そして、星9評価をくれた白鷺零さん、本当にありがとうございます。
それでは、どうぞご覧ください。
第4話 白恋中サッカー部
冬真に僕の本心を伝えた日から数日後……
「零!早く行こう!」
「分かってるよ」
サッカー部への入部届も出した僕は、今日から正式にサッカー部の練習に参加することになった。因みにサッカー部員の面々とも、今日が初対面だ。
「零、緊張してないか?」
部室に向かって歩いていると、冬真が僕を気遣ってかそんなことを訊いてきたのだ。
「さすがに大丈夫……って言いたかったけど、少しはあるかな」
「そっか……でも大丈夫。サッカー部には、零に酷いこと言うやつらなんていない。むしろ歓迎されると思うよ?」
そんな会話をしていると、サッカー部の部室前へ到着した。
「じゃあ、行こうか!」
冬真はそう言い、部室の扉を開けた。僕も冬真に続いて入っていくと、そこには既に部員が集まっており……
「あれって……!」
「えっ!?」
「ウソだろ……!?」
「零君が!?」
新しいサッカー部員が僕だと思っていなかったのか、みんな驚いた反応をしていた。すると冬真は、手を叩いてこちらに注目を集め……
「みんな、早速紹介するよ!俺が見つけた―――ってわけじゃないけど、今日からサッカー部に入る氷月零だ!」
「えっと……知ってる人もいると思うけど、2年の氷月零です。よろしくお願いします」
『……』
急に黙り込んだ部員たちを見て、僕は歓迎されてないのかと不安になったが……
「零ってサッカーやってたのかよ!」
「凄いじゃん!」
「やってたなら早く言ってくれれば良かったのに!」
「ねぇねぇ~、零君って得意なポジションはどこなの?」
「ド……ドドンパッ!?」
どうやらそれは杞憂だったようだ―――というか今、ドドンパって……?そこから、僕への質問タイムが始まった。
「零っていつからサッカーやってたんだ?」
「始めたのは……3歳頃かな。昔のチームにいた時はMFをやってたんだ」
「へぇ……!」
「じゃあ、どんな選手が好きなの?」
「何でゲームあんなに得意なんだ?」
全員の―――というよりは、ほとんどキャプテンの朱鞠ほろかさんの質問に答え終わった後、
「それで冬真、今日は何かしたいことがあるって聞いたんだけど……?」
部員の1人が冬真にそう訊いた。
「あぁ、これから5対5でミニゲームをする!」
◇
零への質問タイム―――は、ほとんどキャプテンからの質問だったけど―――も終わり、サッカーコートに出てきた俺たちは5点先取の5対5のミニゲームをやってみることになった。これは零の実力を見せるために行うもので、さらには零自身からの提案でもある。何でも、みんなの武器を把握しておきたいらしく、それによって自身の練習やこれからの戦略の参考にしたいらしい。
「零君!これからよろしくね!」
「こちらこそよろしく、朱鞠さん」
「学年一緒なんだし、ほろかでいいって!」
今回は零を中心としたチームと、白い髪に黒いヘッドホンをつけたキャプテンの朱鞠ほろかを中心としたチームに別れ、勝負をすることにした。零の実力を知っている俺は、今回審判を務める。
そして、それぞれチームごとに軽く作戦会議をした後……
「みんな!準備はいいな?」
『あぁ!』
『はい!』
「……」
俺の言葉にみんな―――零は既に集中しているのか、真っ直ぐ前を見ていたけど―――が反応した後で……
「じゃあ……ゲームスタート!」
ゲーム開始の合図をした。零のチームのボールからスタートし、同じチームのFW、北平雨竜から零にボールが渡される。そして、その直後………
「なら早速、お手並み拝見させ―――って!?」
零のチームのキーパー以外が、いきなり敵陣に向けて駆け出し始めており、零自身もドリブルで相手のゴールへと迫っていた………ははっ!こんなの見たことない!やっぱり零は凄いや……!
「ちょ、一体何考えて……!?」
そんな動きに、案の定ほろかのチームは混乱しており、ゴール前までの侵入を許してしまう。だがそれに対し、ほろかは指示を出して自陣に入ってきた選手たちをすぐさまマークしていく……が、その展開を予想していたのか―――
「……は?」
「あれって……シュートモーション!?」
「あんなとこから!?」
零はすでにシュートモーションに入っており、それを見た全員が驚きを隠せずにいた。
「行け」
零はそれを余所に、右足で強烈な回転をかけたシュートを放った。そのシュートは零から見て、左上の方に高く撃ち上がっていく。
「っ!あれを獲ったら反撃開始だよ!」
ほろかの言う通り、零が放ったシュートを全員が『ミスキックだ』―――そう思っていた………いや、あれはあの時の……!
「えっ?」
「ウソ……」
「ボールが落ちて……!?」
零が放ったボールは空中で方向を変え、ゴールに向かって急降下していく………零が放ったのは高くボールを撃ち上げてから急降下していくジャイロシュートだった。キーパーである摩周一心は予想外の出来事に反応が遅れ―――
「獲った」
ボールは勢いを落とすことなく、ゴールの左下へと突き刺さった………そう、零は自身のチームのみんなを囮に使い、あの距離からのジャイロシュートを確実に入れたのだ。
「あっ……」
零は自身でゴールを撃ったことで、また悪い印象を与えたと思い『しまった』という表情をしていたが……
「零!」
「零君!」
「っ!?」
「凄いね~!」
「それどうやったんだ?」
敵味方問わず、質問攻めにあっていた。
「えっと……元々の作戦は、キーパー以外を敵陣に走らせることで、誰にパスするかを分からないようにしたんだ。それからは作戦通りパスするつもりだったけど、ほろかさんのチームのディフェンスが予想以上に上手くて………その状況じゃパスが通らないと思ったから、僕自身で直接ゴールを狙うことにしたんだ」
『……!』
そんな零の作戦を、みんなは感心した様子で聞き入っていた。零は若干照れているように見えたが、自分のやりたいサッカーをできたのかどこか嬉しそうな表情をしていた。
「気持ちは分かるけど、再開したいから後にしてくれ!」
『はい!』
俺の声に、みんなは元の位置につき……
「行くよっ!」
今度はほろかのチームが攻撃を仕掛けていく。
「お願い!」
「あぁ!」
ほろかは同じチームのFWの氷英坂岩人にパスを渡し―――
「もらうよ」
「っ!?」
パスコースを予測した零が割り込み、それをカットしてきたのだ。
「ナイス!」
「上がれ!」
零が敵陣に上がるのに続き、零以外も敵陣に駆け上がっていく。
「通さないよっ!」
「ここで止める!」
ほろかとMFの村住薄荷が零の前に立ちはだかった。どうやら2人でプレスをかけ、ボールを奪い取るつもりのようだが……
「隙だらけ」
「「えっ……?」」
零は2人の頭のある位置の間にボールを通し、パスを通したのだ。まさか自分たちの間にボールを通すと思っていなかったのか、2人は驚き反応が遅れてしまう。零がパスした先には……
「コントロール上手すぎだろ……!」
ゴール前に走り込んでいた雨竜がいた。ボールをトラップした雨竜は……
「はぁっ!」
「くっ……!?」
その勢いのままシュートを放ち、ゴールを決めたのだった――――その後、俺も含めてチームメンバーを変えたりしてミニゲームをやったが、零のいるチームは全勝していた………これは俺がミニゲームを見ていて思ったことだが、零はまるで味方や相手がどこに動くのかが分かっているようにプレーしていたり、キーパーの隙を突いたシュートを放ったりしているのではないかと感じた。
零から前に聞いた俯瞰してフィールドを見ることができる能力―――零の言葉を借りるなら武器って言うのがいいのだが、それがここまで脅威的ということを、俺は改めて認識した。それだけではなく、零自身の実力の高さ―――尋常じゃないボールコントロール、高精度なパス、シュートのバリエーションの多さ………そして、様々な戦術を考えつく頭脳………これらが合わさることで、零のあの強さが発揮されるというわけか………まったく、サッカーの神様は、零に何物を与えたんだか……。
そして、零のMF―――いや、サッカープレイヤーとしての実力を目の当たりにしたみんなは、心の中でこう思っていた―――
(冬真の言っていた通りの天才―――円堂ハルとは別ベクトルの、サッカーモンスター……!!)
◇
「ふっ!」
初めてのサッカー部での練習から2週間後、僕はいつもの場所でシュートを中心に練習をしていた。その理由はというと………
『必殺技?』
『零はサッカー技能については申し分ない―――というか、俺たちが頑張らないといけないくらいだからな……だから零は本戦までに必殺技を作って欲しいんだ』
『もちろん何か困ったことがあったら、私もみんなも協力するよ!』
冬真やほろかさんから、必殺技をいくつか完成させて欲しいと言われたのだ。確かに、僕には使える必殺技がない………というか、最近までこんなことになるとは思っていなかったから、作ってこなかったっていうのが正しいかな……。
『例えば、どんな感じのやつが欲しい?』
『うーん……MFならオールラウンドにって感じが多いかな。でもまずは動画とかを見て、零好きなようにやってみたらいいと思うよ』
「好きなように、か……」
実を言うと、既にシュート技やそれ以外のオフェンス技やディフェンス技はいくつか完成させている。だが、シュート技自体は既存の技で、オリジナルの技が完成しているわけではない………アイデアは昔考えたものがあるから、やりたいことは大体決まっているんだけど―――
「まだやってたのかい?」
「!士郎さん……」
そんなことを考えていた僕のところに、士郎さんがやってきたのだ。
「サッカー部での練習はどうだい?」
「どうって……その……」
「ん?」
「………自分のやりたいサッカーをできるのは楽しい、です……」
僕は正直に、自分の気持ちを言った。
「良かった。それなら、冬真と会わせた甲斐があるかな」
「!やっぱり……そういうことでしたか」
「初めて会った時は、見ていられない表情をしていたからね……零君がそう言ってくれて、本当に良かったよ」
士郎さんはそう言い、笑みを浮かべながら僕の隣へと座る………僕の予想通りだったか……。
「それで、今は何をやっていたんだい?」
「必殺技の習得です。シュート技以外はいくつか完成してるんですけど……」
「シュート技がまだ未完成、ってことか……」
「正確には、僕のオリジナル技がですけどね。既存の技はいいとして、オリジナルの技は本戦の前には必ず完璧にしないと」
すると士郎さんは少しの間、何かを考えていて……
「……必殺技の件だけど、僕に出来ることなら何か手伝―――」
僕のオリジナル必殺技の習得を手伝おうと提案してきたのだ………が、
「いえ、お気持ちだけもらっておきます」
「それは、何故だい?」
それを僕は、士郎さんが言い切る前に断ったのだ。その理由を聞かれた僕はこう言った。
「自分だけの力で完成させないと、僕自身が進化できないですから………あっ、別に仲間が頼りにならないとかそういう意味じゃなくて―――」
「……」
僕の言葉を聞いていた士郎さんは、何故かこちらをじっと見ていて……
「って、士郎さん……?」
「!あぁ、ごめんごめん……冬真も前、似たようなこと言ってたなって」
「冬真が……?」
「あぁ……冬真も仲間想いだから、零君と似てるなって思ったんだ」
冬真がそんなことを……。
「さて……こんな時間だし、今日はここまでにしておいた方がいい」
「!そうですね……」
士郎さんにそう言われたことで、僕は時間が大分経っていたことに気付く。
「じゃあ、僕はこれで」
それから片付けてから、家に帰ろうとすると……
「零君」
「はい?」
「……活躍、楽しみにしてるよ」
「!……ありがとうございます、士郎さん」
それから2日後……
「頼んだよ、零!」
「分かってる……みんなも作戦通りに頼んだよ」
『了解!』
僕はチームを抜けて以来の公式戦に出場するのだった。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
次回はいよいよ、零にとって久し振りの公式戦となります。零が入った白恋中サッカー部は、果たして勝利することができるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。