魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない 作:dwwyakata@2024
ヘラクレスが休憩していると、式神が飛んでくる。
この国の魔祓いの一つである陰陽師が飛ばしてきたものだ。式神は文字通りの使い走りだが。それでも便利である。
似たようなものは西洋に使い魔として存在している。
ヘラクレスも、この国の神にも民にも迷惑を掛けるつもりはない。
連携は最初からしている。
今後のためにも、更に連携をしておくべきだと考えていた。
「オーディンがこの国にちょっかいを掛けようとしている、だと」
「ほぼ間違いない。 スレイプニルが威力偵察に出てきたことで、それは確定とみて良いだろう」
「厄介だな。 俺の親父も大概狸だが、オーディンは邪悪に片足を突っ込んでいる輩だ」
「その通りだが、この国では名前の格好良さもあって、その邪悪さが知られていない」
ヘラクレスはうなる。
そして、いくつか対策について話して、式神を見送った。
燐火が育っている。
ケルベロスの話によると、もう少し強いダイモーンを回しても大丈夫だそうだ。更に言うと、もっと早いペースでダイモーンを始末させても良いだろう、ということである。
いずれヘラクレスと肩を並べて魔祓いが出来るかもしれない。
そうなれば心強いが。
まあ、あの子はまだ幼い。
無理をさせるわけにはいかないというのは、ケルベロスと同意見だ。
それにしても、である。
ヘラクレスも、一神教は好きではない。
ケルベロスは地獄の番犬にされて頭にきているようだが、ヘラクレス達は矮小化されて、物語としてその「野蛮さ」「滑稽さ」を楽しむものとしておとしめられた。
だがヘラクレスはそれでも有名すぎて、おとしめることが出来なかった。
だから今も活躍できている。
しかしながら、一神教の腐敗はどうか。
既に内偵が進んではいるようだが、不愉快という理由だけで、たちが悪いデーモンとダイモーンの融合体を送りつけるなんて。
どれだけ肥大化したプライドを抱えて、他人の命をなんとも思っていないのか。
ヘラクレスも荒くれだ。
たくさん殺してきた。
だから、命については価値観が現在の人間とは違っている。
だが、それでも正義と悪の区別くらいはつくつもりだ。
一神教にしても、聖職はどうしても聖域を作り、其処に巨悪を抱え込んでしまう。それだけは今後、あらゆる分野で人間がどうにかしなければならない。
聖域がある限り、邪悪が其処に住み着く。
それは宗教だろうとシステムだろうと、人間という生物が抱えてしまった欠陥だ。ヘラクレスは、そう思っていた。
立ち上がる。
強力なカコダイモーンの気配だ。
ギリシャ神話でも下級の神や妖精は存在しているのだが、それらは流石にこの国では活動できない。
ケルベロスが冥界の番犬という特性を生かしてダイモーンを集める。
それのうち厄介なのをヘラクレスが始末する。
これでしばらくはやっていくしかない。
跳躍。
山をいくつも飛び越えて。
降り立った先には、うごめきながら、次の獲物を狙っているダイモーンがいた。拳をならすと、ヘラクレスはふっと笑う。
ダイモーンが気づく。
だが気づいたときには、ヘラクレスの拳がダイモーンを貫き、巨体を一瞬にして粉砕していた。
まあ、この程度の相手なら問題にもならない。
次。
ダイモーン。特に悪辣化しているカコダイモーンは気配が大きくはなるが、それでも獲物を狙っている時以外は隠れている者もいる。
強い者ほどそれが巧みになる。
だからこの国の魔祓いとは連携しなければならない。
神々ともだ。
走りながら、次の気配の元へ向かう。
老婆が二人、ひたすら誰かの悪口を言っていた。
醜い姿だが。
その様子をうかがっている、体全部が口だけになったカコダイモーンが、悪運をひたすら送り込んでいる。
あの老婆は、どっちも資産家だ。
どうやら詐欺まがいのことをして、それで稼いでいるらしい。
こういうカモを見つけて破滅させることで、カコダイモーンは更に凶悪化する。だが、見つけた以上は滅ぼすだけだ。
口に手を突っ込む。
カコダイモーンが気づいたときには、ヘラクレスがその巨大な口を、左右に引き裂き滅ぼしていた。
悪運が消えた。
いきなり老婆の家が爆発した。
恐らくはガス爆発か何かだろう。
慌てて転ぶ老婆。
此奴がやっていたことはカコダイモーンを倒したことでわかった。それこそ人をなんとも思わぬ鬼畜外道だ。
だから、せいぜいひどい目にあうといい。
詐欺で蓄えた金は、あれで全て燃えてしまうだろう。そして警察も入る。この老婆はおしまいだ。
もう一人の方が、慌てた様子で自宅に逃げ帰るが。
此奴も同じ穴の狢である。
悪運が切れた以上、どのような末路を迎えても当然だ。
自業自得。
世の中、自業自得はなかなかない。
だが、ある意味それが執行されるのだ。ヘラクレスが、こいつらを助ける理由はないし。それがむしろ正しいあり方だろう。
次へ行く。
また式神が来た。
どうやら、北欧系の魔が活動を開始しているらしい。
ちょっと厄介かもしれない。
人間が魔を組み合わせて、一種の兵器として使うことは昔からよくあった。
神々はそれをやらない。
うまくいかないのだ。
しかしながら、偶然に両者が連携することはある。
ケルベロスから聞いたデーモンとダイモーンの混成が極めて厄介だったように。
もしもダイモーンと北欧系の魔……巨人などが連携した場合、面倒なことになるかもしれなかった。
今できることは。少しでも厄介なカコダイモーンを潰すことだけ。
ヘラクレスは、夜の街を駆ける。
文字通り、飛ぶようにして。
(続)
ヘラクレスは極めて強力な英雄の上、人間に好意的なので、当然魔祓い達と連携しています。
それでも迷子は見つからない。
陰謀が、既に動き出しているのです。
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