それでは、どうぞご覧ください。
第7話 本戦開幕
俺たち白恋中サッカー部は、本戦が行われる期間中に寝泊まりや練習を行うことになるお台場サッカーガーデンに来ていた。
「来たな、零」
「うん……でも、ここはあくまで夢の通過点だよ」
「あぁ……だからこそ、絶対に勝とうな!」
「もちろんだよ」
そんなやり取りをしていると、後ろの方から歩いてくる九州ブロック代表の南雲原中の選手たちが目に入った。すると……
「あれは……グモラーさんたちですね?」
「キャプテン~?混ざりに行っちゃダメですからね~?」
「!わ、分かってますよ………」
キャプテンがいつもの癖で他のチームに混ざりに行こうとしていたため、ねねみがそれを止めていたのだ。
「ま、混ざりに……?」
「そっか、零は知らなかったよな……ほろかは他のチームの空気を感じたいからって理由で、よく他のチームに混ざりに行く癖があるんだ」
「え……?」
「だから……零もそういうときは止めてくれると助かる」
「わ、分かったよ……」
零はほろかの思わぬ癖のことに戸惑いながらも、そう言ってくれた。
「わ、私のことはいいんですよ!それよりも、明後日に備えて今日はしっかり休みますよ!」
「分かってますよ~」
ほろかに続くように、俺たちはサッカーガーデンの白恋中に割り当てられたコテージへと向かって行った。
◇
『全国の少年サッカーファンの皆さん、ついにこの日を迎えました!フットボールフロンティア決勝大会、開幕です!』
『さぁ、決勝進出を決めた8チームが会場に入ってきます!』
『そうそうたる面々ですね』
僕たちがサッカーガーデンに到着した翌日、フットボールフロンティア本戦の開会式が大観衆が見守る中で開催された。
『近畿ブロック代表!希少な化身使いを有する「京前嵐山中」!』
京前嵐山中は、今ではあまり使われなくなった化身を使っていることで有名な学校だ。何年か前は化身が跋扈している環境だったが、化身自体が使用するのに体力を大幅に消耗するため、徐々に使われなくなっていった。さらに化身共鳴という切り札を有しており、この学校の対策にはほとんどの学校が苦労させられるという。
『四国ブロック代表!反則を許さない聖人集団「法令館中」!』
法令館中は、準々決勝で僕たち白恋中の対戦相手となっている学校だ。ルール順守・反則禁止がモットーとなっており、それに加えて実力揃いの選手たちが揃っている手強い相手だ。もちろん対策は立ててあるが、これは試合まで秘密にさせてもらおう。
『中部ブロック代表!最新のテクノロジーでサッカーを科学する「英愛学園」!』
英愛学園は、チームの学習能力が高いことが特徴だ………が、大半の選手がAIには肯定的なため、監督がAIだという噂も流れているらしい。相手に対して最適なプレーをすることで勝っているのだが、試合映像を見た限りではキャプテンが自由に動いているときは統率が乱れているようだ。
『中国ブロック代表!古き良き伝統を重んじる浪漫サッカーの「偉仁銘文堂」!』
偉仁銘文堂は、対戦相手のチームに戦術は研究し尽くされているものの、それを覆す実力を持っている……さらには各選手が勝負強く、存在感とプレッシャーを放ち、プレイ1つでフィールドの空気を一気に変える影響があるという。試合映像を見たが、実際にドリブル・トラップ・パスのどれをとってもフィールドの空気を変え、相手を飲み込んでいた。
『九州ブロック代表!初出場ながら名采配によって勝ち進む新星「南雲原中」!』
南雲原中は最近までサッカー部がなかったらしいが、今年になって新設―――いや、復活したようだ。キャプテン兼監督の笹波雲明の名采配による戦術の数々で、本戦出場を決めた新進気鋭とも言えるチームだ……個人的には、この南雲原中が1番厄介な相手になるのではないかと思っている。
そして……
『北海道・東北ブロック代表!無欲の精神で邁進する白銀の騎士「白恋中」!』
呼ばれた僕たちは、キャプテンのほろかさんを先頭に入場していく。僕の隣には零がおり―――うん、緊張はしてないみたい………むしろどこか楽しそうだし。
『関東ブロック代表!徹底的な組織プレイと完全な戦術で他を寄せ付けない「帝国学園」!』
帝国学園は、25年前に雷門中がフットボールフロンティアで優勝するまでに40年間無敗を誇っていた学校で、20のタクティクスによる戦術が武器だ。それは監督である不破アリスによるもので、その世界に引き込まれたら最後……落ちるしかないことから、「不思議なフィールドのアリス」と評されている。
『そして……前年度優勝の特別出場枠は、もはや説明すらいらない!無敗の王者「雷門中」!』
最後に入ってきたのが雷門中で、去年は雷門中に破れたことで白恋中は優勝を逃しているため、みんなはリベンジに燃えている………僕自身は今はいない円堂ハルと、自分の戦術や技術で戦って勝ちたいという気持ちが大きいから、復帰して欲しいんけどな……。
◇
「最初は南雲原対京前嵐山……冬真はどっちが勝つと思う?」
俺たちの試合は今日の最後のため、まずは全員で他の学校の試合を見ることになった。俺は隣に座ってフィールドの選手たちを観察している零に、これから行われる試合の勝敗予想を訊かれた。
「うーん、化身を使える京前嵐山中かな。化身使いのいる学校はそうそうないだろうし、対策も難しいんだろ?……そういう零は?」
「僕は南雲原かな……キャプテンの笹波雲明、多分だけど思考は僕と同じタイプかもだよ」
零はそう言って自分の頭に指を差した。
「ど、どういうことだ……?」
「まぁ、実際に生で見てみようよ」
零はそう言って、フィールドの方に目を向けた。俺も試合映像で見てきたけど、脅威には感じなかった………でも、零の言う通りに実際に見てみる価値はあるかもな……。
『さぁ!南雲原からのキックオフです!』
ホイッスルが鳴り、南雲原からのボールで試合が開始された。最初は順調なパス回しで、ゴールに迫っていた南雲原だが……
「甘いっ!」
「くそっ!」
途中でボールを奪われてしまい、ボールは京前嵐山のFWである西條リルに回った。パスを受け取った西條は、敵陣に向けて走り込んでいき……
「来いっ!魔槍剣聖クララバニー!!」
化身であるクララバニーを呼び出した。さらにそこから、フィールドの左サイドを駆け上がっていき……
「エンプレス・シャドウ!」
その勢いのまま化身技を放ったのだ。
「!氷結の―――くっ!?」
南雲原のキーパーも技を出そうとしていたが、タイミングが遅くシュートを決められてしまった。
「見たか!俺のクララバニーは誰にも止められない!」
その後、南雲原もゴールに向かって攻め込んでいくが……
「城壁巨兵ウォーボーグ!」
そこに京前嵐山のもう1人の化身使いである屋代統が、化身のウォーボーグを出して立ちはだかった。
「ディスペア・フォートレス!」
「なっ!?」
屋代は南雲原のFWからボールを奪うと、化身と共に南雲原のゴールに向けて駆け出していく。その途中で南雲原のMFが立ちはだかるが……
「ブラックメイル!」
「うっ!?」
オフェンス技を出し、西條にボールをパスした。
「決定的に試合を決めてやるか……始めるぜ、屋代さん!」
「いいよ……」
化身使いの2人が何かを示し合わせると……
「クララバニー!」
「ウォーボーグ!」
「「化身共鳴!!」」
切り札である化身共鳴を発動させたのだ。そして……
「はぁっ!エンプレス・シャドウ!!」
西條は威力を上げた化身技を放ったのだ。
「氷結の舞―――はぁっ!」
南雲原のキーパーも、今度は技を出してシュートを止めようとしたが……
「うわっ!?」
化身共鳴によって強化された必殺技を止めることは叶わず、連続で得点を許してしまった。さらに……
「エンプレス・シャドウ!!」
「氷結の舞―――ぐっ……!?」
南雲原は続けて得点を与えてしまい、西條はハットトリックを決めることになった。その直後、0-3で前半は終了し、試合はハーフタイムへと入った。
「やっぱり化身は強いな……零、南雲原がここから逆転するのは難しいんじゃないか?」
俺は零に向けてそう言ったのだが……
「いや、勝負は最後まで分からないよ。それに南雲原の木曾路君………試合が始まってからずっと、化身を出そうとしてるみたいだよ」
『!?』
返ってきたのは俺たちの想像していなかった言葉だった。南雲原が、化身を………というか、何で零はそれが分かって……?
「分かるの!?」
「まぁ、分かるようになったのは最近だけど………それで木曾路君は、さっきから南雲原の選手全員の気を集めているんだ。おそらくそれを基にして、化身を出そうとしているんだろうね」
全員の気を集めることで化身を……そんな方法が―――って、それも大事だけど!
「それで、何で零君にそんなことが分かるようになったの?」
ナイスほろか!………そう訊かれた零はというと、何故か気まずそうな表情をし―――
「……ごめん、それはまだ言えないんだ。でも、みんなの不利益にはならないことは信じて欲しい」
そう返してきたのだ。もしかして………切り札になる新しい技とかのことなのか……?だからその情報を漏らさないように細心の注意を払っているとか……。
それを察した俺たちは……
「そんな表情しなくても大丈夫だよ!」
「え?」
「私たちは零君を信じていますから~」
「そうだぞ零!」
「何か手伝えることがあったら、俺たちにも相談してくれ!」
零のことを疑わず、そう口にしていったのだ。
「!……うん、ありがとう」
そんな会話をしているうちに……
『さぁ、間もなく後半開始となります!』
『現在の得点は0-3で京前嵐山が優勢!果たして南雲原は、ここからどう反撃するのか注目です!』
後半が開始されようとしていた。後半が開始されてからも京前嵐山の攻撃は続くが、南雲原もそれを笹波雲明の采配で凌いでいく。すると……
「来いっ!エンターテイナー!!」
『!?』
零が言っていた通り、南雲原の木曾路が化身を出現させたのだ。
「やっぱり来たね」
れ、零の言う通り、本当に化身を……!?
『これはなんとーーーっ!南雲原が化身を出したーっ!』
『南雲原は、ここまで化身を温存していたのでしょうか?』
『どちらにせよ、これで勝負は分からなくなりました!』
化身を出した木曾路は、どんどん敵陣へと迫っていく。それを黙って見過ごすことわけがなく、京前嵐山の選手も止めにかかったが……
「サンライズカーニバル!!」
「うわぁあああああ!?」
化身技で相手を易々と抜いていったのだ。そしてそのまま……
「行っけぇ!!」
「なっ!?お、重い……!?」
ノーマルシュートでゴールを決めてしまったのだ。さらに、木曾路の勢いは止まらず……
「そこだ!!」
「ぐっ!?」
連続で2点目も奪っていったのだ。
「あいつ、初めて化身を出したというのにここまでとは……」
「木曾路君は覚醒したみたいだね………ははっ」
「零?どうし―――っ!」
南雲原を見て少し笑った零を見ると、目を輝かせながら南雲原の選手たちや監督である笹波雲明のことを見ていた。そんな零の目にはまるで、水色の炎が宿っているようにみえた……。
そして、試合の方はというと………
「ソジーーっ!お前ごときにーっ!」
「むぅうううう!!」
京前嵐山の化身使い2人で木曾路のことを挟み撃ちにしたが……
「なにーーーっ!?」
「信じられない……!?」
木曾路の化身が眩い光を発すると、京前嵐山の2人を吹き飛ばしてしまったのだ。そのまま木曾路は、南雲原のFWの1人である空宮征にパスを出すと……
「サンシャインブレード!」
「明鏡止水!―――うわっ!?」
空宮はシュート技を放ち、3点目を奪ったのだ。さらにそこから、南雲原の猛攻は止まらず……
「はいっ!」
「春雷!!」
FW2人が放つシュート技で4点目を奪い、南雲原が逆転したのだ。それから、南雲原は京前嵐山からゴールを守り切り……
『ここで試合終了!スコア4-3で南雲原の勝利となりました!』
『化身を擁する京前嵐山に、南雲原の化身が打ち勝ちました!』
結果は南雲原の勝利に終わり、これによって準決勝進出を決めた。
「本当に零君の予想通りになりましたね……」
「もちろん、南雲原が化身を出していても京前嵐山が勝つ可能性もあったよ。でもそれ以上に、木曾路君という全員の気を集める化身を使うのに最適な人物を選んだ笹波雲明………その采配勝ちと言ったところかな」
それから帝国学園対英愛学園は帝国学園の、雷門中対偉仁銘文堂は雷門中の勝利に終わり……
「零、みんな……行くぞ!」
「うん」
『おう!』
『はい!』
俺たちが法令館中との試合に臨む時が来たのだった。
読んで下さり、ありがとうございます。
今回は南雲原対京前嵐山の試合を見る回となりましたが、次回は白恋中対法令館中の試合を書いていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。