トリニティキツネモドキはエデン条約を破壊したい   作:ウガツホ村

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ギリギリ隔日投稿。
水着パーティー(表)とコハル視点です。
原作キャラの嘔吐を示唆する表現がありますので、閲覧注意でお願いします。


9話:水着パーティー【セチア/コハル】

◇◇◇◇

 

 

 

「では記念すべき第1回、補習授業部の水着パーティーを開催します♡」

 

「うぅ……。なんで、どうしてこんなことに……」

 

「“色々とすごい状況だ……”」

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 窓を叩く激しい雨音が、寝起きの頭に容赦なく響く。私がキヴォトスに赴任してから初めて見るレベルの、外に出ることすら躊躇われる土砂降りの朝だ。向かいの部屋を窺えば、外せない用事があると言っていたセチアは既に()った様子。

 

 プールで水嫌いだと語ったセチア。そんな彼女が外出する日に限ってこんな空模様とは。あの後調べた3年前の()()を思えば、世界は彼女に優しく出来ていないのかもしれない。

 

 さて、一人また一人と補習授業部の面々が起きて来る中で、珍しく最後まで残ったのはアズサだった。その前(ブービー賞)もコハルだったし、有翼生徒が雨に弱いというのは本当なのかもしれない。ハナコ曰く可愛らしい寝言だったそうで、少なくとも魘されているわけではない様子。昨夜ちょうど睡眠不足を心配していただけに、どんな形であれアズサが長く眠れたことは嬉しく思う。

 

 

『忘れてました、洗濯物が外に……!』

 

 

 そんな少しだけ変わった朝の一幕は、かつてない程に焦ったハナコの一声と共に、とんでもない非日常へと形を変えた。

 

 洗濯物を取り込むために外を駆け回った一行。回収した衣服は当然として、今まで着ていた体操着も全滅。ひとまず水着で凌ぐ――なんと他に着替えがなかった――ことにすれば、果ては突然の落雷で旧校舎が停電。洗濯機はその口を固く閉じてしまうし、服装以上にこの暗闇の中では勉強などもっての外。

 

 戸惑う一同をまとめ、意見を募る。大人しく部屋で休むという真っ当なものから、こんな時こそ楽しむべきという年相応にはしゃいだものまで様々。結局は、やけに押しの強いハナコによって、急遽“水着パーティー”なるモノが開催される運びとなった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「私こういう(青春っぽい)こと、すっごくしてみたかったんです。本当なら全員が揃っていたら良かったんですが……せっかくの機会ですし」

 

「まあまあ。流石にこんな場面はもうないでしょうけど、お話だけならまたすればいいですし……」

 

 

 古い建物であることが幸いし、配備してあった灯油ストーブ。私以外には馴染みがないらしい円筒形のそれを囲み、暖を取りつつ語り合う。他愛もない噂話から、それぞれが補習授業部に対して(いだ)いている想いといった深いところまで、様々。

 

 トリニティの水族館に“ゴールドマグロ”なる珍生物が展示されているという話から発展した、みんなで海に行こうという約束。一度も海を見たことがないと言うアズサに驚く一同。中でもヒフミは「絶対に海を見せてあげたい」のだと、一際気合が入っていた。

 

 とっくに潰れたアミューズメントパークにて、夜中に動き出すナニカがいるという怪談。ハナコの語りに可哀そうなぐらい怯えるコハル。「実体があるものならば撃てば良い」と言ってのけるアズサは、相変わらずちょっと物騒だ。形だけ苦笑しているヒフミも、内心は怖がっていない様子。“死”が遠いキヴォトスでは幽霊へのイメージがこうも違うのだと、少しギャップを感じた。

 

 水着徘徊を肯定する意見の例として挙げられた(ダシにされた)“覆面水着団”の話。実態は異なるが……確かに名前を聞いてイメージする、水着姿に覆面というのは奇抜な恰好だ。「ド変態な上に犯罪集団とか……」とドン引きするコハルに、当事者たるヒフミも流石に閉口している。

 

 それから話は流れて……アズサがしみじみと呟いた「ここはもう『慣れない場所』ではない」という言葉が契機となった。補習授業部での生活が楽しかったと語るアズサに、感極まって抱き着くヒフミ。実に素晴らしい光景だ。日々の暮らしやモモフレンズを通じての交流など、絆を深めていた自覚はあっただろう。ただ、単独行動の多さや読み取りにくい感情に、それが本当に独善でないか確信が持てなかったと。

 

 安堵から半泣きになったヒフミや彼女を宥めるコハルは聞き逃したようだが、アズサはこうも零した。

 

 

「だってこの世界は、全てが無意味で、虚しいものだ。だからいつか、私はみんなのことを……その信頼を、その心を裏切ってしまうかもしれない」

 

 

 その意味を、私は部分的に知っている。だが、私の知るアズサは優しい子で、“裏切者”などと呼ばれる人物では決してない。本人の言うように、知らないことはこれから学んでいけば良い。時が来て、相談してくれるようならば力になる。聡いハナコは何かを察したかもしれないが、ひとまずは彼女も静観することに決めたようだ。こちらに目配せした意図を汲み、話を振る。

 

 

「“良かったら、ハナコの話も聞きたいな”」

 

「あら?私はコハルちゃんのお顔が、もう話したくて話したくてたまらない♡って――」

 

「してない!私そんな顔してないってば――」

 

 

 ……訂正しよう。ハナコが心を開いてくれるのは、まだまだ先のことらしい。ここにいないセチアといい、中々手強いものだ。

 

 結局ハナコに押し切られたコハルも――先のアズサに思うところがあったのか――かなり赤裸々に自分の想いを語ってくれた。捉えようによっては、私が言わせてしまったようで申し訳なかったが……コハルにとっても、補習授業部が良き居場所になっているようで安心した。“部長”として気負うヒフミの心労もかなり軽減されたようで、実りある時間だった。

 

 その後、電力は復旧し洗濯も無事に終えることが出来たが……大事を取って残りの時間は休息に充てることにした。夕食前に合流したセチアも、アズサやコハルの“デレ”を見逃したことを心底悔しがっていた。

 

「ウチが通院してる間に“水着パーティー”なんて『先生』も隅に置けませんねぇ」なんて言うものだから、ハナコが悪ノリしてひと騒動起こったりもした。今日も二人の相性はバッチリらしい。

 

 そういえば、誰もセチアの前で“水着パーティー”という言葉は使っていなかったと記憶しているが……気にし過ぎか。おそらく、水着姿で懇談会をしたという情報を端的にまとめる言葉として、そのような表現をしただけだろう。

 

 未来を予知するなんてトンチキな能力は、それこそ()()()()()()()()()()存在しないのだから。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

『お前が例の桃髪(ピンク)か……。黒じゃないやつは久しぶりに見たな』

 

 

 私が正義実現委員会(正実)の一員となって、初めてツルギ委員長と顔合わせした時のことだ。

 

 二年生の先輩方に連れられ、正実の訓練場に集められた新入部員たち。憧れの正実の一員になれた喜びや、自分に責務が務まるのかと不安に思う声。そして何より、突然何の説明もなく訓練場に連れて来られたことに対する困惑。交錯する様々な思いが織りなす喧騒は、たった一つの爆発音を前に消し飛んだ。

 

 一瞬の静寂の後、立ちどころに響く悲鳴、絶叫。何者かに襲撃されたと理解するより前に、瞬く間に伝播した恐慌が訓練場を包み込んだ。他人を押しのけ、我先にと逃げ出す者。愛銃を握りしめ、その場で縮こまる者。追撃がない事を訝しみ、冷静に周囲を見回す者。何とか収拾をつけようと、必死に声を張り上げる者など、様々。

 

 何が何だか分からない中で、視界の隅に蹲って動かない子の姿を捉えた。人の波に押され、あわや踏みつけられそうになっているその子。身体が動いたと理解したのは、その子を庇うように立ち塞がり、もろともに押し潰された後のことだった。

 

 結局、あの爆発音は先輩方の仕込みによるもので「常在戦場」を叩き込むためのデモンストレーションだったそうだ。毎年恒例らしく、手当をしてくれた先輩は「私はもっと穏当な方法で良いと思うんだけど、内部生の先輩方々が強硬なんだよね」って苦笑していた。多少の怪我人は出たが、みんな軽傷で済んだそう。私が下敷きにしちゃったあの子も、幸いにして無事だった。「守ろうとしてくれたことが嬉しかった」と言う彼女。自分の行動が無駄じゃなかったと安堵すると同時に、気を遣わせてしまったことに落胆したことを覚えている。

 

 その後、ツルギ委員長やハスミ先輩たちから歓迎の挨拶があったが、何を話されていたのかはあまり覚えていない。気が付けば私を含めた数人が残されていて、一人ずつツルギ委員長と相対することになっていたのだ。

 

 私の隣には身の丈ほどのスナイパーライフル(SR)を担ぐ、ボブカットの女の子。先の騒動において、新入生の中ではおそらく最も冷静であった彼女。相手側も口数が多いタイプではないらしく、お互いに名乗ることはなかったけれど……先輩方によると静山(しずやま)マシロというらしかった。

 

 ツルギ委員長と一言二言言葉を交わし、ハスミ先輩に背を押されて戻ってくる同期たち。正実のツートップによる直々の激励に、みんな重圧こそあれ、それ以上に奮起している様子。そんな中でついに私の番となり、両の手足が同時に出るくらいに緊張して向かった先。その開幕で放たれたのが、先の委員長の言葉だ。

 

 何のことかは全然分からなかったけど、とりあえず褒められていないのだと思った。だって……正実の先輩方にも同期たちにも、黒以外の髪色の人はいないのだから。正実の一員となるために教会で洗礼を受けても、黒に染まらなかった私の頭髪。お前は神様でも救えない程の頭ピンク(エッチ)だと言われたようで、強いコンプレックスに感じていたソレ。

 

 

『ああ、すまない。こちらの話だ。忘れろ』

 

『それで、フィジカルはそこまでだが……()()()心は強いと見える。精々、トリニティの役に立つよう励め』

 

 

 ぶっきらぼうに切り上げたツルギ委員長が一歩下がり、ハスミ先輩と入れ替わる。私が正実を志すきっかけとなったあの日のように、優しく微笑む先輩。彼女は俯く私の内心を察していたのだろう。その長身を折りたたむように膝をつき、私の頭をゆっくりと撫でた。そして「ツルギは不器用ですから……」と前置きした上で、こう言った。

 

 

『貴女のその素敵な髪色について、何も恥じることはありません。それは、洗礼でも染め上げられないほどに、貴女の芯が強いことの証左なのですから』

 

『ですから、ツルギも私たちもみんな……貴女には期待しているのです。もちろん、期待を重圧と受け取る必要はありませんよ。貴女は貴女らしく、己の信ずる正義に殉じて務めれば良いのですから』

 

 

 それは、まさしく天啓だった。私は“エリート”なんだって、そう思った。実際、正実の活動に参加するようになって、先輩方から目を掛けられていた自覚はある。その雰囲気が同期たちにも伝わってか、仲良く(チヤホヤ)してくれる人も次第に増えた。

 

 でも未だに銃撃戦は苦手で、応急措置か事態終息後の手当くらいでしか役立てない日々が続く。だから、押収品管理係の任を拝命した時は、重要な役目を任された誇らしさこそあれど……ついに愛想を尽かされたのだと思った。

 

 戦闘で足を引っ張っているという自覚は、訓練場に足を運ばせるには十分だった。時間があれば通い詰め、愛銃を振るった。でも、射撃の腕は上がらないどころか、元々良くはなかった学業の成績までも下がり始めた。

 

 そこからはもう、転落の一途を辿るだけだ。私は“エリート”であるというプライドが、期待されているという自覚が……周囲に相談することを許さない。独りで勉強しても何も変わらなくて、次第に正実として武力さえ備えればいいと、勉学を切り捨てる(目を逸らす)ようになった。でも、犠牲を払って訓練しても、相変わらず私は雑魚のままで……その内腐って押収品を横領し、趣味の世界(エッチな妄想)(ふけ)るようになった。

 

 補習授業部に呼ばれたのは、そんな折のことだった。もうとっくに“エリート”だなんて自覚はなかったけど、テロリスト(白洲アズサ)露出狂の痴女(浦和ハナコ)と一緒にされるまで零落れたとは思いたくなくて……最初はみんなにキツく当たってしまった。先生だって、生徒の脚を舐めた(銀鏡イオリ)だの、裸を覗いた(天童アリス)だのとエッチな噂しか聞いたことなかったから……先生を尊敬するハスミ先輩には悪いけど、全然信用していなかった。

 

 でも、恥ずかしいからあんまり言いたくないけど……補習授業部での生活は楽しかった。お勉強がこんなに上手くいったのは初めてで、誰かと教え教わり合うことの大事さを知った。「下着と水着に違いはない」とか私にはまだ早い趣味(あの変な鳥……鳥??)とか……分かんないところはたくさんあるけど、みんなが悪い人じゃないのは分かった。

 

 そこっ!そのニヤケ面やめて!!そっちも、微笑ましい目で見るなぁぁ!!!

 

 こほん。ともかく、みんなには感謝してるの。アズサは遠慮がないし、ヒフミはあの鳥(ペロロ)を語る時の目が怖い。ハナコもセチアもエッチだし、すぐ抱き着いてきて鬱陶しい。先生もだよ!?よ、夜中に集まってアレやコレやしてるって、まだ疑ってるんだから!

 

 だけど……と、友達だとは思ってるから!これからも、その……一緒にいてくれると嬉しいなぁ……って。

 

 セチアのやつには内緒にしといてよね。このあり得ない状況(全員スク水)で、気が動転してたから言っただけで……こんなこと言ったらアイツ、思いっきり揶揄ってくるに決まってるし。

 

 ほら、ハナコも離れてよ。「コハルちゃん……そんなに私のこと///」じゃないの!アンタの本命はセチアでしょ?二人だけに通じるナニカがあるの知ってるんだから。私だけが恥ずかしい思いするなんて不公平だし、ハナコもなんか話しなさいよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

『キヶ……その黒翼(はね)、その構え。それに、そのふざけた耐久力(傷つくほど硬くなる)……。どういう理屈かは分からないが……お前、アイツを喰ったな?』

 

『だいせ~か~い!そっか、委員長は○○ちゃんとお友達だったもんねぇ?……それで?あの子に続いて「先生」まで喪った貴女に、今更なにか出来るとでも?』

 

『……正義実現委員会、剣先ツルギ。拝命に従い、“トリニティの裏切者”を捕縛する』

 

『へぇ、怒んないんだ。つまんないなぁ……仇討ち、出来るといいね?』

 

『きええぇぇぇぇぇっ!』

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 永きに渡り憎み合う隣人たちが手を取り合うには相応しい晴れの舞台。その象徴となる青く澄み渡った空は、凄まじい破壊音と共に赤黒く塗り潰された。私はその瞬間を見たわけではないけれど、弾丸のように飛び出したアズサを追って慌ててカフェを出てみれば、遠くの空が割れているのが見て取れた。

 

 その後、みんなと学園に戻ったはいいが、蜂の巣を(つつ)いたような騒ぎに飲まれバラバラに逸れてしまった。右も左も分からない中、肩書こそ違えど(今は補習授業部)正実の一員として、務めを果たそうと藻掻いていたその時……最悪の知らせが届いた。

 

『シャーレの先生、調印式会場にて意識不明の重体』

 

 その凶報に加速する混乱の中、(たらい)回しにされた先の監獄で、ミカ様に暴力を振るう白服たち(パテル派)に抗うことしばらく。何が正しいのかなんて分からないけれど……抵抗もしないミカ様を大勢で袋叩きにするのは、絶対に間違っていると思ったから。相容れない邪魔者()への容赦のない攻勢に、限界が近付いていた、その時。

 

 

『“私の生徒に、手を出すな”』

 

『コハルちゃん、お疲れ様です。……ここからは私たちが何とかしますから』

 

 

 かつて見たことがない程に険しい表情の先生と、感情の削げ落ちた冷徹な顔をしたハナコ。二人の剣幕に過激派の生徒たちは呆けたように武器を下ろし、嘘のように大人しく正実の仲間たちに連れていかれた。

 

 聞けば()()()()重傷を免れた首脳陣(ナギサやサクラコ)が帰還したことで、代理で陣頭指揮を担っていたハナコの手が空いたらしい。正体不明の攻撃で一時は昏睡状態になった先生も、存外早く復帰できたそう。……その下手人がセチアだというのは、信じたくなかったけど。

 

 

『思い上がらないでください。コハルちゃんにここまでさせて、貴女は何も思わないのですか?』

 

『“ミカも、一緒にセチアを叱りに行こう”』

 

 

 全ての惨劇は自分のせいだ悲観するミカ様を一喝したハナコ。優しく手を差し伸べる先生。

 

 逼迫した空気は感じているのだろう。自分がどうすべきかも、本当は分かっている。それでも、自称すらした“魔女”の誹りが、足を動かすことを許さない。そんな揺れ動く橙の瞳がこちらを捉えた瞬間、私の言うべきことが定まった。

 

 

『ミカ様は、私たちの大切な仲間です!……一緒に、戦ってくださいっ!!!』

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 そうして駆け付けた、調印式会場だった古聖堂の跡地。ミカ様という特記戦力の参戦で学園の防衛に余裕の出来た分、多めに先生の護衛を連れての進軍。

 

 そこで見つけた、蹲って空を見上げるヒフミとボロボロなアズサ。遠目に窺う酷く痛めつけられた様子の四人組(アリウススクワッド)。二丁のショットガン(SG)を杖にどうにか立っている、肩で息をするツルギ委員長。蹴散らされた正実やシスターフッドのみんな。そして彼女らと相対する、別人だと錯覚してしまうほどに歪な生徒――百合園セチア。

 

 見たこともない、モノクロのちぐはぐな翼で宙に浮かぶ金色の獣人。どう見ても飛べるはずもないその身体は而して上空にあり、こちらを睥睨している。いつもの胡散臭い糸目は見る影もなく、露になった左右非対称の瞳は一切の感情を宿していない。その一方で、現状にも本人の有様にもそぐわない、いつも以上に軽薄なしゃべり口が脳を揺さぶる。

 

 

『あれ~?また会ったねぇ「先生」。……かくして“聖人”は蘇り、漸く役者が揃ったってとこかな』

 

『どうしてこんなことをしたのかって?……「先生」はさぁ、この期に及んで対話でどうにかなると思ってるんだ。肉親の情?紡いだ絆?……バカだねぇ。諦めが悪いみんなに、言っといてあげるよ――――』

 

『それなりに楽しかったよ?トリニティでの“お友達ごっこ”』

 

 

 だめ、やめて。もう見たくない。聞きたくない。

 

 

『ん?コハルもボロボロじゃんか。そっか、ちゃんと(・・・・)ミカのこと守ってあげたんだね。えらい、えらい!』

 

 

 おねがい、ゆるして。ちがうの……わたし、そんな。

 

 

『そう言えば私ね、コハルに言いたいことがあったんだよ。ほら、コハルってよく“死刑”って言ってたでしょ?まぁ、ただの口癖なのは分かるし、全然そんなつもりもないんだろうけど――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああぁあぁぁぁっ!!!」

 

「はぁ、は……うっ!」

 

 

 ベッドを蹴飛ばし、階下への配慮など投げ捨てて、真っ暗な廊下を駆ける。片開きの扉を乱暴にこじ開け、白陶磁の器に顔を(うず)めるように蹲る。

 

 

 食事もまともに喉を通らないのだ。出すものなんて、当然何もない。そんなことはとうの昔に理解しているが、この()()()を黙らせるには……こうして、ここで蹲る他はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私に“死刑”って言ってくれてありがとう』

 

『私を“死刑”にし(赦し)てくれてありがとう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おぇ」

 

 

 学生寮というには立派なその建物の一室。部屋を覆うひっそりとした静寂に、今夜もまた少女の嗚咽が溶けていった。

 

 

 

 




エデン条約(本物)を読み返し「これを変えるってマジ?はぁ?」となりました。

完結目指して頑張ります。

次回はVS美食研究会になるかと思います。
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