転生魔術師(記憶喪失中)ですが、周りから激重感情を向けられている件   作:究極の闇に焼かれた男

1 / 6
完成させた後に思った事「何なんだコレは?」と、徹夜テンションで作り上げた自身の作品に頭を抱えました。


前語りと序章:ある墓守の少女の罪と罰

 

 

 

吾輩は転生者にして魔術師である。

ただし、前世の記憶は一般的な日常生活に必要な知識しか残っていないので大して役に立つ事は無いだろう。

 

今世では栄えある時計塔において現代魔術科として知られる【エルメロイ教室】の一員であり、既に両親は両方とも他界している天涯孤独の身でもあるらしい。

 

何故"らしい"等と曖昧な言い方なのか、それには少し込み入った事情がある。

 

実は最近まで俺は病院のベッドの上で1ヶ月近くも昏睡状態に陥っていたらしく、今世の記憶の殆どが無い状態なのだ。

 

目が覚めて間も無い頃は本当に大変で、現代魔術科の学部長である【ロード・エルメロイⅡ世】こと先生と同じ現代魔術科の友人と名乗る少年少女達から凄く心配され、記憶が無い事を告げると悲しませてしまったのは今でも記憶に新しい。

 

自分の身に何が起きたのか、理由は何故か教えて貰えなかったが、今世の自分がどの様な人物だったかは教えて貰えた。

 

曰く、困っている友人が居たら必ず助ける正義感の持ち主。

曰く、魔術師としての腕は平凡だが呑み込みは早かった。

曰く、魔術の腕よりステゴロの方が得意だった。

 

他にも色々とあるが、とにかく凄く頼りになる人物だったと知る事が出来た。

 

でも、幾ら記憶を無くした原因を聞こうとしても「知る必要は無い」と先生に言われたり、「思い出さない方がいい」と友人達から念を押される様に言われたりする。

 

最近は「過去の俺は何をやらかしてしまったのだろうか?」と言うのが口癖になり始めていたりする。

 

それと一つだけ言い忘れていたが、記憶を無くす前の自分は恋人としてお付き合いをしていた少女が居たらしい。

 

恋人として付き合っていた少女と過ごした思い出も無くした事に申し訳なさを感じつつ、その恋人だった少女に現在では支えて貰う形で過ごしている。

 

まぁ、一先ず言える事は、先生や友人達から思い出さなくて良いと言われた過去の記憶を取り戻す為に頑張ろうと思う。

でないと、いつまでも先生や彼女に迷惑を掛ける事になると思うと俺も流石に心苦しい。

 

故に、誰にも悟られないように頑張ろう。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

時計塔の敷地内にある中庭、そこで1人の少年が本を片手にベンチに腰掛けていた。

 

暖かな陽射しと穏やかな風を肌で感じながら本を読んでいると、建物の中から1人の少女が駆け寄って来る。

 

 

「ルークさん!」

 

「ん? グレイ、どうかしたか?」

 

 

少年【ルーク】に声を掛けたのは、フードを深く被った灰色の髪をした少女【グレイ】だった。

 

 

「どうかしたか? じゃ、ありません! 部屋に居なかったので心配したんですよ」

 

「ごめん。 今日は天気が良いし、外で本を読んでみようと思ってな」

 

「もう……それで、何を読まれていたんですか?」

 

「俺の部屋にあった〖シャーロック・ホームズの冒険〗ってタイトルの本だよ。 どんな内容か気になって読んでみようと思ったんだ」

 

「それって……」

 

「ぐ、グレイ…?」

 

 

そう答えた途端、突然グレイの表情が暗くなり心配になったルークは恐る恐る声を掛ける。

 

 

「ルークさん、この後の予定は何かありますか?」

 

「いや、特には無いけど」

 

「でしたら拙と2人で買い物に行きませんか」

 

「構わないけど「では本を読むのは辞めて、今すぐ行きましょう」えっ!? でも、行くにしても準備が……」

 

 

グレイの発言にルークは慌てて声をあげようとするが、それを無視するグレイはルークの腕を掴むとそのまま引き摺るようにして歩き出す。

 

 

「ちょっ!? 少し待てって!」

 

「良いですから。 それに『彼女の我儘に付き合うのも彼氏として当然の勤めだ』と言ったのはルークさんなんですよ?」

 

「それって記憶を失う前の俺の台詞だろ。 って!? だから、買い物に行くにしても準備をする時間くらいはくれって!」

 

 

抗議の声をあげるルークだったが、グレイに無理やり連れて行かれる形で買い物に出掛ける事になるのだった。

 

その時のグレイの表情は暗く、瞳からはハイライトが消えているのをルークが気付く事はなかった。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

グレイside

 

 

『いつの日か必ず、この瞬間(とき)が訪れる気がしてた』

 

待って、待ってください!

 

『それが大切な人達の未来を守る為とは、悪くないな』

 

やめて下さい! そんな事をすれば、あなたの命は!?

 

『大丈夫、俺が絶対に皆の事を守ってみせるから。 その代償として俺が──事になろうとも……』

 

お願い……お願いですから、やめてください!!

 

『これが俺の最後の切り札、俺の中に宿る"英雄の力"にして、大地を割る一射だ!!』

 

やめて、やめてぇぇぇっ!!

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

目が覚めると見慣れた部屋の天井が映った。

 

 

「今のは、夢……」

 

『おいおい大丈夫か、グレイ。 凄え魘されてたぞ?』

 

 

嫌な汗が流れるのを感じながら目を覚ました拙に【アッド】が声を掛けてきた。

 

 

『また"あの時"の事か?』

 

「うん」

 

『たく……いつまで引き摺ってんだっての! あれはアイツが選んでやった事であって、グレイのせいじゃないだろうが』

 

「っ!? でも、拙のせいでルークさんは……!」

 

『はぁ〜……そうやって自分を責めた所で意味なんてねぇーっての。 分かるだろ?』

 

「……」

 

 

アッドの言う事は正しい。

 

いくら後悔したところで過去に戻れる訳でも無ければ、あの時の拙では何も出来なかった事には変わりない。

 

それでも、あの日の出来事を、拙が犯してしまった"許されざる罪"を忘れるなど出来はしない。

 

徐々に心の中が不安な気持ちで溢れそうになるのを感じた拙は、頭を左右に振り気持ちを切り替えると寝巻きから着替え身支度を済ませる。

 

 

「よし!」

 

 

身支度を済ませた後、新しい日課となりつつある拙の恋人であるルークさんの部屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ルークさん、起きてますか?」

 

 

暫くしてルークさんの部屋の前に辿り着いた拙は扉の前で声を掛けるも一向に返事が返ってこない事に不安を覚えつつ、「失礼します」と一言謝りながら扉を開けると部屋の中にはルークさんの姿が何処にも無かった。

 

 

「っ!? ルークさん!!」

 

 

気が付くと拙はルークさんを探す為に走り出していた。

 

拙が知る限りのルークさんが居そうな場所に向かうも、どこも空振りに終わり、拙の心は徐々に不安や恐怖で押し潰されそうになる。

 

 

(ルークさん、どうか……どうか無事でいてください!)

 

 

そんな思いに駆られながらルークさんを探し続け、そして中庭のベンチで本を片手に腰掛けるルークさんを見掛けた拙は安堵すると共に、不安を悟られないよう息を整えてから中庭へと向かった。

 

 

「ルークさん!」

 

「ん? グレイ、どうかしたか?」

 

 

中庭に着いた拙が声を掛けると、それに気付いたルークさんはいつもと変わらぬ笑顔を見せながら反応した。

 

 

そんなルークさんの笑顔に拙はムッとしながら返していた。

 

 

「どうかしたか? じゃ、ありません! 部屋に居なかったので心配したんですよ」

 

「ごめん。 今日は天気が良いし、外で本を読んでみようと思ってな」

 

「もう……それで、何を読まれていたんですか?」

 

 

拙が尋ねるとルークさんは優しい笑みを浮かべて答える。

 

 

「俺の部屋にあった〖シャーロック・ホームズの冒険〗ってタイトルの本だよ。 どんな内容か気になって読んでみようと思ったんだ」

 

「それって……」

 

 

その本の事を拙は知っていた。

 

何故ならその本は記憶を失う前のルークさんが愛読していた物であると同時に、拙がルークさんの抱える"秘密"を知ってしまった要因でもある。

 

あの日、ルークさんの秘密を偶然にも知ってしまった拙が不必要に質問してしまったのが"あの事件"を引き起こす切っ掛けを作り、ルークさんの記憶を奪う"事態"となったのだ。

 

 

「ぐ、グレイ…?」

 

 

ルークさんが恐る恐ると言った様子で声を掛けてきた事で、「はっ」となった拙は表情が無意識の内に暗くなっている事に気付き慌てて話題を逸らす事にした。

 

 

「ルークさん、この後の予定は何かありますか?」

 

「いや、特には無いけど」

 

「でしたら拙と2人で買い物に行きませんか」

 

「構わないけど「では本を読むのは辞めて、今すぐ行きましょう」えっ!? でも、行くにしても準備が……」

 

 

ルークさんの言う事は当然のものだったが、それを無視して拙はルークさんの腕を掴み言葉を遮るようにして引き摺るように歩き出していた。

 

今は一刻も早く本を読むのを切り上げさせたかった。

 

あのまま読み進めている中で、記憶を失う前のルークさんが記した秘密を今のルークさんが知れば動揺してしまうと思ったから。 ……と言うのは建前で、本当は知られるのが怖かったからだ。 あの日、拙が気になって尋ねてしまわなければ、もしかしたら事件は起こらず、ルークさんも記憶を失わずに済んだかも知れないという事実から目を逸らしたかった。

 

最低だ────拙は心の中で自嘲した。

 

もしもルークさんが過去の事を思い出してしまったら、拙が吐いた"酷い嘘"を知られてしまう。

 

身勝手極まりないと言えるが、それでも拙はルークさんには忘れたままで居て欲しいと願っていた。

 

 

「ちょっ!? 少し待てって!」

 

「良いですから。 それに『彼女の我儘に付き合うのも彼氏として当然の勤めだ』と言ったのはルークさんなんですよ?」

 

「それって記憶を失う前の俺の台詞だろ。 って!? だから、買い物に行くにしても準備をする時間くらいくれって!」

 

──嗚呼、またしても拙はルークさんに嘘を吐いた。

 

でも、それでルークさんが苦しまずに済むのなら構わない。

 

この許される事のない"嘘"をルークさんに気取られないよう、死ぬまで隠し通してみせる。

 

それこそがルークさんの恋人である拙が自分自身に与えた罰であり、贖罪になると信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

これは、"ある出来事"から記憶を失ってしまった転生者にして魔術師である少年と、そんな彼に"嘘"を吐き過去の出来事から遠ざけようとする者達の物語である。




良ければコメントを下さい。

サブヒロインにライネスを追加しますか?

  • YES
  • NO
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。