MODマシマシTSドヴァーキン(雌堕ち済)四方世界にて小鬼殺しと邂逅す 作:最初の仲間
竜血魔女。
この四方世界において、そう呼ばれる冒険者が居た。迷宮の主がかの英傑たちに倒され早五年。ふらりと突然辺境の街に現れ、街の隅にある沼地の中に佇む、古い塔に居を構えていた。インターネットが無いことに気付いた時は絶望したが、意外と快適だ。
三角帽を被り、豊満なその胸や肉付きの良い脚線美を強調する作りのローブに身を包むその姿は、まさに魔女と呼ぶに相応しい出立ちをしている。……別にこの服に話術向上の付呪をつけているわけではないが、明らかにこの服装だと値段交渉スムーズに進んでて草なんだよな。明らかに視線が胸に行ってるの見るのは楽しいけれども。なんだったら値引き目的で
まあ、その。要するに、この竜血魔女ってのが俺で、ここでの呼び名だ。
なんか事故かなんかで死んだと思っていたらいつの間にかここ、四方世界に放り出されていた。それだけだったら文明も中世程度、治安の悪さも折り紙付きなこの世界で二度目の死を体験するだけだっただろうが、幸か不幸か転生チートってやつが俺にはあった。先も言った通り今の俺は竜血魔女に……いわゆるTSしていたんだが、その容姿に見覚えがあったおかげで。すぐに気づくことができたのは間違いなく幸いだった。
「あっこれ、スカイリムの魔改造
The Elder Scrolls V: Skyrim
タムリエル大陸北方の地、スカイリム地方で捕らえられた一人の囚人が自由を取り戻したのちに、さまざまな冒険に飛び込んでいく、シリーズ5作目にあたるアクションRPGの大作だ。時に村々を焼き払うドラゴンを討伐する英雄として賞賛され、時に夜闇に紛れて金庫を漁るコソ泥として衛兵に散々ボコられ、牢獄にぶち込まれる。発売されてから二十年近く、今なお多くのファンに愛される名作だ。
……現在のプレイヤーが遊んでいるそれは、製作者の想定とは異なる遊び方かもしれないが。
スカイリムに限らず、TESシリーズはMOD文化が盛んにおこなわれていた。MODとはmodificationの略語で、要はプレイヤーが自由に好みの追加要素を作成、追加して楽しむ文化やデータそのもののことを指す。一言で表すのであれば、非公式DLCだろうか。
かくいう自分もMODを使用したプレイヤーの一人であった。各所で発生する致命的なバグを修正することから始まり、お世辞にも可愛いとはいえないキャラクターの容姿を美化したり、プレイ幅を広げるために装備や魔法を追加したり、いろいろとダウンロードしてはスカイリムを改変していった。18禁でAdult Onlyで
よく「女じゃ分身感が出ないからキャラメイクは男にする」なんていうが、それもゲームを進めていく上での楽しみ方の一つではあると思う。が、それはそれとして画面に映るのは基本背中だ。俺の構築した魔改造スカイリム地方を旅するうえでは某右手が言っていたように女性キャラが適切だった。ダッシュすると揺れる尻はもちろん眼福だし、背中越しに胸が大きく上下に動いているのを見るのは最高だ。……
そんな感じで笑いあり涙あり濡れ場ありでプレイしていたスカイリムだ。突然女の姿で第二の生を生きることになったのには驚きを隠せないが、数時間かけてキャラメイクした姿だ。何の問題があろうか、むしろ理想の展開といっても良いだろう。作成した装備も着用しているだけにとどまらず、本来スカイリムにあるはずの拠点も一つ、付近で発見した。これで何を恐れることがあろうか。
……いや、一つあったわ。唯一恐ろしいのは現実となったこの身体がバグったりフリーズしたら解決方法を見つけられるかどうかわからないことだろうか。突然
何より胸がデカい。なんだこれ少し歩くだけでばるんばるん上下に揺れる。うぉ、柔らか……!!これは、うん。
転生、いや赤ん坊として生まれなおしたわけではないから転移だろうか、どちらにせよこの世界に来てから幾ばくかの月日が経過した。竜の血脈たるドヴァーキンとしてスカイリム中を鳴らした武があれば職に困ることはないだろうと思っていた通り、問題なくことは進んだ。拠点としている魔術師の搭ことミルウォッチのそば、ほど近い場所には町もあり、ファンタジーの花形、冒険者として生計を立てている。
ぶっちゃけ生きていくだけなら錬金術で作成した毒なのか薬なのかわからん滅茶苦茶なポーションを話術スキル駆使して高値で売りつけた方が報酬はいいし、なんだったら変性魔法の《鉱石変化⦆で鉄鉱石を金鉱石に変え、インゴットを作成するだけでとんでもない金が手に入るが……!
俺は冒険がしたいのだ。ふらりと新たな土地を訪れ、住民の悩みのもとへ向かい、道中ちょっぴり、いやかなりスケベなことをしつつ、剣と呪文と隠密と、その他のくだらない事全部を駆使して快刀乱麻を断つ。手に入った二束三文の報酬はその日の酒代として消え、二日酔いに頭を悩ませながらまた次の依頼を探す。そんな冒険を。
「かつて〜の英雄 赤のラグナル〜」
虫の音すら聞こえぬ深い森の中、一人、ふらふらと足を進めていく。葦を掻き分け、連なる木々を潜りぬけていく。目指すは森の奥。北東にある、視界の端に映る洞窟のシンボル。右手の《生命探知》の呪文で浮かび上がる黄色い敵性反応の光と、左手で唱える《千里眼》によって目に映る青い光の道を辿り、向かっていく。
「ロリクステッドから馬を駆ってやってきた〜」
山道をヒールで歩くなんて通常考えられないが、そういう状況下でデバフを発生させる、なんて七面倒なMODは加えていないためか、過酷な山道であろうと整備された街道であろうと、俺は疲労しない。ダッシュせずほどほどの速度で動き続ける限り、体力の消耗なしに何kmであろうと歩き続けることができる。
それはそれとして、こういった状況の中で杖は便利だ。脚にかかる負担を分散させるだけでなく、簡単な障害物ならどかすことができるし、何より―――
「GOGYA!?」
「《チェインライトニング》、やっぱり便利だな」
杖には魔法が込められているから、手に武器を移し替えることなく簡単に攻撃に移る事ができる。
ある程度スキルを育成し終わり、自力で有用な魔法を唱えられる魔術師としては出番が自然と消えていく杖だが、中でもチェインライトニングの杖は強力だ。
杖から放たれる紫電は正面の敵を貫き、着弾した地点から周囲の敵にも連鎖する。プレイヤーが唱える同名の呪文とはコストや回数制限といった違いがあるが、片手で放てるにもかかわらず相手をよろめかせる効果を持ち、さらに連鎖した対象にもこれは機能する。本来、破壊魔法スキルを育成し、「二連の衝撃」パークを取得した上で両手で詠唱しなければ発揮されない能力だ。さらに、本来この効果は初撃のみに発生するものだが、この杖で放たれる雷撃による体勢崩しは連鎖する。
数少ない杖使用の利点だろう。あと持っているだけで雰囲気が出る、魔法使いってイメージが増す。
「《生命探知》に反応してたが……やっぱりゴブリンか。目標の洞窟に群れがいるってのは間違いなさそうだな」
曰く、ゴブリンの群れを見つけた。村が襲われる前に冒険者ギルドに依頼を、と話していたのは
みつけた、口に出すとともに頬が緩んでいるのを自覚する。いけない、獲物を前に舌なめずりは三流だ。久方ぶりの
目標の洞窟も内部でエリア移動を挟むほど広くはなさそうだ。……《生命探知》によれば前方にニ、右奥に三。中央には……
思っていたよりも多いな、合わせて二十匹前後。非敵対者はなし、か。先に捕まった冒険者や攫われた村人とかもいなさそうでよかった。……《死者探知》を使うことも一瞬頭によぎったが、生者の反応と異なり反応するのは
隠密しつつ内部を探索。道中で孤立した個体は死角から処理。集団に見つかればレベル判定も兼ねて《鎮静》を放ちつつ広間へと誘導。これで行こう。背をかがませ身を隠しながら、俺は洞窟へゆっくりと歩を進めた。
いやサイレントロールすれば速いんだけど酔うしローブが汚れるので今回はなしで。
……洞窟内の探索を済ませてみれば戦利品の乏しいこと乏しいこと。宝箱の一つもありはしない。ある程度奥行きのある洞穴にゴブリンが住み着いただけ、ダンジョンと呼ぶには程遠い。精々、茂っていた垂れ苔や木椅子キノコが収穫といえるくらいか。
この四方世界、スカイリムはおろかタムリエル大陸有するニルンとは異なる惑星だということはこの数年で理解できた。この二つの世界には多くの差異や隔たりが存在するものの、全く共通点がないわけではなかった。例えば月が二つあることとかね。幸いなことに、よく似た植物であれば錬金術の素材として問題なく使用できるので便宜上、スカイリムでの錬金素材と同名称で呼んでいる。
さて、そろそろいいか。趣味と実益を兼ねて、一度一ヶ所に集めてから……済ますとしよう。
有用な装備の大半やロックピック等はドレモラ執事に預けたし、万が一の時はこの荷馬志望の変態を呼び出せばいいだろう。いや、俺も同類だな。……《鎮静》も解ける頃合いだ。わざとらしく足音を立て立ち上がり、ゴブリンの群れの前で隠密を解く。
呪文の効果で定まっていなかった意識が徐々に鮮明になってきたのか、こちらに焦点を合わせると、段々とギラついた目つきで鼻をひくつかせている。にたにたとした笑みを浮かべ次第に騒ぎが大きくなっていく。何やら首魁と思しきゴブリンが下卑た表情でわめいて居るが、すまねぇ、ゴブリン語はさっぱりなんだ。不思議と転生してから人類種もとい
『肉付きの良い女だ』
『ただ一人で乗り込んできた頭の弱い冒険者だ』
『家畜の如くよく肥えた乳だ』
『薄布一枚纏っただけの柔らかな胎だ』
『その雌を孕み袋にしろ』
ぶるり、身体が無意識に震えたのがわかる。当然、期待にだ。……そら来た。目を血走らせ、性欲を漲らせた怪物共が見目麗しい少女に殺到する。群れの中でも特に大柄な個体なんかは有象無象を轢き飛ばし向かってくる。ああ、あの一体なんかは当たり所が悪かったのかぴくりとも動かなくなってしまった。勿体ない。
小柄な体格を持つブレトンがこのオークもかくや、といわんばかりの巨躯を見上げるとき、正面の視界に映るのは薄汚い腰布だ。そして薄っぺらなそれを押し上げる一物。鼻をつんざく淫臭に、脳を焼くほどに欲望が刺激される。布越しでも分かる大きさ、前世の自分とは比較するのもおこがましい。
場違いな敗北感と、数秒後に自身に訪れるであろう悲劇を想像し、自然と下腹が熱くなる。身体の奥から湧き出すその劣情を、紐のような下着に受け止められるはずもなく、太ももから足先へと流れ出て、地面に染みを作ってしまう。
剣を振るう必要もない。呪文を唱える必要もない。たった三語叫ぶだけで、こいつらをバラバラにできる。
あえて、あえてそれをせずこのような取るに足らない最弱の雑魚モンスターに降伏し、惨めに命を乞う。救国の英雄として今まで培ってきた技術の全てを使って無双することよりも、一時の性欲に身をゆだね、自ら邪悪なケダモノにその肢体を好きにさせることを選ぶ。それのなんと背徳的で、興奮することか……♡
杖を放り投げ、ローブの裾をたくし上げる。その中身を見せつけるように。
「貴方の勝ちよ……降参するわ……♡」
笑顔を浮かべ、
大きく開いた胸元の生地を引き裂き、俺を押し倒す。群がってくるゴブリン共の表情は一様に邪悪に笑い、黄色く濁った瞳に熱い情欲が渦巻いているのが手に取るように分かった。
きっと。今の俺は奴等と同じ
───右肩に受けた刃傷がひどく寒く感じる。右腕が痙攣して動かない。
歯を食いしばり、刺さっていた短刀を肩から引き抜けば、刃に粘性を持った黒色の汚物が付着しているのが目に映った。……そうか、毒か。大丈夫だ、慌てることはない。毒消しの水薬は事前に買って―――
……無い!腰の巾着に入れている手が何もつかめずに空を切る。割れたのか……!ゴブリンから奇襲を受けて倒れこんだ時の衝撃に、小瓶が耐えられなかったようだ。
村まで戻る余裕は……無い。毒の種類は分からないが、村に戻るまでに毒が全身に回る方が早いと考えるべきだろう。なにより、ゴブリンを何匹殺し、何匹逃がし、何匹残っているのか把握できていないこの状況で踵を返すのは自殺行為だ。だがこのまま洞窟で何もせずにいても死ぬだけだ。間違いなく……。
5年前、ゴブリンに村が襲われた時の光景が脳裏によぎる。ただ、隠れて、息を殺して最後まで見続けていた。尊敬する姉が、姉で無くなっていく姿を。
許せるわけがない。
濡れた巾着を絞り、兜の下で水薬を啜る。
これで幾分かはマシになるだろう。まだ何も為せてはいないというのに、死ぬつもりはない。少なくとも、今のところは……。
背を向ければゴブリンが襲ってくるのであれば、それを利用するまでだ。血痕を残し、誘い込む。奴らの残数は知れないが、俺が殺した数も少なくないはずだ。相手が手負いだと分かれば、必ず乗ってくる。近くにあったホブゴブリンの死体を引きずり、来た道を辿る。高所から落とせばそれだけで武器になるし、それでなくとも、奴らの視線をこいつに向けた時に隙が生まれ、奇襲出来る。
急ごう。奴らがまた現れる前に。
死体を洞窟の上部、高台まで運んで暫くして、洞窟の奥から騒ぎ声が近づいてくるのが分かった。向かってきたのは5体のゴブリン。……頃合いだろう。死体を蹴り飛ばし、ゴブリンの頭上へと叩き落す。巻き込めたのは2匹。残りの3匹も突然の出来事に足を止めている。右腕はまだうまく動かないが―――好機だ。
助走をつけて駆け出し、高台から身を投げ出す。落下とともにゴブリン目掛けて左腕の盾を振り落ろし、砕く。ゴブリンの首に全体重と落下の衝撃が襲い掛かり、頭蓋骨の原型が残らないほどに変形した。3匹目。
背後から近づいてくるゴブリンに振り向きざまに盾を振るった。盾の縁で腹を裂かれたゴブリンはその出血に狼狽え、立ち止まる。足を止めたゴブリンにそのまま盾を振り下ろし、今度は首を断つ。さながら断頭斧の如く。4匹目。
目論見通りに事が進んだのはここまでだった。残った1匹が他のゴブリンと違い、良質な装備を身に着けていたことにまで気を回すことができなかった。襤褸の装束に身を包んだゴブリンが
とっさの判断でホブゴブリンの巨体を盾にした。……が、直撃を避けたにもかかわらず
……馬鹿、な。確かに首を突いて息の根を止めたはずの……ホブゴブリンが立ち上がり始めている。生きているだと? 足りなかったか……!
今の雷のような呪文を受けた影響だろうか?なんにせよ確実な止めを刺しておくべきだった、というのはすでに後の祭りか。
襤褸を着たゴブリンは既に二度目の詠唱を終え、杖をこちらに向けている。武器のつもりだろうか、ホブゴブリンは洞窟そばに生えていた枯木をへし折り抱え、こちらへと近づいてくる。対してこちらは、ようやく抜けていた足の力に活力が戻り始めてきたところ。片方をどうにか躱せたところで、もう片方がこの身を襲うだろう。
……どうあがいても詰みだ。だが、まだ、諦めるわけにはいかない。やれるかどうかではない。やるのだ。ゴブリンは全て殺す、そのために俺は―――!
その時だった。
ぺたぺたと、裸足で歩いてくる音が、洞窟のほうから響いてくる。目の前のゴブリンのものではない。
「見習い冒険者……ってところか?思っていたよりも早かったなー。村人に被害は出ていない筈だし、依頼が発行されるまでもう少し時間かかるものだと思ってたけど」
奥から声がした。声とともに人影が近づいてくる。女性だ。いや、自分と同じか少し年上くらいの……少女だ。整った目鼻立ちに、均整の……取れていたであろう、身体。
ゴブリンに捕まっていたのだろう。
衣服は剥ぎ取られたのかほとんど身に着けず、白金の髪はゴブリンの体液で汚され、肌に張り付いていた。白い肌には曲がりくねった邪悪な紋様が彫られ、全身に浮かび上がっている。局部をはじめとした身体の各所は悪趣味な装身具で飾り付けられていた。そしてなによりも……彼女から漂ってくる据えた臭いと、大きく膨らんで歪んだ腹部が、つい先ほどまでの彼女に何が起きていたのかを如実に表している。
「助けに来てくれた子供を見殺しするのは、違うよなぁ……うん、そろそろいいか」
「―――少年。耳を塞いで屈んでな」
二体のゴブリンがこちらに目も向けず、少女へと殺到する。逃げ出した虜囚への折檻のつもりか、あるいは。
俺など後でも殺せると踏んだのか。まずい、いずれにせよこのままでは彼女が嬲り殺しにされ……
そこではたと気づく。彼女は―――どのようにしてここへ来たのだ?まさかゴブリンが手枷や鎖の一つもつけずにおいたはずがあるまい。そうだ、長期間囚われていたはずなのに、彼女はあまりにも活気に満ちている。目に光を宿し、はっきりと自我を保っている。ゴブリンに凌辱されてなお、心を保っているその精神性、そして先の言葉……!にわかには信じがたいことだが、彼女には何かある。少なくとも、今の自分には持っていない何かを……!
駆けだそうと踏み出した足を留め、姿勢を低く盾を構える。
「
雲一つない晴天の空の下、雷鳴と錯覚するほどの轟音が鳴り響く。それは先の雷の呪文とは比べ物にならない。地の底から天高く鳴り渡り、兜越しに耳をつんざく。
竜が咆哮するのならば、このような音なのだろうと思わせる叫びが……
そして見た。発せられた声が衝撃波を生み、2体のゴブリンを吹き飛ばしたのを。襤褸を着たゴブリンが。天高く宙を舞う。真っ先に少女に近づいていたホブゴブリンの肉体が砕け、四散する。ゴブリンの使う呪文などとは異なるそれは、まさに揺らぐことのない、純粋な力の発露。
彼女は剣も魔法も使わず、ゴブリンを殺してしまった。しかも声で。叫ぶだけでバラバラにしてしまった。
「やぁ少年。助けに来てくれたのかい、ありがとう。怪我は……うん、こりゃ酷いね!」
駆け寄ってきた少女はこちらの怪我を見るや否や両手を輝かせ、俺の右腕に翳した。柔かく、暖かな光がこの身を包み、痛みが和らいでいく。……和らぐどころの話ではない、あれほど痛みを発し、軋みを上げていた右腕が癒えている。
……治癒の呪文だ。司祭、だったのか。
「正確には違うが……まぁ似たようなもんだ」
「あらかた治したつもりだけど……洞窟の様子を見るに
そういうわけにはいかない。
彼女の手を振り払い、立ち上がる。命を助けられたことには感謝しているが、ギルドで発行された依頼を受けたのは自分だ。ゴブリンの死を正確に報告しなければならない。確実に殺す。
ゴブリンは皆殺しだ。
「真面目だねぇ……だったら一緒に行クッ……⁉」
びくり、と体を震わせたかと思えば、少女は膝をつき崩れ落ちる。
……先の光景で見落としていたが、考えてみれば彼女はつい数刻前まで囚われていたのだ。平然とした表情をしていてもやはり無理が……
そう考えを巡らせたところで、彼女の足元に水たまりが出来はじめ、だんだんと広がっていくのが目に入った。
まさか……。
「あーーー……さっきはデカい口叩いたね……。わ、悪いんだけど
「こっちはこっちで何とか……何とかっ!するからさ……!」
「……ごめん。破水したわ」
…………任せろ。すぐに戻る。
ゴブリンは皆殺しだ。
折れた剣を握り、吹き飛ばされたゴブリンに向かって駆けだした。
「あ!あとアイツが持ってた杖持って帰ってきてほしいな!あれ割と気に入ってたんだ!」
……………………任せろ。
───行ったか。行ったな?
いずれ冒険者がゴブリン退治に来るだろうとは思っていたが、随分と若い。片方折れた角の装飾のある鉄仮面に、まだ使い込まれていない皮鎧。新人だろうか。
初依頼だとしたらこの絵面は刺激的だったかなー、冒険にノイズ入れて申し訳ないなー。……なんて思いながら、息を吐き、腹部に力を籠める。
「お…♡おぉぉおお゛ーっ…♡……………♡゛おぉ゛ー!っ…♡…♡……♡」
ゴブリンに仕込まれた
正直自然に出てしまうきったない
激痛で思いだしたが、ゴブリンが杖奪ってったのは良かった。いや決して良くはないがお気に入りの杖奪われたうえに、
「おおぉお……゛お…゛ぉおぉお…゛」
前言撤回。悪い、やっぱ辛ぇわ。……なんで妊娠MODなんて入れたんだか、入れたの誰だよ……俺でしたァ!
―――そんな風に現実逃避を挟み、思考が二転三転しながら小一時間、地獄の時間も幕を閉じる。
やっと訪れた安息の時間。五体投地しながら肩で息をする。
……呼吸する度に大きく上下する双丘。その先端では、薄く光を帯びた一対のピアスが、暗がりでもその痴態を強く主張していた。各種パークや錬金術により強化された、体力回復上昇とスタミナ回復上昇の付呪を施したアクセサリー。これが無ければゴブリン相手とはいえ無防備な姿を
「これで隠せ」
…………………………そうじゃん居たよ少年が。
洞穴でみつけたのか、身体を包めるくらいの大きさの外套を俺に被せてくる。紳士がすぎる。少し襤褸いが、最低限身を隠すには問題ないだろう。見苦しいものを見せてすまんかった。
「……ゴブリンは殺した。お前の言う通り、あれで最後だった」
そう言いながら、少年は俺に杖を手渡してきた。ありがたい。ロールプレイ重視で装備していたとはいえ、対多数戦においては重宝しているのだ。……杖の先端が湿っているのは、ゴブリンの血液だと信じたい。
「ありがとう、少年。ウィンターホールド大学入学以来の長い付き合いの杖でね、結構気に入っていたんだ」
「礼はいい。それよりも」
甲冑ごしに、少年の瞳が赤く光る。そう感じさせるほどに強い視線を感じる。ゴブリンを殲滅した今も、少年は警戒を続けていた。右手に握る折れた剣を、いつ振るっても良いように。
「赤子は……いや、ゴブリンは、どうした」
……先にそっち?てっきりなぜ洞窟にいたのか聞かれるもんだと思っていた。敵対状態ではないようだが、ただの被害者とするには不審すぎるのは自覚している。
安全確保を優先して動いている……と考えるのが自然か? ……いや。生まれて間もないゴブリンに対する殺意にしてはいささか過剰だ。
……ああなるほど。優しいんだな、君は。
「汚れ仕事を任せるつもりはないよ。それに、元よりその気遣いは無用だ」
懐から一塊の水晶を取り出し、少年へと見せる。薄く、妖しい光を帯びたその多面体は、粘ついた液体に塗れ湿っている。つい先ほどまで人肌に包まれていたかのように、ほのかに温かい。
「結論から言えば、そいつが
「…………何?」
そう、俺の目的はこの魂石だ。その名の通り、殺害した生物の魂を縛りつけた水晶の一種。付呪……魔法を込めた武器や防具なんかを作る時や、魔法を杖に充填する時なんかに使う、魔法を武器や防具に定着させるための触媒だ。……
魂石が手に入るような鉱床は
「俺が
俺が導入した妊娠MODは行為後、一定期間段階的にプレイヤーキャラの外見を変化させた後に特殊モーションを発生させ……子供のNPCを作成するのが本来の使用用途だ。とはいえ、毎回イベント発生の度にNPCを新たに作成してしまうと、ゲームプレイ中のパソコンに負荷がかかり過ぎてしまう。ただでさえMOD環境の構築やバグ修正があるのに、冒険に連れていくこともできないNPCを何十体も管理するなど面倒にもほどがある。
そのため、NPCを生成する代わりに魂石を入手するように設定を変更していたのだ。転移後も特に変化なくこれが作用し、魂石の入手手段として利用している、というわけだ。
「君に分かりやすく話すと、赤子の肉体を水晶に変換し、その中に魂を閉じ込める魔法ってものがあるのさ。着床、妊娠、出産までのサイクルが早いゴブリンの生態とこの魔法の相性が良くてね……時々こういった洞窟に潜り込んではこの水晶……もとい魂石の
ゴブリンの持つ魂のサイズは小さく、最上位の付呪を施すには能力不足で物足りない。だが装備への充填や、適当な装備にそこそこの能力を付けて売るとそれなりの金になる。性欲の発散と割りの良い金策を同時に熟すことができる。
一石二鳥のプレイではあるのだが……こうして他の冒険者に見つかるのは想定外だったな。仕事の手間を増やして申し訳ない。
「そういうわけで、君が群れが全滅させてくれたおかげで、ここでゴブリンが増えることは無い。ましてや、俺がゴブリンの赤子を産み落とすこともね。仕事の邪魔をしてすまなかったね」
「………………ゴブリンが死んだのならば、それでいい」
「助けられたのは事実さ」
「必要だったようには……思えんが」
「まさか、死ぬときは死ぬさ」
殴られれば痛いし、矢で貫かれれば血も流れる。腕を失えば反抗もできず、首を断たれれば死ぬだろう。だが今、そうなってはいない。
俺は今、生きている。地球生まれの日本人でも、タムリエル大陸スカイリム地方の英雄、ドラゴンボーンでもなく、この四方世界辺境の一冒険者、
「そろそろ帰ることにするよ。ドレモラ、服を」
「はい、奥様」
指を鳴らすとともに、ドレモラ執事がオブリビオンの彼方から現れ、預けておいたローブを羽織らせてくる。突如として俺の背後に現れた異形の存在に、少年が肩を跳ねさせ、少し遅れて身構える。こういう反応を見ると、兜や鎧に身を包んだ彼もまだまだ少年なのだということを実感させられる。
……助けられた相手に持つべき感情ではないことなどわかりきっているが……一つ、邪な考えが生まれてしまった。兜の下に広がっているであろう、彼の不愛想な表情。それを崩してみたいという小さな悪戯心が芽生え、次第にそれが大きくなっていることを感じる。
ドレモラ執事から手渡された三角帽子を深く被り直し……その下で上がりつつある口角を隠す。
「礼と言ってはなんだが……せめて近くの街までは送ろう。少し、耳を抑えていたほうがいい」
「……何?」
大きく息を吸い、スゥームを込めて一息に放つ。
「
「何の、つもりだ?」
「言ったろう?送ると。あらかた回復させたつもりだが、それでさよならってのも不義理だろう。まあ
ローブの内側から金貨が入った袋を取り出し、少年に手渡す。
「先も言ったが、助けが必要だったとは思えんが。……来る、とは?」
「いいから取っときな。報酬ってのが嫌なら、回収してくれた杖の代金ってことで。迷惑料って言い換えても良いぜ」
金貨袋を無理矢理彼の懐にねじ込む。特殊性癖に巻き込んで善良な一市民を死なせた、などとあってはドラゴンズリーチのダンジョンに放り込まれるではすまされないだろう。
スタップ!首長の命令により、止まれ!
「来るってのは……もう見た方が早い、そら来た」
森の上空から咆哮が轟く。呼び出したのは雪が舞うスカイリムの大空を駆ける、翼のある冬のハンター。世界を越えてなおふざけた行動をとるこの俺を、
赤く輝く鱗に、逆巻く大角。人一人容易に投げ飛ばすかぎ爪、雄々しく振るわれる巨大な尾。何よりも特徴的なのは、口内に何本も並び立つ牙の内側から、炎が揺らめいていることだろう。その姿はまさに神話や御伽噺話に謳われる怪物。巨大な
「紹介しよう。我が戦友、オダハヴィーングだ。早速だが、そこの彼ともに近くの街までひとっ飛び、頼んだよ」
突然の出来事に驚いたのか、武器も構えず、声も出さずに立ちつくす少年。驚きだろうか、恐怖ゆえだろうか……後者ではないような気がする、なんとなくだが。だって、ほら、男の子ってこういうの好きでしょ?
あれほどまでにゴブリンに対して殺意を見せていた彼の瞳は
オダハヴィーングを見上げていた少年は、ややしばらくして……よろめきながら振り返った。こころなしか足取りも不安定だ。
「すまないが……耳元で叫ぶのをやめてくれないか」
…………これ体力じゃなくて三半規管にダメージ入ってるじゃねぇか!
この後滅茶苦茶回復させた。
R-18版の需要
-
ある
-
ない
-
どちらでも良い