トリニティキツネモドキはエデン条約を破壊したい   作:ウガツホ村

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イチカは未所持なので二次創作の知識だけ書きました。
キャラブレしてたら申し訳ない。


4話:ミカ襲来①【□□□/先生/セチア】

◆◆◆◆

 

 

 

 少女が三人歩いている。

 

 フードの下で獣の耳を忙しなく動かし、全身で喜びを表現する金色の少女。普段のすまし顔はどこへやら、生来の腕白さが押さえ切れていない。

 

 それを微笑ましそうに見守る、両隣を固める翼を携えた二人。片や、白一色に身を包んだ亜麻色の少女。片や、黒で全身を染められた桃色の少女。共に翼を器用に折り畳み、上手く上着の下に隠している。

 

 彼女たちは母校ではちょっとした有名人だ。更にはお互いの家の立場もあって、おいそれと一緒には居られない。顔を合わせたという事実だけで色々と邪推されるのが彼女らの住む土地柄(トリニティ仕草)なもので……だからこそ、今日という日は本当に特別。

 

 口うるさい護衛もいなければ、媚びた目で纏わりついてくる有象無象とも無縁。久しぶりに、親友三人水入らずで過ごせる時間。空気を読まない勇気あるチンピラは、“桃色の悪魔”(トリニティピンクゴリラ)の手で捻り捨てられた。

 

 昼下がりの賑やかな街並み。トリニティとゲヘナの境界近くとあって、天使の翼を持つ者(羽根付き)獣の耳を持つ者(耳付き)悪魔の角(角付き)尾を持つ者(尻尾付き)と、バラエティ豊かな種族が混在している。不倶戴天の二校およびその自治区であるが、それ故に緩衝地帯は意外と治安が良い。いとも簡単に国際問題へ発展しかねないこの街では自浄作用が働く。だから、この街で大きな事件が起こることなど、誰も心配していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面が切り替わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燃え盛る炎と廃墟と化したビルを背に、全身を黒に染めた異形の大人が笑っている。足元には抱き合う三人の少女だったもの。獣の耳は千切れ、金色の毛並みは黒く焼け焦げている。大きく立派な黒白の翼は根元から折れ、されど互いを庇うように覆い被さっていた。

 

 一体何がおかしいのか、黒スーツに割れた眼孔を持つ男は上機嫌にクツクツと喉を鳴らす。それもそのはず。男が求めて止まない“神秘”が織りなす小さな奇跡が、目の前で起こっているのだから。

 

 酷く焼け焦げた少女だったものたち。とてもではないが生きているとは思えないソレらの天頂。もしもここに誰か人がいたならば、弱々しく明滅する蛍光灯のようにしか見えないであろうソレ。だが、この地に根差さない()なる者である男には、ソレを正しく認識する力がある。

 

 損壊具合が一番マシな頭部には、かつては姉たる狐人にそっくりであった、四本の儀礼剣(処刑人の剣)を組み合わせた十字架のようなヘイローが。他二つは確か、直系の血が濃く出たために宗家に引き取られた従姉妹と先祖返りをした遠縁の者だったか。いずれも宗家の一人娘たちにそっくりな、茨と釘の冠と星雲渦巻く銀河のヘイローがあったと記憶している。だが、これはどうしたことか。目の前にあるのはそのどれでもなく、さりとてその全ての特性を併せ持つ不可解な輝き。

 

 複数のヘイローが混ざり合うという貴重なサンプルを前に、男のテンションは天井知らずに上がっていた。だから、戦場跡もかくやという瓦礫の山に囲まれた場所に似合わず、改まった言葉をかけてしまうのだ。

 

 

「クックック……私と取引を致しませんか、――さん。ええ、心配はいりません。“大人”として責任を持って“契約”させていただきますので……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 月明かりが差し込む無機質な部屋にて、むくりと起き上がる小さな人影。ひどく殺風景は部屋には似合わない大きな姿見の鏡を前に、映されたいつも通りの像を見て少女は苦笑する。

 

 

「あ~あ、最悪な夢見ちゃった」

 

「他人の夢でなら好き勝手出来るのに、なんで自分の夢はダメなんだろうね」

 

 

 へにょりと垂れた金色のキツネ耳と身の丈に合わない大きな、そして左右不揃いな翼を持つ少女は、鏡に映った十字架の成り損ないみたいな浮遊物を()()、そう小さく自嘲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「先生、ちょっとお時間もらって良いっすか?」

 

 

 勉強中に参考書と間違えてコハルが取り出した押収品(エッチな本)を巡って一悶着あった後、私はコハルの引率として正義実現委員会の本部を訪れていた。

 

 現在はコハルがハスミ――正義実現委員会(正実)の副委員長で、私がキヴォトスに赴任して初めて指揮した生徒の一人でもある――とお話中なので、応接室で待たせてもらっている。

 

 そんな折に現れたのが先の生徒、仲正(なかまさ)イチカである。糸目と「~っす」という語尾が特徴的な生徒だ。また彼女も正実の例に漏れず黒髪に黒翼、黒装束と全身黒づくめのコーデだが、これは正義の体現者たる自分たちはいかなる干渉も受け付けないという思想に基づき「何者にも染められない色」である黒を纏っているためらしい。

 

 

「“どうかしたの?イチカも、コハルのことが気になる?”」

 

「えっと、コハルのことも気になりますけど、頑張る後輩を信じて見守るのも先輩の役目っすから。どちらかと言うと、気になるのはセチアのことで……あの子、元気にしてます?」

 

「“セチアと知り合いなんだね。う~ん、マイペースだけど勉強は出来てるし、他のみんなとも仲良くしてるよ。一線を引かれてるような気がしなくもないけど……これから仲良くなっていけば良いからね”」

 

「あー、あの子あれで意外と気難しいっすからねぇ。だからこそ仲良くなれたみたいなとこあるっすけど……我ながらひっどい出会いだったと思うっす」

 

「“えぇっ!二人とも穏やかな感じだから、どうしたらそうなるのか想像できないなぁ”」

 

 

 いや、本当に想像がつかない。まだ二人の人となりを掴み切れていないのはそうだが、それにしたって何をすればそんな“ひっどい出会い”になるのか。正実の仕事でお昼寝中のセチアをどうこうして、寝起きの不機嫌モードが原因でトラブルに発展したとかだろうか。

 

 

「アハハ!先生にはそう見えてるっすか。だとしたらセチア検定はまだまだっすね。……私もあの子も、実はそんな良い子じゃないんで

 

「あっ、そろそろあっちの話も終わりそうっすね。先生、お時間いただきありがとうございました!あの子のことよろしくお願いするっす!」

 

 

 踵を返したイチカと入れ替わるように、隣室からコハルが戻ってくる。すれ違いざまにさりげなく頭を撫でていったが、こういうところが後輩から慕われる理由なのだろう。先程の会話中、壁越しにハスミの怒鳴り声が聞こえてきたりして少し心配していたのだが、この分なら大丈夫そうか。

 

 良い意味で心ここに在らずといった様子の、ぽわぽわしたコハルと一緒に帰路につく。そして、また一日が終わりに近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 日を改めてこんにちは!メモロビとまではいかないけど「先生」にハナコにと、相次いで支援会話くらいのコミュを済ませた百合園セチアだよ。

 

 あの後はみんなで盛大に寝坊をかましたり、ヒフミと「先生」が夜なべで作った模擬試験に挑戦したり(ちゃんと90点ジャストを取った)、ヒフミ主催のモモフレンズ贈呈キャンペーンあったり(合格済みの私にもくれるらしい)と、概ね「原作」通りにイベントを消化した。

 

 特筆すべき差異はなかったが……そうだね、生で見るアズサとモモフレンズの出会いは、大層微笑ましい光景であったとだけ記しておこう。当然私にもモモフレ布教の大波が来たけど、贈呈はアズサが合格してから一緒にってことで保留しておいた。

 

 さて、今日はお待ちかねのミカと先生の非公式会談(プールデート)の日である。すでに役者は揃っているようで、夜中にこっそり仕掛けておいた盗聴器はしっかりと音を拾っている。ゲマトリア謹製の特注品なので、C&Cのアスナ*1みたいな超感覚の異能持ちが来なければバレないでしょう。

 

 ハナコと遭遇したあの日、わざわざ怪しまれる単独行動をしてまでプールに行ったのはこのためだ。油断して神秘レーダー切ってたから、急に話しかけられてかなりビビったんだよね。動揺を表に出さないことに必死で、実のところ最初の方にどんな話をしたかはあんまり覚えかったりする。

 

 

『“私は、生徒の味方だよ。もちろん、ミカにとってもね”』

 

『……わーお。さらっとすごいこと言うじゃんね』

 

『嬉しいけど……それって誰の味方でもないってことでしょ?』

 

『だから、これはあくまで“取引”。私が「裏切者」の正体を教える代わりに、先生は私のために1つ約束をする。ほら、これが“大人”のやり方ってやつでしょ?』

 

 

 ふむ、私は「原作」のセリフを一言一句そのまま覚えているわけではないが、今のところ話の内容は同じっぽい。本来であれば、これから「トリニティの裏切者は白洲(しらす)アズサ」と伝えた上で、トリニティとアリウスの“和解の象徴”になるはずだったアズサのことを守ってほしいとお願いするはずだ。その過程でプレイヤー目線で初めて「セイアのヘイローが破壊された(=殺害された)」という情報が出るわけだが……この世界線だととんだミスリードだな、コレ。なんたって姉が殺されたのに、妹であるはずの私が平然としてるんだから。

 

 考えられる可能性としてはどうだ?セイアは実は生きていて、ミカが騙されている or 勘違いしている。これは「原作」と同じ状況。黙っていること自体は怪しいけれど、私の態度に一応は説明もつく。私が襲撃の場に居合わせたのを知るのはアズサとミネ団長だけだから、公には私がセイア生存の報を受け取るタイミングは存在しないのがネックではあるが……セイアの異能(予知夢)のことを知れば、勝手に納得してくれそうか。

 

 他にはセイアの生死に関係なく、私が襲撃犯の場合とか。私目線でだけ分かっている事実を鑑みれば、これは半分くらい正しい。その場合、犯人たる私は無関係を装うためにも純粋に心配する仕草を見せるべきだけど……そもそも動機がないんだよなぁ。「百合園セイアは後継に百合園セチアを指名しない」という声明こそあれど、それが私を守るためのものであることはティーパーティー内では公然の秘密だし。血統主義のせいで中枢に近づくほど生え抜きの連中ばっかりになる*2から、3年前の()()()()のことは少なからず知られている。

 

 この間にも、もちろん「先生」とミカの探り合いは進んでいる。アリウス分校の話とそれに紐づくトリニティの成り立ちの話。ここだけ聞くとアリウスって本当に可哀想だし、現在進行形でベアおばのオモチャにされてるのも同情の余地がある。でも、経緯はどうあれこれからやらかすことは大規模テロだから……まあ有罪だよね。「『先生(プレイヤー)』の敵として登場するキャラクター」という役割(テクスト)が与えられている時点で覆らない業を背負っている。そりゃ「全ては虚しい(vanitas vanitatum)」なんて言いたくもなるよ。

 

 私にできることは精々、調印式で大暴れして「利用されていた」って印象を広めるくらいだ。モブちゃんたちがうっかり死ななければ――つまり手遅れ(人殺し)にならなければ――「先生」パワーで救われてくれるって信じてるよ。オラトリオ編とかも考えれば、少なくともトリニティはアリウス生の保護に動くだろう。

 

 

 

 その時には私はもういないだろうけど、地獄から無責任にお祈りしておくとしますか。

 

 

 

 さて、そろそろ「先生」がセイアについて切り込む頃なんだけど……ミカの回答と「先生」の反応やいかに!

 

 

『――』

 

『――――』

 

『――――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

*1
一ノ瀬アスナ。キヴォトス三大校が一つミレニアムの生徒で、エージェント部隊「Cleaning&Cleaning(C&C)」に所属している。第六感とでも言うべき超感覚を持ち、その一例として、イベントストーリーではカジノで狙ってジャックポットを連発する様子が描写された。

*2
初等部や中等部上がりの生徒の方が名家出身の割合が高い。詳しくは前話の注釈を参照。




現在ブルアカ周年イベント中ですので始め時です。

ぜひ本物の「エデン条約編」を読んでみてください。
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