それでは、どうぞご覧ください。
『さぁ!本日最後の試合となります、白恋中対法令館中!』
『フットボールフロンティア常連の白恋中、そして四国の強豪である法令館中の対戦カード!これは目が離せませんね!』
僕たち南雲原は、化身使いを擁する京前嵐山を木曾路の活躍もあって倒し、準決勝へと駒を進めた。その後の試合では、帝国学園が英愛学園を破り次の僕たちの対戦相手となった。また、その次の試合では、王者雷門中が偉仁銘文堂を破り、こちらも準決勝へ駒を進めた。そして、次の雷門中の相手が決まる準々決勝第4試合が始まろうとしていた。
「なぁ、雲明。白恋が強豪だって言うのは分かるが、やけに熱心に見てるな?」
「何をそんなに注目してるんだ?」
桜咲先輩や木曾路の言葉に、周りのみんなも同意するように頷いた。確かに、前までの白恋中ならば試合相手になった時に対策などを考えていただろう………でも、北海道・東北エリア決勝戦では、僕の知る白恋中とは明らかに違う戦術をとっていたのだ。
「ある選手を見ておこうと思って」
「ある選手……?それって誰のことなの、雲明君?」
そんな忍原先輩の疑問に対し……
「……白恋の0番、氷月零」
「ひづき、れい……?」
「聞いたことないな……そんなに凄い選手なのかい?」
「それを実際に確かめるんですよ」
僕も例の試合映像を始めて見た時は、あの戦術は監督の采配によるものだと思っていた………だが、明らかに今まで白恋中がとっていた戦術とはまるで異なっていたのだ。そして、その試合で公式戦デビューとなった氷月零……彼が実質的に采配を振るっているのではないかと思い、それを確かめるためにこの試合に注目しているというわけだ。
「雲明がそれだけ注目してるんだ。俺たちもちゃんと見ておこうぜ!」
そんな征の言葉の直後……
『さぁ、法令館中ボールで試合開始です!』
ホイッスルが鳴り、試合が開始された。
◇
法令館中のボールで試合が開始され、あちらの選手たちは一斉にこちらに攻め込んできた。それに対し、僕たちは……
『序盤から果敢に攻め込んでくる法令館中に対し、白恋中は守りを固めていく!』
『しかし法令館中、さすがの連携でゴール前へと迫っていきます!』
最初は守りを固めながらも、相手が自陣に入り込んで来るのを待った。そして、法令館中のFW・MFの選手たちが完全に自陣へ入り込んだのを見て……
「行くよ……
氷結の陣・守」
僕は試合で初めて使うタクティクスを発動させる。すると、DF陣やゴール前にいるMF陣が、ボールを持っている選手を囲むようにして守りを固めた。
「いつの間に!?」
「囲まれた!?」
その結果、ボールを持った選手はパスすることもここからゴール前に向かう道筋も見つけることができず……
「ならば……フューチャー―――」
「はぁっ!」
「なっ!?」
オフェンス技を発動させる前に、DFが素早くボール取った。
「零!」
そして、ボールが僕に渡った瞬間……
「氷結の陣・攻」
『!?』
すぐさまタクティクスを切り替え、今度は逆に僕たちが一斉に敵陣に向かって走り込んでいく。
『ここで攻守反転!白恋中の選手たちが法令館中のゴールへと一気に迫ってきます!』
『まさに堅守速攻というべき戦術だ!』
「0番を止めろ!」
「機能させるな!」
法令館中の選手たちは、氷結の陣を機能させている僕に狙いを定めたようで……
「ここは抜かせない!」
僕の前に立ちはだかり、ボールを奪おうとしてくる………よし、来てるな―――
「じゃあ……召し上がれ」
「え……?」
「いただきます」
「は……?」
『な、なななんと!?白恋中の吹雪選手が、氷月選手のボールを一気に奪っていったぞ!?』
『これは一体、何が起きているのでしょうか!?』
僕がキープしていたボールを冬真が奪っていったのだ………これは冬真が暴走しているわけではなく、元から作戦でやるつもりだったことで―――
『法令館中はどういう戦術で行くか、もう考えてあるんだろ?』
『まぁね……法令館中との試合では、あっちの―――いや、みんなの教科書に載っていないサッカーをする』
『教科書に載っていないサッカー……?』
『どういうことなんだ……?』
『みんなには………ボールを奪い合ってもらおうと思って』
最初はみんな、こんな作戦で本当にいいのかと思っていたが……
「な、何だ今のは!?」
「あ、あれはサッカー、なのか!?」
この戦術は狙い通り、法令館中に刺さった………それにこのプレーは反則というわけではないため、あちらの言葉を借りるなら、ルール順守してサッカーをしているというわけだ。
「く、来るぞ!」
「止めるんだ!」
法令館中の選手たちが冬真を止めにくるが……
「ほいっ!」
「なっ!?」
いつの間にか上がってきていたほろかさんが、冬真のボールを奪ってゴール前へと駆け出したのだ。僕たちのプレーに混乱している法令館中が、ほろかさんのことを止められるはずもなく……
「エターナルブリザードV2!!」
その勢いのまま、進化させた必殺シュートを撃った。
「セーフティープロテクト!―――ぐっ!?」
『ゴーーール!試合開始から僅か3分で先制点!決めたのは白恋中キャプテン、朱鞠ほろかだ!!』
『それに加えあのタクティクスと戦術!それを担っているのは0番、氷月零選手だ!!』
法令館中のキーパーも必殺技を出したが、その勢いを止められずにゴールを許した。
「零君ナイスです!」
「ほろかさんもね。冬真もさすがだよ」
「いやいや、零の戦術あってこそだろ?正直、ここまで刺さるとは思ってなかったよ」
「2人ともありがとう―――あと、みんなに伝言。この試合はさっきの2つの形態しか使わない。それプラス今の戦術でゴールを狙って。ディフェンスも今の調子で守れって伝えておいて」
「手の内は隠しておくってわけだな……了解!」
「了解しました!」
2人はそう言うと、元のポジションへと戻って行った。
◇
「………なぁ、雲明」
「………何ですか?」
「あれってアリ、なのか……?」
味方同士でのボールの奪い合い、それから前半開始僅か3分での白恋の先制点に、みんなも僕も啞然としていた……。
「別にラフプレーをしているわけでも、反則をしているわけではないので、アリではあるんですが………僕もあんなの初めて見ましたよ」
「そ、そうか……」
だが、これで確定した………先程の『氷結の陣』というタクティクス、それにあの戦術を主導していたのは、間違いなく氷月零だ……!
「で、でもさ……あんな戦術、二度は刺さらないんじゃないの?」
征はそう訊いてきたが……
「……どうだろうね」
「えっ?」
「今あの戦術をやっていたのは氷月零を中心とした3人だけ………それだけでも混乱していたのに、さらに人数が増えるとなると―――」
◇
「止めるんだ!」
「それっ!」
「なっ!?」
「!そっちに行っ―――」
「よしっ!」
「くっ!?」
先制点を獲った後も、俺たちは自陣に入ってきた相手をDFたちの鉄壁の守りによってボールを奪い、そのボールを零やほろか、俺を中心としたFW陣で奪い合うようにパスする戦術で攻撃を仕掛けていた。それによって、相手を混乱に陥れていた。
「0番を囲め!」
「これで動けないだろう!」
零を潰した方が早いと考えたのか、法令館中の選手たちは4人で囲んだのだが……
「……隙だらけ」
『っ!?』
零にそんなものは関係なく、右上に上がってから左下に落ちるように回転を掛けたパスをしたのだ。そのパスをした先には……
「ふっ!」
「何っ!?」
「ドンピシャ……!」
こうなることを想定した俺が走り込んでいた。俺はそのボールをトラップすると……
「パンサーブリザード!!」
そのまま必殺のパンサーブリザードを撃った。
「バーニングキャッチ!!―――ぐあっ!?」
『ゴーーール!!4人に囲まれた状況から放った氷月選手の神業とも言える見事なパス!そしてそれを受け取った吹雪選手が必殺シュートを決めました!!』
『吹雪選手はよくゴール前に走っていましたね!氷月選手との見事なコンビネーションが炸裂です!!』
そのシュートは一瞬相手キーパーの必殺技に止められたが、こちらの方の威力が勝っており、すぐさまゴールへと突き刺さった。
「さすがだな零!」
「いや、冬真があそこに来てくれなかったら危なかったよ」
「いやいや、零ならあそこからでもドリブルで突破できたよ……それに、俺の方見てないのに見えてたんだろ?相変わらずいい眼してるよ、零は」
そんな俺たちの戦術に圧倒されていた法令館中の選手たちは……
「……どうしますか、キャプテン?」
「……あの技を使ってゴールを狙う」
「っ!了解です!」
ある作戦でゴールを獲ることに決めたようだ。そして、法令館中のボールで試合が再開すると……
「行くぞ!」
「っ!」
「「「トリプルブースト!!」」」
『!?』
『おおっと!ここで法令館中、試合開始直後に必殺技を放ったぞ!!』
いきなりロングシュートを放ち、俺たちのゴールを狙ってきたのだ。データにはなかった技だったのと、突然のことに反応できず、法令館中のシュートが白恋のゴールに迫ってくるが……
「ここでしょ?」
「なっ!?」
そのシュートの前に、唯一反応して戻ってきていた零が立ちはだかっていたのだ。そして、自分のところにボールが迫りくるタイミングで……
「ふっ!」
『っ!?』
右足に青白い光を纏わせると、そのままシュートを上に打ち上げてしまったのだ。それから零は、右足と同じ光を纏ったボールについていくように飛び上がると……
「彗星ブレード!!」
そのまま法令館中のゴールに向け、カウンターでロングシュートを放った。そのシュートは本物の彗星のように綺麗な尾を引きながらゴールへと迫っており、前の試合で零が見せた流星ブレード以上のスピードで向かってくるシュートに、法令館中のキーパーは反応することが出来ず……
『ゴーーール!!何と氷月選手、法令館中の必殺シュートを上に打ち上げたかと思えば、カウンターで新必殺シュートを出し、ゴールを決めたぞ!!』
『あのシュートにも唯一反応して戻って来ていましたしね……!まさに白恋の新星というべき存在でしょう!!』
そのままゴールへと突き刺さったのだ。その直後……
『ここで前半終了!スコアは3-0で白恋中が圧倒的にリードしています!』
『この展開も、氷月選手の読み通りなのでしょうか!』
前半が終了し、俺たちはリードすることに成功したのだった。
◇
「圧倒的、だな……法令館中も強豪なんだろ?」
「それなのに、前半でこんなに差が……」
「い、一方的過ぎませんか……」
「うん……これが雷門中なら納得できるんだけど―――」
前半の試合展開に、僕たちは差はあれど驚きが隠せずにいた。鉄壁の防御からすぐさま速攻を仕掛けることのできるタクティクスに、今まで誰も考えもしなかった戦術。そして、それらを実現させるための高水準のサッカー技能にサッカーIQ………何より、試合内での味方や相手の行動を予測しているかのような動き……。
「まさか、白恋中にこんなやつがいるなんてな……」
木曾路の言う通り、彼の試合映像を見ていた僕でさえ、そう思ってしまった………氷月零は円堂ハルと同じく、南雲原―――いや、全ての学校にとって最大の障壁となるに違いない存在―――そう、言うなれば円堂ハルとは別ベクトルの強さを兼ね備えたかいぶつ………
白恋のサッカーモンスター
読んで下さり、ありがとうございます。
今回は、零のオリジナル必殺技の『彗星ブレード』次を登場させました。この彗星ブレード、は零が流星ブレードと彗星シュートを参考に編み出した技となっています。
次回は後半戦へと突入していき、試合の決着まで書いていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。