果たして零はどのようなことを語るのか……。
それでは、どうぞご覧ください。
試合終了後、僕たちはコテージに戻って身体を休めたりしていたが……
「みんなー!零君にお客さん!」
「おっ?」
「僕に……?」
何故か僕にお客さんが来たと知らされたのだ。そのお客さんというのが……
「初めまして、氷月零君……俺は枝元輝幸。サッカー雑誌『イレブン』の記者をしている」
「同じく記者をしています、伊村梨乃です。今日はよろしくお願いしますね、氷月君」
サッカー雑誌『イレブン』の記者の人たちで、今日の試合に出場した僕のことを取材しにきたという………何かSNSの記事で『白恋のサッカーモンスター』とか『戦術の氷帝』とか言われてたから、そのせいかな………。
「……氷月零です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします……では早速質問なのですが、今日の試合で見事な大活躍でしたが、それについてはどう思いますか?」
伊村さんにそう訊かれた僕は……
「……僕もSNSの反響なども見ましたが、少し戸惑っています」
「戸惑っている……というと?」
「僕はただ、やりたいサッカーをやっただけなので、そこまで反応されるようなことはないと思っているので……まぁ、公式戦に出るのが久し振りなので、勝利できたこと自体はもちろん嬉しいですけど」
「久し振り……それであの活躍とはね……」
「つい1、2ヶ月前までは1人でサッカーをしていましたから」
僕がそう言ったのを聞いた伊村さんと枝元さんは、少し驚いたような表情をしていた。
「そ、それってどういう……?」
「……小学生の時に入っていたチームで色々ありまして……」
これはここで詳細を話すべきではない―――というよりも話したくなかった僕は、そう言って誤魔化すことにした……。
「!そうか……なら、何で白恋中のサッカー部に?」
「それは……冬真のおかげです」
「吹雪君のかい?」
「はい……初めてなんです。僕のサッカーを理解してくれたのが」
そう、あの時冬真が僕のサッカーを理解してくれたからこそ、僕はやっと世界一のMFへのスタートラインに立つことができた。
「つまりは……吹雪君が君と会ってなかったら―――」
「……僕はここにはいなかったでしょうね」
「「……!」」
その言葉に驚いた表情をした伊村さんと枝元さんだったが……
「!じゃあ、次の質問を―――試合で見せた数々の戦術ですが、あれらはどうやって考えついたんですか?」
これ以上訊くべきではないと察してくれたようで、話を次の質問へと進めてくれた。
「戦術自体は、昔から色々な試合映像を見たことで考えついたものが多いです。特に『こうすれば相手を綺麗に壊せる』、『こうすれば味方の能力を最大限引き出せる』と思ったのを使うようにしています」
「綺麗に、壊す……?」
僕の言葉を疑問に思った伊村さんが、そう聞き返してきた。
「例えば今日の試合………法令館中の強みは、規律され統率のとれたサッカー。だから僕はあちらの―――いや、ほとんどのサッカープレイヤーの教科書に乗っていないサッカーをすることにしたんです」
「それがあの、味方同士でボールを奪い合うサッカー……」
「なるほど……強みを逆手にとって法令館中を混乱に―――君の言葉を借りるなら壊した、ということだね?」
枝元さんは僕の言ったことに対し、納得した様子でそう言った。それからも取材は続き……
「最後の質問ですが………次の対戦相手である王者雷門との試合の意気込みを教えてください」
「そうですね………」
意気込み、か………色々あるけど、やっぱり―――
「意気込みとは言えないと思いますけど………円堂ハルと戦える可能性があるのが楽しみですね」
「えっ?円堂ハルと、ですか……?」
「でも確か、再起不能だと―――」
2人は世間一般の認識通りにそう言ったが……
「それが誇張された表現で、本当は再起可能である………僕はそっちに賭けてます」
僕はまったく逆のことを言った。その時の試合映像を僕も見たが、相手選手の足は円堂ハルの足にはかすりもしていなかった………だから、世間が言っているように再起可能ではなく、まだ戻って来られる可能性があると僕は考えている。何より………
「何故、円堂ハルとの戦いを望むんですか?彼がいなければ、今の白恋にも勝機が―――」
「それじゃ意味がないんですよ」
「「えっ?」」
「円堂ハルを加えた雷門と戦いたいとはもちろん思っていますけど、僕が戦いたい理由はそれだけじゃありません」
「では、その理由とは……?」
「仮に、今の日本の少年サッカーで最強のサッカープレイヤーが円堂ハルだとします。その最強のサッカープレイヤーに勝てないんじゃ………
世界なんて、夢のまた夢ですよ」
「「!?」」
「僕の夢は世界一のMF―――今の僕の力で、日本最強のチームとストライカーを綺麗に壊す………それが出来ることを、次の試合で証明したいんです」
だから、こんな壁にぶつかって立ち止まるわけにはいかないんだ……!!
◇
「……想像以上の選手でしたね」
「あぁ、既に世界のことを考えているのにも驚いたが、円堂ハルを自身の夢のための糧にしようとは……」
氷月君の取材後、私と枝元さんはそんなことを話していた。氷月零……白恋のサッカーモンスターにして、戦術の氷帝と呼ばれ始めているサッカープレイヤー………四国の強豪である法令館中をねじ伏せる戦術を思いつく頭脳、そして氷月君自身も高いサッカー技能―――特にパスやキック精度が群を抜いている―――を習得している。
何より私たちが驚いたのが『円堂ハルと戦うのが楽しみ』という言葉だ。普通のサッカープレイヤーなら、円堂ハルほどの存在がいるチームとは戦いたくはないだろう………だが、氷月君は円堂ハルを入れた雷門との戦いを望んでいた。それもただ戦いたいだけではなく、夢のために自身の力を証明するということのようだ……。
「枝元さん、次の雷門対白恋………どっちが勝つんでしょうね?」
「氷月零がいなければ雷門だろうが………今回ばかりは、予想がつかないな。それに『円堂ハルが再起不能ではない』という、彼の言葉も一理ある。実際、そう言われて再起したスポーツ選手もいることだしな」
「そうですね………どちらにしろ、次の試合は注目されるでしょうね」
◇
「氷月零、か……まだこんなやつがいたなんてな……」
淡路島で白恋中対法令館中の試合を見ている人物がいた………その人物は、再起不能と言われていたサッカーモンスター、円堂ハルだった。ハル自身、今回の試合は2校がどんなサッカーをするかの研究のために見ていたのだが……
『凄い……こんなサッカー、見たことない……!』
その試合に現れた氷月零という選手―――彼を中心とした白恋中の戦術に、ハルは衝撃を受けていた。さらには零自身の高いサッカー技能や得点能力……SNSの記事で言われている『白恋のサッカーモンスター』や『戦術の氷帝』と呼ばれるに相応しい実力を兼ね備えているのが、プレーを見て分かった。
「これは俺も、気合い入れて早く仕上げないとな……!」
試合映像を見終わったハルは、すぐさま復帰のための特訓に戻っていった。
「待ってろよ、氷月零……!!」
読んで下さり、ありがとうございます。
次回からは第4章の雷門との対戦編を書いていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。