MODマシマシTSドヴァーキン(雌堕ち済)四方世界にて小鬼殺しと邂逅す 作:最初の仲間
感想、評価、誤字報告いつもありがとうございます。励みになります。
マグロって半球睡眠しないんですね…! 間違って覚えていました。修正ありがとうございます。
10話にも届きましたのでこれを機に短編から連載に区分を変更しました。まぁなにが変わるというわけではないんですが1話投稿当時には続き書くつもりなかったので……。
ここまで執筆を続けてこれたのも皆様のご愛顧の賜物によるものです。これからもよろしくお願いします。
「いたぁ!!」
ギルドの端で佇むゴブリンスレイヤーを見つけるとともに、彼女は喜びの声を上げた。隣にいた俺が彼女を止める間もなく、彼女はすぐに駆け出し……公衆の面前で彼の胸に飛び込んだ。
……牧場の娘の、その目の前で。
「今朝は来てくれないし、お見限りかと思ったじゃないか、ええ? 待っていたのにさぁ」
「そうか」
「あー……。もう遅かったか。や、どうもお二人さん」
「とはいえ許そう! きみの勤勉さのおかげで、きみを探す手間は大いに省けた」
「そうか」
「そうとも!」
溌剌とした声で、笑顔を浮かべる彼女の姿は実に愛らしい。彼女を取り巻く最後の障壁、それを取り除くのに必要な人材が揃ったのだから彼女の喜びもひとしお、といった様相だ。
……傍から見れば恋人との再会、その抱擁と見紛う出で立ちだが。牛飼娘、顔赤くなったり青くしたりで忙しないぞ。どうすんだこれ。やべーぞ修羅場だ。
「我が望みついに成就すれど問題ありだ! 手伝って貰いたいのだけれどね、どうだい?」
「ゴブリンか?」
彼女はニッと口角を上げ、我が意を得たりとばかりに指を突き付けた。
「残念ながら、不幸にして、幸いなことに! まさしくその通り!」
「残念、って声色じゃないけどな」
その顔で不幸は無理でしょ。
「そうか。……すまんが依頼だ」
「え。あ……い、依頼?」
「そうだ。俺と依頼人、そして冒険者の三人だ」
「こんにちは、また会ったね」
孤電の術士の背後からひらひらと手を振る。いやー、懸念していたことがついに起きてしまった。一名スキンシップ過剰、一名痴女だ。俺はともかく彼女までやらかすとは。
めっちゃ二度見されてる、前回着てたスカイリム産の衣服じゃないもんね。前後左右、エッグいスリット入ったこのローブ、これに一番付呪を込めてるから……なんて彼女からすれば無意味な言い訳か。結局は俺の趣味だ。
「……わかった、事にする」
「そうか」
「そうかじゃないが」
それで済ますのは……無理だろ……!
顔暗くさせて、後ろ手にギュッと拳握りしめてるのに無視してギルド出られねぇよ……! 原因の半分は俺にあるから余計に……!
俺は気兼ねなく性欲処理できる相手がいればそれでいいんだが、この娘のこと知ってしまった以上は手を出しにくい。押し倒した後、否が応でも、この娘の顔が脳裏に浮かんで罪悪感で萎える。
……かといって、例えばそういうことに疎そうなこの娘をこの場で巻き込んだとして。一緒にこいつ押し倒そうぜ! なんて言った暁にはセクハラ、あるいは不同意猥褻の罪で衛兵のお世話になるだろう。
お前は四方世界とその民に対して罪を犯した。何か釈明はあるか? ないです……。
どう話したものかと思考を巡らせている間に、孤電の術士は既にゴブリンスレイヤーと牛飼娘との関係性、そして彼女からどう見られているのか把握していたようだ。
「これはしたり、だ。ではきみ、まず糧秣やらを酒場で買ってきてくれたまえ」
「む、俺がか」
「女の子に荷物持ちをさせるものじゃなかろ。勿論
「……俺がか?」
「きみがだ」
「……ちょうどいいか。俺も金出すから、臭い消しの香袋二つ頼むよ」
孤電の術士と俺から小銭を受け取り、ゴブリンスレイヤーは酒場のカウンターへと向かっていく。パシッてすまん
振り返れば目元を潤ませる少女が一人。……こんな健気な娘と生活してて何もないってあいつマジかよ。密室、
「そんな顔をしないでおくれよ。きみが想像するようなことはないんだから」
「ホントに……?」
「ホントさ。―――これまでも。これからもね」
「色々と遅かったのだよ。何が遅かったといえば、遅かったことをどうとも思わない辺りだね」
孤電の術士が少女の目元に手を添え、涙を拭う。彼女のその言葉が本心かどうかは……いや、よそう。彼女がそうすることを選ぶのであれば、俺がここで何かを言うのは野暮というものだろう。
「えと。じゃあ、その……。あなたは……依頼人?」
「そして魔術師にして賢者、かな。ま、何者であれ一言で説明するのはまことに困難なものさ」
「はい……はい。ありがとうございます」
「なに、最初に酷い事をしてしまったのは私だもの。……彼女の趣味が移ったかね」
「おう、そこで俺に振るの止めろや」
最悪のキラーパス持ってくるんじゃあない。やめてくれ賢者。その術は俺に効く。やめてくれ。
まぁ話術スキルで適当に騙くらかすことも出来るが……彼女が真摯に話したんだ、倣うとしよう。
「俺が
俺自身が散々な目に合う分にはマゾ心満たせて“癖”だから別にいいんだが、他人のそれを見たくはない。凌辱は身体のみならず、心に一生消えない傷を残すものだ。
俺の場合、だいたいの問題は暴力か暗殺で片付けられるが、他人の不幸はそうはいかない。まともな恋愛経験はないが、NTR、略奪愛が受け付けないのはこの辺にあるのだと思う。
惚れたの腫れたのはようわからんが……。TS転生者の性自認ってのはまったく、面倒この上ない。
「え、えぬてぃー……? え、っと……?」
「なにより、君によろしく頼まれたんだ。余計な真似はしないさ。約束しよう」
―――だからくっつくなら早くするんだね。そう耳元で囁くと、少女はまた顔を赤らめて顔全体から白煙を噴出させた。うぉっ、急に凄ぇ蒸気……! ブレス・オブ・チュアクかな?
いやマジで奥手そうだから心配になる。男なんて皆、俺のことが好きな奴が好きだ、なんて思想だから押し倒しておけば何とかなると思うぞ。リプ欄でよく見かける安田やザインみたいに俺がなる前に付き合うくらいには進んでおいてほしい。諸事情で俺は突然盛って襲いかねないので……。
あうあう言っている牛飼娘を眺めていると、杖で頭を小突かれた。
「あた」
「急かすんじゃないよ。君はいっつもせっかちなんだから」
「この馬鹿がすまなかったね。お詫びといっては何だが、秘術を一つ教えてあげよう。私も最近知った、とびっきりのね」
「……ひ、秘術? 魔法ですか?」
「あらゆる言葉はまさしくだ」
孤電の術士は指を立てて、彼女に呟いた。
「良いかな、彼は……奴はずいぶんとわかりづらく回りくどいが、言えばちゃんと伝わるやつだよ」
ああ、なるほど。咄嗟に出そうになった笑みを嚙み殺す。
何がどうとも思わない、だ。わかりづらく回りくどい、されど言葉は通じる……なるほど話が合って当然じゃあないか。
なんせ、そう評した彼女自身にそっくりそのまま当てはまる言葉なんだから。
「……なんだい? その顔」
「―――さぁ?」
今この時こそ話術スキルの出番だな。勘のいい彼女からの疑いをすっとぼけるにはピッタリだ。
「時にゴブリンスレイヤー、騎乗、いや……乗馬の経験はおありかな?」
「今なんで言い直したんだい?」
「ない。……それがどうした」
孤電の術士曰く。ここ、辺境の街この目的の地まで、徒歩でおおよそ三日はかかるという。急ぐ旅ではないが、糧秣も体力も限りがある。
「徒歩も嫌いじゃないが……移動時間を早められるに越したことはないだろ?」
乗馬経験がないならおおよそ一日半程度はみておくべきか。
「その、なんといったか? あの
「オダハヴィーングは俺以外の言うこと聞かないんだわ。今回は道案内が俺じゃないからナシだ」
彼らが知る由もないだろうが、もう一体のドラゴン、ダーネヴィールはソウル・ケルンから離れると時間経過で自然と身体が朽ちていくからな……。あのお爺ちゃんに三人乗りは流石に酷だろう。また別の機会に四方世界の空を見せてやろう。
「そうか……」
……あれ結構残念がってない?
わかるぞ友よ……! 赤い鱗、大きな翼……!ドラゴンってやっぱりカッコイイもんな! また今度乗せてやるから待ってろよ! また今度な! 励ますようにバシバシと彼の肩を叩く。
「ご期待に添えられなくてすまんが……せめて
右手左手、双方に異なる召喚魔法を用意し、そのまま魔力を解き放つ。一方はソウル・ケルン、一方はデッドランド。オブリビオンの遥か彼方から、二頭の馬が召喚された。
「
「見た目悪どいが……そこは気にすんな! 頭目も金溜まったら馬買うといいぞ、移動に運搬、戦力にと三方よしだ」
「なるほど、覚えておこう」
「いやいや、馬は臆病なんだから、よっぽどの軍馬でも用意しなければ騎馬戦は厳しいんじゃないかい……?」
「うん……? いや馬なんて皆、勝手に飛び掛かっていくくらいには気性難なやつばかりだろ?」
「えっ」
「えっ」
鞍のついたデイドラの馬に孤電の術士とゴブリンスレイヤー、裸馬のアルヴァクに俺が乗り、歩を進めていると、やがて日も落ち始め、野営の準備を俺たちは始めた。
せっかくだからと道中、ゴブリンスレイヤーに乗馬の練習をさせていたこともあり、想定よりも進んでいないが……。彼の筋がいいのか、自分の好きな方へ馬を歩かせることには慣れてきたようだ。いずれは容易に走らせることも出来るようになるだろう。
「んんー……っ! これは牧場の品だね。選んで買ったのかい?」
「
「牧場の……気付かなかったな」
揃って糧秣に舌鼓を打つ。彼の下宿先も牧場とのことだし、金さえあれば馬を飼うこともできるだろう。
「きみはあれかい? とりあえず腹に入って栄養になれば良いとかいうタイプかな?」
「頓着はしないが、先生には『生きていたいなら温かくて旨いものを食え』と教わった」
「ほう、中々含蓄のある事を言う御仁だ」
「よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む……やっぱり亀仙人の教えは偉大なんやなって」
「師は
「亀仙人も亀じゃねぇよ」
ゲーム中じゃあろくな体力回復効果もない、ただの食材でしかないチーズの一欠片も、こうして軽く炙るだけで舌を蕩けさせる。おお甘露甘露。
「道理だね。活力っていうのはそういうところから湧いてくるもんだ。食いたいものを食いたまえよ」
「……食いたいものか」
「俺からはこれかな」
どん、椀を三つ取り出し、二人にも分ける。今の今まで火にかけられていたかのように湯気が立っている。炎の塩鉱石サマサマだ。
「鹿肉のシチューだ。スタミナ満点、
「今どこから取り出したんだい? 容器もなしに……?」
「
「…………美味いな」
「だろー? 栄養満点だからな。まだあるから、戦闘前に何杯かガブ飲みしておくといいぞ」
「この熱さの食べ物を??? ……あ、美味しい」
即時スタミナ十五ポイントの回復効果に加え、プレイ時間で七百二十秒間、毎秒体力スタミナ一ポイントずつ回復する戦士プレイのお供。飲めば飲むだけ効果重複するし、下手な回復薬より効果もある、料理と呼ぶには優秀すぎる代物だ。
コスパ面でいえば野菜スープもありなんだが……あっちはあっちで、MODなしだと自力栽培できないトマトが必要になってくるからなぁ。あと何より肉食いたいだろ。……うん、美味い。
「そういう意味では……ゴブリンはどうなのだろうね」
シチューを啜る手を止め、孤電の術士はふと疑問を零した。
「興味はない。問題は奴らが何をどう判断し、行動するかだ。周りがどう思うかではない」
「いかにも、その通りだ。だから、まぁ……。ゴブリンの書を書かないというきみの判断、私は間違いだとは思わないよ」
孤電の術士の言葉に、ゴブリンスレイヤーが視線を上げる。あの時の返答、気にしていたのだろうか。いや、もしそうであるならば、面白半分に同調した俺のせいでもあるだろう……。
「知識を得るという事は幸福なものではない、労苦が伴う。得るまで、得た後。そもそも知識を得ようと思う者自体が稀だし、人々が英雄について望むのは史書ではなく愉快痛快な叙事詩だもの」
「だが……。それは仕方のないことじゃあないか?」
それが自身にとって益であれ、なんであれ、学習にかけることのできる時間には限りがある。ましてや、本を読んでいる間に、他の学習に時間を使うことはできない。人間には本を開くのに必要な腕も、文字を読むために必要な瞳も、一対ずつしかないのだから。
知識の代償は時間か? 否、それを得ようとしなければ得られたはずの、また別の知識だ。
俺だって興味のあるもの、ないもの色々ある。限りある人生、どうせ読むならば面白いもの、有益なものを読みたいと思うのは人間として当然のことだろう。その中身関係なく、知識であればなんであれ蒐集したいと望む精神性を持ち、それを成すことの出来る存在は、もはや人間ではない。
…………外典の領域を支配する主、かの知識の悪魔のように。
「そうだね。人間にはどうしたって限界ってものがある。とはいえ
「学び、調べ、書き上げ、編纂する。それを写本にし装丁し、各地へ届け、管理し、保管し……」
「それをだ。村を飛び出し話も聞かず字も読めず、小鬼退治で死ぬ輩へ無償で教えてやる義理はないよ。言ったところで彼らは理解する気もなければ、理解する能力もないのだから」
「…………」
……そもそも求めようとしない者にとっては、無用の長物か。難しいものだ。
「ゴブリンの書を書かないというのは、費用対効果の面で間違った判断とは思わないね」
「紙もペンもインクも、決して安かないものなぁ……」
タムリエルに普及していて、この四方世界にないもの、恐らくそれは高度な製紙技術と活版印刷だろう。あの世界に『子供向けのアヌの伝記』、『アルゴニアンの侍女』のような、大衆向けに大量印刷され、流通に乗った商業用出版物が存在する以上、書物ひいては教育の普及は四方世界よりも格段に進んでいる。
「……知識神の学徒は学問を広める事に熱心だったと思ったが」
知識神……確かその教義は知識をただ分け与えることではなく、自ら学ぶ意思を得る事を尊び願う神の一柱、だったか。とはいえ……。
「それが実を結んでいるかどうかは別、ってことだろうよ」
九大神の一柱、知恵と論理の神ジュリアノスも、スカイリムでも影が薄い。魔術師としては恩恵に肖りたいものだが祠もほとんどないし……。
「残念なことだけどね。理解も支持もするよ。その理想が叶う世界ってのは豊かで、優しくて、平和で、素晴らしいさ」
「―――しかしこの世界は理想郷ではあるまい。宿命と偶然に満ち満ちた四方世界。神々の卓上だもの」
「何も知らず死に行く者。顔も知らぬ彼らに、私は同情しない」
「…………」
ぐびりと、林檎酒を嚥下する孤電の術士。
知識……それらを多く抱えるがゆえの彼女の言葉は重かった。一個人が賢者に知恵を求めたとして。そもそも知識の価値、学問の価値を知るものでなければ無意味……なるほど知識神の信徒の苦労も伺えるというものだ。
「知識の光はか細く、迷妄の闇は未だ大なり」
「きみの知識ってのは……そんな闇に差す
「―――なら、お前のそれはどうなんだ」
真っ暗な夜空には静かに、けれど確かに双子月の光が降り注いでいた。
夜の間、俺たちは交代で寝ずの番にあたり、篝火に火を灯し続けた。
絶えないように、消えないように。
ゴブリンスレイヤーの問いに、彼女は終ぞ答えることはなく……やがて夜が明けた。
R-18版の需要
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ある
-
ない
-
どちらでも良い