夜が深まった頃、俺たちは旧貴族の館へと忍び込み、お目当てである彼らが溜め込んだ金品や財宝を物色していた。
ああ、ここにある金品だけでどれほどの人々が豊かになるだろうか、この一体の有力者である旧貴族の屋敷の金庫にある金塊を鞄に詰めながら俺は思った。
旧貴族ともなれば鞄に入り切らぬほどの金銀財宝を溜め込むことなど容易いことのようで、貨幣で言うなら庶民が一生かけても使い切れぬほどの価値を持つ財宝がゴロゴロと転がっていた。
ただ偉そうにしてるだけの奴らがどうしてこれだけ富めるのか、それは考えただけで頭が痛くなるようなことだった。
その富の一部である財宝を今から盗み出し、旧貴族が怒り狂う様が目に浮かぶようだった。
「しかし、いくら当主不在を狙ったとはいえ、警備が甘すぎやしないか?」
隣で美術品やらを物色しているカイルが怪訝な表情で問いかけた。
「さぁな。いくら旧貴族と言っても今となっちゃあ爵位無しだ。溜め込んじゃいるが警備に余計な金をかけたくないんだろう。未だ権力を持つ王家とは違って旧貴族の懐事情は潤っちゃいないのさ。それに、かつて貴族が保有していた宝具の数々は今や国に奉納されている。権勢を維持しようにも圧倒的に武力が足りていない。」
俺は適当にカイルに返答をした。九割俺の想像でしかないが、かつて貴族を名乗った有力者の家系でも、爵位を失ってから1世紀以上は経っているのだ。今の今まで遺産で食いつないで来たのだとしても、相続法やらなんやらでそれにも限界があるのだろう。
支払われる対価が軽いとなれば自然と警備の質もそれなりのものになるのも仕方のない話だ。
「宝具ね。こんなに大きな屋敷なら隠し持ってやしないかとは思ったけれど…。」
「所有が禁止されているのに持ってるわけがない。おい、カイル。そんなに宝具が欲しいなら三公爵の屋敷にでも忍び込むんだな。もちろん俺は協力はしないが。」
「はは、そんなの命がいくつあっても足りない。彼らが
「今時在処がわかる宝具なんてそれくらいのもんだろ。」
「かもしれないね。」
今回は警備の買収は行っていないが、旧貴族の屋敷ともなれば靡いてくるやつは必ずいるのだ。
もはや嘗て絶大な権勢を誇っていたとして、それに易易従おうとするのは少数派ということだ。
「さて、あらかた価値の高そうな物は集め終わったし、ずらかるとしよう。いくら杜撰な警備だからといって長居は良くない。」
「それもそうだな。」
カイルは頷くとそう言った。
それから俺たちは足早に屋敷をあとにした。