トリニティキツネモドキはエデン条約を破壊したい 作:ウガツホ村
またPC版で執筆しているため、閲覧の際もPC版の方が見やすいかもしれません。
◇◇◇◇
「本日は、補習授業部の
「
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ミカとのお話に始まり、ハイテンションセチアやら成長を感じる第2次補習授業部模試*1やらと、濃い半日を終えての昼下がり。私が不在の間に
『きゃぁぁぁっ!?』
「安心して、みんな。今のは私が仕掛けた、侵入者対策のブービートラップ。逃げ場を塞ぐように配置してるから、敵がここまで来ることはない」
「ここ学校ですけど!?アズサちゃんは何と闘ってるんですか!?」
「今の悲鳴、もしかして……。アズサちゃん、入り口まで案内してもらえませんか?」
「ああ、身柄を確保しに行こう」
「いやだから……あぁもうっ、お客様だったらどうするんですか!」
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そんなわけで、私たちの前には煤けたシスターフッドの装束に身を包んだ猫耳の少女、
ややあって、落ち着いて話せるようになったマリーの口から語られたのは、アズサのこと。補習授業部結成の際、私は
あの時、アズサは正義実現委員会を相手に大立ち回りを繰り広げた。しかし、そのきっかけはアズサがいじめを咎めたことで……それが悪意を持った曲解を経て正義実現委員会に伝わり、数時間にもわたる激闘が展開されたのだとか。
これにはみんなもびっくりしていて、
ともかく、マリーの要件とは、アズサに助けられた生徒からの感謝を伝えることであった。アズサ自身は「いじめっ子が気に入らなかっただけ」と謙遜していたが、最終的には感謝を受け取り、事態は丸く収まった。
マリーがハナコに向ける目や妙に実感のこもったアズサの言葉——「それがたとえ虚しいものであっても、抵抗し続けることを止めるべきではない」——など、新たに気になることもできたが……一歩ずつ、できるところからやっていこう。
マリーの見送りに行ったハナコが戻ってきたのを確認して、午後の勉強の再開を宣言する。合宿が始まってから、みんなメキメキと実力を伸ばしている。アズサは本人の言葉通り
◇◇◇◇
今朝は醜態を晒しちゃってごめんね!愉悦部ソウルが
現在はなんと——「先生」の部屋の隣室の壁に姉譲りのデカ耳をビタ当てして、大胆にも物理的な盗み聞きを試みています。
いやだってさ、四六時中一緒にいる補習授業部の面々を掻い潜って盗聴器を仕掛けに行くのはほぼ無理だしぃ?夜間は「先生」がずっと部屋にいるからもっと無理。プールで使った
今日はちゃんと神秘レーダーもONにしてるから、ヤバそうになっても対処できる……はず。見つからないのがベストだけど、最悪の場合は
『こんばんは、先生。……ふふっ、こんなに簡単に開けちゃうなんて♡不用心ですねぇ♡』
『“は、ハナコ!?いや、そもそもなんで水着で……!?”』
『し、失礼します……。遅くなってすみませ……って、えぇ!?』
『先生!どういうことですか!?まさか、ヒフミちゃんにも手を出して……』
『“誤解!誤解だから!!二人とも一旦落ち着いて――”』
おお、始まった。「落ち着いて」って言ってる「先生」が一番取り乱してるのウケるわ。そっか、女子高生と同室オッケーの「先生」も、流石に
まあいいや。じゃあ、しばらく集中するから……与太時空の
◇◇◇◇
ハナコちゃんのことを相談するために、連日訪ねることになった先生の部屋。こんな夜遅くに、しかも一人で“大人”の部屋を訪問するという……ともすれば、はしたない行為。何も後ろめたいことはないはずなのに、私の胸はバクバクと音を鳴らしっぱなしだ。職員室に顔を出すのとはまた違うこの緊張に、慣れてしまうことは想像もできない。
跳ねる心臓を押さえ付けて入室した私を待っていたのは——「しまった」とでも言わんばかりに振り返った先生と、なぜか水着姿のハナコちゃんだった。それはもう盛大に勘違いをして醜態を晒したが……あれはハナコちゃんも悪い。明らかにそういう方向に誘導——私と先生がその……え、エッチなことをしてるみたいな——していたし、あの“大人”な身体つきならあるいは……と思ってしまったのも事実。
今は着替えて制服姿だが、思えば彼女の露出癖にはいつも翻弄されている。この期に及んで「パジャマが水着」などと豪語しているが、その堂々たる佇まいを見ると、私の方がおかしいのかと錯覚してしまいそうだ。これもまた、彼女のことを理解するカギなのだろうか?
「“それで、ハナコの話は今聞いても大丈夫なものかな?”」
「もちろんです。ヒフミちゃんも聞いてほしいことですし……。アズサちゃんとセチアちゃんのことなのですが、二人ともまともに寝れているのか心配なんです」
「“そっか、あの二人が……”」
ハナコちゃんの話によると、アズサちゃんもセチアちゃんも、毎晩みんなが寝た後にお部屋からいなくなるのだそう。特にアズサちゃんは愛銃まで持ち出してこの建物を抜け出しているらしく、明け方に帰って来るまで何をしているのかが一切不明。だが少なくとも碌な睡眠を摂っていないのは明らか。確かにアズサちゃんは誰よりも早起きだが、それが徹夜明けとは知らなかった。
セチアちゃんもまた夜間に行方不明になり、翌朝になると敷地内の
ここ数日は寝坊続きなのもあったが、まさかそんなことになっていたとは。仮にも“部長”に任命された者として、メンバーの様子を把握できていないことに責任を感じる。
ひとまず二人にはよく目を配っておくことで同意したところで、ハナコちゃんの気遣いが
“勉強は大事だが、身体を痛めつけてまでするものではない”
平時ならばあまりにも真っ当なその言葉。だが現実は非常にして非情であり、私たちには十分な時間は残されていない。純粋に心配されているのは分かる。分かるのだが……他ならぬ、目下最大の課題である彼女からの言葉とあって、つい本音が零れた。
「……ハナコちゃんは何も知らないからそんなことが言えるんです。もう遊んでいる時間なんかない。だって、だって……私たちみんな『退学』になっちゃうんですよ!?」
「……それは、どういう——いや、まさか!?」
そこからのハナコちゃんは、凄まじいの一言に尽きる。
「今はまだ理由までは言えませんが、実力を偽っていたこと……深く謝罪します。事情を知らなかったからといって許されるものではありませんから」
「これからはきちんと頑張りますので、安心していただければ。……それにしても『退学』と来ましたか。まだ合格できていない、コハルちゃんやアズサちゃんには聞かせられませんね。特にコハルちゃんは、そういうプレッシャーには強くはなさそうですし……」
「“二人は、セチアにも伝えるべきだと思う?”」
先生に問われる。個人的な願望に従うならば、正直に言ってしまいたい。「退学」という取り返しのつかない要素*2は、“平凡”な私が抱えておくにはあまりにも重い。
「あ、あう……セチアちゃんは優秀ですし、力になってくれると思います。ですが、その……」
「……アズサちゃん共々、何かを抱えている現状では負担になりかねない。そういうことですね?えぇ、それも一理あります。最も、私たちよりもナギサさんに近いセチアちゃんなら、自力で勘付いていそうでもありますが……」
「“わかった。ひとまずは、ここだけの話にしておこう”」
残りの3人については各々で様子を見守ることで合意し、先生の部屋を後にする。
先行きへの不安は募るが、そもそも数日後の試験で合格できればそれで終わりなのだ。アズサちゃんもコハルちゃんも、合格点まであと一息。ハナコちゃんとセチアちゃんは、お勉強に関しては心配するまでもない。あとは私がしくじらなければ、きっと大丈夫。
二人揃って先生と別れる瞬間をコハルちゃんに目撃されており、朝一で誤解を解くはめになったのだが……そのおかげで少しだけ緊張が解れた気がした。
◆◆◆◆
「不思議な人」
私がセチアちゃんと出会った時に思ったことです。
そろそろ暑くなり始めるかといった季節なのに、何重にも上着を着こんだモコモコの姿。厚手のタイツに
他にもたくさんあります。本当はお勉強ができるのに、“
要素だけ取り上げれば不可解なのに、それが奇妙に“調和”していて……まるで初めからそうだったように感じてしまうんです。何もおかしいことはないんだって、気が付いたらそう思わされている。
だからでしょうか、私たちは最後まで、セチアちゃんの抱える闇に気が付けませんでした。
でも、ヒントはいっぱいあったんです。
例えば、何度もあった模試——何なら本番の試験でさえも——ぴったり90点しか取らなかったこと。
問題も難易度も毎回変わる中で同じ点数を取り続けるのは、それこそハナコちゃんでもないと無理です。本当は100点を取れるのに狙って90点にしていたのはきっと、合格ラインが上がることを知っていたから。そういえば,、ゲヘナに行くことになった時も、まるで驚いていませんでしたね。ナギサ様の妨害が入ることなど、お見通しだったわけです。
ハナコちゃんだけは自分への“当てつけ”かもしれないと言っていましたが……。
例えば、あまりにも自分を顧みない戦い方のこと。
初めてセチアちゃんの戦闘を見たのは、美食研究会の皆さんを相手することになった時です。盾も持たずに
結果的にセチアちゃんは衣服の解れすらない完全な無傷——本人曰く“神秘”?への理解があれば当然*3のことだそうですが——あれだけの集中砲火を受けて、痛みがないわけではないはずです。確かに私たち生徒は銃弾が致命傷にならず、
ミカ様と対峙した時もそうです。ミカ様は武勇に優れたと伝えられる聖パテル様の血を濃く継いでいます。事実その力は凄まじく、戦い慣れしていないご様子にも関わらず、先生の指揮を受けた私たちと互角に渡り合いました。セチアちゃんの言葉に動揺して動きに精彩を欠いたことで何とか無力化できましたが……ともすれば増援のシスターフッドもろとも薙ぎ払われていた可能性すらありました。
話は逸れましたが……ミカ様は明確に
それに比べてセチアちゃんは迷いがない。アズサちゃんもそうですが、明らかに訓練された動きなんです。必要であれば相手を傷付ける覚悟がある。私もよくブラックマーケットに行く手前、
それに何より——エデン条約の調印式が近づくにつれ……どこか他人行儀になっていったところ。
補習授業部が解散してからも、元メンバーのみんなとの交流は続きました。一緒にお買い物に行ったり、お互いの趣味を共有したり、ちょっと遠くまでお出かけしたり……。本当に大切な思い出です。
でもある時から明らかに、セチアちゃんの都合がつかなくなることが増えました。次第に連絡も覚束なくなり、理由を聞いても「機密に関わるから言えない」の一点張り。この頃のセチアちゃんがミカ様の一件で能力を買われ、秘密裏にナギサ様の下で色々と活動していたことは知っていました。だからみんなあまり深刻には受け取らず、
まあ、そんな幻想はあの日に打ち砕かれたんですけどね。
一度目線を切り、自室の机の引き出しへ向かう。取り出すのは、オルゴール付きの小さな小物入れ。合宿中に
蓋を開ければ、そこにあるのは……私の無知を示す、罪の証明。かつてはペロロ様のものを模した、キュートな羽根が付いていたソレ。焼け焦げて砕けた金具の残骸。ゲマトリアを名乗る
『それなりに楽しかったよ?トリニティでの“お友達ごっこ”』
これが、私の知るセチアちゃんの全てです。後はご存知の通り、彼女は全てを——ナギサ様、ミカ様、セイア様……そしてアリウスすらも——利用してエデン条約を台無しにした「トリニティの裏切者」です。
ご満足していただけたなら、その……今日はご退室いただけると嬉しいのですが——先生。
「“……”」
コハルちゃんはすっかり塞ぎ込んで、アズサちゃんは無茶な訓練に明け暮れるばかり。ハナコちゃんの隈も日に日に酷くなる一方です。私は“部長”ですから……みんなのこと、どうにかしなきゃいけないんです。立ち止まっている暇なんて、ないんです。
それでも、私だって……。
だから今は、少しだけ放っておいてほしいんです。明日にはまた、平凡で普通な
不躾な訪問者が去った、
それは奇しくも、「私は“人殺し”だ」と慟哭する
「どうしてっ、どうして何も言わずに行っちゃうんですか……セチアちゃんっ!!」
翼の意匠が
相変わらずストックのない、その日暮らしの投稿をしています。
完結後に「与太時空の『先生』から見た世界」を描くことが目標です。
次回は水着パーティーの表裏になるとは思います。
新しい原作キャラも参戦する予定です。