魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、決戦の地

随分と痛めつけられたな。

 

邪神、星神は根拠にしている黒川金山跡に戻る。既に配下は壊滅状態。予定通りの戦果は上げたが。

 

このままいくと、グレムリンも世界各国で撃破され。やがてSNSの狂騒も沈静化していくだろう。

 

SNSは既に現実の人間のネットワークであり。

 

ネットは現実である。

 

ネットでは更に人間はあけすけになるが。

 

それはただ本音がわかりやすくなるだけ。

 

それらが問題を散々引き起こしてきたが。

 

だからといって、今更人間はネットのない時代に戻ることは出来ないだろう。

 

邪悪な独裁国家などではネットを封じているような事もあるが。

 

そういった代物は、だいたいまともな国政を行っていない。

 

ネットは今や、それくらい重要な場所なのである。

 

だからこそ、今回の作戦については、長らく考えてきた。あと一歩で成功する。日本の魔祓いも、もう一線級の連中はみんな黙らせた。

 

八雷神は、あのヘラクレスと見事に相打ちに近い状態まで持って行った。

 

充分すぎるほどだ。

 

腰を下ろす。

 

流石に劣化版とは言えケラウノスだ。

 

星神でも、相当なダメージを受けたし。今でも体が内側からむしばまれている。苦笑いが漏れる。

 

これは仮に勝ったとしても。

 

星神が実体化を失うのは、避けられないだろう。

 

そして実体化を失った瞬間。

 

星神が力を与えていたグレムリン達は一斉に制御を失い、頑強だった仮想サーバの防御はなくなる。

 

一気に人間の手に制御が戻るはずだ。

 

「誰かいるか」

 

痛みをこらえながら、星神が言うと。

 

数体の黄泉軍と予母都志許売が来る。

 

残りの手駒はこれだけか。

 

いや、違うな。

 

こいつらは軍監代わりに、伊弉冉尊が派遣してきた者達だ。

 

「星神どの。 今回は失敗のようですな」

 

「そうだな、ギリギリ届かない可能性が高い。 人間どもの底力、想像以上であったわ。 ただ、まだ私の方が優位にあるがな」

 

「そうか。 だが、我らはここには残らん」

 

「……」

 

まあ、そうだろう。

 

亜眼と威眼がこいつらをまとめていた。

 

八雷神は復讐心から連携して動いてくれていたに過ぎない。

 

根の国も。

 

潤沢に動かせる兵士はそうたくさんはいないのだ。

 

伊弉諾尊を追うとき、千五百の黄泉軍が出たという話があるが。たったそれだけだとも言える。

 

古代だったのだから、それでも大軍だったのだろうが。

 

今の根の国でも。

 

黄泉軍の精鋭はそう多くはないはずだ。

 

特に亜眼と威眼がつれていた戦士達は、当面実体化も地上に出ることも出来ないだろう。それを思うと、かなり厳しいのが実情だ。

 

「伊弉冉尊様からの伝言だ。 作戦は惜しかったな。 次回の連携を楽しみにしている。 これ以上損害を増やさないために、今回は兵を引く。 だそうだ」

 

「分かった。 次回もまた連携しよう。 今回ほど人材を集められるかは分からないがな……」

 

「ああ、そうだろうな。 次回はもはや……信仰が人間の中から消えてしまっているかもしれん」

 

バカだな、そんな認識か。

 

数百年後には、人間そのものが滅んでいてもおかしくない。

 

20世紀くらいには、人間の歴史は未来と希望に満ちていた。

 

だが馬鹿な連中がその未来と希望をことごとく食い潰した。

 

結果宇宙への進出は夢物語となり。

 

それどころか、無惨に食い荒らされ続けた地球は、人間を巻き込んでそのまま滅びゆこうとしている。

 

恐らく次に来るのは昆虫の時代で。

 

昆虫はその性質的に大きくなれないから、知的生命体なんてものは生じないだろう。

 

そもそも生物が進化するというのが妄想に過ぎず。

 

ただ環境適応するに過ぎない。

 

知能が必要なければ発達しない。

 

強さが必要なければ強くならない。

 

ただ、それだけの事なのだ。

 

其処まで、あの根の国のお方様は考えているだろうか。恐らく考えていないだろうなと、星神は苦笑い。

 

その場合は、星神だって、どうにもならない。

 

それを棚に上げて笑うのも、おかしな話だった。

 

手勢がほとんどいなくなった。

 

指を鳴らす。

 

わずかな古代の霊達が出現する。

 

最後の手駒達だ。

 

ここをずっと守らせていた。

 

黒川金山の怨念と、それに惹かれて集まった悪霊は、それぞれ皆魔祓いが退治していたので、もういない。

 

流石に武田時代の悪霊は、もう残っていないのだ。

 

「大星将軍。 今回最後の戦でありますな」

 

「また……負け戦ですか」

 

「仕方がない。 ただ、姫巫女様の血筋は、この国の至尊の中で生きておる。 それを考えれば、決して悪くはない戦だ。 何より、ここまでやれたのは、我らが初めてだ。 私は、おまえ達を誇りに思う。 良く私を支えてくれたな」

 

「いえ。 今回も最後までお供いたします」

 

ミカボシ将軍が戦死して。

 

姫巫女様がヤマトに嫁いだ後。

 

大星の一派は、住む土地を移された。以降は監視されながら、ずっと苦しい生活をしていくことになった。

 

常陸……今は茨城か。

 

茨城の土地では、後にも様々な問題が発生し。

 

やとのかみという強大な邪神が出現もしたが。

 

それはもう、星神とは関係がない。

 

今回は、後はできるだけ大きな爪痕を残すだけだ。

 

増長の度合いを知らない人間どもに、神話の者の恐ろしさを思い知らせてやる。

 

人間が至高でも万物の霊長などでもないことを、徹底的に思い知らせてやる。

 

それだけで充分だ。

 

既に価値観の変遷は始まっている。

 

大きなくさびが打ち込まれたのだ。

 

だから、今回は、最後の戦いで華々しく戦い。結果に関係なく、それで満足するとする。

 

それにだ。

 

亜眼と威眼が戦った燐火は、恐らくケルベロスと連携して、あの打ち込んだ呪いを強引に解除してくるはず。

 

最後の戦いに来るあの燐火との決戦。

 

それもまた、元は将軍だった身としては楽しみだった。

 

奥で静かにしているペルセポネを一瞥だけする。

 

誇り高くヤマトに赴いた姫巫女様の悲壮な覚悟を知っている身としては、あんな弱々しい女に興味はない。

 

むしろ燐火のように、決定的な悲惨な境遇から立ち上がり。

 

星神にまだ立ち向かってくるすさまじい闘志に、むしろ好感を覚えるのだった。

 

 

 

(続)







戦略的な勝利を収めたとは言え、手駒の大半を失い、自身も大打撃を受けた星神。

決してどちらも無傷ではありませんでした。

最後の戦いが近づいています。

勝つのは燐火か星神か。






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