MODマシマシTSドヴァーキン(雌堕ち済)四方世界にて小鬼殺しと邂逅す 作:最初の仲間
感想、評価、ありがとうございます。いつも楽しみに読ませていただいております。
誤字報告も、最新話のみならず過去のものまで報告してくださるの本当にありがたいです。
今回で章としては一区切りになります。次回からは時間飛ばす予定です。
錬金術について教わりたいとのことで、ゴブリンスレイヤーにはここ数日、ちょっとした
ごりごり、と素材を乳鉢で擂り潰しながら、幾つか素材を卓上に並べていく。
「で、これがスキーヴァー……いわゆる溝鼠から手に入る素材だな。こっちだと
「薬になるのは皮の方だ。それもカリカリに焼き上げて焦がしきったものを使う。……ああ、間違っても尻尾と混ぜるなよ。そっちは毒として使え」
「全部同じではないのだな。部位によって違うのか……」
「全然違うぞ」
これだから素人はダメだ……なんてのは冗談でも言えんな。彼、真面目だからそのまま受け取って肩を落とすだろう。実際なんで効果が違うのかまでは俺もわからんし。俺としては部位の違いよりも一部が炭化したことによって内部構造が変化したのではないか……と睨んでいるが、魔法的ななんやかんやが少なからず働いている以上断言はできない。
「これが炎の塩鉱石。炎の精霊から採取できる。料理に混ぜれば温度を保持できるぞ」
「こっちも炎の塩鉱石、語訳だ。多分どっかで
「…………」
こういう雑な翻訳も今となってはご愛敬だ。とはいえ、全く異なる効果を持つ素材名で被るのはちょっと杜撰だとは思うが……まあ今に始まったことじゃないし。
「炎の茎、とでも覚えておくんだな。名前とは裏腹に炎耐性が下がる効果があるから、塩鉱石と混同しないように」
「ああ、助かる」
「……しかし、本当にいいのか」
「え? 何が?」
ゴブリンスレイヤーは机の上の紙束といくつかの冊子に視線を向けた後、再び言葉を続けた。俺がかつてスカイリムの薬屋で手に入れたレシピの束や、各地で入手した錬金術のスキル本だ。
「確かに依頼したのは俺だが、こうも手順書を持ってくるなど……錬金術師にとって安いものではなかろう」
「あー、言いたいことはわかるが……」
まあ、確かにこの時代でなくとも、薬の原材料や効能の知識など値千金のものだろう。冒険者として生きていく以上、
「俺が君をちょっと鍛えたところで薬の出来は雲泥の差だし、そもそもたまにしか売りに出してないから金のことは気にしなくていいよ」
「それに……俺が
「……?」
素材の効能を教えれば、組み合わせて薬を作れるようにはなるだろう。スキル本を読ませれば調合や蒸留のコツを何となくでも掴む事が出来るようになるだろう。
だがそこまでだ。俺がスキルトレーナーとしての能力を持たない以上、彼を錬金術師として育てることはできない。俺が口で教えるよりも、スキル本を読ませた方がスキルレベルは上がる。俺が彼に出来る事と言えば、水薬作りに手助けとなる知識を与えることくらいなものだろう。
「俺が教えてやれるのは近辺で手に入る素材の組み合わせと、練習にちょうどいい薬のレシピくらいだ。あとは何事も実践あるのみ、だ」
「手っ取り早く鍛える手もなくはないが……小鬼退治の合間に、となるとちょっと難しいな。隙を見つけて練習を続けていくことだね」
バグやグリッチを幾つも利用してきた俺が言えることではないが、結局は実際にスキルアップのためにはその技能を実際に使っていく事だ。基本を知らなきゃ裏技も形無しだ。
「しかし……よくその兜被ったまま作業できるね。筋がいいよ」
「……父が猟師で、母が薬師だった」
「ふぅん……。教えがよかったんだね」
「いや」
ゴブリンスレイヤーは、ごりごり、と粉末を砕く手を止め、錬金台の窪みへと注いでいく。後は熱して蒸留させたものを小瓶に集めれば完成だ。ごぽごぽと蒸留器の中で混合物が泡立つ。……こんなに重要な物品を何度も無くすマスターウィザードがいるってマジ? 治癒魔法でも認知症って治せんのかな。
「俺に教えてくれたのは姉だ。……今思えば、もっと真面目に聞いておくべきだったのだろうな」
「…………」
言葉の節々ににじみ出る過去形の言葉、そして野営中での独白、小鬼退治への執着……。
いや重いって。見た目は借り物、頭脳はドパガキの俺に零していいもんじゃないぞ。
何と言ったものか……。いくら話術スキルがあるとはいえ、こういった状況で上手く機能させられた試しがない。あれは本来値切りや交渉といった技能だからな……。
『大丈夫? おっぱい揉む?』とでも言ってみるか。とはいえ彼が真面目に話してくれたのにネットミームで乗り切るのは誠実さに欠け……。
……おっと。そろそろ薬を移す頃合いか。
「すまん、そろそろ小瓶に注いだ方がいい」
「わかった」
蒸留器に溜まった薬液が、小瓶へ注がれる。今回彼が作ったのは一般的な回復薬だ。どこにでも生えている山の青い花と、簡単に手に入る小麦からなる、ごく初級の回復薬。手に取り、回復量を確認する。
……ふむ?
「良く出来ているよ」
「世辞はいらん」
「今更そんなつまらないこと言う必要あるかぁ? 俺が鑑定の真似事くらいはできるのは知ってるだろ? 」
「
その差異は微々たるものだが、この結果には結構驚いた。だいたいの場合、初期は店で売っている薬の下位互換しか作れないものだ。ドラゴンボーンとて同じ事。
俺はレシピと錬金器具の使い方を教えただけだ。錬金上昇の装備も渡していない。これが彼の一発目の錬金……いわば童貞卒業だ。
それで、この回復量。彼の錬金術スキルが既に初期値よりも高まっていなければ、この出来には至らなかっただろう。そして、このことはつまり。
「……君のご家族の教えの賜物だろうね。君の記憶になくとも、君の腕に、感覚に。
「君が、ちゃんと家族のことを大事にしていた証だよ」
「…………そう、か」
「そうさ」
「……………………」
無口な彼が何を思ったのか、それは分からない。でも、彼の持つ家族との記憶が温かなものであればいいな、と思う。
「この調子で続けていくといい。簡単に手に入る素材だから、店で同ランクの薬を買うよりかは安く済むだろう。浮いた金を装備なり素材なりに回していけばいいんじゃないかな」
「何種類か見本として薬を置いていこう。サンプルとして使うといい」
ぽいぽいといくつか小瓶を並べていく。単純な回復薬に加えて、バフ効果が付いたもの、解毒薬、耐性強化薬その他諸々。付呪や錬金術強化の装備がなくとも出来る効能のものだ。今は無理でも、いつかはこれくらいにはたどり着くだろう。
「…………礼を、言う」
「いいさ、これくらい。むしろ申し訳ないくらいだよ。ごめんなぁ……。結局、今日に到るまで暗視の素材は集まらなかったよ」
はぁ……。あれから何度か猫獣人のキャラバンは覗いてみたが、終ぞお目当ての素材は手に入ることはなかった。後は君の目で確かめてくれ、なんて文字に憤慨した身としては片手落ちでやるせないよ。
「―――今日、発つのか」
「ああ、ちょっとした
彼が無事に錬金術の基礎を収めた以上、これ以上この街に留まり続ける必要もなくなった。あとは彼が練習を続けていくだけだ。彼はようやく登り始めたばかりだからな、この果てしなく遠い超錬金坂をよ……。
まだ色々心配事はあるが……。
ここで、小鬼殺しの
「あ、ゴブリンスレイヤー。錬金術の基礎教え終わったら俺、この街出るから」
………………は?
つい先日、部屋についてきた彼女の言葉だ。幾つかの写本を手渡しながら、何でもないかのように彼女は別れを告げていった。
突然の言葉に面くらいながらも、いつかはこの日が来ると理解していた自分もいた。
隔絶した実力差。異界の人間という特異な出自。世界に散らばる宝具を回収するという使命。
自身が規格外と称した人間が、この辺境に留まるはずがないのだと分かっているつもりだった。
ただ一時、偶然にも依頼人が重なり合っただけの同行者だと。
「俺が言えることじゃあないが……身体は大事にね。
……ああ。分かっている。
「ほんとかなぁ……? 何回か依頼ともにしたけど、俺ァ最初に会ったときの印象抜けないわ」
「そんなすぐ身体を壊しそうな頭目にはこれをあげよう!」
そう言って彼女は懐から首飾りを取り出した。見覚えがある、以前彼女が孤電の術士に手渡していたものと同じものだ。
「お目が高い、デザインは共通さ。効果は違うぜ、シンプルに体力上昇と体力回復……もとい治癒能力上昇の付呪さ。超錬金ほどじゃあないが、それなりの魂石と薬使ってる。これ着けて暫くおとなしくしてれば……まぁ、ちょっとした傷ならすぐ塞がるぜ」
……受け取れん。
「え、なんでさ」
最初に会った時も、ゴブリン退治の時も、講義の依頼も。何も返せてはいない。
「いや君ちゃんと金払ってるじゃん」
金に困っていないお前に渡したところで何になる。俺は返せないものを受け取ってばかりだ。
以前俺は聞いたな、
お前はなぜついてきた。 俺に何を求める。
「んんぅ……。そうだな」
彼女は両目を閉ざしていた眼帯を外し、再び向き直った。あのとき洞窟で見た、黄金に輝く瞳が俺を貫く。
「俺としては前に話した通り『面白いから』に尽きるんだよねぇ……」
「ほら、あんまり自分で言うのもなんだが、俺最強じゃん? 何かを殺すだけなら俺がひと暴れするだけで大抵のことは事足りるのさ。」
「
「でもさ」
「一人じゃあ、飽きるんだよ」
「こんなの、ただの殺戮だ。俺が求める
冒険。
彼女のその言葉に、胸を掴まれたような衝撃が走る。
きっと。それは過去に自分が追い求めていたもので。
過去の俺が夢見ていたものを、今も彼女は追いかけていた。
「暗黒の塔は良かったよなぁ……! 孤電の術士が居なけりゃ、塔の上からの光景を見ることはなかっただろうし。君が居なかったらきっと誰か死人が出てたろうさ」
「未知の空間、未踏の領域。まだまだこの世界には未知に満ち溢れているんだ。それを、心許した仲間達だけで共有するんだ。それって―――すっごくワクワクしないか?」
「俺は、強くなりたかったんじゃあない。まだ見ぬ新天地を探検するような、
「君は何も返せていないなんて言うけれど……。とんでもない、俺は小鬼殺しの君から教わったんだぜ。誰かと一緒にいると面白いってな」
子どもみたいに笑う、彼女から目を離せなかった。
俺がずっと、なりたかったもの。遥か先を行く彼女でさえ、夢に見るという境地。尋ねずにはいられなかった。
……冒険者には、なれたのか?
「一人じゃまだ無理だね。やっぱ仲間がいてこそ、だな!」
……ゴブリンを殺すことが俺の役割だと思っていた。その思いに変わりはない。ゴブリンは皆殺しだ。
だが……彼女と組んだこの数週間、それ以外の感情も生まれていたこともまた事実だった。
かつて夢見た冒険者とは何なのか。彼女が求める冒険とは何なのか。それを見たいと思う自分がいることを、否定することはできなかった。
―――俺も……。
そう口に出そうとして、やめた。
悔しいが、今の俺が彼女に着いて行っても、足手纏いになるだけだろう。自分の
それに、こんな俺でも帰りを待つと言ってくれる人がいるのだ。ここまで世話になっておいて、挨拶もせず立ち去るわけにはいくまい。きっと彼女はまた涙を溢すのだろう。そうさせたくは、なかった。
女の子は泣かせてはいけないと、姉も常々言っていた。
「ほらほら。またゴブリン退治出るんだろう? その前に行くならこれをつけていくんだね。屈んだ屈んだ」
ぐいぐいと手を引っ張られ、姿勢を崩す。筋肉がついているとは思えない女の細腕に、こうも抗えぬとは。一体どんな訓練をすればこのような真似ができるのか、全く想像が出来ない。
「はいこれ。いつも首にかけておくんだよ。装備は持っているだけじゃ意味ないからね」
そう言って、銀色のアミュレットが首に掛けられる。不思議と、されど確かに活力が湧いてくる。これが
これだけの装備、ゴブリンに奪われた時のことを思えば不安なのだが……。
「ふーん、それってこんな風に?」
その言葉に顔をあげてみれば、彼女は手慰みに何かを指で回していた。それは鉄製で、どこか見覚えのある兜だった。はっと手を頬に触れてみれば、装備していたはずの自身の鉄仮面がそこにはなかった。革帯で固定していたはず。脱がせたことを気付かせぬ早業……!
いや感心している場合ではない。返せ。
「あとでね。……うん、結構悪くない顔立ちじゃん。ファン増えそうだね」
「別に君の方針にとやかく言うつもりはないさ。俺だって
「とはいえ、ね。自分が死んだあとのことを考えるよりも、死なないように装備を整える、っていうことも覚えておいてほしいかな」
「君の死を惜しむ者は、君が考えているよりも多いんだよ? 当然、この俺も含めてな」
……覚えておこう。忠告、感謝する。
「ま、そうは言ったが、それの持ち主はもう君さ。それをどうするかは好きにするといい。要らなければ売るなり誰かに渡すなり、君の自由だ」
「……とは言ったものの、見知らぬ誰かに渡るのは、ちょっと癪だね。せっかくだ。今回の
それは構わない、元々、先の金額では少なすぎると話していたばかりだ。俺に払える金額は多くないが……
―――そう口にするよりも早く、何か柔らかなもので唇を塞がれた。しっとりと濡れて湿った感覚。視界が、彼女の白金色の髪で埋まる。ほんのりと柔らかな、石鹸の香りが漂う。ほんの一瞬の出来事だったが、思考が止まった。
「ぅんっ……。こ、これでチャラな」
かぽ、と兜をかぶせられ、視界が面頬によって包まれる。……違う、あいつめ。前後逆に被せたな。視界を確保すべく、兜に手を回す。
「じゃ、じゃあね。また会おう!」
正しく被り直し、一体何のつもりだと口を開く前には、目の前に彼女はなかった。
納屋から飛び出たものの、誰かがいた形跡も見当たらない。……既にこの街を出てしまったのだろう。今から追いかけたところで見つかりはしないという確信があった。
部屋に残った本の山と、首に下げられたアミュレットだけが、先の出来事が夢ではないことの証左だった。
彼女がこの街を去った。しかし何も変わりはない。以前のように、俺はゴブリンを殺しに行くだけだ。
彼女の支援がないことは時折不便に感じてしまうこともあるが、これが普通なのだ。いかに竜血魔女の魔法に頼りきりであったか、身に染みて理解できた。先生との修行の日々を思い出し、身を引き締めねば。魔法による強化がない、本来の自分の力を見誤ってはいけない。
ギルドの門をくぐり、受付にて達成報告を……。
「金剛騎士ばんざ~い! 我らの上級王! その名を称え飲み歌おう~」
聞き覚えのある声が耳に届く。戦場でなんども救われてきた
「我らは戦う 命の限り やがてソブ……ンンッ! 戦女神に、呼ばれるまで……」
いる。普通にいる。
吟遊詩人が使うような
「いえ~い、ぴすぴす~。途中詰まっちゃってごめんね~」
「おー、おひねりどもども~。……あ、ゴブリンスレイヤー久しぶり~!丁度いいや、君も飲んでいきなよ!」
こちらに気付いた彼女が人の波をかき分け、話しかけてくる。
……なぜ、ここに。王都に向かったのではなかったのか。
「おー、行ってきたよ。はい、これお土産。下宿先の娘と食べな」
そういって竜血魔女は茶菓子を手渡してくる。
竜血魔女……竜血魔女。そうだ。こいつは
「結構これ酒にも合うんだぜ。その様子だと依頼終わりだろ? ちょっと飲んでいこうぜ」
ぐいぐいと身体を寄せてくる彼女に逆らえず、ため息をつく。
酒で濡れた彼女の唇から、目を逸らしながら。
前書きでも軽く書きましたが、今回でイヤーワン編をいったん完結とさせていただきます。次回からは無印本編です。イヤーワン完結まで書いてから本編に移るとなると、女神官も金床娘も登場何時になるかわからないんで……。
イヤーワン編の続きも、本編の区切りだったり、書きたいエピソード思いついたら挿入投稿といった形で書くと思います。自分も少年の初恋を翻弄するエルフの剣士好きですからね。
……これで大丈夫なはず、とは思うんですが感想欄がずれる(?)とか問題あればまた手法考えます。ハーメルンの仕様分かってないことも多いので、もし意見等あれば教えていただけると幸いです。
イヤーワン編完結までこぎつけたのは、偏にハーメルンの読者様のお陰です。本当にありがとうございます。
シャウトの表記方法について
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アルファベット表記
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ドラゴン文字
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どちらでも良い
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その他