それでは、どうぞご覧ください。
白恋中サッカー部が本戦進出を決めた試合から1週間後、俺はある場所へと向かっていた。その場所というのが……
「ここが、零の家……」
零が住んでいる家だった。以前から遊ぶ約束はしていたが、本戦前にリフレッシュを兼ねて、こうして今日お邪魔させてもらうわけだ。早速俺は、零の家のインターホンを鳴らした。すると……
『はーい!』
家の中から女の人の声がしたのだ。そして、中から出てきたのは……
「もしかして……あなたが冬真君ね?」
「は、はい!」
零と同じ髪と目の色をしたショートカットの女性だったのだ。若いな……もしかして、零のお姉さんか……?
「初めまして、零の母です」
「こちらこそ初めまして、吹雪冬真で―――え!?お母さん!?」
俺はその事実に声を出して驚愕していた………。
「あら、もしかして驚いたかしら?」
「は、はい……俺はてっきり、零のお姉さんかと……」
俺は零からお姉さんがいることは聞いていたので、この人が零のお姉さんかと思ったんだけど……。
「ふふふっ!さぁ、それよりも中に入って?」
「お、お邪魔します……」
零のお母さんに招かれ、俺は家の中に入っていくと……
「あっ、いらっしゃい!あなたが零の友達の冬真君ね?」
零と同じ髪と目の色をしたセミロングの女性がいた……てことは、こっちが本当の……
「えっと、こっちが……?」
「えぇ、私の娘で零の姉の香蓮よ」
「ど、どうも……」
零の姉の香蓮さんは、俺に向かって笑顔で挨拶してきたのだ………あれ?香蓮さんって、何処かで見たことが……?
「うーん………あっ!?」
「あ、気がついた?」
そう、零のお姉さんは有名なインフルエンサーの『Ren』だったのだ。Renは突如として現れ、短期間で人気を獲得したことから『超新星インフルエンサー』とも呼ばれている………というか零のお姉さんが、有名人だったなんて―――あと、零の家族って美形揃い過ぎないか……?
「ん?そういえば、零は何処に―――」
「お待たせ、冬真」
すると、零が急いで2階から降りてきており……
「あっ!れー君お疲れ様!」
「打ち合わせは終わったの?」
「うん、何とかね……」
「そう……お疲れ様」
零のお母さんとお姉さんから、労いの言葉を掛けられていた。というか『れー君』……?
「零、打ち合わせっていうのは……?」
「あぁ……今度、東京でやるイベントに呼ばれててさ、それの打ち合わせが朝からあったんだ」
「へぇ……」
そういえば、零自身も全国レベルの有名人だったけな……。
「冬真、こっちだよ」
声を掛けられた俺は、零の部屋へと案内された。そこには……
「おぉ……!」
eスポーツの大会で優勝した時のトロフィーや記念品が飾られていたり、さらには写真や動画でしか見たことのないような高スペックのゲーミングPCもあったのだ。そして、本棚には……
「これ、見てもいいか?」
「うん、いいよ」
サッカー戦術の本や、それを零自身が纏めたと見られるノートが沢山あったのだ。俺はその中から、一冊のノートを手に取り、1ページずつめくった。そこには、相手の状況に応じた戦術やポジショニング、タクティクスの案がいくつも分かりやすいように書かれており、その中には前の試合で実際に使った『堅守速攻』の戦術も書いてあった。
「これ、全部零が考えたのか?」
「まぁ、ね。と言っても、冬真がサッカー部に誘ってくれなきゃ、実際に使う機会はなかっただろうけどね」
「……」
俺は零の言葉に、一種の戦慄を感じていた。もし……もし、俺がサッカー部に誘わなかったら―――いや、零が父さんに出会ってサッカーを続けてなきゃ、こんな天才が誰にも知られることなく埋もれてたのかよ……。
「……ホント、凄いやつだよ」
「?」
「それでさ零、特訓のことなんだけど……」
今日零の家に来たのは、実はリフレッシュ以外にも目的があった。俺は今、本戦で切り札になるような新しい必殺技の特訓をしてるんだが、中々上手くいっていなかった………そのことを零に相談したところ……
『……じゃあ、今週末少し特訓しようか』
『え?零の家に行く日に……?』
『そう―――あ、何も準備はいらないからね。内容も来てからのお楽しみだよ』
そう言われたため、零の言う通りに何も準備せずに来たのだ。
「必殺技のことだね………というわけで、はいこれ」
「え?コントローラー……?」
零から渡されたのは、ゲームのコントローラーでゲーム画面にはFPSゲームのタイトルが映し出されていた。
「今からやるのって、FPSゲーム……?」
「そうだよ。因みに冬真の武器はスナイパーライフル限定ね」
「え、何で!?」
その言葉に俺が驚いていると、零がその理由を話し始めた。
「冬真の編み出そうとしている必殺技って、スピードを落とさないまま一撃でゴールを狙う技―――で、いいんだよね?」
「あ、あぁ……」
「だからこれで、その感覚を掴んでもらう」
「つまり……キーパーの隙を狙う感覚を身に付けるってことでいいんだよな?」
「そんなところだよ」
だからFPSゲームか……確かに、うってつけかもしれない。それに特訓相手はその道のプロときた……必ずやり遂げて、必殺技完成に近づいてみせる……!
そう心の中で意気込み、零を1度でもいいから倒すという特訓を始めたのだが……
「そこ」
「え?」
どこからともなく現れた零に、至近距離から撃たれたり……
「隙あり」
「は?」
俺と同じ武器を使った零に遠くから狙撃されたり……
(よし!零のこと見つけ―――)
『ドカーーーーン!!』
「おっ、倒せた」
「……」
仕掛けられていた地雷で倒されたりした………。
いや全っっっっっっっっっっっ然、倒せないんだけど!!?
確かに零は全国大会で優勝するレベルの実力者で、俺よりも遥かに上手いのは分かる………けど、ここまで一方的だとは……。
「零さ………いくら何でも強すぎない?」
「そう言われても……これくらい強くないとプロの世界で戦っていけないから」
「ぐ……」
俺は休憩中にそう言ったのだが、正論過ぎる理由で言い返されていた……。
「でもさ冬真………最高レベルのNPC相手なら、余裕で倒せてるよ」
「え?さ、最高レベル……?」
俺はその言葉を聞き、衝撃を受けて固まってしまった。
「やっぱり気付いてなかったか………実は試合の度に、NPCのレベル上げてたんだよ?」
「……マジで?」
「ほら」
「あっ……!」
零に見せられた設定の画面には、NPCのレベルの欄が最高レベルになっているのが映っていたのだ。
「さっきの試合もNPC倒す時に一発で仕留めてたし、冬真は確実に感覚を掴めてるよ。それに狙撃のときの位置取りも上手くなってるし、隙を見つける目も鍛えられてるんじゃないかな?」
「……」
零は話した以外のことも鍛えるためにこの特訓を……やっぱり、零は凄いやつだ……!
そして、休憩後にやった試合で俺は……
「!」
「あ……やった……!」
「おめでとう、冬真」
初めて零を倒すことができたのだった。
◇
特訓の後で夕飯もご馳走になった俺は、零と一緒にいつものサッカーコートへ来ていた。そこに着いた俺は、ボールを自分の目の前に置くと……
「じゃあ……行くぞ!」
零がキーパー役をしているゴールに、ボールをドリブルしながら走り出した。俺はどんどん加速していき……
(隙は―――そこだ!!)
「はぁっ!!」
「っ!?」
ゴールに向けて一直線にシュートを放った。そのシュートは放った次の瞬間にはゴールに突き刺さっており、キーパー役の零も驚いた表情をしていた。その後、少しの沈黙が流れ……
「零、今のって………」
「うん……完成、だね」
「!………よしっ!!」
俺は喜びの声を上げるのだった。それから数日経ち………
「冬真、行くよ」
「あぁ、今行く!」
俺たち白恋中サッカー部は、本戦が行われる地に旅立っていった。
読んで下さり、ありがとうございます。冬真が習得した必殺技とは、一体何なんでしょうか………それは登場してからのお楽しみになります。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。