魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、もう一人から見た魔祓い

巫女服に袖を通した日女は、大艸を持って現場に出向く。

 

実のところ、日本系の魔祓い能力者は警察に認知されている。それもあって、日女の家は警察からある程度便宜を図ってもらっているし。

 

何よりも、犯罪抑止になるのならと。

 

補助金まで出ている。

 

あまり知られていない話だが。

 

少子化で困っているこの国で。

 

日女みたいな存在が、食っていけているし。将来も安泰である理由である。ただし、このことは魔祓い以外にはあまり知られていないのだが。

 

「こちらです」

 

「ああ、なるほどな……」

 

多分あのギリシャ系の魔祓いの仕事の後だな。

 

燃え落ちた車の残骸が、アスファルトを激しく傷つけた跡地で、日女は進み出る。まだ火災の激しさを示すように、辺りが焦げた跡で、暑くなる錯覚すら覚えるほどだ。

 

淡々と大艸を取り出す。

 

実際問題、邪悪な妖怪の類が集まってきている。

 

ダイモーンは倒れたが、人間の悪意そのものは変わらない。

 

この場所にて、悪意が炸裂した。

 

おそらくため込まれていた悪運が祓われた結果。

 

ここで吹っ飛ばされて再起不能になったらしい反社のクソどもがため込んでいた悪意が、辺りにぶちまけられたのだ。

 

それに関しては、まだ未熟だろうあの燐火という魔祓いに文句をいうつもりはない。

 

だいたい専門違いだ。

 

この辺り日女は中一でも既に仕事をしている大人の感覚を持ち合わせている。

 

専門分野に対しては対応する。

 

だが犯人を霊視してくれとか言われても断るし。

 

余程やばい悪霊でも、まずは現地に魔祓いがいるなら連絡して、対応について話す。

 

そういうものだ。

 

そうしないと、色々と面倒なのである。

 

日本だと神道系と仏教系の魔祓いがいるが。

 

どちらかというと、今は仏教系の方が多少は勢いがある。

 

ただ、燐火もこうやって仕事着で出てきているときは。

 

現役で働いている魔祓いとして、恥ずかしくない仕事をしているつもりだ。

 

そのまま祝詞を唱え、大艸をふるって。ぶちまけられた悪意を全て浄化していく。取りこぼしの排除みたいだが。

 

ここは日本だ。

 

日本だからこそ、日本で通用する魔祓いで、後始末をする。

 

それだけのこと。

 

特に燐火に思うところはない。

 

しばしして、魔祓いが終わった。警察に終わったことを告げて、後は家に帰る。巫女服で帰るから、注目は集める。

 

好奇の視線で見てくる奴もいるが。

 

周囲曰く人殺しの目で見返すと、大体はさっと視線をそらし、それで逃げていく。

 

神社に戻ると着替えて。

 

あぐらを掻いて、嘆息した。

 

憑いている八幡様が大きくため息をつく。

 

「そんな猿みたいな振る舞いをして。 嫁に行けなくなるぞ」

 

「考えが古いんだよ。 それに俺より弱い男に興味ないし。 肉体的な意味じゃなくて、魔祓いの意味でな」

 

「お前は確かに強いが、それでもそういうことを言っていると行き遅れて後悔するぞ。 今その手の輩が、婚活とやらで醜態をさらしているだろう」

 

「わーったよ……」

 

うぜえと思うが。

 

相手のことは尊敬はしている。

 

尊敬はしているが、それはそれでうぜえと思うだけだ。

 

男に生まれたらよかったのにな。

 

周囲はみんなそういう。

 

だが。日女の家系は、女の方が強力な魔祓いになる傾向がある。その分結婚にも苦労するらしく。

 

日女の祖母は、四十近くで結婚して、やっと子供を産んだらしい。

 

日女の母は魔祓いを知らない一般人なので。

 

祖母がどうして結婚で苦労したかは知らないようだが。

 

巫女服を洗濯機に放り込んだ後は、横になってスマホを触る。一応燐火とも連絡を取っておく。

 

燐火曰く、魔界になりかけていたらしい。

 

こっちでは異界と言うこともあるが。

 

それが発生すると厄介だ。

 

日本では今はほとんど異界というものは排除されてしまったが。昔は入るだけで人がばたばた死ぬような場所がいくつもあった。

 

長年かけて、魔祓いが沈静化させていったのだ。

 

それくらい、誰もが苦労したのである。

 

よその国では、政情不安で魔祓いが活動できなくなったり。

 

或いはそもそも魔祓いが堕落して、力が出せなくなったりするケースもあり。

 

そういう国では、異界や魔界の類いは健在らしい。

 

人の業は、変わることなく。

 

果てることもないということだ。

 

「とりあえず、そういう大事の時は俺に連絡をよこせ。 今回はいいが、後始末が必要になるときがある。 互いに苦手分野があって、それぞれ補った方が便利だからな」

 

「わかりました」

 

「……それと、今回の稼ぎについてお前にも分配するよ。 ただ、ギリシャ系の魔祓いとなると、政府が関与していないよなあ」

 

「お金はいらないので、できるだけ秘密にしていてくれますか。 燐火としても、色々と周りに知られたくはありませんので」

 

そうか、と思った。

 

ただ、あれだけ目立つのに、周りに知られたくないとはこれ如何に。

 

あの死んだ目と、周囲に放っている威圧的な雰囲気。

 

小学校で見たとき、周囲の生徒にはおびえきっている奴もいた。

 

本人は目立っていないつもりなのか。

 

それにあの動き、多分空手とかやってる中学生男子くらいの実力は普通にある。目立っていないと思っているのは本人だけだ。

 

「それと相談があります」

 

「なんだ」

 

「わかりやすくて使いやすい、燐火でも魔祓いに使えると思うようなものってありますか」

 

「日本の魔祓いようの道具だったら倉にはあるが、お前はギリシャ系だろ。 そうなると、ちょっとわからん」

 

前に、一神教系の魔祓いと仕事を一緒にしたことがある。

 

いけ好かないお嬢様だったが、実力は確かだった。

 

ただし、奴の他の信仰に対する思想とかは反吐が出ると思ったので、二度と仕事はしたくない。

 

ただ、今の日本人だと。

 

そっちの方が、むしろイメージはしやすいかもしれない。

 

軽くリストアップして、画像を送っておく。

 

何か参考になればいいのだけれども。

 

とりあえず、今日は疲れたので寝ることにする。

 

この町に魔祓いが増えた。

 

それで手間が減るかというとそうではない。

 

連携して、やれることはやっていく。

 

それを主導するのは、経験でも力量でも上の日女がやるべきで。

 

面倒だと思いながらも、日女は仕方がないと、既に覚悟を決めていた。

 

 

 

(続)







日女さんは巫女なので、仕事中は千早を着ます。

まああんまり似合わないのですが、それは本人の雰囲気がワイルドすぎるからですね……

なお、アドバイスを求められた件ですが。

燐火はそれを元に、魔法のステッキ(鉄パイプ)をデコることになります。


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