墓地で切腹していた男──転生者のヤマモトはひとしきり夜が明けるまで切腹、再生を繰り返し、カズマのパーティの精神をゴリゴリに削ってからようやくこう告げた。
「私の転生特典は超再生です。あれくらいじゃ死にません…心配ご無用」
「ふざけんな!」
カズマは言葉の意味を理解すると疲弊しきった顔でツッコミを入れた。既に墓地は誰も死んでいないのにも関わらず死屍累々、ゾンビもひっくり返って号泣するほどの血の海になっていた。これほどの血を綺麗にするにはアクアの
それよりひどいのはめぐみんである。ヤマモトが切腹した際顔に血しぶきがかかってしまい、今は血と自分の吐しゃ物で顔面がひどい有様だ。
「うーん、私もさすがにスプラッタは趣味じゃないな。彼とはさすがにわかりあえそうにない」
カズマ以外で立っているのはパーティメンバーではダクネスだけである。どこかズレた発言をしているがまだ余裕がありそうだ。
「……ダクネスの腹筋は刺しても剣のほうが折れるだろ」
「そっ…!それほどまでに鍛えこんでいるのですか!私も見習いたいものです」
「デマを流すのはやめないか!君も信じるんじゃない!私のお腹はぷにぷにだ!」
ダクネスの性癖もたまには役に立つようで、いつものようなやり取りにカズマも少しずつ落ち着きを取り戻し始めた……だが落ち着いたところでこの血の海が片付くわけではない。
「もしかしてこれ……クエスト失敗の上墓場を汚したことを怒られるんじゃないか?」
ゾンビメーカーの討伐依頼を受けたのはカズマ達である。ゾンビメーカー(実際はリッチー)に唯一勝てそうなアクアは気絶、めぐみんは起きていても使えるのが爆裂魔法のみ、ダクネスは防御以外ポンコツ、そしてカズマはただの冒険者……
──完全に詰みである!──
むしろリッチーと異常者がタッグを組んで襲いかかってこないだけ幸運と言えるだろう、だがこの現実の前にそれが慰めになるだろうか?
「……あの、もし都合が悪ければカズマさんたちはアクア様をお送りして今日はお開きにしませんか?お墓の清掃は私たちがしておきますから…」
今まで蚊帳の外にいたリッチー…ウィズが口を開いた。アクアがいれば猛反対しただろうが、あのバカは今気絶しているし、正直こんなゴアでグロな殺人現場からは一刻も早く離れたかったカズマにとってはまさに渡りの船、地獄に仏、異世界に女神である。
「やべえ、なんかアクアよりリッチーの方が女神に見えてきたぜ」
「ではサトウさんごゆるりと……後でお詫びに行きます故…」
「アンタは来なくていいよ。ていうか来ないでください。フリじゃないからな?」
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「は──!?カズマさんそれで逃げ帰ってきたの?私が起きるのを待ちなさいよ!」
「泡吹いてたやつが何言ってんだよ!あんなのノーモザイクじゃ見てらんねえよ」
カズマたちは屋敷に帰って数時間たった後、アクアはようやく目を覚ました。アクアは立ち直っているが、めぐみんはまだうなされている。
「泡ふいてたらなによ!私の体液は全部綺麗よ!ゲロじゃないだけいいじゃない!」
「ゲロを話題に出すのはやめろ。めぐみんが可哀想だろ」
「あっごめん」
「聞こえてましたよ──。ていうか吐くのはしょうがないですよ。顔にかかったんですよ顔に」
そんなことをやっているうちにめぐみんも起きてきたらしい。大分顔色が悪いがうなされていたときよりはましになっている。
「それに今度はもう吐きません。次会ったら爆裂魔法で…」
「さっき玄関にあの男が手紙を置いていったぞ」
「ひいっ」
「トラウマになってるじゃねえか」
アクア達が目覚める前、来るなと言ってはいたが男はこの屋敷にやってきていた。長居をするつもりはなかったようでどうやら謝罪の手紙だけ渡しにきたらしい。
「めぐみんも起きたし手紙を読むか……おーいお前ら集まれ!」
「あれ?なんかこの手紙鉄くさいですね」
「おいカズマ、これインクじゃなくて血じゃないか?」
「ヴォエッ!!」
「嫌がらせじゃねーか!」
まずは謝罪をさせていただきます。
「ねえカズマさん、これ本当に謝ってる?」
「俺に聞くなよ」
そしてウィズさんの件ですが、もしもウィズさんが正当な理由なく人間を傷つけた場合……
「おお、これ俺も気になってた。どう落としどころをつけるつもりだ?」
「はー?何もしてなくても浄化しますけど?」
「悪役かおまえは」
私ヤマモトとサトウカズマが腹を切ってお詫びいたします。
「俺は関係ないので失礼する」
「おいまて、失礼するんじゃねえ」
「だって俺聞いてないよ???」