トリニティキツネモドキはエデン条約を破壊したい 作:ウガツホ村
強調ルビや罫線などがそうですが、その辺の勉強もしつつ適宜修正しようと思います。
今回は夜の散策編です。
◆◆◆◆
「ん?どうした、イチカ。闘気が漏れているが……」
「うぇ、マジっすか!?……気を付けてはいるっすけど、最近ご無沙汰だったから?」
「後輩たちがいない時で良かったな。それと、今のところ目立った被害はないから黙認しているが……夜遊びは程々に、な?」
「アハハ!私もあの子も、ちゃんと場所選んでやってるんで大丈夫っす。一応名目としては不良の鎮圧なんで、これも仕事の内っすから」
武装した黒衣の天使たちが忙しなく出入りする、正義実現委員会の所有する建物。その上階にて
「そういえば、あの子の戦い方ってツルギ先輩に似てるっすけど、手解きとかしたことがあったり?仮にもお姫様って呼ばれる人物のやり口じゃないんっすけど」
「あの子と言うと、セイア様の妹君か……。いや、接点はない。あの方が戦っている姿は想像できないが……そうか、お前がご執心の相手はセチア様だったか」
「ご執心って……今はただの喧嘩友達ですって。ってか、私が節操なしみたいに言わないでほしいっす!」
「ふん、どうだか……。ああ、要件だが……ゲヘナとの緩衝地帯で
「っす」
話は済んだとばかりに踵を返す、“トリニティの戦略兵器”と呼ばれる上司を見送る。平時はその堕天使のような見た目に反し冷静沈着であるが……戦闘で昂った際の“狂犬”としての側面もまた、紛れもない彼女の本性であろうに。意外と乙女な我らが上司は、自身に対する暴力装置のような扱いを気にすることがある。それでも、その名が強大な抑止力となっていることを理解し、“
人目を憚らずに暴れることが出来る彼女のことが、少しだけ羨ましい。自ら望んだことではあるが……煮え滾る内面を押し殺し、人当たりの良い“仲裁役”を演じ続けるのは存外疲れる。先輩方には頼られ、後輩たちにも慕われる。一般生には気安く話しかけられ、不良どもには舐められる。誰も彼も、自分たちが薄氷の上を歩いている自覚がない。
始めは努めて作っていた
『私が言うのもなんだけど……そのブサイクな顔、やめたら?』
それはまさしく、運命の出会いだったと自覚している。
不良同士の抗争があったと通報を受け、夜中にも関わらず駆け付けた倉庫街の一角。天井が派手に吹き飛んだ廃倉庫の中で、くたばった不良の山の上に腰掛ける下手人。差し込む月明かりに映える金色の毛並みを持つ少女は、見惚れる私に気付くなりそう言ったのだ。
似合わない2丁のゴツいショットガンが火を噴き、瞬く間に無力化された分隊長の先輩と、当時まだ新入生だった同期たち。己の底を見透かされたような錯覚と、新しく出来た仲間たちを傷付けたという事実は、私を逆上させるには十分だった。
それからのことはあまり覚えていない。気付けば苛烈な破壊痕の残る地面に横たわっており、隣には同じように寝転ぶ彼女の姿があった。「大暴れしてスッキリした」と笑う彼女に釣られて、どういうわけか私も「またここでやり合おう」などとトンチキな返事をしたものだ。
結局、この日のことは闇に葬られた。さっきの反応的にツルギ先輩すら知らないようだったから、相当念入りに手が回っている。対外的には「不良集団による罠通報で窮地に陥った正実分隊が、辛くもこれを撃退および捕縛」というストーリーらしい。私もめちゃくちゃ念押しされたし、あの場にいた同期たちは軽いトラウマになっている模様。
この頃には既に
そんな馴れ初めがあって、セチアとは今も時々
だから精々、事が終わったら……一度くらいは盛大に暴れてやるのだ。ツルギ先輩もハスミ先輩も呆れるだろうし、後輩たちもびっくりするかもしれない。堅物のようで意外と過激なマシロあたりはすんなり受け入れてくれそうだが、逆にコハルなんかはこちらを柱の陰から窺う姿が想像できる。
だが、次代の正実の看板を背負うものとして……「剣先ツルギさえいなくなれば」と思い上がった連中を許してはならない。不良どものルールではないが、抑止力たる軍事組織が舐められるなどあってはならない。
「楽しみっすねぇ……」
うっすらと開いた瞼の隙間から漏れる、妖しい薄青の輝き。誰に向けるでもない、隠しきれない戦意で彩られた呟き。総じて、普段の人好きする表情からは想像もできないほどに、今の彼女には色気があった。
◆◆◆◆
どうもこんばんは、やんごとなき事情で泣く泣く水着パーティーをスルーした百合園セチアだよ。
いや~、今朝はごめんね。雨の日はどうもダメなんだ。元々嫌いだったけど、羽が生えてからは洒落にならなくなった。アズサやコハルも寝坊かましたみたいだし、個体差はあるけどそういうものだと思ってもらえば。
さて、水着パーティーが終わったということは……皆さんお分かりの通り、補習授業部総出での深夜徘徊だよね!まあ、深夜と言うにはまだ早いし、ただ普通に街に繰り出しただけなんだけど。
『合宿の醍醐味と言えばやっぱり、宿舎を抜け出すことだと思いませんか?』
興奮冷めやらぬといった様子のハナコに押され、なし崩し的に外出が決まった一行。コハルの押収品の時にも思ったけど、「先生」って意外とノリが良いよね。「バレなきゃ犯罪じゃない」とか「楽しいから大丈夫」とか。自分の持っている規格外の権力を分かった上で、最悪の場合は自分が責任を取ればセーフだと思っている節がある。
午前中の延長戦とばかりに姦しくお喋りしながら、夜のトリニティ市街を進む。その中で、コハルが強く慕う先輩である
この与太世界でも、ゲヘナの行政トップたる
これでも私は「羽沼マコトは爪を隠している」説を支持している。半分くらいは「そうだったらいいな」という願望だが……実際ただの無能では、ゲヘナ学園などという無法地帯を形だけでも統治することなどできない。現ゲヘナ最強の駒である
「原作」ではアリウスに騙され、飛行船に乗ったまま撃墜される彼女。アリウスと共謀してトリニティを滅ぼそうと画策していただけに自業自得ではあるが、問題はそこではなく……その耐久性にある。キヴォトス人と言えど重傷は免れない破壊力をもってしても、なんと髪がアフロになるだけで済むのだ。
総じてギャグ時空の存在なのだが、
話を戻そう。現在地は学園に近い位置だけあり、夜間でもかなり治安が良い。もちろんキヴォトス基準だけどね。トリニティ生徒はカツアゲ被害に遭いやすい――事実金持ちが多いし、金で要らぬトラブルを避けられるなら儲けものと思ってる生徒も少なくない。不良側もそれを分かっているので大抵は程々の要求で済ませる――けれど、流石に正義実現委員会のお膝元で狼藉を働く輩はいない。大したトラブルもなく、目的地の喫茶店に到着した。
「先生、それにコハル……というか補習授業部の皆さん?」
「えっ、ハスミ先輩!?……あぁあぁぁぁ……終わった」
ヒフミが以前訪れたことがあるという、限定パフェとやらが有名らしいその店内にて。我々が相対したのは、先生が思わず胃を押さえるほどのクソデカパフェを贅沢に3つも頬張る……マコト様の言うところの
敬愛する先輩に規則違反の現行犯を見られたということで、コハルがえらいことになっている。確かに、コハルだけがこの冒険に最後まで難色を示してたもんね。アズサを除けばここにいるのは規則違反の常習犯ばかりだし、そのアズサも軍規はともかくトリニティの規則には疎い。悲しいことだが、補習授業部はアウトローの集まりなのだよ。
「あはは、大丈夫だよコハル。『バレても誤魔化せば犯罪じゃない』んだし、それが
「あら?ハスミさんはダイエット中とお聞きしましたが……心中お察しします。悪しき欲望に取り憑かれて、きっとご自分ではどうしようも……」
「え……!い、いいえ、これはその……」
「秩序の守護者として、全生徒の模範となるべき正義実現委員会。その副委員長ともあろう者が、こんな夜更けに学園を抜け出し……あまつさえ後輩との約束を反故にしてスイーツをドカ食い。こんなの、何者かに操られているとしか思えません!」
「コハルちゃんが貴女のことを語る時のキラキラした目を思えば、これが貴女の本意ではないことくらいわかります。こんな尊厳破壊……私、許せません!一体、誰にやられたんですか?一緒に借りを返しに行きましょう!!」
「う、うぅ……」
「“は、ハナコ……?もうそれくらいで……”」
話を有耶無耶にする時のコツとして「相手に喋らせない」というものがある。今回で言えば私たち補習授業部も規則違反者なのだけれど――何ならハスミの方には、正実の夜警任務で外出していたなどと言い訳できる余地がある――それを指摘されると「正しいことを言った」という自信が相手に生まれる。だから一方的に捲し立てて、相手に反論の隙を与えない。すると相手は自分のメンタルを回復できないことでジリ貧になり、どこかでサンドバッグ状態から脱するために妥協をするのだ。「確かに私も悪かったから、お相子ってことにしませんか」ってね。
ハナコってばトリニティのこと大嫌いなのに、
それにしても……結構派手にやったし、これは帰ったらフォローが必要かな?ハナコにとってのトリカス仕草は自傷ダメージを伴う諸刃の剣だもんねぇ。聡明な彼女がそれを知らないはずはなく、過去に何度も自己嫌悪を繰り返しているのに……それでもなお
今回はコハルの憧れであるハスミが相手だったから「コハルのために立ち上がったのに、間接的にコハルを貶めた」という結果を得たわけだ。こうなるのが分かっていて、それでも振り上げた拳を下ろせない。それだけ補習授業部を大切に思っているってことだけど……もう、本当に不器用なんだから。
◇◇◇◇
「……こほん。失礼いたしました。ここはお互いに、見なかったことにするとしましょう」
「それと……お勉強頑張っているそうですね、コハル。先生から聞きましたよ。この調子であれば来週にも、正義実現委員会の方に復帰出来そうだと」
自棄になったのか追加でパフェを頼んだハスミを加え、みんなで談笑することしばらく。共通の話題ということもあり、自然とコハルを褒める会と相成った。「コハルはやればできる子ですから」と語るハスミに、照れながらも為すがままのコハル。彼女の頑張りを知るヒフミや先生たちも微笑ましく見守っている。マスターらしき人までほっこりしてるんだけど……さては常連ですね、ハスミさん。
ちょっぴり疎外感を感じたから、隣で黙々とパフェ山を崩すアズサを餌付けして誤魔化すことにした。ほら、ウチのケーキも食べな。あはっ、羽根パタパタしてんじゃん。そんなに気に入った?……何というか、嗜好品に慣れていないだけあって、リアクションが一々可愛らしいなぁ。平和な世界でのお金の使い道、これからみんなにいっぱい教えてもらってね。
ところで、波乱万丈のキヴォトス生活が約束されている「先生」を囲んでいる限り、和やかなシーンというのは長続きしないと相場が決まっている。
水を差すように着信を告げたハスミのスマートフォン。会話が進むにつれ不機嫌になっていく彼女。外から聞こえる爆発音は次第に大きくなり、下手人がこちらに迫っていることを如実に物語っている。
『今のツルギ先輩止められるの、ハスミ先輩だけっすけど……『ドガァァァ!!!』……あー、行っちゃったし……また青空生活っすか、これ?』
「……先生とご一緒していますので、お力もお借りしつつ事態終息に務めます。毎度のことで申し訳ありませんが……イチカは後輩たちを連れて後始末に当たってください」
『えっ、先生がいるっすか?ちょっ、もしかしてセチアも!?……ダメっす!この件は私たちだけで対応しないと――』
「いえ、妙案がありますので心配には及びません。それでは」
『待――』
「(ピッ)」
◇◇◇◇
「突然のことで申し訳ありませんが……先生ならびに補習授業部の皆さん、是非お力添えをお願いします」
つい先程、正義実現委員会の後輩、
今も外から聞こえる、夜の市街地には似つかわしくない爆発音。それを
己が信ずる“美食”への誇りを胸に活動する彼女らは、その強すぎる信念が故にキヴォトスの各地で騒動を巻き起こしているのである。今回は水族館で展示されている“ゴールドマグロ”を食すべく、わざわざトリニティに乗り込んできたのだとか。悪い子たちではないのだが……相変わらず我が道を往く性分のようだ。
ハスミ曰く、エデン条約を控えたこの時期に、トリニティの武力集団である正義実現委員会がゲヘナの生徒と戦闘したという事実は、政治的に不都合らしい。そのため、あくまで偶然居合わせたシャーレの「先生」が騒動を収めたというストーリーが望ましいそう。補習授業部のみんなも存外やる気のようだし、それくらいならお安い御用だ。
「“うん、よし。補習授業部一同、出発!”」
そういえば、補習授業部のみんなを指揮するのは初めてだ。ぶっつけ本番も良くないので、現場へ向かいながらシッテムの箱を起動する。指揮下に入ったみんなの戦闘スタイルを把握して……なるほど?ヒフミとコハルは市街地戦が不得意で、アズサやセチアは可もなく不可もなくと。であれば、ヒフミたちにはハナコ共々支援に回ってもらった方が良いかもしれない。
アズサは前線にも立てるけど、遮蔽物を活かした立ち回りの方が得意。逆にセチアはホシノみたいに逃げも隠れもしないタイプか。セチアが盾を持ってるとこ見たことがないけど……あのモコモコ制服の中に防具が仕込んであったりするのだろうか。
ともあれ、セチアに前に出てもらい、後衛組でこれをサポート。いざとなればヒフミのデコイもあるし、前線が崩壊するようなことはないだろう。最大火力のハスミは狙撃に専念してもらう。戦い慣れてるアズサには遊撃に回ってもらって……。相手の出方次第ではあるけど、基本はこれで行こう。
みんなに作戦を伝え……ふとセチアのデータの中に気になる一文を見つけた。
戦場の気配に若干緊張しているコハルやハナコに対し、ピクニックにでも行くように朗らかに歩く眼前の少女を見やる。「痛覚が薄く、必要であれば自傷すら厭わない」だなんて、全然そんな風には見えないが……。
「“えっと、みんな安全第一でお願いするね”」
その言葉に、件の少女はにんまりと目を細めた。
ということで、ゲームで言うところの「部隊出撃」の画面まででした。
ここで与太プレイヤー目線で初めて補習授業部の性能が明らかになる訳です(ガチャで先引きしていなければ)。
以下与太プレイヤー目線の情報
セチア ☆3 STRIKER
SG FRONT タンク 神秘/???