そして、星7評価をしていただいた『山崎ジミー』さん、ありがとうございます。これからもこの小説を読んでいただけると幸いです。
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第11話 リベンジ戦開幕
取材を受けた翌日、僕たちは対雷門に向けた作戦会議をしていた。
「次は雷門か……」
「去年のリベンジ、果たさないとね」
「何か策はあるのか、戦術の氷帝?」
「期待してますよ、氷帝様?」
その雰囲気はリラックスしていて、大一番の前に緊張し過ぎるよりは良いものだと思う………サッカー部全員が、先日つけられた僕の二つ名について揶揄っているのが問題だけど。別に二つ名についてはこの際いいとして………
「みんなしてからかわないでよ……あと、認められるのは素直に嬉しいけど、僕に依存し過ぎないようにね?」
「ん?どういうことだ?」
これだけは、みんなに言っておかないといけない……。
「これは僕の経験則なんだけどさ………『誰々がいるから大丈夫』、『誰々が何とかしてくれる』っていう状態になるのが、1番まずいんだよ」
「まずいって……?」
「その状態で、チームの要の選手や戦術とかが全て分析され尽くしていたとする。それで相手には何も通じなくなっている……すると、段々と周りの選手は要の選手頼りになる―――何も通じないのにもかかわらず、ね」
『……!』
みんなその状況を想像したのか、思わず黙り込んでしまった………実際、そういうチームを僕はいくつも見てきた―――いや、今思うと僕がしてきたっていうのが正しいかもしれないけど。
「つまり何が言いたいかっていうと………雷門戦までに自分の実力を今よりも大幅に伸ばして、想定外のことにも対応できるようにしろってこと。例えば、自分の長所を伸ばしたり新しい必殺技を完成させたりとか」
「てことは特訓あるのみ、だな?」
「そう……とにかく今は、いつもの練習にプラスして自分の思う通りにやってみて」
その後、作戦会議も終わり、僕を含めた全員が特訓のために練習場へと向かって行った………そろそろ、あの技が必要になってくるな……。
◇
みんな各々で必殺技の特訓や長所を伸ばす特訓をしている中、俺は零に呼ばれて一緒にある特訓をしようとしていた。
「切り札の必殺技を作る?」
「そう……それにこれは、最後の最後―――試合を決める時に使うものになると思う」
「最後の、最後……」
そう言う零の顔は、いつになく真剣なものだった。雷門に自身の戦術やサッカー技能が通用することを証明する………取材の時の零の言葉が、本気だということは俺にも分かる。だったら、俺がすべきことは―――
「それってさ、どんな技なんだ?」
俺は早速、零が考えている技がどんなものなのかを訊いた。
「イメージとしては―――」
それから、技について詳しいことを聞いた後……
「多分この技は、僕のキック精度とキック力、プラス冬真の足の速さと振り抜く速度………その両方が鍵になる」
「俺の足と、振り抜く速度……?」
零はそんなことを言い出したのだ。足の速さなら分かるけど、振り抜く速度って………それに零のキック力が鍵って……?
「それがないと、この技は完成しない………簡単に言えば、互いに足りない能力の特訓ってわけだよ。冬真は脚の振り抜き速度、そして僕はキック力の上昇だね」
確かに俺は足は速いが、お世辞にもシュートする時の脚を振り抜く速度が速いとは言えない。そして零の課題はキック力だという………俺から見たら、零のシュートの威力は申し分ないと思うんだけど、それでも足りないのか……?
「まずは、足りない2つを鍛えてからやってみようか」
「あぁ、そうだな」
俺は脚を振り抜く速度を上げるためにひたすらシュート練習を、零もシュート練習には変わりないのだが、ボールを自分で上に浮かせてからミートポイントに正確に当てるということをしていた………相変わらず、ボールのコントロールに関しては、零の右に出る者はいないくらいに上手いな………その特訓が一通り終わった後、いよいよ必殺技をやってみることになったのだが……
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
「くっ……!」
その必殺技は零に言われた通り、俺のスピードと脚を振り抜く速度、そして零のキック精度とキック力が必要不可欠だということが、実際にやってみるとよりよく分かった………必殺技そのものはそれなりの形にはなってきたとは思うが、俺たちが描いている成功の形にはあと一歩至っていない。
「冬真、今日はここまでにしておこう。やり過ぎて身体を壊すのが1番いけないし」
「!もう日も暮れるしな……そうしようか」
いつの間にか時間が経っていたらしく、練習場には俺たちしかいなかったため、俺たちもコテージへと戻ることにした。その途中で……
「なぁ、零」
「ん?」
「円堂ハルは、俺たちとの試合までに戻って来ると思うか?」
俺はふと、そんなことを零に訊いてみたのだ。
「……取材の時には言わなかったけど、円堂ハルが怪我した時の試合映像を見たんだ」
「そうなのか?」
「うん、世間では相手選手との接触ってことになってるけど……それ、実際にはなかったんだよ」
「!?」
接触がなかった……じゃあ円堂ハルは、何で怪我を―――いや、それよりも……
「てことは……」
「来るんじゃないかな………というか、僕としては来てもらわないと困るんだけど」
「!」
零はそう言い、不敵な笑みを浮かべていた………零のこんな顔、初めて見たかもしれない……。
「冬真、どうかした?」
「いや……零、何だか楽しそうだなって」
「!楽しい、か………うん、実際楽しいよ。冬真がサッカー部に僕を入れてくれたおかげでね」
「!」
そんな零の言葉に対し……
「俺も今、零やみんなとサッカーできて楽しいよ!だから……まずは雷門に勝って、必ず優勝しような?」
俺もそう返すのだった。
◇
雷門のキャプテンである俺は、フィールドで今日の準決勝の対戦相手である白恋中の選手たちの方を見据えていた。すると……
「キャプテン、ハル君は……」
「あぁ、まだ来ていない」
「っ……間に合いません、でしたね……」
星村がそう声を掛けてきた。いつもなら王者雷門として試合に望み、試合に勝ってみせるところなのだが……
「氷月零、か……」
「ハル君と同じ、白恋のサッカーモンスター……」
「『戦術の氷帝』という二つ名を付けられるまでに、注目もされているらしい」
あちらには氷月零という、ハルとは別ベクトルのサッカーモンスターがいる………そう呼ぶにふさわしい実力はもちろん、状況によって戦術を変化させる指揮能力や戦術眼も持ち合わせている。自身で積極的に点を獲りに行くタイプではないが、豊富な戦術や相手の長所を潰して味方のプレーを最大限引き出させる動きに関しては、間違いなくトップクラスと言えるだろう。
だが、俺たちも初めてあの試合を見た後、今まで以上に特訓を積み重ねてきた。それに……
「ハルは戻って来る」
「えっ?」
「この舞台に………多分ハルは、氷月零と戦いたいと思ってるんじゃないかと思うんだ」
「氷月零と、ですか……?」
「今までハルのことを分かってやれなかった俺だけど………これだけは分かる」
「キャプテン……」
「それまで、必ず守り切る―――いや、勝つぞ!」
『はい!』
◇
「いよいよだな……」
「うん、絶対に勝ちますよ」
円堂ハルがいなくとも、雷門は強敵なのは間違いない………去年は負けてしまったが、俺たちも前より強くなったと思うし、零の言葉の通りに慢心はせずに特訓もしてきた。それに、いざとなったらあの技も……。
『さぁ、いよいよ準決勝の雷門対白恋!果たして王者雷門が勝利するのか、それとも新たなサッカーモンスターを擁する白恋が去年のリベンジを果たすのか!』
今回も俺と零の2トップでフォーメーションを組んでおり、俺たちを中心に戦術などを展開していく作戦となっている。
「まだ来てない、か……」
零は雷門の方を見て、円堂ハルが来ていないかを確認していたが、まだその姿はない。
「どちらにしろ、俺たちは俺たちのサッカーをしよう」
「うん、分かってるよ」
そして……
『さぁ、試合開始のホイッスルが鳴りました!雷門ボールでスタートです!』
遂に雷門へのリベンジ戦が始まった。雷門はさすがの連携でこちらへ攻め込んでくる。すると……
「ここは通さないよ!」
零や俺のを雷門の選手が取り囲んできたのだ………どうやら雷門は、俺たちを動きを封じるつもりらしい。そうして俺たちの身動きが取れない間に……
「嵐!」
「あぁ!」
雷門のキャプテン月影蓮からMFである嵐大佑にボールが渡り……
「バハムートクラッシュ!!」
必殺シュートが俺たちのゴールにゴールへと放たれる………が、その技は威力が上がった場合まで考えて対策済だ……!
「摩周君!」
「任せろ!うおおおおおおお!!」
一心は吹雪を吹かせると、背後に氷の魔神を呼び出し……
「マジン・ザ・ブリザード!!」
その手を突き出させ、必殺シュートを吹雪で包んで凍らせて止めたのだ。
「と、止められた……!」
「「!」」
「あっ―――」
「しまっ―――」
雷門の選手が一瞬そちらに目を向けた隙に、俺たちは相手の死角を利用して包囲網を突破した。これは零から教えてもらったボールを持っていない時の動きで、こういう時の相手の目線を見て、このように抜け出すことができるのだ。
「行けっ!」
その後、一心はすかさずにボールを投げた。
「は?」
「どこに投げて……?」
その先には誰もいない―――
「なっ!?」
「何でここに!?」
わけがなく、零がぎりぎりのところで辿り着きトラップしていた。そして……
「氷結の陣・攻」
零がタクティクスを発動させたのを合図に、俺たちは一気に敵陣へと攻め込んで行った。
読んで下さり、ありがとうございます。
今回から雷門戦に入っていきましたが、果たして白恋は王者雷門に勝つことができるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。