魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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「大人」とはなんなんでしょうね。

生殖が可能な人間をそう称するなら、中学生は立派な大人でしょう。

責任を持てる人間?そんなもの、社会人になってみればわかりますが、ごく一握りしか存在していません。

少なくとも立派な大人なんて存在は、希少種にすぎません。

それが残念な人間の現実です。





2、大人など本当にいるのか

教会での会合に足を運んで。

 

その時、会釈したカトリイヌさんの表情を見て、燐火は悟る。

 

予想通りだ。

 

おそらくだが、腐敗しきっているとみていい。

 

魔祓いの世界も色々だと日女さんに聞いている。国によっては権力と癒着したあげく、腐敗しきってろくに魔祓いも出来ない奴が「権威」になってしまうことがある。

 

そうなると最悪で、魔は野放し。

 

国中に不幸がまき散らされる。

 

それがどうしておきるのか。

 

燐火は今、こうして見ていることになる。

 

教会の中は雰囲気だけ荘厳だが。

 

ケルベロスは、ふんと鼻を鳴らしていた。

 

「あのポンお嬢についているドミニオンと、その執事についている奴がここでは最強のようだな。 後は中級以下のカス天使しかおらん。 いざとなったら俺が全部消し飛ばす。 ただ、どんな搦め手を使ってくるかわからん。 気をつけろ燐火」

 

「わかった」

 

進められた席につく。

 

ここはカトリックの教会らしい。

 

一神教は主にユダヤ、キリスト、イスラムの三派に別れるが。そもそも経典宗教というい言葉があり、他にもいくつか存在しているという。これはいわゆるバイブルを聖典とする信仰の総称だそうだ。

 

これに加えて三大派閥の中にも分派がいくつもあり。

 

近年でキリスト教の中では、カトリックとプロテスタントが強力なのだという。

 

他にもいくつか派閥があるそうだが。

 

ここはカトリックであるそうだ。

 

いずれにしても、燐火は一神教に傾倒するつもりはない。

 

会合ではあんまり意味がないことを適当に話していたが。

 

それが終わると、集まって軽く話をする。

 

魔祓いについて。

 

それぞれの成果について話をする。

 

ダイモーンがこの近辺に集まって悪運をばらまいている事については、こいつらも把握しているようだ。

 

カトリイヌさんが説明をしているのかもしれない。

 

護衛は二人ついてきているが。

 

年配の方は、とてもとても強い。

 

若い方より多分強いことを、今の燐火は見るだけでわかるようになってきていた。これも、おかあさんに教わった柔道、合気、空手に加え。

 

剣道をしっかりやって、戦うための技術を真面目に身につけている、というのが要因であるだろう。

 

いずれにしても、ともかく会合の本番が始まる。

 

見かけだけは老紳士の雰囲気を出している「神父」(カトリックの神職をこう呼ぶらしい)が、笑顔を向けてくるが。

 

明らかに目が燐火を品定めしていた。

 

「今日は会合に足を運んでいただきありがとうございます。 君のことはとても優秀で未来有望だと聞いています」

 

「はあ、ありがとうございます」

 

「それでどうですか。 神の御心に触れて、一神教の魔祓いとして活躍してみませんか。 今の燐火さんの実力であれば、すぐにでも本職として活動する事が出来ますが」

 

「ありがたい申し出ですが、お断りします。 燐火はケルベロスの役に立ちたいので」

 

これは、心底からの本音だ。

 

死の淵から救ってくれた、というだけではない。

 

今までケルベロスがどれだけ幸運で守ってくれたかわからない。

 

それに最初のあのとき。

 

孤児院の院長が逮捕されるきっかけ。

 

金木のカス一家が逮捕されるきっかけ。

 

どっちを作ったのもケルベロスだと言うことは、燐火もわかりすぎるほど理解している状況だ。

 

今更ケルベロスを裏切ることなど考えていない。

 

それに、ケルベロスと話していて、甘党の人情家であることはよくよく理解できた。

 

それを地獄の番犬などと曲解して。

 

ダンテという人が書いた神曲という小説に出てくるような恐ろしいだけの存在と解釈したのは。

 

燐火としても思うところがいくつもある。

 

それらをいちいち口にしてもいいが。

 

今はともかく、情報を交換だけしたい。

 

「魔祓いとしてダイモーンをどうするか。 今はその話をしたいです。 燐火も力がついては来ましたが、それでもまだまだ。 情報を得られるのであれば、動きやすくなりますので」

 

「これは随分としっかりしておられる。 しかし貴方に憑いているのは」

 

「ケルベロスは立派な神格です」

 

「しかし悪魔の犬でしょう。 それは地獄の番犬……」

 

ケルベロスがキレた。

 

魔祓いのほとんどは、ケルベロスが見えていなかったようだが。

 

燐火の力が上がってきたこともある。

 

燐火の背後で、多少は魔祓いが出来る人間を威圧できる程度に、姿を見せることは出来るようになったようだった。

 

「俺は地獄の番犬ではない! 勝手に俺に変な設定を付け加えおって!」

 

「ひっ!」

 

「お、おのれ悪魔め!」

 

「落ち着いてください。 ケルベロスに害がないことは今までわたくしが近くで見て確認しておりますわ。 それに今は、燐火さんのおっしゃる通り、共闘を考えるべき時でありましょう」

 

カトリイヌさんが助け船を出してくれる。

 

いずれにしても、ケルベロスの地雷を簡単に踏むものだ。

 

ケルベロスは冥界の番犬である。

 

それも一神教徒は、基本的に自分らの信仰が全正義だと考えているから。間違いを認めない。

 

燐火も、ちょっと話すだけで、それがわかってきた。

 

「建設的な話をしたいのですけれど」

 

「し、しかしそのような悪魔の犬は、貴方に決してよくない影響を及ぼすことは間違いないでしょう。 洗礼を受けなさい。 そうすれば我らが父たる神は貴方をお許しになり、それどころかそれほどの力があれば或いは上級天使の加護を得られるやも」

 

「建設的な話をしたいと言っています。 それが出来ないのであれば帰りますが」

 

「皆さん。 ダイモーンに対処できないのは、既に身にしみてわかっているのではありませんか?」

 

ずっと黙っていた、カトリイヌさんの若い方の護衛が口を開く。

 

思っていたよりも渋い声だったので、燐火もちょっと驚いた。

 

ともかく。咳払いをすると。

 

燐火はじっと見つめる。

 

老人達は、それで明らかにひるんだようだった。

 

「最後にもう一度言います。 ここには建設的に、ダイモーン対策に関連する話をしにきました。 あなたたちの信仰に興味はありません。 否定するつもりはありませんが、燐火が受け入れることもありません。 ですが、互いに脅威を前にして共闘することは出来るのではありませんか。 それが出来ないのであれば、燐火は帰るだけです」

 

「……悪魔の犬め。 どうやって子供をたらし込んだ!」

 

「話になりませんね。 帰ります」

 

側を見ると、カトリイヌさんが頷いていた。

 

なるほどな。

 

やはり、この有様を見せるためだったのか。

 

燐火としても、この実態がわかったのだったら大いに意味があったと感じた。

 

これは、人間がいる場所ではない。

 

文字通りのパンデモニウムだ。

 

本来はもっとも聖なる場所である筈の地が。

 

一神教徒が憎んで止まない筈の退廃と腐敗の地になってしまっているではないか。

 

それに燐火のことを、あの孤児院の院長と同じ目で見ていた奴も何人かいたのを確認している。

 

反吐が出る話だった。

 

既に調べてあるが、欧州では年に千件以上もああいう人が、子供を強姦したりしてスキャンダルになる。

 

そういうことを知っていると。

 

燐火はそれも仕方がないかと、思ってしまうのだった。

 

教会を出る。誰も追ってこない。

 

家に帰る途中、カトリイヌさんが連絡をよこした。

 

「気づいているようですけれども、今日はあの有様を見てもらうために来てもらいました。 ひどい状態でありましょう。 バチカンでも、あのような光景は日常茶飯事。 うちの家は、必死に魔祓いの質を保つために努力をしてきた家系ですのよ」

 

「苦労しているのはわかりました。 でも、信仰を捨てる気はないんですね」

 

「そ、それはとんでもない話ですわ!」

 

「まあいいです。 ともかく、燐火は二度とあの人たちには近寄りません。 全知全能の神様とやらは、あの人たちにどうして天罰を下さないのですか?」

 

痛烈な一撃を入れるが。

 

カトリイヌは恥ずかしいことですとだけ答えてきた。

 

ちょっとかわいそうになった。

 

だが、それはそれとして。

 

林西さんが言っていた魔道に落ちた求道者というのは、どういう存在なのか、よくわかった。

 

一神教徒であれだ。

 

雑多なカルトはあれより更にひどいだろう。

 

それがわかっただけで十分だ。

 

家に着くと、ちょっと疲れた。

 

ただ、休憩をしてから、鍛錬はしっかりする。

 

心にたくさん泥がついた気がする。

 

だから、その泥を吹き飛ばす意味でも、気合いを入れて鍛錬をする。

 

筋肉は確実についてきている。

 

腹筋は割れて久しいし。

 

正拳突きをして、的にかなり効率よく打撃を入れられるようになってきた。

 

周囲の家の人は、胴着を着て正拳突きをしている燐火を見て、ぎょっとする事もあるようだが。

 

無視。

 

とにかく全身を使って。

 

一撃を的に入れる。

 

あの老醜の老人ども。

 

ああなってはいけない。

 

人は簡単に堕落する。

 

ケルベロスに何度も言われた。そして燐火だって、それは例外ではない。

 

堕落のきっかけはわからない。

 

たちが悪い男に引っかかったり。

 

或いは友達から悪いことを教わったり。

 

自分自身で決定的に挫折したり。色々と理由はあるのだろう。

 

だが、燐火はそうならないためにも。

 

今のうちから、土台をしっかり積み重ねておく。それでいい。燐火は続いて、竹刀を握ると。

 

アラームがなるまで。

 

集中して、ひたすら振るい続けた。

 

鍛錬もやり過ぎると毒だ。

 

しっかり指定通りの鍛錬をする。ケルベロスがアドバイスしてくれるので、体への負担もわかっている。

 

それで適切な回数の鍛錬をやった後は、風呂で汗を流す。

 

体の洗い方から最初はおかあさんに習ったな。

 

そう思うと、懐かしい。

 

丁寧に汗を流して、そして後は宿題と予習だ。無駄な時間なんぞ少しもない。他の小学生がショート動画とやらで盛り上がっているが。

 

燐火は一切興味がなかった。

 

わからないことがあったので、涼子に聞いてみる。

 

即答で帰ってきたので、頼もしい。

 

言われたとおりにやってみると、解ける。

 

燐火以上に、ケルベロスの方が感心していた。

 

「やはりあの娘やりおるわ。 友になっておいてよかったな、燐火よ」

 

「そうだね。 本当に頼りになる」

 

「小学校を卒業しても、友で居続けた方が良いだろう。 連絡は欠かさぬように取るようにしておけ」

 

「わかってる」

 

涼子は頭の出来そのものは多分燐火より上だ。

 

それもあって、同じ勉強をしていてもおそらく追いつくことは出来ないだろう。

 

淡々と勉強をしていく。

 

ただ、別に勉学で涼子に追いつくつもりはない。

 

出来る範囲のことを、必要なだけ知っておけば良い。

 

知識はいくらでも必要だが。

 

今人気のアイドルだとか。

 

一過性の情報はどうでもいい。

 

それについては、涼子も同じのようだ。

 

涼子曰く、一過性の人気なんて、数年もすれば廃れる。今の時代は、廃れる速度は更に上がっている。

 

それだったらブームが落ちついて、成熟した趣味を持つべきだというのだ。

 

確かに一理ある。

 

周りの女子からは、涼子があまりよく思われていないようだが。

 

年長の男子を放り投げたり一瞬で制圧している燐火が側にいることもある。

 

それに燐火の目が怖いというのは、周囲の人間が皆共有している認識であるようなので。

 

それもあって、その事は活用していくべきだと思ってはいる。

 

勉強終わり。

 

おとうさんがぐでんぐでんに疲れて防音室から出てきた。

 

ただでさえ昨日まで、「3D配信」とやらで出張して、疲れ切って帰ってきたのだ。

 

少し休んでも良いのではないかと燐火は思うのだが。

 

こればかりはどうにもならないらしい。

 

ケルベロスが心配する。

 

「相変わらずだな」

 

「うん」

 

とりあえず、ご飯を温めて、出来合も出す。

 

それで二人で食べる。

 

おかあさんは夜遅くなる。

 

こっちも大変だ。

 

燐火はできるだけ二人に負担を掛けないようにする。

 

一応、学校で何があったかは伝えてはいる。

 

これに関しては、子供らの中である謎ルール。親に報告するのは反則、とかいういじめを行う人間にだけ有利な反吐が出る代物を守るつもりはないからだ。

 

学校で何がおきているかは、しっかり話をしておく。

 

それだけで別に問題はない。

 

「最近、学校でトラブルは起きていないようだね」

 

「はい、ただ……」

 

「どうかしたのかい」

 

「キリスト教徒の友達と一緒に、今日ちょっと教会に行ってきました。 カトリックの神父さんたちは、ちょっとあまり感じがよくなかったですね」

 

これについては、素直に告げておく。

 

魔祓い云々については、口にするつもりはない。

 

おとうさんはそれを聞いて、そうかとだけ言った。

 

夕食が終わると、おとうさんが早々に寝室に消える。

 

元々体力がある方ではない。

 

それも考えて、出来合も消化にいいものを選んでいるようだ。

 

中学になるまでは、帰りのスーパーで買い物をしないようにとおとうさんとおかあさん両方に言われている。

 

それだけ、大事にしてもらっていると言うことだ。

 

それを破るつもりはない。

 

小遣いはもらっているが。

 

基本的に何を買ったのかは、全て申告している。

 

食事を終えた後、軽くストレッチをしておく。ケルベロスがいくつか説明をしてくれる。

 

「寝る前にストレッチやホットミルクで安眠というのはよく聞く話だが、それが効果を示すのは健康体だけだ。 体を壊した場合は、何の意味もない。 それは覚えておくようにな」

 

「うん。 おとうさんはどうにか大丈夫そう。 おかあさんだね問題は」

 

「ああ……」

 

おかあさんもそろそろ年齢が年齢だ。

 

おとうさんより大分年下とは言っても、やはりあんな働き方では体をどうしても壊してしまうのだ。

 

そう考えると、やっぱりなんとかするべきなのだと思う。

 

しかも警察みたいな仕事は、どうしても夜間でも人を常駐させなければならないのである。

 

なかなか、改革は難しいだろう。

 

戸締まりを確認。

 

明日の学校の準備を終えると、燐火も寝る。

 

部屋はたくさんある。

 

そのうちの一つを、燐火はもらった。いわゆる子供部屋という奴だ。きちんと中に入るときは、おとうさんもおかあさんもノックする。

 

「今日は悪い見本を見ることが出来て有意義だったな。 世界中どこでも聖域を作ると、人間はああやって堕落する」

 

「うん。 それが理解できたのは有意義だった。 ギリシャの神々が信仰されていたときもああいうのはあったんだね」

 

「ああ」

 

「……」

 

そうか。

 

だったら、それ以上は聞かない方が良いだろう。

 

寝ることにする。

 

ただのポンでギャグ漫画のキャラクターみたいだと思っていたカトリイヌさんが。

 

思っているよりもずっと苦労していることを今日は知った。

 

それだけで有意義だ。

 

金木の一家とかあの孤児院のみたいなカス野郎どもはどうでもいい。過去に何があろうと知ったことか。

 

だが、カトリイヌさんみたいな人は、結構色々なものを背負っている。

 

そういうことがわかったことでも、大いに意味があると燐火は感じていた。

 

 

 

精神病院。隔離病棟の一角に、神父の一人が訪れていた。

 

護衛の警官もついているが、いずれもが一神教系魔祓いの息がかかっている存在である。

 

隔離病棟の奥には。鉄格子がはめられていて。

 

その中に、うつろな目の痩せこけた青年がいた。

 

金木高野。

 

金木家の子の一人。

 

この間、此奴の兄弟が少年院から脱走したあげく、熊に食われて死んだ。此奴の妹は、更に奥の隔離病棟で、今も暴れ狂っているそうだ。

 

此奴は最初の方こそ少年院にいたが、精神の病気を主張し始め。

 

明らかに異常行動を開始したので、こちらに移された。

 

精神病院なら脱出する機会があるかもしれない。

 

そうとでも考えたのだろうか。

 

だが、甘い。

 

こういう犯罪者を隔離するための隔離病棟は、危険な患者が入れられることもあって、基本的には刑務所以上に監視が厳重だ。

 

労働がない分、刑務所より厳しいかもしれない。

 

娯楽なんてものはない。

 

それで頭がおかしいふりをしていた此奴は、本当におかしくなった。

 

今では騒ぐこともなく、恨めしそうに周囲を見るばかり。

 

まあ、味が薄いここの病院食に、娯楽皆無で牢屋の中。それではおかしくなるのも致し方ないだろう。

 

完全に自業自得ではあるが。

 

「それで神父様、これをどうするので」

 

「ああ、こうします。 政府の許可を得ているので大丈夫ですよ。 どうせ更生の見込みもありませんからね」

 

神父は燐火とかいうガキに散々顔に泥を塗られ。

 

復讐するつもりだった。

 

だからここに来た。

 

取り出したのは、三十年前に、たちが悪い悪魔を封じ込んだ壺。魔祓い三人が犠牲になった、危険な奴だ。

 

その壺に、なんとか苦労して捕獲したダイモーンを詰め込む。

 

倒すのは無理でも、どうにか苦労して追い込んで、捕まえることには成功したのである。

 

更にいえば。

 

一神教での悪魔を指す言葉の一つデーモンは、ダイモーンが語源になっている。

 

つまりそれは、デーモンとダイモーンは神話的に相性が近いと言うこと。

 

それもあって、ダイモーンを倒すことは出来なくても、なんとか捕獲することは出来たのだ。

 

魔祓いは出来ていないし。

 

なんら解決はしていないのだが。

 

そして、壺を金木のカスに向ける。それで、ダイモーンと融合した悪魔が、歓喜の声を上げてとりついていた。

 

悲鳴を上げた金木の馬鹿息子が、見る間に変色していく。

 

物理干渉力を持つに至った悪魔だ。

 

それにダイモーンも混ぜた。

 

のたうち回っている金木の馬鹿息子は、関節などの可動域を無視して動き回っていた。牢屋の中を、壁も天井も、蜘蛛のように逆に曲がった関節で走り回るのを見て。警官が絶句。

 

やがて、ごきりと首が折れた。

 

口から膨大な血を流し始めるそれは、それでもまだ動いていた。

 

「捕獲しなさい」

 

「承知」

 

連れてきたドミニオンが四体がかりで悪魔憑きを捕獲する。

 

このドミニオンは、魔祓いの本部から借りてきたドミニオンであり。神父の指示をなんでも聞く。

 

一神教の暗部では、天使ですら手駒にする研究があり。

 

それでこうやって走狗と化した天使が存在するのだ。

 

流石に上級天使は無理だと聞くが。

 

ドミニオンであれば、十数体が手駒として活用されている。

 

ただし一体辺りの貸し出しに億円単位の金を払わなければならないが。

 

それでも、あれだけこけにされた仕返しを出来るのなら安いものだし。

 

色々と悪辣な商売で稼いできた神父には、そのくらいは安かった。

 

捕獲した悪魔憑きの死体を袋に詰めて、外に運び出す。

 

退院したと病院では手続きをさせておく。

 

ただ、これは処理だ。この国も、具体的にどう処理したかは問わない。ただ、あの燐火とかいうクソ生意気なガキを破滅させられればそれでいい。

 

袋に詰め込んだ悪魔憑きに、ささやく。

 

おまえを破滅させた平坂燐火は、今は温かい布団でぬくぬくと寝ている。

 

それどころか、優しい両親とともに暮らしている。

 

何も悪いことなどしていないおまえが、こんな理不尽な目に遭っているのに、許しがたいだろう。

 

そうささやくと、袋の中から殺す、犯すと帰ってきた。

 

まあそうだろうな。

 

この手の輩は、神父と同レベルの存在だ。だから、考えていることはよくわかる。

 

適当な地点で、袋から悪魔憑きを出してやる。

 

その姿は、もはや人間ではなく。胴体も手足も頭も滅茶苦茶になった肉塊であり。燐火はあちらにいると教えてやると、奇声を上げながら走り去っていった。

 

くつくつと神父は笑った。

 

いずれ一神教系の魔祓いの敵となるのなら。

 

こうやって先に始末しておくだけ。ただ、それだけのことだ。その過程でどれだけ犠牲が出ようと知ったことではない。

 

このおぞましい思想は。

 

一神教徒にとっては、ある意味普遍的。

 

一神教以外の思想は全て邪教。唯一絶対の神以外は全部悪魔。

 

一神教徒の中には、邪教の徒は殺してやるのが慈悲だと考えて、中東で南米で大量虐殺までやった奴らがいる。

 

それと、この神父は同じ穴の狢であった。







金木の馬鹿息子その2、再利用される。

まあどうせ更生の余地もありませんが。



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