転生魔術師(記憶喪失中)ですが、周りから激重感情を向けられている件   作:究極の闇に焼かれた男

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悩みに悩んだ結果、本編の方をある程度進めてから過去編をする事にしました。 それと現在のアンケートの集計結果だと魔眼蒐集列車がぶっちぎりで勝っているのと、短編の方ではFGO時空でのオリジナルストーリーが勝っているので過去編は魔眼蒐集列車編にして短編はストーリーの内容を本格的に練ろうと思います。アンケートに御協力下さった読者の皆様方、誠にありがとうございました。


第3話:いつかの記憶/過去からの刺客

 

 

 

これは、いつかの夜に刻まれた記憶。

 

蒼く輝く月が浮かび満点の星空が広がる夜、ロンドンの街を一望する事が出来る展望台で1人の少年と少女が隣り合って夜空を見上げていた。

 

 

「グレイ、既に先生から教えられてると思うけど、俺の体は少しばかり変わってるんだ」

 

「はい、師匠から聞いています。 ルークさんの体には聖遺物を変換した刻印が刻み込まれていると」

 

「ああ。 どういう理由で俺に刻印を刻んだのかは今でも分からないが、その恩恵によって俺は聖遺物と縁のある英雄の力を自分の物として行使する事が出来るんだ。 でも、その代償として力を行使する度に俺の体は変化を繰り返し、最終的には其の英雄に成り果てる。 ある意味では俺とキミは同じとも言えるな」

 

「……その、ルークさんは怖くないんですか?」

 

「正直、怖くないと言ったら嘘になる。 でも、俺が戦わなかったせいで先生やライネス、エルメロイ教室の皆が傷付いてしまう位なら俺は躊躇わずに戦う道を選ぶと思う。 それに、今の俺には守りたい大切な人が居るからな」

 

 

そう答えながら視線を向けてくるルークにグレイは耳元まで赤くなった顔を隠すようにフードを深く被る。 そんなグレイの姿がどうしようもなく愛おしく感じたルークは彼女の事を抱き寄せていた。

 

 

「る、ルークさん!?///」

 

「ごめん、グレイが可愛過ぎて抱きしめたくなった」

 

「うぅ〜っ///」

 

 

恥ずかしさで声を漏らし悶絶するグレイの姿に増々愛おしさを感じたルークは優しく微笑みながら夜空を見上げる。

 

 

「こんな時間がいつまでも続いて欲しいな」

 

 

その言葉にグレイは静かに頷き返すと、2人は夜空を見上げながら平和な時間を過ごすのだった。

 

だが、そんな2人の平穏な日々は唐突に終わりを迎えた。

 

後に、ある事が切っ掛けで勃発したロンドン史上類を見ない大事件へと巻き込まれる事となったルークは、事件の果てに己の記憶を喪うという余りにも重過ぎる代償を払い、グレイと事件に関わった者たちの心に大きな影を落とす事になる。

 

そして現在、事件で記憶を喪ったルークは恋人であるグレイに支えられながら平穏な毎日を過ごしていた。

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

ルークside

 

 

目を覚ますと見慣れた部屋の天井が目に入る。 視線を横に向けると棚の上に設置してある置時計が見え、短針と長身が重なる様にして5時を指していた。

 

 

「さっきの夢は、記憶を喪う前の俺の……」

 

 

独り零す俺の脳裏に先程まで見ていた夢の内容が蘇る。

 

 

「グレイの言ってた通り、あの展望台は俺とグレイにとって本当に大切な思い出の場所だったんだな」

 

 

記憶を喪ってから今日で1ヶ月近く経つ。 その間のあいだに色々な方法で記憶を取り戻そうと試みてきたが、思い付く限りの方法は全て失敗に終わった。 それも相まって急に夢として見る形で思い出した事に疑問を覚える。

 

 

(思い出せたのは確かに嬉しい。……嬉しい筈なのに、どうして心がザワつくんだ?)

 

 

ほんの一部とはいえ記憶を取り戻せたにも関わらず、俺の心は奇妙な程にザワついていた。 其れは何かの兆しか、或いは何かが起こる前触れにも似ていた。

 

 

「……考えていても埒が明かないし、とりあえず散歩にでも出掛けるかな」

 

 

幾ら考えても理由が分からない以上、一先ず思考を切り上げた俺は日課である早朝散歩へと出掛ける事にするのだった。

 

 

 

 

 

「早朝という事もあるが、今日は少し寒いな」

 

 

軽く身嗜みを整えて身支度を終えた後、外へと出た俺は近くの街樹路を1人歩いていた。 時刻が5時代と言う事も相まって周囲には人の姿はなく、視界も空気が冷え込んでいる影響か朝霧に包まれている。

 

 

(少しだけ肌寒いけど、この時間帯は静かだから嫌いじゃないんだよな。 それに今しか1人で居られる時間も無いし…)

 

 

記憶喪失となってからというもの、(大半がグレイだが)俺の傍には常に誰かしらが居る事が多く1人で居られる時間が基本的には少ないのだ。

 

 

(でも、その事でグレイと話をした時は凄く悲しそうな表情をされたから今では下手な事を言えなくなったんだよな〜。 まぁ、早朝の散歩をしてる時だけは1人で居られる時間を過ごせるから良かったが……)

 

 

心の中で呟きつつ早朝の散歩を続けていると、ふと前方から誰かが歩いて来るのが見えた。

 

 

(ん? 珍しい、この時間帯は俺以外だと車が何台か通るか、後はランニングをしてる人しか見掛けなかったんだがな…)

 

 

そう思いながら前方から歩いて来る人物の姿を見る。

 

白一色で統一された衣服に身を包む、逆立てた銀の髪と紅い瞳をした年齢にして10代後半から20代前半と思われるモデルと見紛う程に整った容姿をした青年。

 

俺は自然と前方から歩いて来る青年に視線が釘付けになっていた。 それは何も青年の容姿に目を惹かれたからでは無く、寧ろ青年が放つ殺気にも似た気配に俺の体は反応していた。

 

 

(この気配、明らかに普通の人間とは何かが違う)

 

 

俺が強く警戒していると前方から歩いて来る青年の足が不意に止まり、そして獰猛な笑みを浮かべてこちらに睨み付ける様な視線を向ける。

 

 

「ほぉ……まさか、この様な時間と場所で貴様と再び相見えるとは驚いた。 あれ程の手傷を負った挙句、捨て身の一射を放ったにも関わらず生きながらえているのに面食らったぞ。 しかし、こうして相見えた以上は俺のする事は一つ────この手で再び引導を渡してやろう」

 

「っ!?」

 

 

男が言い終えると同時に殺気が強まったのを感じ取った俺の体は半ば反射的に動き、バックステップをしながら後方へと飛び退いていた。 その直後、先程まで俺が立っていた地点に先端部に刃を備えた鎖が突き刺さる。

 

 

「今のを避けるか。 流石はペルシャの大英雄の力を持つだけの事は有る、それでこそ潰し甲斐があると言うものだ!」

 

 

そう言い男が右腕を翳すと掌を中心に銀色の波紋が出現し、中から先端部に刃を備えた無数の鎖が放たれる。 こちら目掛けて迫って来る鎖を前にして俺はバク転をバックステップをしながら回避に徹する。

 

 

「くっ!?」

 

「どうした? 反撃の一つでもしてみるが良い!」

 

 

絶え間なく放たれる無数の鎖を紙一重で必死に躱し続けるも、徐々に手や足を刃が掠め傷口から血が流れ痛みで思わず顔を顰めてしまう。

 

 

「所詮は死に損ないの紛い物では程度が知れるか。 せめて、散り際くらいは美しい華を咲かせて見せろ!」

 

 

男が叫ぶと同時に銀色の波紋の数が増し、そこから鎖だけでなく魔力で形成された何本もの短剣が弾丸並の速度で次々と放たれる。 圧倒的な物量と身体中の至る所に負った掠り傷が痛みを発し動きが鈍くなる。

 

──避けられない。

 

そう悟った俺は襲い来るであろう痛みに身構えた。 ────次の瞬間、上空から割って入る様にして割り込んだ1人の少女が手にした大鎌が放たれた短剣と鎖を切り裂いた。

 

 

「大丈夫ですか、ルークさん」

 

「っ、グレイ!?」

 

 

割って入ってきた少女、グレイは相棒にして魔術礼装でもあるアッドが形状を変化させた大鎌【死神の鎌(グリム・リーパー)】を構えながら、俺を守るようにして男の前に立つ。

 

 

「むっ…貴様は何時ぞやの小娘か? そこの小僧もだが、"あの事件"に関わった者が3人も揃うとは何たる偶然だろうか」

 

「何故……何故、あの時"死んだ"筈のあなたが生きているんですか!?」

 

「え?」

 

 

グレイが口にした言葉に俺は目を見開いて驚いた。 彼女の言葉が真実であるなら、目の前に立つ男は既に死んだ筈の亡者だと言う事である。 それに加えてグレイは男の事を知っている様子から見て、男は俺が記憶喪失となる原因となった事件で関わりのあった人物だと言う事にもなる。

 

 

「何故、この俺が生きているかだと? そんなものは決まっている。 その男と同様に俺も死を免れただけの事だ」

 

「っ、ルークさんには手出しはさせません!」

 

「俺と戦おうと言うのか? 良かろう、相手をしてやろう──と、本来なら言いたい所だが生憎と今日は暇潰しに此処(時計塔)に散歩をしに訪れただけだ。 故に、今日はこの辺で失礼させてもらう。 次に会う時は精々楽しませてくれたまえ」

 

 

そう言い捨てると男の体は幽霊の如く消え去り、残されたのは命の危機を乗り越えた事実に心の中で安堵する俺と表情を険しくさせるグレイだけとなった。

 

 

「助かった、のか……「ルークさん!」ぐ、グレイ!?」

 

 

命からがら助かった事に安堵していると、不意にグレイが抱き着いて来た。

 

 

「良かった……無事で本当に良かったです。 それに、今回は間に合う事が出来ました」

 

「(間に合ったってのが何の事かは分からないが、とりあえず今の俺が伝えるべき事は…)グレイ、危なかった所を助けてくれて本当にありがとう」

 

「いえ、ルークさんが無事で本当に良かったです。 …………後を尾けて良かった」

 

「ん? 今とても聞き捨てならない台詞が聞こえたんだが「念の為に一度戻って傷の手当をしましょう」ちょっ!?」

 

 

聞き捨てならない台詞を吐いたグレイに問いただそうとするも、それを遮られる様にして手を引かれた。

 

 

「ぐ、グレイ……もしかして俺が早朝散歩してる事を前々から知ってたのか!? と言うか、一体何時から知ってた!」

 

「手当をしたら師匠の所に行って情報共有をしましょう。 ですので急ぎましょう、ルークさん」

 

「いや、先に俺の質問に答えて……って!? そんなに強く引っ張らなくても1人で歩けるから、引き摺る様に引っ張らないでくれ!!」

 

 

敢えて聞こえていない振りをしているのか、清々しいまでの笑顔で無視を決め込むグレイに向けて叫ぶ声が人気の無い街樹路に木霊するのだった。




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