魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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ついに手に入れた神器鉄パイプ……!

燐火は「つよそう」と思ったそれを、早速色々と手入れします。

それはそれと、遅れている勉強もついに周囲に追いつきました。

他の子供がショート動画とか見てぼーっとしている間に、それだけ努力をしたのです。





魔法の杖と剣の道
序、戦うことはしなくとも


拾ってきた鉄パイプを燐火が見せると、おかあさんは微妙な顔をした。どうしてこんなものをと顔に書いていたが。

 

大事そうにしているのを見て、人に向けたり振るうなと念押しして。それで、捨てることはなかった。

 

それから、鉄パイプを大事に磨いた。

 

なんだかんだでちょっと気に入ったのだ。

 

燐火としても、重さ的にちょうど良いので、体を鍛えるのにもいいと思った。

 

武道の鍛錬をするようになってからわかったけれど。

 

重心がちょっとずれるだけで、体は鍛え方が足りないと簡単に傾く。

 

体幹を鍛えるには、しっかりと重いものを普段から扱う方が良い。

 

握力が鍛えてもあんまり変わらないとしても、他の体の部位は鍛えられる。

 

それで、鉄パイプを丁寧に手入れする。

 

おとうさんもそれは知っているらしく、あまり乱暴には扱わないようにと釘を刺したけれど。

 

燐火が危ないことには使わないと信頼してくれているのだろう。

 

それもあって、以降は何も言わなかった。

 

鉄パイプは汚れていたけれど、程なくぴかぴかになった。

 

後は、手入れをする。

 

さび止めのお薬をお小遣いで買ってきて、それを塗る。

 

その後は、持ちやすいように、合成皮を接着剤で貼り付けた。

 

そうして、無骨な鉄パイプが、燐火から見てどんどん格好良くなっていく。ちょっと満足した。

 

「良い感じ」

 

「そうか。 燐火が気に入っているのなら何よりだ」

 

「うん」

 

燐火が何にも興味を見せなかった、ということもあるのだろう。

 

それもあって、ケルベロスは丁寧に鉄パイプを手入れする燐火に対して、ああだこうだというつもりはないらしい。

 

本来はお水を通すためのものらしいけれど。

 

試しに何度か振るってみたけれど。

 

これは使い方次第では、簡単に人間の頭をたたき割ることが可能だろう。

 

いざというときには、人間に対しても、護身の切り札として使えるのではないかと燐火は思う。

 

どうしても体術だと限界がある。

 

おかあさんでも、体格がずっと大きい男性がナイフとか持っていると、制圧は難しいと言っていた。

 

そういうものなのだ。

 

いずれにしても、武道の鍛錬を続ける。

 

ついに、この間道徳のドリルが終わって、同学年の生徒に対するハンデがなくなった。ただ、他にもまだわからないことがある。

 

それも、誰でも知っているようなものが、だ。

 

スマホに関しても、たまにおかあさんのを触らせてもらって、機能について覚えていくようにする。

 

これは周りが使っているからで。

 

そういう点で、ハンデを抱えないためだ。

 

ただし、自分の子供用スマホを基本的に用いる。

 

責任を持てる年になったら、そういうものは使えば良い。

 

それは燐火にもわかっていることだった。

 

だから、今は周りへのハンデを一つでもなくす。

 

後は感情だろう。

 

とにかく、面白いと思うものを探せ。

 

そうケルベロスに言われて。色々試してみるのだけれど。

 

ゲームはあまり面白いと思わない。

 

本もしかり。

 

興味深いことはあるけれど、その先に行かないのだ。

 

涼子の家にお邪魔させてもらうと、ぬいぐるみとか結構あったりするのだけれども。そういうものをほしいとはまるで感じない。

 

身を飾ることも基本以外は興味がわかないし。

 

後は自分で何か見つけていくしかないのだろう。

 

時間になったので、鍛錬も切り上げる。

 

それから、宿題などの漏れがないことをチェック。ケルベロスが、ちゃんとできていると教えてくれる。

 

それだけで、かなり心強い。

 

「後は涼子さんに追いつくくらいは勉強ができると良いんだけれど」

 

「あれは優秀だ。 何も考えていない周囲の子供と比べると浮いているが、涼子のような人間と仲良くなっておくと後で色々と利がある」

 

「そうなんだね」

 

「悪友やろくでもない恋人の影響で堕落する奴はいくらでもいる。 そういう例をいくらでも見てきた。 たくさん友達を作る必要はない。 大事な友達を一人でいいから作っておけ」

 

頷く。

 

涼子はこっちを悪くは思っていないようだし。

 

燐火が変なことをしなければ、それで関係はうまくやっていけるだろう。

 

後は、わがままを言ってほしいみたいなことをたまにおかあさんに言われたりするのだけれども。

 

ちょっとおとうさんもおかあさんも忙しい様子を見ていると。

 

わがままなんていうつもりにはなれない。

 

宿題が終わったところで、メールが来る。

 

日女さんだった。

 

「燐火、今何してた」

 

「宿題が今終わったところです」

 

「真面目だな……」

 

「両親に迷惑をかけられませんので」

 

それに、勉強も遅れていたし。

 

今後何があるかもよくわからないから、勉強はしっかりやっておく方が良いだろう。ケルベロスも、無駄になる勉強などないと言っていたっけ。

 

「どうかしたんですか」

 

「面倒な奴が街に来る。 前に俺とちょっとやらかした奴でな。 顔写真は送っておくから、気をつけろ」

 

「わかりました」

 

写真が送られてくる。

 

ええと、これは確か貫頭衣とかいうのか。

 

見覚えがある。

 

確かキリスト教だかのシスターとかいう人が着ている奴だ。

 

目が青くて、自信満々の表情。

 

海外の人らしい。

 

うげっとケルベロスが声を上げる。

 

「一神教関係者の魔祓いか」

 

「嫌いなの?」

 

「嫌いもなにも、俺を地獄の番犬とか勝手に決めつけて、悪の存在に仕立て上げたのはこいつらだ」

 

「そう……」

 

地獄の番犬呼ばわりがケルベロスの地雷であることは知っている。

 

ケルベロスがいうには、ギリシャ正教とかいう代物で、ギリシャの神々の信仰を徹底的に否定したあげく。

 

全部悪魔呼ばわりして、散々におとしめた怨敵だという。

 

その後はイスラム教というのが入ってきて、更に滅茶苦茶にしたらしく。

 

キリスト教もイスラム教も、ケルベロスからすれば反吐が出るほど嫌いな相手以外の何者でもないそうだ。

 

「来るってことは、鉢合わせる可能性もありそうだね」

 

「面倒なのはこいつらは極めて独善的だということでな」

 

「独善的」

 

「自分たちの神以外は全部悪魔と言っている連中だ。 魔祓いであろうと、それは同じだろうな」

 

なるほどね、それは厄介だ。

 

実際、あの金木の一族は自分らを正義だと最後まで信じて疑わなかった。後から聞かされたが、金木の屑娘は自分は何も悪いことはしていない。いじめられるような奴が悪いとわめき散らしていたらしい。

 

そして少年院を兼ねた精神病院に入れられてからも、ずっとこれは不当な扱いだとわめき散らしているそうだ。

 

正義なんてそんなものである。

 

ましてや主観の正義は。

 

客観と主観の概念を知ってから、人間の主観が如何にいい加減で常に客観を考えなければならないことはわかったし。

 

そういう観点からすると。

 

お気持ちお気持ちで騒いでいる人間が、如何に愚かで滑稽かもどうしても身にしみてわかってしまう。

 

こざかしいかもしれないが。

 

燐火からすれば、被害を受けたのだ。

 

他人事でもないし。

 

こざかしかろうが、譲れないところだった。

 

「ただ、全員がそうでもない。 とりあえず、実際にあって確認をしてみるといい。 一神教に誘ってくるようなら断れ」

 

「うん」

 

「全く厄介だな。 一神教は現在世界で最も信仰している人数が多い宗教だ。 それもあって、どうしても独善的な輩は幅を利かせる。 人間という生物は、ずっと進歩しないものだな」

 

ケルベロスが悲しそうに言う。

 

燐火は、それに対して、何も言うことができなかった。

 

 

 

翌日。

 

涼子と一緒に歩いて帰っていると、ものすごいロングヘアの金髪のお嬢様が、使用人らしい人を連れて歩いていた。

 

ブランド品らしい服に身を包んでいる。ロングスカートを翻して歩いているが。外国人であり、育ちも違う。だから実際の年齢はよくわからない。

 

なんだあれ。

 

だが、顔を見て思い出す。

 

あいつだ。

 

ケルベロスが、うげっと呻いた。

 

「やはり天使憑きか」

 

「天使ってあの羽が生えてわっかがついているきれいな女の人?」

 

「それは後に作られたイメージだな。 天使は本来ゾロアスター教という宗教で生み出された概念で、一神教に取り入れられた頃には無数の翼に大量の目がついているような怪物然とした存在だった。 それが宗教的なシンボルとなり、美しい姿に変わっていったのだ。 それでも基本は両性具有であるのだがな」

 

両性具有。

 

確か男でも女でもあることだったか。

 

ケルベロスが、眠れないときとかに、寝物語にギリシャの神々のお話をしてくれる。

 

そういうときに、たまに出てくる言葉だった。

 

涼子もちょっと驚いたようだ。

 

黙々と道を歩いて、すれ違う。

 

一瞬だけ目が合った、

 

相手がこちらを見たのがわかった。

 

ふんと鼻を鳴らしたようだった。かなりいけすかないと思ったけれど、まだ話したわけでもない。

 

とりあえず、今は関わらないなら、それでいい。

 

涼子と今の人について話す。

 

「すごいきれいな人でしたね」

 

「だけどなんだか感じが悪かった。 見下している感じだったよ」

 

「それはそうでしたね」

 

「きれいだけれど、友好的ではない海外の人は苦手かな」

 

それは、仕方がないと思う。

 

日本で悪さをする海外の人は、どうしても最近目立つ。燐火も時々そういう話は聞くくらいである。

 

それもあって、涼子の口からそういう言葉が出るのも仕方がないのだと思う。

 

燐火はあまり良い印象がないらしい日女さんから話は聞いていたから、まあそれについては事前にわかっていたし。

 

どうでもよかった。

 

とりあえず分かれてから、自宅に向かう。

 

小走りで行く。時間が惜しいからだ。

 

ケルベロスが教えてくれる。

 

「あれについているのは中級天使だったな」

 

「天使に中級ってあるんだね」

 

「今の時代では、天使は九階級に分かれ、上級中級下級がそれぞれ三段階に更に分かれている。 あれに憑いていたのは、中級一位ドミニオンだ。 かなり強力な天使に分類される存在だ」

 

一位からの順番になるとすると。

 

全部の中で、上から四段階目になるのか。

 

燐火がふうんと思っていると、ケルベロスは言う。

 

「人間の会社で言うと、一神教の神を会長として、社長や取締役が上級一位。 中級は部長から課長くらいだ。 ドミニオンが憑いているということは、あれはかなり一神教の神々から愛されている存在のようだな。 あんな性格が悪そうな奴が、か」

 

「まだ話してみないとなんともわからないよ」

 

「……そうだな」

 

家に着く。

 

またメールが来ていた。日女さんからだ。

 

今日、問題の人が来たらしい。

 

帰り道で会ったと告げると、もう会ったのかと、面倒くさそうに日女さんは言う。

 

「以前の仕事で、日本の悪霊にあいつご自慢の天使の力が通じなくてな。 それで勝手に俺をライバル扱いしている。 面倒な話だ」

 

「それで押しかけてきたんですか」

 

「最近お前が関わっているダイモーン関係の事件が相次いでいるだろ。 それでちょっかいを出しに来たらしい。 あいつは財閥の御曹司らしくてな。 それもあって、無理も利くそうだ。 魔祓い……エクソシストとして一家全員が天使の加護を受けていて、それぞれ本職だって言う話だから、まあたいした一家ではあるんだろうな」

 

エクソシスト。

 

ケルベロスが、一神教の悪魔祓いだと教えてくれる。

 

とはいっても、一神教では他の宗教の神をことごとく悪魔呼ばわりしているので、あまり良いイメージは抱けないそうだが。

 

「一瞬だけ目が合いました。 おそらく、ケルベロスのことを認識されたと思います」

 

「はあ。 どうせうちに来るだろうから、話はしておく。 バチカンから来てるイタリア人だが、日系の血が入っているらしくて日本語は堪能だ。 言葉による行き違いはないだろう」

 

先輩に任せておけ。

 

そう日女さんがいうので、そうさせてもらう。

 

いずれにしても、ずっと年上に見えたし、魔祓いとしての経歴はずっと向こうの方が上だとみて良いだろう。

 

ちなみに名前はカトリイヌというらしい。

 

カトリーヌではなくてカトリイヌだというこだわりがあるそうなので、そういうものかと思って覚えておく。

 

黙々と帰ってからのルーチンをこなす。

 

宿題は最近は、すぐに終わるようになった。勉強に追いついたこともあるし。今やっていることが問題なくできるというのも大きいだろう。

 

分数の割り算で周囲が苦戦していたが、実際の数字に直して考えてみるとわかりやすいと言われて。

 

試してみたら、あっさりできるようになった。

 

分数の割り算に苦戦するかどうかが算数の分水嶺らしいので。

 

これを楽に突破できたのは、今後のためになるだろう。

 

黙々と勉強していると、おかあさんが帰ってきた。

 

この間半グレだかが車ごと吹っ飛んだ事件の余波で色々忙しかったのが一段落ついたらしい。

 

ケルベロスは、ああしなければもっとたくさんの人が不幸になっていて。警察の仕事ももっと大変になっていたといってくれたが。

 

それでもちょっと申し訳なさはある。

 

あの事件の後、クラスにいた金持ちの子が一人消えた。

 

転校していったのだけれど、先生は何も言わず。すっといなくなったので、燐火にもだいたい事情はわかった。

 

おかあさんは帰ってくると牛乳を飲むので、燐火が先に出しておく。

 

コップも渡すと、おかあさんは言う。

 

「ありがとねー。 助かるわー」

 

「お風呂も沸かしてきます」

 

「……」

 

ぐったりしているので、やっておく。

 

昔はガス湯沸かし器での火傷事故もあったという話だけれど。

 

今は自動で適温まで温めてくれるので、そういう恐れはなくなっている。

 

大変に助かる。

 

燐火でも、ボタン一つでできるからだ。

 

お風呂にお湯が入っていることを確認して、追い炊きにセット。後は、待っているだけでいい。

 

この程度の作業でも。

 

疲れ切っている人には、重労働だったりするのだ。

 

お風呂がわいたので、お母さんが入りに行く。

 

色々問題があったのだろうから、それについては何も聞かない。おかあさんも、燐火に愚痴を言うほど落ちてはいないようだ。

 

おとうさんはまだ配信だ。

 

こっちもこっちで家の大黒柱。

 

この家も、二年ほどで買ったらしいので、かなり稼いでいるのは間違いない。

 

実際問題、おとうさんの配信。

 

最近テレビで見た「漫才師」だか「若手お笑い芸人」やらの番組より、ずっと面白いし。

 

これに関しては、学校でもそういう話をしているようで。

 

今はテレビなんて誰も見ていない。

 

アニメですら、親が登録したアニメを配信しているチャンネルで見ていることが多いようだった。

 

だから、おとうさんの仕事も邪魔はできない。

 

おかあさんがお風呂から上がってきたので、適当にご飯をレンジでチンする。

 

こういう生活だから、炊いたご飯は基本的にパックに入れて、冷凍してあるのだ。それをチンする。

 

後は出来合が用意してあるから、一緒に食べる。

 

まあ出来合でもおいしいものはおいしいので、不満を感じたことは一度もない。

 

無言でもそもそ食べているおかあさん。

 

ちょっと申し訳なさそうだった。

 

「なんだか情けないわ。 自分で手本を見せないといけないのに」

 

「おかあさんが手本を見せてくれたからできるようになりました。 もっと色々できるようになります。 ドリルも終わったので、今後は時間をとれるようになりますし」

 

「そう、心強いわ」

 

「ありがとうございます」

 

おかあさんは色々限界なので、食べ終わると寝に行く。それを見送ると、燐火は宿題をチェック。

 

忘れがないかを確認してから、後は軽く体を動かしておいた。

 

今日のおとうさんの配信は、深夜まで続くものだ。

 

耐久配信だからかなり厳しい内容だけれども、それで生活が支えられているのだから、燐火は仕方がないと思う。

 

おかあさんもそれを理解している。

 

ただ、たまに不満そうな顔はしているけれど。できれば、関係が壊れてほしくないと燐火は思っていた。







燐火はケルベロスに対しては普通に喋っていますが、まだ新しい両親に対しては敬語を崩せません。

心の壁がどうしてもあるのです。

本人もどうにかしたいとは思っているのですが。


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