そして、星9評価をしていただいた『s.k.!』さん、本当にありがとうございます。これからもこの小説を見ていただけると幸いです。
それでは、どうぞご覧ください。
「氷結の陣・攻」
零がタクティクスを発動させると、俺たちは別々のルートから一斉に、雷門のゴールへと走っていった。この戦術は雷門にも分析されているだろう……。
「来るぞ!」
「ルートを塞げ!」
「選択肢多いな……!」
だが、この戦術の強みはボールが誰に来るのかが分からないところで、さらに誰に来るかが分かったとしても他の誰かがボールを奪い取る可能性もあるため、予測がしにくいというところだ。雷門はすかさず、迫りくる俺たちを阻もうとマークにつく……雷門、やっぱり動きが速いな………。
「っ!」
零はマークされている誰かにではなく、空いているエリアにカーブを掛けたボールを蹴った。
「なにっ!?」
「どこにパスを―――」
雷門はそれを見て戸惑っていたが……
「ここだよ」
『っ!?』
そのエリアに走り込んだ俺にパスが通ったのを見て、驚いた表情をした。俺は前に習得した押し出すトラップでボールを受け取ると、近くの雷門の選手たちを置き去りにしてゴールへと迫っていく。
「!?やっぱり速い……!」
「でも、まだ距離はある……!」
雷門のDFたちは、俺がゴール前へ近づく前に潰そうと道を阻んでくる………さすが雷門、対応が早い。それにシュートゾーンまでまだ距離がある……必殺技を撃つには―――
…………あれ?何だ、これ………ゴールの左上、ガラ空き………あそこを狙えば、入る……?
その時俺は、不思議な感覚に包まれていた。何故かどこを狙えばキーパーの隙を完全に突けるかが、はっきりと
俺は走りながらすぐさまシュートモーションに入り―――
パンサー―――スナイプッ!!
青い豹のオーラを後ろに出現させ、そのまま同じ色のオーラを纏わせた右脚を振り抜き、ロングシュートを放った。そして、次の瞬間には………
「………は?」
ボールは俺の狙い通りに、雷門ゴールの左上へと突き刺さっていた。フィールドにいる零以外の選手や観客たちは、何が起きたのかも分からず呆然としていた。それから少しの静寂が流れた後……
『ご、ゴーーール!!『白恋の韋駄天』吹雪選手が新必殺技で今試合初得点を決めた!!』
『キーパーも反応できないほどの速さのロングシュート!まさに狙撃手が放った弾丸のようですね!』
スタジアムは割れんばかりの歓声に包まれた。
「しっ……!」
俺自身も、いつもより長距離からのシュートを決めたことに、思わずその場でガッツポーズをしていた………にしてもさっきの感覚って、一体―――あっ………
『目の使い方?』
『サッカーにおいて、目の使い方は2種類あると思ってるんだ』
『2種類?』
『1つは僕みたいに、フィールドの状況を全体的に把握するための使い方』
『それで、もう1つは?』
『キーパーの隙を突いてゴールを確実に決めるための使い方……これは冬真みたいなストライカー向きだね』
もしかして、これが零の言っていた………これをもっと使いこなすことが出来れば、俺はもっと―――
「冬真、ナイスシュートだったよ」
「!あ、あぁ………零もナイスパスだ」
零が俺を呼んでいたのに気付き、俺も零にそう返しながらハイタッチをした………試合はまだ始まったばかり。この試合で必ずこの眼をモノにして、雷門を倒す……!
◇
「すまん、反応できんかった……」
「いや、無理もないよ………まさかあんなシュートを撃てるなんてな……」
「それに氷帝さんのパスも……あんなのを毎回できるなんてね」
白恋の韋駄天と戦術の氷帝のコンビネーションで先制点を獲られた俺たちは、白恋の方を見ながらそんなやり取りをしていた。こちらも白恋の戦術を研究したつもりだったが、それ以上に白恋の実力そのものが全体的にレベルアップしているように思える。だが……
「でも、試合は始まったばかりです」
「そうやな………次こそ止めたるわ!」
「俺たちもゴールを奪ってやるよ!」
みんなはそれに怯むどころか、逆に士気を上げていったのだ。そうか……みんな、同じ気持ちか……。
「みんな、まだ1点獲られただけだ!ここから反撃するぞ!」
『おぉ!』
◇
『さぁ、鮮烈なシュートで幕が開けた準決勝!雷門ボールで試合再開です!』
冬真が新技で先制点を獲った後、再び雷門ボールで試合が再開された。すると……
「鬼門、あれをやるぞ!」
「っ!分かった!」
雷門の嵐君と鬼門君は飛び上がると……
「「炎の風見鶏!!」」
息を合わせてボールを蹴り、いきなりロングシュートを放ったのだ。それは炎の鳥となり、白恋のゴールへと迫っていく。さらにそのシュートコースを予測したように……
「バハムートクラッシュ!!」
雷門のキャプテンの月影君が必殺技でシュートチェインをし、その威力を上げたのだ。僕や冬真はそのシュートを止めようと自陣のゴールへと駆け出すが……
「「っ!」」
「通さないよ」
雷門の選手たちが人数を掛けて、僕たちの行く手を阻んできたのだ。やっぱり僕たちの動きも予想済ってわけか………でも―――
「隙だらけだよ」
『!?』
僕はいくつか視えていたルートで、冬真はそのスピードで包囲を難無く突破し、すぐさまゴールへと走っていく。
「!行くぞ、ぶっつけ本番……
戦姫の盾!!」
一方で摩周君は、必殺技で雪の結晶の紋章の盾を作り出してシュートの勢いを何とか殺そうとしたが……
「くっ!?」
技が不完全だったのか、そのまま押し切られ―――
「「はぁっ!」」
「!」
てしまったが、僕と冬真がぎりぎりのところで駆けつけ、シュートを足で止めようとする。そして……
「「っ!」」
僕たちはボールを上に打ち上げることでゴールを守った。そして、落ちてきたボールを僕が取り………
「カウンターだ―――
氷結の陣・速!」
氷結の陣の新しい形態を発動させた。すると、冬真はすぐさま敵陣に向けて走っていき、その周りを数人で冬真の道を守るように駆け出していく。
この形態は冬真を中心に機能する速攻型タクティクスであり、氷結の陣・攻が広範囲型ならば、氷結の陣・速は一点突破型といえるものだ。
「また新しいパターン!?」
データにない形態を出したことで、雷門は動揺しながらも冬真を止めようとしていたが……
「邪魔させないよ!」
「っ!?」
冬真以外のみんながマークについて足止めをしていた。それを見た僕は、冬真に向けて………
「氷の槍!!」
ロングパスを放った。それは寸分狂わず冬真のところへと飛んでいき……
「そこだ―――
パンサースナイプV2!!」
スピードを落とすことなく、ダイレクトシュートで必殺技を撃ったのだ。
「ゴッドハンド・タイガーG2!!」
冬真のシュートに反応した雷門のキーパーの暖冬屋君も、データよりも進化した必殺技で止めようとしたが………
「っ!?な、なんやこれは………!」
冬真の進化した必殺技の威力が想定外だったのか……
「ぐあっ!?」
『ゴーーール!!決まるかと思われた雷門の強力なシュートチェインでしたが、白恋の最強コンビが守り切るどころか、カウンターを決めてしまった!!』
『それに加え、カウンターに移るまでの動きにも無駄がなかったですね!』
シュートがゴールの真ん中に突き刺さり、2点目を獲ったのだ。
「大丈夫?」
「助かったよ、零。新技、あともう少しなんだけどな……」
僕が手を差し伸べると、摩周君はそう言いながら手を取って立ち上がった………にしてもあの動き、冬真まさかあの眼をマスターしようとして―――
「2人とも流石だよ~!」
「「!」」
「本当にな?」
他のみんなも、僕や戻ってきた冬真にそう言う中……
「この調子なら……」
「あぁ……!」
「雷門に……勝てる……!」
希望が見えているのか、みんな各々士気を上げていた。
「士気を上げるのはいいけど、前半まだ終わってないよ?」
「大丈夫、みんな分かってますよ!」
「ここで油断するわけにはいかないしな?」
「よし………前半はこのまま雷門を制圧する。一点も許さないよ」
『了解!』
僕はみんなにそう指示すると、自身のポジションへと戻っていった。
◇
「ま、マジかよ……」
「俺たち雷門が、押されている……?」
前半終了直前で、スコアは2-0………俺が雷門のキャプテンになってからここまで苦戦したのは初めてかもしれない……でも―――
「このまま負けられるかよ……!」
「そうだね……!」
「ハル君がいなくても、私たちが……!」
この状況ながらも、みんなはむしろ燃えているように見えた。その後、俺たちのボールで試合が再開し、果敢に攻撃を仕掛けていったが……
「氷結の陣・守」
「くっ!?」
「守り硬すぎでしょ……!」
白恋の守備特化型タクティクスを発動され、俺たちの攻撃パターンを読まれてはパスコースを潰されてしまっていた。さらにはみんなの個性も完全に潰すように選手を対峙させており、こちらの攻撃が通用しなくなってきていた。それに……
「邪魔」
「くっ……!?」
「は、速っ……!?」
吹雪冬真が今までよりも速いスピードでフィールドを駆け回っているせいで、必殺技もまともに撃たせて貰えない状況になっていた。そして……
『ここで前半終了の笛です!スコアは2-0で白恋がリードしていますが、ここから逆転の可能性も充分にあります!』
そのままリードを許したまま、前半が終了してしまった。
「まずいですね……前半で一点も獲れないとは……」
「あの2人……相性が良過ぎる」
「確かにあの2人は脅威です……でも、その2人さえ機能させなければ逆転することも可能になる」
遠野がそう意見したが……
「いや、他の選手たちも去年とは比べにならないほどにレベルアップしている。その2人を抑えたとしても……」
「一体、どうすれば―――」
後半どう動くかを考えていると……
「なぁ、何だあれ?」
◇
前半が終了し、スコアは2-0で勝ってはいる………だが、油断は出来ない。後半は、もしかしたら―――
「なぁ、何だあれ?」
「あれって……」
休憩しながら後半のことを考えていると、急に観客席の方が騒がしくなり始めた。
「お、おい!」
「まさか……!」
みんなも空を見上げて驚いていたので、僕もフィールドの方に出て空を見た………そこにはイナズマのマークのパラシュートで降りてきている、首元にオレンジのマフラーを付けた選手がいた―――
やっと……やっと来てくれたか……!!
◇
『な、なななんと!ここで円堂ハルが現れたぞ!!』
『ですが、再起不能と言われていたはず……?』
俺がスカイダイビングで登場した瞬間、スタジアムは大歓声に包まれた………これは雲明も、そして氷月さんも予想出来なかっただろう。
「遅くなりました、蓮さん」
「……おかえり、ハル」
「ハル君……!」
スタジアムへと降り立った俺は、雷門のチームメイトのみんなを見回し……
「完全に押されてますね……ここから逆転しましょう!」
「この状況………お前ならどうする?」
「それはもちろん……新必殺技ですよ!」
当然のことのようにそう口にした。
「新必殺技って……」
「!あの練習メニューか?」
「その通りです」
流石は蓮さん、話が早くて助かる……!
「それをやっていれば、必殺技『イナズマブレイク』が使えるようになります。今からそれをやりましょう!」
「でも、あの必殺技はまだ……」
「いきなりやっても、結果は見えてるんとちゃうん?」
確かに………雷門中サッカー部の部訓は『練習こそ力』だ。でも―――
「失敗が、何だって言うんですか?」
『!』
「失敗しても、また繰り返しやればいい。誰に何と言われようと、何度も、何度も何度も………何度だって挑戦し続ける」
俺は淡路島で特訓にも近いリハビリをした………そこで自分の姿を見て、泥臭くて、カッコ悪いと思った………だからこそ―――
「本当にカッコいいのは、そういうんじゃないんですか?」
「ハル……」
「あの進化した白恋を―――氷帝と韋駄天を倒すには、新必殺技しかありません!おそらくこちらの戦術も一人一人の個性も、全て対策されている。それにこの先で待っている雲明と戦うためにも、俺たちは進化し続けなきゃならない………
それに俺は今、凄く勝ちたいんです!」
『!』
今までサッカーに対して冷めていた俺だったが、怪我をしてサッカーを出来ない辛さを知った………それからサッカーをしたいと強く思うようになり、フィールドに立つためにリハビリを始めた。そんな中で、氷月零というかいぶつを知った…………素直に凄いと思った。そして同時に、全力で戦って勝ちたい、と……。
「!ハル……あぁ、そうだな」
「そうだね……私も勝ちたい!」
「俺もだ!」
「私も」
「俺もや!」
みんなも俺と同じなのか、次々にそう声を上げてくれた。
「みんな………
やりましょう!俺たちのサッカーを!!」
読んで下さり、ありがとうございます。
今回はタイトルの通り、冬真の覚醒回でしたがいかがでしたでしょうか?いよいよ次回、雷門のサッカーモンスター対白恋のサッカーモンスターの対決となります。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。