魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない 作:dwwyakata@2024
燐火が養子として引き取られた先は、ちょっと変わった家庭です。
母親は燐火を助けるのに直接関わった警官。二十代後半。
父親はかなり有名なVtuberです。
どっちも忙しいのであまり甘えることは出来ませんが、ただ燐火にはそもそも甘えるという発想自体がありません。
それだけ今までの環境が最悪だったのです。
学校は前とはまるで違った。ちゃんと授業を受けていて、それが驚きだった。
おとうさんとおかあさんがちゃんと調べてから、学校に通わせてくれたのだ。それで、随分楽だった。
授業についても遅れがあることは先生も知っているらしい。
授業中生徒が騒ぐようなこともなく。
先生も、きちんと生徒を見て指導していた。
どれだけそれがすごいことか。
燐火は知っていたので、うれしかった。
一応話しかけてくる女子もいたが、物静かな子だと認識されているようで、あまりグループに誘うようなことは強要してこない。
或いはだけれども。
訳ありだと理解しているのかもしれない。
学校で食事だってできる。
前は休み時間なんて暴力が常に飛び交っているような有様で、給食なんてまともに食べられたものではなかったのだ。
普通に給食を食べられるだけで、燐火には驚きだった。
ともかく、全く違う学校にしばらくは警戒していたけれど。
特に怖がることはなさそうだなと思って、やっと少しずつ安心する。
体のあちこちにあった古傷も、少しずつ消えていく。
一生ものだと教師が笑っていたっけ。
あの教師も、捕まったと聞いている。
学校にいた教師のほとんどが逮捕されたらしく。一度学校は廃校になって、再建するらしい。
まあ、それもそうだろう。
給食もあまりおいしくはないけれど、普通に食べられるものが出てくる。
以前はそれすら望めなかった。
なんでも給食業者が材料とか調理過程とか手を抜いていたとかで。
しかも、そんなまずいものを食べさせられた上に。
残そうものなら、容赦なく暴力を振るわれるのが当たり前だった。
それらを聞いたとき、おかあさんは言っていたっけ。
本当に令和の学校の出来事か、と。
その時令和というのもなんだか知らなかった。
それを聞いて、言葉もないという表情だった。
少しずつ、あらゆる全てを覚えていかなければならない。
勉強に関してはあまりケルベロスは関与しないという話だったので、燐火が覚えていかなければならない。
とにかく授業にはついていけないけれど。
それでも少しずつ、できることから覚えていかなければならなかった。
四則演算から練習していると。
隣の席のませた感じの女子が話しかけてくる。
柊涼子というらしいその子は。
前から燐火が気になっていたらしかった。
「燐火さん、前の学校で何かあったの?」
「ええと……」
「流石に勉強がとても遅れていると思って。 なんならお父さんとお母さんに教えてもらったら」
「おかあさんは忙しくて頼めません。 おとうさんも」
無言になる涼子。
それから先生に何か言ったらしく。
授業が終わった後に、勉強を教えてくれると言うことだった。
今、学校の先生はものすごく忙しいらしい。
だから渡されたのは、ドリルだったけれど。
それですら、負担らしい。
「平坂さんは、明らかに勉強が遅れています。 このままだと、色々と大変ですから、今のうちに取り返しておきましょう。 先生も、ご両親から実情を聞いています。 授業にも一生懸命取り組んでいるのは見ています。 それでも四年分の遅れは大きい。 だから、少しずつやっていきましょう」
「はい」
「勉強に意欲的なのは何よりですね。 勉強を嫌いにならないように、先生の方からもサポートします。 だから、諦めずにやっていきましょう」
渡されたドリルを持って帰る。
家に帰ると、おとうさんは防音室にいた。
おとうさんはVtuberという仕事をしている。
なんだかいう企業に属しているVtuberだそうだ。
動画を配信して仕事をするもので、昔で言うタレントとかアイドルとかみたいなものだそうだ。
今の時代は、昔はテレビで活躍していたアイドルよりも、Vtuberの方が遙かに発信力が高く、勢いもあるらしい。
とはいっても、燐火はテレビなんてぼんやりとしか見ていなかったから。
昔をそもそも知らないのだが。
おとうさんは一度防音室に入ると、半日くらいは出てこない。
一緒に食事をしない日も多かった。
ただ、今日は出てきていた。
おとうさんは多少なよっとしているけれど、それでも普通のサラリーマンの十倍くらい稼いでいる。
だから、このうちの大黒柱だ。
「お帰り燐火。 それは」
「教師に渡されました」
「ああ、ドリルか。 見せてごらん」
「はい」
さっとおとうさんが見る。
平坂伍布という名前のおとうさんは、Vtuberとしてはかっこいい名前で活動している。ただ、体力的に厳しくなってきたと、時々ぼやいていた。
「なるほど、小学生入ったばかり位の内容だね。 無理はしないで、少しずつやってごらん」
「わかりました」
「……」
少し寂しそうに燐火を見るおとうさん。
燐火はおとうさんなんてものは知らないので、基本的にまだ少し怖い。大人の男の人が燐火にどう接してきたか。
今頃になって、それがわかってきたから。
余計に怖いと感じているのだと思う。
ソファでぐったりしているのを横目に、もらった部屋に入る。
黙々とドリルをやっていく。
ちょっと疲れるけれど。
これは、ある程度理解できる。
理解できる内容は、苦ではなかった。
「ふむ、子供にもきちんと教育をしているのはよいことだな」
「ケルベロスさんの時代は違ったの?」
「ああ。 俺がいた時代には、ギリシャは市民という者だけが教育を受けていた。 市民と言っても今の時代とは違っていて、特権階級だったがな」
「わからない」
色々わからないことを言われたので、ケルベロスは困ったようだったが。
ともかく、勉強については基本的には自分でやる。
ただ、細かいところで、たまに教えてくれるけれど。
「なんでリンゴとかミカンとかで考えるの?」
「四則演算というのは、数字を扱うものだからだ。 それは何も数字遊びをするためのものではなく、生活などで役に立っていくものなのでな」
「そっか」
「例えばリンゴを何人かで分けるこの問題は、実際に起きうることだろう。 じきにもっと大きな数字も扱うようになる。 だから、しっかり覚えておくと良いだろう」
なるほど、そういうものなのか。
後に生活で役立つ。
そう思えば、楽かもしれない。
ただケルベロスは、国語の時は完全にだんまりだった。文字そのものを読めないらしい。
実は燐火もひらがなはどうにか、だったので。
あまりケルベロスのことはいえない。
日本語は世界でも上位に食い込むくらい難しいそうで。
ケルベロスは翻訳して意思に話しかけてきているらしいのだけれども。それも時々ちゃんとした翻訳が出てこなくて困るそうだ。
勉強をみっちりやっていると、おとうさんが来た。
少し休んで、それで疲れがとれたらしい。
部屋の真ん中にある机にぺたんとすわって勉強していた燐火に聞いてくる。
「どうだい、できたかな」
「少しずつ頑張っています」
「見せてみなさい」
「はい」
ドリルを渡す。
さっと見ていくおとうさん。
なんでも勉強について扱うような配信をやるらしく、勉強については生半可な教師よりも知識があるらしい。
「ここが間違っているね。 一緒にやってみよう」
「わかりました」
「……」
少し寂しそうにするおとうさん。
どこがどのように間違っているか、丁寧に教えてくれる。理解しやすいように教えてくれるので助かる。
間違いの理由についても理解できた。
国語についても、ケルベロスと違ってとても詳しかった。
「馬鹿な教師の中には、文字の書き方にまでケチをつけるのがいるけれど、まあそんなのは気にしなくていい。 とにかく読める文字を書ければそれでいい。 数字についてもそれは同じだよ。 それで、ここはちょっと違うから、もう少しゆっくり考えてみよう」
「はい」
素直に答えているというよりも。
そう答えなければ殴られたから、そういう風な習慣がついた。
孤児院での話だ。
学校では授業なんて機能していなかったこともある。
座って勉強をすることさえ困難ではないかと言われていたこともあったのだけれども。燐火は座って過ごすのには慣れていた。
元々それほど活動的ではなかったからかもしれない。
「よし、正解だよ。 具体的にどうやったのか教えてごらん」
「ここのあまりを見逃していました。 それで」
「よくできたね。 飲み込みが早いよ。 そのまま、できるところまでやっていこう。 大丈夫。 勉強についていけていなくて、このくらいのこともわからない子はざらにいるからね。 下手をすると高校生でも」
「わかりました」
でも、それはとても悲しいことだなと燐火は思った。
できるだけ覚える。
その後は、問題を消して反復でやってみる。
間違える場所が出てくる。
おとうさんによると、間違えるのは仕方がないという。人間は、100やると1か2はどうしても間違えるのだそうだ。
重要なのは、その間違いを自分で見つける力だという。
終わった後、見直すことを教えてもらう。
それで、間違いはぐっと減った。
アラームがなる。
夕食の時間らしい。
おかあさんは今日もお仕事だ。おとうさんと食べる。
おとうさんはちゃんと料理ができるかというとできるのだけれど。ただ仕事が忙しくて体力が残っていない。だから食べるのは出来合いだけれども。
それでも孤児院で食べていたものが何だったのかわからないくらい、おいしかった。
「おなかとか痛くはなっていないね」
「はい」
「まだ体は万全じゃないから、栄養士に相談は受けているんだ。 出来合い中心の食生活だとどうしても厳しい」
それでもご飯はちゃんと炊いているので、おとうさんは立派だと思う。
その後、おとうさんは短時間の配信をするらしくて。
いざというときはならすようにと、ブザーを渡して防音室にこもった。
後は、黙々とドリルをやる。
見直しをするという癖を覚えたので。
それをやって、少しでもできるようになっていきたい。
でも、そうしていると。
愚図とか馬鹿とかずっと言われていたことを思い出す。
それが、時々足かせになる。
勉強の手が止まる。
顔をゆがめて、ブスとか愚図とか馬鹿とか。周りがゲラゲラ、心底楽しそうに笑いながら言う。
それを見て泣けばもっと笑うし。
感情が凍り付いて何も言い返さなくなってからは、顔をゆがめて暴力が振るわれるようになった。
それを思い出すと、時々手が止まる。
ケルベロスが、声をかけてくる。
「体の傷は治りつつあるが、心の方はそうでもない。 だから、今は少しずつやっていけばいい。 燐火よ、お前の集中力はずば抜けている。 お前を馬鹿にしていた者達の誰よりも、だ。 だから気にせず。そのままやっていけば良い」
「わかりました」
「もっとラフな感じで良いぞ」
「はい」
そう言われても。
どんな風に話せば良いかは、よくわからない。
言葉が戻り始めたのも最近なのだ。
ケルベロス相手には、多少は普通にしゃべれる。それでも油断すると、すぐ敬語になってしまう。
普通はおとうさんやおかあさんと、もっと違うしゃべり方をしているのだろうか。そう燐火は思った。
少しずつ、学校の授業について行けるようになった。
基礎からやっていくと、できるようになる。
そうケルベロスに言われたけれど。
本当だったんだなと、ちょっと驚いた。
ただ、体育は苦手だ。
どうしても体が他の子よりも小さいと言うこともある。
崖から落とされたときのけがはケルベロスが治してくれたらしいのだけれども。それはそれとして、元からの栄養が足りなかったらしい。走るのも跳ぶのも、他の子よりずっとできなかった。
こればかりは生まれついてのものと。
もっと幼い頃に培われる基礎体力というのが大事らしい。
燐火は実の両親なんて覚えていないけれど。
良い思い出なんてそもそもない。
それは要するに。
孤児院時代以上に、ひどかったと言うことに他ならない。
優しい親なんてものは見たこともないので。
今だって、丁寧に接してくれるおとうさんとおかあさんに、どう接して良いかもわからなかった。
体力だけはそれでもあるらしい。
あくまで人並みだが。
それで、体育の時間は飽きて遊び出す子を尻目に、黙々と言われたことをやり続けてみる。
それである程度ものになるのだから、よくわからなかったが。
「基礎体力がないから、どうにも困ると思ったが、根性はあるな。 そのまま、練習を続けていけば、周りにきっと追いつけるぞ」
「ありがとうございます」
「はっはっは! もっと子供らしい返事で良いぞ!」
そういって豪快に笑う先生は、女性の体育教師だが、背は男性の大人と代わらないくらいある。
体力もすごく、なんだかいう格闘技の大会で国の大会にでるくらいの腕前まであるらしい。
まあそれもあって、男子も舐めている生徒は一人もいなかった。
燐火は大人の悪意はいくらでも見てきているし。
この人に悪意がないのはわかるので、それで別に怖いとは思わなかった。
ともかく言われたメニューは様子を見ながらこなす。
他の子が親からもらったスマホをいじっている間に走る。勉強もする。
それを見て、真面目な奴と思われたのかはよくわからない。
ただ、勉強が遅れているからと説明して。
それでそうなんだとは言われたけれど。
だけれども、できなかったことができるようになり。
わからなかったことがわかるようになると。
それらは俄然楽しくなっていく。
かけっこで男子に初めて勝ったのは、学校に行き始めて七ヶ月たった頃だったか。足が速い子ではなかったけれども。それでも女子の大半が勝てない相手だったから、それはうれしかった。
走り方についても、体育の先生……教師と呼んでいたけれど、先生と呼ぶことにした。ともかく、体育の先生が教えてくれるとおりにやって、できるようになっていった。
勉強も、周りに追いついた。
ただ、まだできる子ほどじゃない。
最初は明らかに距離を置かれていたのがわかっていたが。
それも今では、普通に話しかけてくる生徒が増えてきていた。
でも、まだ普通くらいだ。
ケルベロスに言われる。
勉強に無駄など一つもない。
それに、追いつけたのは国語と算数。絶対に必要なものだけ。それを考えると、まだまだ先は長いのだと。
歌とか体育とかはまだまだ。
走るのはできても、とんでもない基本が全くできていなかったりする。
どうも燐火は興味がないことにはてんで興味を向けないらしく、ケルベロスにもそれは時々言われた。
これは単にやりたくないとかそういう話ではなくて。
そうすべきだと気づけないということだ。
今までは精神的に余裕がなかったから、それも仕方がなかったが。今後は他にも目を向けた方が良い。
ケルベロスにそう言われると、そうなのかと納得もする。
燐火はとにかく、それからも頑張る。
できるようになった国語や算数は、他の子に追いついたのだから、追い越すようにやっていこう。
そう言われて、頷くこともできた。
遊びたいという意欲はあんまりない。
おそらくだけれども。
あの前にいた学校。
それに孤児院。
後は、覚えていないけれど燐火の両親のところ。
それらで、根こそぎ削り取られたのだと思う。
欠落している。
そういう意識はある。
だけれども、今はどうしていいかすらもわからないのが燐火の真実だ。
それに、もう一つ気になることもある。
算数のテストで100点を初めて取って、それで少しだけうれしくなって。家に帰る。家によっては、100点はとって当たり前みたいなことを子供に強制する場所もあるのだとか聞く。
前の学校とかの惨状を知っていると。
燐火はそれを決して笑えなかったし。
今、これでおそらくおとうさんもおかあさんも褒めてくれるだろうと思うと。
それで、家に帰ってみると。
おとうさんは防音室。
おかあさんはまだ帰っていない。
だけれども、待つことはできる。
待っている間に、ケルベロスに聞いてみる。
声に出さなくても、意思は通じるので、それはとてもありがたい。
「ケルベロスさん、聞いてもいい?」
「なんだ」
「用事ってなに?」
「ああ、お前を助けてこの世界で部分的に活動している用事だな。 ……そうだな、そろそろ話しておくか。 まず前提として、俺は元々この国の神格ではない」
それについては最近知った。
ケルベロスというのは、ギリシャって遠くの国の昔話に出てくる犬だ。
でも、悪魔とか言われているけれど。
実際には神が作り出した存在で、しかもケルベロスは神々の味方として活動している。
地獄の番犬とか言われていると聞いた。
それを考えていると、ケルベロスは珍しく怒った。
「俺は地獄の番犬ではない!」
「ごめんなさい」
「いや、これは勘違いが多いから仕方がないな。 ……俺のいたギリシャの地では、人間は死ぬと冥界にいく。 その中でも特に悪い奴が地獄に落ちる。 俺はその冥界の入り口で、死んだ人間がこの世界にさまよい出ないように見張る役割をしている。 地獄の方は、ヘカトンケイレスという三体の巨人が見張りをしているのだ。 強いて言うなら、地獄の番人がヘカトンケイレス。 俺は冥界の番犬だな」
「そんな大事な役割なのに、日本に来ていて良いの?」
今来ているのは、分身みたいなものなのだと教えてくれる。
いずれにしても、ケルベロスに地獄の番犬というのは地雷らしい。
地雷というのは少しずつわかってきた。
自分にないものだけれども。
それはそれとして、他の人が悲しむようなことはしてはいけない。これはおとうさんにもおかあさんにも教わった。
前の学校では、如何に人を苦しめるか。
苦しめることができる人間が偉い。
そういうことをずっと子供達がやっていた。
それにどうしてもなじめなかった燐火は、自分の方がおかしいのではないかとずっと思っていたのだけれども。
少なくとも燐火は、おとうさんとおかあさんの言うことを聞きたい。
「俺はこの地にさまよい出てしまった者を探していてな。 あまり俺も好きな相手ではないのだが、それでもギリシャの地の信仰は今色々厳しくて、動ける中で知名度がたかい俺に白羽の矢が立った。 幸いこの地の神々は寛容で、俺が活動することを快く許可してくれたのだ」
「単身赴任っていうの?」
「ああ、そんなようなものだな。 いずれにしても本来俺は日の光が苦手で、浴びることは好きではない。 だから用事が終わったら、お前に体を返して出て行く。 その時、場合によってはお前はどうするか決めて良い。 冥界に行くか、それとも生き続けるか」
この世界は、決して良い場所ではない。
ケルベロスはそう言う。
それは、燐火も思う。
孤児院の先生が、あの後逮捕されて。懲役三十年とかの判決が出たことは後から知ったけれど。
あの狂った学校の関係者全員が逮捕された訳ではなく。
中には平気でまだ先生をやっている人間もいるという。
それを聞くと、ケルベロスの言うこともわかるのだ。
「俺が探している奴は、ダイモーンを多数つれている。 おそらく俺が探している奴はそれを制御できていない」
「ダイモーン?」
「キリスト教でデーモンの語源になった言葉だ。 強いて言うなら霊とでもいうのが正しい。 人間に見えない不可思議な存在で、これ自体は悪にもなるし善にもなる。 キリスト教では悪魔と一括されたがな」
キリスト教はなんとなくわかる。
十字架が掲げられた教会というのは知っているからだ。
「基本的に戦うことはない。 ただ……」
「ただ?」
「まあ、いずれわかる」
そうか。
いずれにしても、燐火もケルベロスには助けてもらった。それも随分とだ。
だから、助けになるならしたい。
それは、心から思っていた。
燐火はそもそもまっとうな勉強なんか出来る環境にいなかったこともあり、まずは周りから追いつくところからです。
燐火に憑いているケルベロスも、それを最大限サポートしてくれます。
元々人情家なので、荒々しい番犬の側面を持つと同時に、とても面倒見は良いのです。