オリジナル設定や独自設定は相変わらずですが、今話は今まで以上に残酷な描写や不適切なアレ、あとインフレが凄いのでご注意ください。
前半は、オリジナル設定《再編領域》のお話。後半から真人戦です。
時は《渋谷事変》の2ヶ月前。羂索が《再編領域》を編み出し、それを橘に自慢している場面にまで戻る。
「聞いてくれよ! ついに完成したんだ、あの結界が!」
「ちょっ、聞いてあげますから落ち着いてください。私達常連とはいえ一応ここは店の中ですよ?」
珍しく興奮した様子の羂索は穏やかなBGMが流れる喫茶店内で場違いな声を出し、橘は綺麗に出来た泥団子を見せつけてくる子供を見るような目を向けながら、落ち着くよう宥めた。
「馬鹿! だから君は妊婦になっても貧乳なんだ! この結界がどんな革新的なモノかま〜〜〜ったく、理解できていないようだね──いたっ」
「誰が貧乳だ」
妊婦になっても殆ど変化がない自分の乳を馬鹿にされたので、羂索の頭にチョップを喰らわす橘。
羂索は反省していないのかチョップされた箇所をさすり「貧乳菌が移ったらどうするんだ」と小学生みたいなことを言い、反省してる様子はない。
「それで、その結界は何がすごいんですか?」
「その質問を待ってた! 懇切丁寧に私が一から解説してあげるから──あ、気分が悪くなってもリタイアはなしだよ?」
「……胸糞悪い話はあんまりしないでくださいよ」
「それは無理だね! じゃあ、まず前提から話しておこうかな。橘は《呪霊操術》の極の番《うずまき》は知ってるだろ?」
「……あぁ、初めて会った時に私を殺そうとしてたやつ?」
「そう、それ!」
橘は羂索と出会った日のことを思い出していた。
あの時の羂索は橘を喫茶店ごと《うずまき》で吹き飛ばそうとしていたが、そんな攻撃技がどう結界と関係するのだろうか?
「そういえば、羂索は私を殺せないか色々試してた時期がありましたよね。今じゃもう懐かしい思い出になっちゃいましたけど」
交流を始めてから暫く、羂索は《予言の書》の研究と称して橘を殺すために多種多様な殺害方法を試していた。
現代兵器で攻撃してみたり、燃やして窒息死させようとしてみたり、日本海溝に沈めてみたり。
特に日本海溝に沈められた時などは沈んでいる最中に意識を失ったのだが、気が付いたら目の前に呆れた様子の羂索がいて、この日以降、羂索は橘を殺すことを諦めた。
「ぷぎゅっ」
どれも今では笑える思い出話だが、昔を懐かしむ老人のような微笑みを浮かべる橘を見て、羂索は鼻を思いっきり摘まみ、ムスっとした表情を浮かべていた。
「今それはクッッッソどうでもいいから、話を続けるね!」
「……ぷへっ。ったくもう、話は聞いてあげますから。鼻摘まないでくださいよ」
「《うずまき》は呪霊を圧縮して放出する使い方と、圧縮した呪霊から術式を抽出して
「へ〜。要は一回しか使えないやつが何回も使えるようになったってことですか?」
「全然分かってないなぁ〜橘は。これが如何に革新的なアイデアか本当に分からないのかい? 《呪霊操術》は呪霊に命令して領域展開をさせることも不可能じゃなかった。けど、
「……ん? 別に、呪霊に領域展開させればいいのでは? 何でもかんでも自分でやろうするのは馬鹿のすることですよ」
かなりの熱量で語ってくる羂索への対応が少しめんどくさくなってきた橘。
羂索の話を聞く限りでは呪霊の領域展開を自分が使えるというだけで、呪霊にも命令すれば領域を展開出来るのならわざわざ呪霊を結界にする必要はないのでは? と、特に何も考えず答えた。
「確かにそれはそう。呪霊のままなら単純な戦力としてカウントできるし、領域を展開できる呪霊はかなり貴重。わざわざ結界にする意味はないと言ってもいい。居るかは知らないけど、一般の《呪霊操術》使いが知ればあまりの勿体無さに無言で殴りかかってくるレベルだ」
「でしょ〜。羂索も馬鹿な技を編み出したもんですね」
「けど、それは凡夫の発想だ! この《再編領域》はただ領域を展開するだけじゃないんだなぁ、これが!」
「……はぁ」
橘は彼氏に興味がない話を延々とされるとこんな気持ちになるんでしょうか? と、考えながら溜息を吐く。
ちなみに橘は彼氏の一人も作ったことがないし、予言の書に『穢れのない身体で《
「この《再編領域》は、
「はいはい。どーせ私じゃ全部分かりませんよー」
「《再編領域》はね、領域同士が
「へ〜〜〜」
橘にはまだ羂索の言うメリットが具体的にどのくらい凄いものなのか理解できなかった。
領域が押し合わなかったり、鬩ぎ合わなかったりすると何か良いことがあるのだろうか?
橘の様子を見て理解してないなと判断した羂索は、ヤレヤレと首を振るジェスチャーをして、説明の補足を始めた。
「分かりやすく説明すると、複数の領域で同時攻撃できるってことなんだよ」
「ふーん。でも、領域展開って必殺技なんでしょ? いっぱい使っても過剰なんじゃないですか?」
「ゲームでもさ、たくさんの技を組み合わせてシナジーを生み出すでしょ? 雨降らしてから、かみなりを出したりとかね。単一で完結してる領域じゃ、縛りを使ったりして色々仕様を変化させるくらいしか出来なかったけれど、共存させることにより組み合わせは無限大! なんか少し使いづらいなって特殊な領域も、条件を満たすために使える補助の領域を組み合わせれば素敵で凶悪な領域に早変わりってわけさ!」
「……なんか組み合わせを考えるだけで頭痛くなりそう。私はもっとシンプルな方が良いですけど、羂索的に何か凄い組み合わせとかあるんですか?」
橘にはイマイチ魅力は伝わらなかったが、羂索がこれだけ言うのだから取り敢えず凄いということは伝わっていた。
そしてほんの興味本位で凄い組み合わせはあるのかと尋ねると、羂索は新しく買ってもらったオモチャの説明をする子供みたいに、満面の笑みを浮かべて組み合わせについて語り始めた。
「じゃあ、私のイチオシの組み合わせを教えてあげるね。この組み合わせを思いついた時は脳汁がドバドバ出てヤバかったなぁ。《呪霊を産み出す術式》と《選んだ対象をコピペする術式》、それと《自分の能力や呪力を継承させる術式》の組み合わせなんだけどさぁ」
「え、お母さんの呪霊っているんですか?」
「確か明治時代の頃だったかな? 呪霊との間に子供を作れる体質の女が居たんだけどね。私の血を混ぜて9回ぐらい呪霊に犯させて孕ませてから堕胎させて、死んだ子供を呪物にする実験をしたんだ」
「……」
「でもね、半分人間半分呪霊って思ってたよりも普通でガッカリしちゃってさ。サンプルも確保してあるし、なにより飽きてきたからさ。最終実験として、その女自体を呪霊にしたらどうなるのかなーって思ってね。呪力無しで殺してやったらマジで呪霊になってさ、ウケるよねー」
「……」
「んで、呪霊になったらいきなり私を殺しにきたんだけど、てんで弱いから返り討ちにして調伏してやったんだ。そしたらさ、体質が術式になっててね。半分人間のタイプは産めなくなったけど、折角だから《死滅回遊》までに呪霊を産ませまくろう! ってことで、最近まで結界に閉じ込めて呪霊を孕ませ続けてたんだ。んで、数もそこそこ揃ったし《再編領域》に組み込んだ方が面白そうじゃね? って思ってやってみたら、私の想定よりもずっと素晴らしい働きをしてくれてね。ま、彼女の術式は特殊だったせいか《再編領域》になっても結界内に肉体が残ったまでね。いつも以上に泣き喚きながら呪霊を産むもんだから少し喧しいのが欠点だけど、これは些細な問題かな」
「……」
羂索の語る特殊体質を持つ女は、最悪の呪詛師として後世に語られる加茂憲倫の肉体の時に弄んだ女であり《呪胎九相図》脹相達の母親であった。
羂索の手に掛かり、最終的には呪霊となってしまった女は体質を術式へと昇華させたため、最近まで呪霊を産み出す便利な胎として羂索に死後も利用され続けていた。
出産過程が人間時とは違い、呪霊に犯されずとも、呪力さえあれば妊娠することが可能となり、橘の劣化も劣化だが周辺から呪力を吸収し、呪霊を産み出すことも可能であった。
ただ、犯す呪霊や吸収した呪力の質、相性の良い呪力などの条件によって、人間と同様に双子や三つ子が産まれたり、術式を持たない個体や流産するなど当たり外れもあった。
しかし、人間ではなく呪霊となったためか、彼女の出産サイクルはかなり早く、そのお陰で羂索は100年あまりで彼女の子供である100万体近い呪霊(羂索曰く質はイマイチ)を手駒にすることができた。
「ちなみに当たりの呪霊は分かりやすくてね。真人みたいな人間にしか見えないタイプなんだよ。それでその当たりを産んだ時なんだけど、面白い習性みたいなのがあってね。その人間タイプの呪霊を取り上げる時だけは決まって泣き喚きながら子供を取り返そうと手を伸ばしてくるんだ。けどそいつは確定で術式を持ってるから、泣き声が当たり演出BGMにしか聞こえないんだよね〜。よかったら橘も今度聞いてみる?」
「……そういや、羂索が割と洒落にならない外道だってことを忘れてましたよ」
羂索が割と洒落にならない外道だということを思い出した橘は、もしやその女の人は自分よりも酷い目に遭ってるのでは? と思ったが、《予言の書》に記された自分の末路を思い出して──比較しても不毛なだけだと考えを中断した。
「そう? でさ〜、たくさん産んでくれるのは良いんだけど、産まれてくる呪霊の個体差が激しくてね。ランダム性があるのは面白いけど、特級クラスの上振れなんて100年やって数回しかないんだから確率がめちゃくちゃ渋いんだよね。そこで、《再編領域》に組み込んで、さっき言った組み合わせをやることにしたんだ。手順としては孕んだ母体をコピペする→子供に出産できる能力を継承させる→子供が産まれる→呪霊を孕ませる、のサイクルを繰り返して出産できる個体を倍々にして増やしまくるところから始めるんだ。そのおかげで、呪霊の生産効率は天井知らず、試行回数も増えたから質が良いのが産まれる確率も増えたし、いつかは世界の総人口を超える呪霊軍団も作れるだろうね」
「うーんと、要は母体を沢山増やして凄い呪霊が産まれるまでガチャガチャをするって感じですか?」
「けど、1つ問題があってね。呪霊を産むヤツの領域なんだけど、堕胎させまくった事が精神に影響したのか、領域内で産んだ呪霊は領域内でしか活動できなくなってしまってね。それが縛りになって領域展開中は強力な個体が産まれる確率も高くなるんだけど、領域外に出ると《呪霊操術》で取り込んでも消えてしまうんだ。だから今まではこの領域をハズレ扱いしてきたんだけど《再編領域》のお陰で今や私の中の環境トップに躍り出る程の当たり領域になったんだよねぇ」
羂索の言う通り呪霊を産む女の呪霊の領域展開中に産まれた呪霊達は領域内でしか活動できず、羂索にとっては使えないものだった。
生前、羂索に弄ばれた事が大きく精神に影響を与えたため、そういう領域になってしまったのだが。《再編領域》により羂索の領域となったことでそのデメリットは解消される。
「《再編領域》によって私自身の領域にもなったから、設定を弄れるようになったんだよ。別に天与呪縛ってわけでもなかったし、無意識のうちにしていた縛りのようだったから解除するのは簡単だった。けど、代わりに問題となったのが呪霊の質の低下だ。領域の効果によって出産スピードは目に見えて上がったけど、普通に術式を使って出産するのと代わりないくらい性能が落ちて《再編領域》にするメリットがあまりなかったんだ。じゃあ、それを解決するにはどうすれば良いか──橘には分かる?」
「えっと、呪力とかで妊娠するんですよね。なら、その質を上げてやれば良いんじゃないんですか?」
「孕ませる呪霊や呪力の質を上げる、ね。確かにそれも一つの正解だけど、効率が悪い。体感的に少しだけ確率が上がってるかな?ぐらいだから、与えたリソースと結果が見合わないだよね。それに数を増やしても、やっぱり確率が渋い。だからもっと簡単なのは、母体の質を上げればいいんだよ」
「……あぁ、それで能力を継承をする《再編領域》を組み込んだわけですね」
「そう。孕ませた母体は呪霊を産む術式を持っている。けど、領域内には一体しか存在しないんだ。そこで、その母体をコピペする術式で数を増やして能力を継承できる術式で世代を重ねさせる。能力を継承する術式は、親の能力+αをほぼ確定で引き継ぐから、確実に強くなることが決まっているんだよね。だから今私が取り組んでいるのは、最強の母体の厳選作業さ。まぁ母体の強さと子供の能力が比例するかは分からないけどね! 競走馬みたいに走れば強いけど、子供がダメダメなのは良くあるし。今はまだ試作中だけど、仮に全部ダメだったら……それはそれで笑っちゃうよねー」
「理屈は何とか理解できましたけど、そんなゲームみたいに上手くいくもんなんですか? ほら、子供が増えすぎると飼う場所にも困りそうだし。目も離せないんじゃないんですか?」
橘は羂索が《再編領域》で行っているサイクルの仕組みとその狙いを理解することが出来た。
だが、そうゲームの育成みたいに上手くいくのかという疑問も生まれた。
そんな橘の疑問に答えるため羂索は、ルービックキューブサイズの四角いモノを取り出して橘に見せた。
「場所に関しては問題なし。私程の術師になると結界の内部設定を弄ることは造作もないから、一見こんな小さな四角の中でも、結界内はユーラシア大陸並みの広さにすることだってできる。ま、実際はA→B→A→Bみたいな感じで循環させて広くしているだけなんだけどね」
「はえ〜、こんな小さいのに凄いですね。羂索の結界があれば世界の廃棄物問題も解決するんじゃないですか?」
「興味ないからどうでもいいかな。でさ、普通領域展開ってのは長時間展開することは不可能だし、維持するのも容易じゃないんだよね。けど、さっき言ってた組み合わせは時間をかけなきゃ効果が出ないから、縛りを幾つも結んで機能を制限しまくって、なんとか《再編領域》の自己補完範囲内の呪力消費までに抑えることに成功したんだよ! いやー、呪霊を産む奴が術式にデフォで呪力吸収も持っていたのはナイス過ぎたね。縛りの組み合わせを考えるのは大変だったけど、この結界が完成した時の快感はここ数百年の中でも随一だったよ!」
先程羂索が取り出した《再編領域》には幾つもの縛りが施されている。
結界が羂索の半径1mより離れると2度と《再編領域》として使えなくなるなど、かなりの制約はあるが、そのお陰で羂索が生きている限り半永久的に稼働する呪霊生産工場が完成した。
「本当はもっと、いろんな《再編領域》を共存させたかったんだけどね。5つくらいなら何とかいけそうだったけど、4つ辺りからイマイチ安定しなかったんだ。けど、3つも共存できれば充分さ。能力の継承により、世代を重ねる事で母体となる呪霊がパワーアップし続けていく、何ともロマンシングで親の屍を超えていくバーンと素敵な《再編領域》が完成したんだからね!」
「……あ、一つ気になることがあるんですけど。呪霊ってインブリードとかは大丈夫なんですか? 分裂させた奴もいるっていうし、血の濃さが半端なさそうですけど」
「呪霊はあくまでも呪力の塊みたいなもんだからそこら辺は問題ないはずだよ」
「へぇ〜。それじゃあ、子供を産むための呪力ってどこから持ってきてるんですか?」
「基準に満たない産まれたばかりの呪霊と産んで能力がなくなった親が餌代わりだね。設定を弄って自動で間引くようにしたから、かなりの親切設計になってるよ。朝顔育てるよりも夏休みの宿題に向いてると思うね」
「夏休みの宿題ですか。そういえば、私が中学生の時は──」
「知ってた? 実は呪霊って──」
《再編領域》の話で盛り上がった後、橘と羂索の話題は段々と呪術とは関係ないものへと移行していく。
たまに思い出したかのように羂索が《再編領域》の自慢話や素晴らしいところを語る場面はあったが、橘の顔には自然な笑顔が浮かんでいた。
《渋谷事変》が起こる2ヶ月前。あれから羂索が《再編領域》内で生産させている呪霊達がどうなったのか。
それは、羂索と実際に相手をしている真人にしか分からない。
・・・・
羂索と真人の戦いを簡単に言うと、領域展開の応酬だった。
単調だが、互いが放つ領域はいずれも必中必殺。故にどちらかが一手でも間違えれば勝負は呆気なく決まるだろう。
羂索は《再編領域》による多種多様な領域の展開と、《呪霊操術》による圧倒的な手数を使い常に先手を取り続け、真人を後手に回らせ領域展開の無駄打ちをさせることで、呪力切れを狙っていた。
如何に真人が進化しようとも呪力は無限ではない。加えて、真人は羂索の《再編領域》に対して領域を展開することでしか対処することが出来ていない。
呪力が切れ、領域が使えなくなるのは時間の問題。故に《再編領域》によって領域展開の連発ができる羂索が圧勝するはず──だったのだが。
漏瑚・花御・陀艮の魂のカケラを捕食して進化を遂げた真人は、羂索の想定を上回っていた。
《自閉円頓裹》以外の3つの領域を使用し、羂索が術式が焼き切れたタイミングを狙っても直ぐに漏瑚達の領域を展開し《再編領域》に対応する。
加えて術式の回復速度が異常であり、《再編領域》の領域展開の連発が可能という最大のアドバンテージが潰されてしまっていた。
「《再編領域》・《流行感冒型》」
「《領域展開》・《蓋棺鉄囲山》」
都合18回目の《再編領域》の展開。さしもの真人も呪力は無限ではないと羂索も考えていたが、真人の浮かべている表情は余裕そのもので、まるで応えていないようだった。
「《再編領域》・《安政江戸地震型》」
18回目の直後に隙間なく展開された19回目の《再編領域》を前にしても尚、真人に呪力切れの兆候は見えない。
「領域展開《蕩蘊平線》。……うーん。こんなもん? 夏油ってもっと強いと思ってたけど。案外そうでもなかったのかなぁ」
「いやいや、君が強化されすぎなんだよ。私の《再編領域》と違って、君は自前の呪力で19回も領域を展開しているのに。呪力は1割切らないし、寧ろどんどん出力上がってきてない? どんなカラクリがあるのか是非とも説明してもらいたいもんだね」
《再編領域》・《安政江戸地震型》に対し、陀艮の領域《蕩蘊平線》を展開する真人。
まだまだ切り札は温存しているものの、羂索の目的は真人を殺すことではない。故に、殺さないギリギリのラインの測り、《再編領域》を連発するも真人はまだまだ余裕そうだった。
現在の羂索の呪力量は6割。徐々に領域の強度が上がっていく真人に対抗するため《再編領域》の強化をせざるを得ず、ジワジワと呪力が削られていた。
「もうそろそろ慣れてきたし、ギブアップするなら今のうちだよ夏油」
「……一応聞いとくけど、その背中の
禪院家相伝の《十種影法術》。過去に《六眼》と《無下限術式》の抱き合わせを殺し、《渋谷事変》で両面宿儺と戦った最強の式神である魔虚羅の事は当然、羂索は把握していた。
進化した真人の後ろに浮かび上がる不気味な
奇しくも、真人が進化し意識が残っているタイプの改造人間達が一瞬にして消えたタイミングと合わせて出現した方陣は、真人の背後で不気味に佇んでいる。
形状や大きさなど違いを挙げればキリはないが、真人がそれに近い力を獲得していたとしたら? という可能性が羂索の頭をよぎるが──
「あぁ、これ? 正解っちゃ正解だけど。俺の呪力が尽きないのは電波の加護のおかげさ! 電波の力は無限大! 絶え間なく俺に注がれるモンだから溢れて溢れて仕方がない! 君に分けてあげたいくらいだよ」
「ま、正直に答えてくれるわけないよね(あの方陣は十種の式神・魔虚羅のような適応ではなく、真人が呪力切れを起こさない事に関係しているだけだろうな。隠している効果はあるかもだけど、本当に適応してるなら《再編領域》は簡単に破壊されて、私はもう負けているはずだ)」
真人は羂索の考察を肯定するも、呪力が尽きないのは電波の加護(?)のお陰だとしか答えなった。
羂索もまた魔虚羅のような適応ではないと断言し、更に情報を得るために真人との対話を続ける。
「ちなみに呪力って今どのくらい残ってる? 私は6割ぐらいだけど」
「えーと、今領域展開したから大体7割ってところだね」
「気のせいじゃなきゃいいけど、それって私と戦う前より増えてない?」
「増えてるよ。じゃなきゃ今頃、俺は呪力切れで負けてるからね」
「……何とも無法な力を身に付けたね(さて、本格的にどうしよっかな。《再編領域》の数はまだ余裕がある。真人も本当に
「話はお終いでいい? 降参するなら早く言ってくれよ。うっかり殺しちゃったら、流石の俺でも蘇らせる事は……出来るかもしれないから、ちょっと出力を上げようかぁ!!」
そう言うと、真人は今までとは比較にならない程のスピードで羂索に接近する。
夏油の肉体性能を得た羂索は肉弾戦もこなせる自信はあるが、あくまでもこなせるだけ。五条悟や両面宿儺、現在の真人などの上澄も上澄な相手に正面からやり合えば必ず負ける。
故に、羂索はひとまず《再編領域》による攻撃をやめ、一時的に《呪霊操術》本来の戦い方に戻す事に決めた。
「おっと、それが夏油の新しい手札かな?」
「──あ、そういえば数が多すぎて名前を決めてなかったな。こいつは《再編領域》内で育てた呪霊さ。君の言っていた母親──電波から産まれてない呪霊は君から見てどうだい?」
真人の拳を受け止めたのは人型の呪霊。現在の真人よりも人間らしいその姿は、一見するとただの少女にしか見えない。
だがその身に内包する呪力と性能は度重なる世代交代により、タイマンであるなら漏瑚を倒せる性能を秘めている。
「なるほど、やっぱり夏油が電波の言っていた《呪いの大霊母》を持っていたんだね。その呪霊は彼女の子供だろ? 強さは──漏瑚と同じかちょっと上って感じ?」
「《呪いの大霊母》? あぁ、あの呪霊のことね。あの呪霊はランダム性があるのが面白いから、特に名前とかは付けていないんだよね。名前に縛られて産まれる呪霊に多様性が無くなったら困るからさ」
「おっと」
少女型の呪霊は真人の腕を掴んだまま顔面に拳を叩き込み、真人を大きく吹き飛ばす。
「ちなみに同じくらいの力を持ってる呪霊を取り敢えず10体程用意したんだけど、これで少しは君の余裕を崩せるかな?」
「ははっ、なら俺もそろそろ新しい力を試しておこうかな」
真人の中性的に変わった顔は特に傷ついた様子はなく、漏瑚レベルの呪霊10体を目前に新しい力の試運転をすることを決めた。
「俺も使うのは2回目だから、一瞬で終わったらごめんね?」
真人が言葉を言い切る前に、人型呪霊が真人へと襲いかかる。
一体目は術式を使い真人の行動を封じようとするが、異形の腕を止める事はできず、顔を掴まれ、
二体目は一体目の影に隠れ真人の背後に周り貫手を放つも、肉体を貫くには至らず、体に生成された口に阻まれ飲み込まれそうになる。飲み込まれた腕は引き抜こうとするも全く動かせず、真人は自身の顔に大きな口を新たに生成し、人型呪霊の上半身をバクリと魂ごと捕食した。
三体目は遠距離から術式を使い攻撃をするが、真人へダメージを与える事ができない。真人は異形の腕を凄まじい速度で伸ばし、腕と足を掴む。三体目はなんとか振り解こうともがくが一向に解けず、魂を捕食され消滅した。
四体目は真人の捕食中の隙をついて領域を展開し、領域内に引き摺り込む事に成功する──が、ものの数秒で領域は解除され、中からは真人のみが出てきた。
「うん。非術師やレベルの低い呪術師なら直接触れなくてもいけるけど、漏瑚ぐらいのレベルなら直接触らなきゃ
真人の得た新たな力。その一つが魂の徴収であった。
魂に干渉できるなら、魂を奪うことも不可能ではないという解釈を元に《無為転変》を応用した拡張術式。
ただ、魂の徴収は真人より格下の人間や呪霊であっても簡単にはできない。いくつかの手順を踏む必要があるのだ。
魂を徴収するには真人の魂が相手の魂に直接干渉し、ハッキングをする必要があるのだが。真人は分割したマイクロサイズの魂を侵入させ、相手の魂に触れるという力技を使い渋谷の非術師にマーキングしておき、一斉にハッキングをして魂を徴収した。
副次効果としてマーキングをした肉体を改造してしまうなどまだ制御に難はあるが、自身の魂でマーキングした魂を遠隔から任意のタイミングで徴収することが出来た。
これが《渋谷事変》において意識が残っているタイプの改造人間が突如として消えた原因である。
しかし、それは非術師や凡百の術師相手に限った話。呪力で無意識に魂を守れるレベルの術師や呪霊、魂の格が高い相手の場合は直接手を触れて魂を徴収する必要がある。
先程まで相手をしていた人型呪霊達ならば5秒程度触れることで魂の徴収をすることが出来た。
「捕食も問題ないし、徴収も呪霊にやるのは初めてだったけど問題なしだ! ということで、残りはちゃっちゃと終わらせようか!」
そんな圧倒的な力で呪霊を圧倒した真人を見て、残り6体の人型呪霊達は勝てるビジョンが全く浮かんでこなかった。
加えて羂索からのオーダーは、自分で考えて戦えというシンプルなもので、援護も期待できない。
「……」
強大な力を持つが生まれて1ヶ月未満の呪霊達は、自身と同格である呪霊達を瞬く間に消滅させる真人に、無意識ながら恐怖を覚えていた。表情も動く事はなく、言葉を発することも無かったが、魂が怯えていたのだ。
だが、羂索の命令を忠実に実行するため恐怖に蝕まれていようと体を動かさなければならない。
中途半端な知性と理性を持ってしまったが故に人型呪霊達の動きは真人への恐怖によって鈍っているが、それでも漏瑚並みの性能は伊達ではない。
かなり離れた位置から戦いの様子を見つめる術師達は、
「はい、お終い」
真人は先程以上のスピードで呪霊達を圧倒し、残りの呪霊達の魂をあっという間に徴収し終えた。
「んじゃ、そろそろ夏油を叩こうか」
そして直ぐに羂索への攻撃を開始する。
繰り出してきた呪霊達は真人にとってなんてことのないレベルだったが、羂索自身の事は侮ってはいなかった。
《再編領域》という未だ底を見せていない結界。それに《呪いの大霊母》の産み出した呪霊もアレで終わりというわけではないだろう。
故に、肉体性能を活かした接近戦を仕掛け、呪霊を出す間も領域を展開する隙も与えず圧倒する。
だが途中、闇雲に突っ込むのも危険だと電波からの啓示を受信した真人は、羂索へ接近しながらも念の為の保険として
「《無為転変》」
方陣の中に
真人の方陣の正体とは、徴収された魂達を捕える檻であった。
方陣の中に居る魂達は解放されることはなく、ただ真人に資源として消費されるまで耐え難い苦痛を受け続けている。
「《多重魂・混成》」
苦痛を受ける事により魂の代謝を絶え間無く繰り返し、生み出された呪力は真人へ送られる。加えて、魂を多重魂で複数掛け合わせて消費する事で、瞬間的に呪力を回復させることも可能としていた。
それが、真人がいくら領域展開をしても呪力切れを起こさないカラクリだった。
現在真人が捕らえている魂は非術師9657人・術師6人・呪霊8体。既に非術師の魂は19回の領域展開でそれなりの数を消費していたが、新たに徴収した漏瑚クラスの呪霊達の魂もあり、呪力切れを気にする必要もなくなった。
「《■■顕現》」
だが、方陣の役割は呪力供給だけではなく、呪いの王を自称するに相応しい能力が備わっていた。
それは方陣の中の魂を消費することで、外付けの術式を獲得することが出来るというものだ。
だが、術式が刻まれている脳が存在しないのにどうやって術式を獲得するのだろうか?
結論はとても簡単で、真人の
理論上は術式を持っている捕らえた魂の分だけ外付けの術式を獲得できる。一応条件として、多重魂により魂の質量を爆発させるように増やし、方陣に術式を刻む過程が必要であった。
非術師・術師の中に術式を持っていた魂は合わせて8人程しかいなかったが、先程徴収した呪霊達はどれも強力な術式を持っており、魂の格も充分。多重魂を使わずとも魂さえ消費すれば即座に術式を獲得することも可能であった。
だが、真人が選んだのは非術師の持っていた術式であった。
「ちっ、肉壁が邪魔だな」
「《再編領域》・《────》」
複数の異形の腕を使って行う真人の攻撃は羂索が繰り出す、先程の呪霊と似た姿をした大量の呪霊達に阻まれ、動きを止められる。
進化した真人でもこの呪霊全てを吹き飛ばすには相応の時間をかける必要があるのだが、その一瞬の隙をついてワンテンポ早く羂索の《再編領域》が展開されてしまった。
真人は急ぎ呪霊を振り解き、口の中に生やした小さな腕を使って、ワンテンポ遅れてから掌印を結び領域を展開するが──
「……あれ?」
なぜか領域を展開する事はできず、大量の呪霊達と共に一面真っ黒な領域に閉じ込められた。
「真人、君は現代史に詳しいかい?」
何処からともなく聞こえてくる羂索の声。
真人は何故領域が展開出来なかったのか理由を考えるも答えは浮かばず、電波からの啓示も領域内にいるためか聞こえなかった。
「1945年8月。日本人にとっては、忘れられない出来事が起こった。ここまで言えば、私の展開している《再編領域》がどんな攻撃をするのか予想はつくよね?」
羂索の言葉を聞くことしか出来ない真人は、表情に焦りを浮かばせ、未だに纏わり付いている呪霊達を振り解こうとするが、
「君は今、呪力を練ることが出来ないはずだ。実はこの《再編領域》は複数の領域を共存させることが出来るんだけど。まぁ、
「……初めからこの領域を使えば簡単に勝てたんじゃない?」
「いや、この《再編領域》は私が先に展開しなければ意味がない。それに、初見殺しは不意をついて使ってこそだろ?」
「はぁ……これは流石に詰みかな」
この領域内にいる真人は自分が詰みであることを認め、顔には諦めの感情を浮かべていた。
「それじゃあ降参ということでいいかな?」
「ん〜、そうだね〜」
だが、その奥底。魂は心底愉快そうに笑っていた。
「降参────」
領域に閉じ込められる前、真人は自身の魂を半分にして体を二つに分けていた。
一人目の真人は羂索に突っ込んでいき、油断させるための囮役。つまり現在の状況は真人が狙っていたものだった。
魂を二つに分裂したことで性能はかなり落ちてしまったが、羂索を殺せるポテンシャルは充分あり、術式を使うことも領域を展開することも可能。
当初は囮役の真人も領域を展開するつもりだったが、羂索の《再編領域》に付与された術式により領域を展開することができなかった。
だが、今の状況は真人が狙っていたモノよりも更に良い展開だ。領域内には羂索の姿がないため、《再編領域》の外にいるのは確定。
《再編領域》を同時に展開することが出来るのかは不明だが、こんな初見殺しの領域を出して相手を閉じ込めることが出来たのだ、確実に油断しているはず。
「しねぇよ!! 間抜けぇぇ!!!」
突如、羂索の背後に
「魂を捕食し進化する前の俺だったら、分裂しても術式を使うことは出来なかった。いやー、電波の啓示に素直に従っておいて良かったよ。直前まで俺の気配に気づけなかっただろ? 《あらゆる気配の元を断つ術式》。一定時間経つか、誰かに触れると解除されるらしいけど、掴んだら勝ちの俺と相性抜群な術式だろ?」
もう1人の真人は非術師の持っていた術式を使い潜伏していた。
方陣に付与されている外付けの術式のため、現在の真人では領域展開することも、術式の性能を向上させることも不可能ではあったが、術式を使うことが出来るだけで充分だった。
「詰みってやつだよ。弱体化していてる俺の《無為転変》を喰らっても、夏油なら死にはしないだろうけど。反転術式でも回復できない重傷を与える事はできる。それは夏油にとってかなり困ったことになるんじゃないかな。俺みたいに色んなところから手を生やすこともできない人間にとって、掌印を結ぶための手は重要だろう? 降参するなら何もしないであげるけど、どうする?」
真人は勝ちを確信していた。
目の前の羂索の魂は本物だし、ここから何かしようとしても直接手を触れているこの状況なら、弱体化していても《無為転変》を発動させる方が速い。
「そういえば、少し気になることがあるんだけど。真人のその分身って、それぞれの意識や視界は独立しているの? それとも共有してる?」
「随分と余裕そうだね。別に君の体がどうなろうと、生きていればそれでいいんだよ? 一応教えてあげるけど──」
「あぁ、やっぱ答える必要はないよ。だってほら、
「……は?」
羂索がそう言った瞬間、真人の体に異変が起こる。
段々と四肢に力が入らなくなり、呼吸が上手く出来ず、意識が混濁し始めたのだ。
「む……ぃ…てん………ぺんっ」
「──ちいっ!」
このままなす術もなく倒れる事しかできない真人の最後の悪あがきだろうか、地面に伏す直前、掴んでいた羂索の両腕に《無為転変》を発動。
異変に気づいた羂索は《呪霊操術》で日本刀を携えた武士のような呪霊を呼び出し、自身の両腕を切り落とさせるが──
「……間に合わなかったか」
呼吸を荒くし地面に倒れている真人を見ながら、羂索は自身の両腕に反転術式を掛けるも、治る気配を一向になかった。
術師において腕、それも両腕を失うのは手痛いどころの話ではない。
術式の発動や領域を展開するための掌印など、手を使った動作が必要不可欠なものは数多い。
「げ……と、う……っ!!」
「流石に油断しすぎたね。これじゃあ今直ぐ《死滅回遊》を始めるのは難しいかも。……はぁ。仕方ない。切り替えて、まずは当初の目的を果たすとしよう。取り敢えず今から君の心を完全に折るために、ダメ押しとして術式の開示をしておこうか」
羂索は倒れ伏すも自身を睨みつけてくる真人にダメ押しとして、《再編領域》を使い何をしたのかの説明を始めた。
「私の《再編領域》には三つの術式が共存していた。一つ目が《原爆の概念を付与する術式》。二つ目が《領域内で一定時間の間、術式と呪力を使うことを強制的に禁止にする術式》。三つ目が《癌を進行させる術式》だ」
「はぁ……! はぁ……! はぁ……!」
術式の開示と時間経過と共に症状は更に進行し、極度の疲労状態となり呼吸困難が更に酷くなる。
「まず原爆だが、実はこれ概念系の珍しいやつでね。相手に原爆によって起こり得る
「──はぁ……! ──はぁ……!」
「だが、領域を展開されては中和される恐れがある。そこで確殺コンボを決めるために、互いに術式と呪力の使用を禁じるタイマン専用の術式も組み込ませてもらったよ。共存しているからこそ使える禁止技みたいなものだけど、どの領域に組み込んでも強いから私も気に入っていてね。まぁ、こいつを手に入れたのは本当に偶然でさ。呪霊ガチャは基本ランダムだけど、偶にこういう面白術式が出てくるんだよね」
「──────はぁ……。──────はぁ……」
「そしてトドメに、癌を進行させる術式。病院マラソンをして呪霊を集めた甲斐があったってものさ。癌細胞を持っている相手に対し、これ以上に恐ろしい術式はないだろうね。一度私も末期癌を経験したことがあるけどさ、あれはかなりきつかった。反転術式じゃどうにもならないし、あと少し体を移すのが遅れてたら私はそのまま死んでいただろう。そのぐらい、死を覚悟させるモノだったと今でも思い出せるよ。だから、今味わっている辛さは十二分に理解できるよ真人」
「────────────」
呼吸ができず薄れゆく意識の中で、真人は電波からの啓示を受信する。だが、電波から送られてきた啓示は打開策が無く、一度生まれ変わらなければ再起不可能だという残酷な真実を告げるものであった。
真人としては、ここまで育て上げた魂を0からやり直すことに抵抗を覚えないわけではないが、流石に詰みであることは理解していたため、動かない口の代わりに魂が降参を告げた。
「おっと、これは降参したってことでいいのかな? それじゃあ遠慮なく取り込ませてもらうよ」
縛りを結んでいたおかげか、真人が降参したことを羂索は感覚的に理解した。
「──」
「──ははっ、嫌だね。腕を持っていかれたんだ。お互い様だろ?」
恐るべき進化を遂げ、呪霊の王に相応しい能力を身に付けた真人だったが、その能力の全てを十全に発揮する前に羂索に破れた。
真人の最後の言葉は蚊の鳴くような小さな声だったが、羂索はしっかりと聞き取れたらしい。
「さて、どうやって取り込んだものか。足でもいけるかな?」
羂索は両腕が使えないため、どうやって《呪霊操術》で取り込んだモノかと悩んでいると、かなり遠くからコチラを見ていた術師達が近づいてくる気配を感じた。
取り敢えず真人を放置して祓われでもしたら嫌だったので、足でもいけるかな?と触れてみると何とか呪霊玉にすることが出来たため、呪霊玉を飲み込み、真人を捕獲することに成功した。
「それで、私に何の用かな? 今日は一旦ここで引き上げようと思っていたのだけれど」
真人との戦いが終わるも、直ぐに次の戦いが始まろうとしていた。
「やぁ夏油君、久しぶりだね。まずはあの時の答えを──と、言いたいところだが。ここは敢えて、
真人との戦闘により両腕を失い、かなり消耗している羂索。
その前に現れたのは高専の術師達と《特級術師》九十九由基。そして途中から乱入してきた《呪胎九相図》脹相。
「氷川裕子。君は一体、何が目的なんだ?」
「更なる混沌と──気に食わないやつに一泡吹かせてやろうと思ってね」
《渋谷事変》もいよいよ大詰めを迎える。
人物表
・橘秋麗
回想にて登場。実は羂索に色々と殺さないか試されていたが、割と本人も乗り気だった。なお、マジで死ねないことに内心かなり絶望していたのは内緒。
・羂索(夏油の姿)
呪霊生産工場を作ったり色々とやらかしたインフレ筆頭格その①。インフレ真人が想定上にヤバく、かなりギリギリの勝利。最後は油断して腕を持っていかれたものの、真人を取り込むことには成功。
次回は両腕を失って呪力量も半分切ってる中、九十九達とやり合う。
・真人
インフレ筆頭格その②。超絶進化したやべーやつ。今回は負けたが……。
・呪いの大霊母
脹相達のママ。原作の1000万呪霊ってどうやって用意したのかな? って妄想の結果生まれた存在。原作の羂索もやってそう。今も狂ったまま呪霊を産み続けているお労しい人。
・九十九由基
再登場。原作とは違い、高専生達と合流してから羂索の前に現れた。
・脹相
家族が増えるよ! やったね脹相!