して行った……。
◇
北海道にある白恋中学校……この学校はフットボールフロンティアという全国大会に毎年出場しているサッカーの強豪校として知られており、白銀の騎士の異名を持っていた。この中学に僕こと氷月零は通っており、充実した学校生活を送れている……と、思う……。
そんな僕は今日も学校へと行き、いつものようにホームルームまで自分の席で時間を潰していた。すると……
「ねぇねぇ聞いた?」
「それってサッカー部のことでしょ!フットボールフロンティア、勝ち進んでるんだよね?」
クラスメートがそんな話をしているのが聞こえた。2人の女子が話していたのは、今年も開催されているフットボールフロンティアのことで……
「それにしても凄いよね吹雪君」
「うん!さすが白恋の韋駄天だよね……それにカッコイイし!」
中でも話題になっていたのは、この白恋中のサッカー部でFWをしている吹雪冬真という選手だ。吹雪君はその瞬足を武器に、1年の頃からレギュラーとして出場し、白恋の勝利に貢献し続けている。去年は王者雷門中に惜しくも敗北し準優勝だったが、今年は全体的にレベルも上がっているようで、優勝する気満々でいるようだ。でも……
「サッカー、か……」
どうせ僕にはもう、関係ないか………。
『零とはサッカーやりたくないんだけど?』
『え……?』
そう言われたのは確か………まだ僕がジュニアのチームにいた時のことだった。そこに僕はMFとして所属していて、試合には毎回出場していた。勝利に貢献できるように、最高なパスをできるように努力してきた………でも―――
『な、何で―――』
『みんなお前のプレーについていけないんだよ』
チームメイトたちには、不満があった……。
『この間の試合だって、もう少し取りやすいパスしろよ!』
『分かる!あのボール凄く取りずらいんだけど?』
『後半の得点の時のパスだってギリギリで取れたから良かったけど、あんなボールを毎回やられるこっちの身にもなってよ』
僕に対してのチームメイトからの不満の言葉が、次々と投げかけられていく…………何で……?僕はただ、勝ちたい一心でプレーを……。
『ていうか零の言う事って、意味が分からないんだよね』
『そうそう!ちょっと上手いからって、偉そうに教えてきてさ』
『それに誰かがフリーの時でも、勝手にシュート撃つし』
『とにかくさ………
お前は俺たちにとって邪魔なんだよ、零』
『あ……』
そう言われた瞬間、僕の頭は真っ白になってしまった…………さらにその翌日、
『零、ちょっといいか?』
『はい、何ですか……?』
僕は監督に呼び出されていた。そこで……
『零……もう少し、周りに合わせたらどうだ?』
『え……?』
『この前の試合を見ていて思ったんだが、誰も零のプレーについていけてない……もう少し、チームワークを大事にしてくれ』
そんなことを言われた……何で……僕はそれも大事にしてプレーを……。
『な、何でそんなことを……?僕は、チームで勝つために―――』
『確かに零は強い………だが、サッカーはチームでやるスポーツだ。チームを壊すようなプレーはやめてくれ』
『っ……はい……』
それから僕は、監督の言われた通りにやろうとしたものの、上手くいかず逆にミスする回数が増えていった………そして程なくして、僕はチームを辞めることになった……。
「みんな、席について!」
「!」
昔のことを思い出していると、僕のクラスの担任が入ってくる。先程まで喋っていたクラスメートたちも、それを合図に自身の席に戻っていった……。
◇
「今日の授業はここまで」
そんなこんなで今日の授業が終わり、周りのクラスメートたちはそのまま帰ったり、部活に行ったりしている。僕も例に漏れず、自身の席から立ち上がり……
「早く行こう」
他のクラスメートと同じように、少し早足で教室をあとにした。そうして、僕が向かったのは……
「こんにちは、シロウさん」
「!来たね、零君」
「今日もお願いします」
家の近所にあるサッカーコートだった。ここは普段、ジュニアチームの練習や試合などで使われている場所で、管理している人―――シロウさんの善意で、こうして放課後にサッカーをさせてもらっているというわけだ。因みにシロウさんの話では、僕だけではなく別の日にも使っている人がいるという。
僕はチームを辞めた後、eスポーツを始めていた。特にFPSなどの広いフィールドでの対戦ゲームやシミュレーションゲームが得意だったようで、大会でも優勝した経験もあった。だが、eスポーツをやっているからといって、好きなサッカー自体を辞めたわけではない………かと言って、またチームに入ったとしても、同じ事になってしまうことは明白だったので、こうして1人でサッカーを続けている。
ここを管理しているというシロウさんは、僕がチームを辞めた少し後に出会った人だ。本当はこちらの事情を話すのが当たり前なのだが、シロウさんはそれを聞かずにここでサッカーすることを許してくれている………もしかしたら、最初から僕の事情に気付いているのかもしれないけど……。
「よし……」
それから学校のジャージに着替えた僕は、準備運動をしてからボールを蹴り始める。いつものようにドリブルやキック精度の確認……そして、あらゆる状況に合わせたシュート練習……これを繰り返していく。すると……
「……零君は、本当にサッカー部には入らないのかい?」
「っ……」
シロウさんがふと、そう訊いてきた……。
「零君なら、フットボールフロンティアでも活躍でき―――」
「そういう問題じゃないんです……もう、どこかのチームでサッカーをすることはありませんよ。それにこっちの方が自由にサッカーできるから……これでいいんです、よっ!」
僕はそう言いながらシュートを放ち、コーナーから直接ボールをゴールに入れた。
「ふぅ……!」
「まぁ、これは零君が決めることだから、僕がとやかく言うことはできないな……」
そう言ったシロウさんだったが……
「今から言うことはほとんど勘だけど………零君はまだ、出会えていないだけかもしれないよ」
「え……?」
出会えていない……?一体、何と―――
「す、凄ぇ……!!」
「えっ?」
突然、コートの外から誰かの声が聞こえてきたのだ。声の聞こえてきた方を見ると、そこには白恋中の制服を着た人がいて―――ってあれ?この人って確か………
「来たね、冬真」
「父さん!」
やっぱり……白恋中のエースストライカー、吹雪冬真―――
「なぁ!さっきのシュートどうやったんだよ!あんなの見たことないぞ!」
「え、どうって―――というか、何で吹雪君がここに?それに『父さん』って……?」
僕が突然のことに困惑していると……
「冬真、零君が困ってるよ」
「!ご、ごめん……でも、零のシュート凄かったから」
「まぁ、気持ちは分かるけど………実は冬真もここを使っていてね、その時に零君のことを話したんだ。そしたら案の定、興味を持って……」
なるほど……それで今日、ここに来てたってわけか……。
「あと、僕と冬真のことだけど………冬真は僕の息子なんだ」
「!?てことは、まさかシロウさんって……吹雪士郎さん……!?」
吹雪士郎……氷のエースストライカーと呼ばれるサッカープレイヤー。元々、日本のリーグでプレーしており、もちろん日本代表として世界大会への出場―――というか優勝経験もある。今はコーチ業に力を入れているとの情報らしい………どこかで見たことがあると思ってたけど、まさかこんな身近に……。
「それで冬真……零君はどうだった?」
内心、驚きが隠せない僕を余所に、士郎さんは吹雪君にそんなことを訊いていた。
「想像以上だよ……!これなら………零、君に頼みがあるんだ」
「頼み……?」
僕が首を傾げていると、吹雪君はあることを頼んできた……。
「零……
頼む!サッカー部に入ってく―――」
「ごめん断る」
「まだ最後まで言ってないんだけど!?」
今回はここまでとなります。主人公こと零の試合での活躍が見られるのは、もう少し先になると思います。
そして、この小説のオリジナルキャラである吹雪冬真………彼が零に会いに来た目的とは……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。