魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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燐火は敬語を使っていますが、これは心の壁ですね。

基本的にそうやって喋らないと周囲から例外なく迫害を受けた結果身についた習慣です。

ケルベロスには心を許しているので、普通に喋っていますが。

今後時間を掛けて、この敬語で喋る習慣を克服していく事になります。





2、壊れた心を拾い集めて

勉強はできるようになってきたし。

 

運動もできるようになってきた。

 

それどころか、勉強はむしろサボっているような生徒よりもうできる。それを、平坂燐火の隣の席にいる柊涼子は冷静に見ていた。

 

頑張り屋さんというよりも。

 

まったく笑わないので、機械みたいだ。

 

最初、いじめてやろうと目をつけていた男子もいたのだけれど。

 

ガラス玉みたいな目で見られて、それで黙り込んで、以降は基本的に話しかけることはしていない。

 

それになんだか異様な気配もあるのだ。

 

あいつ怖いから、近寄らないようにしよう。

 

そう男子が言っているのを何回か聞いた。

 

まあ、どうでもいい。

 

涼子はどちらかというと背が高い方で、発育は悪くない。この年くらいまでは、女子の方が男子より運動神経がよかったりするが、涼子もその一人だ。

 

たまに燐火とは話をする。

 

燐火はびっくりするほど忘れ物をしないので、たまに消しゴムとか貸してもらったりすることもある。

 

それはそれとして、目に光がないのはずっと代わっていないが。

 

ただ、無表情なのを除くと、随分とかわいい子である。

 

それについては、同性である涼子も、何かの訳ありだろうとは思っていたが。

 

終礼が終わったので、帰る。

 

燐火に声をかける。

 

たまには一緒に帰らないか。

 

そう提案すると、頷かれた。

 

昔は集団で登下校とかしていたらしいが、生徒の数が減った今では、それもなくなってきている。

 

生徒は適当に、仲良し同士で帰るのが普通だ。

 

まあ通学路にはボランティアのおじさんおばさんがいるのだが。

 

それはそれである。

 

一緒に歩いていて、燐火の体に所々あった傷がもうなくなっているのに気づく。

 

燐火は訳ありだ。

 

それは知っていた。

 

先生が警察と話していたし。何かあったらすぐに言うようにとも言っていた。

 

それに一切合切子供らしくない。

 

他の子が、休み時間には親にもらったスマホでゲームして遊んでいたりするのに、一切興味を見せない。

 

騒ぐこともないし。

 

異常に落ち着き払っている。

 

涼子も色々と訳ありではあるのだけれども。それでも燐火がどんな悲惨な目に遭ってきたのかは。

 

想像するのも恐ろしいと考えていた。

 

それにだ。

 

「ええと、燐火ちゃん」

 

「なんですか」

 

「ええと、同級生なんだし、敬語やめない?」

 

「ごめんなさい。 癖なので、簡単には崩せません」

 

そうか。

 

これも、とても近寄りがたい理由の一つだ。

 

燐火は丁寧に敬語でしゃべるのだが。

 

それもまた違和感だった。

 

敬語なんて、大人でも使いこなせている人は滅多にいないと涼子は知っている。世界でも屈指の難易度を誇る日本語の敬語は、使っている日本人ですら難しくて辟易するほどのものだ。

 

勿論たまに燐火も敬語を間違っているらしいのだけれども。

 

涼子にはそれはわからない。

 

「うちの学校はいじめとかは先生が見ていて、しっかり指導するようになっているから大丈夫だけれど。 進学すると、男子とか今よりずっと乱暴になるよ。 燐火ちゃん今悪い意味で目立ってるから、少しは自然にした方が良いと思う」

 

「ごめんなさい。 少しずつ慣れるようにしています」

 

「……」

 

ちょっと反応に困る。

 

それは早い話が、もともといた場所がろくでもないと、自白しているようなものだ。

 

涼子はどちらかというと、正義感は強い方らしい。

 

ずるを平気でする大人は大嫌いだし。

 

虚言癖のある人間も大嫌いだ。

 

ただ、燐火の両親がまともそうな人だというのも知っているし。

 

少しずつ色々できるようになってきていることも知っている。

 

だから、今の両親に問題があるのではないこともわかる。

 

問題があるとすれば、転校してきた前の学校だろう。

 

反吐が出る話だが、涼子の周囲にも、いじめはされる方が悪いと抜かすカスはいる。涼子は多少空手の心得があるので、そう抜かしていた男子生徒の腕をへし折って、力をうまく振るえないようにしたことがある。

 

それ以来その男子生徒はすっかり涼子におびえきっている。

 

あれは放置していれば、いずれろくでもない奴になって、周囲に災厄をまき散らしたことは確定している。

 

カス野郎の腕を折ったことは親に随分怒られたけれど。

 

涼子はそれで悪いことをしたとは思っていない。

 

ただ、常に自分が正しいとも思っていない。

 

正しくあろうとは思っているが。

 

「うちはこちらなので行きます」

 

「あ、うん。 明日も少し話そうよ」

 

「努力します」

 

やっぱり壁があるな。

 

そう涼子は思った。

 

今いる学校は、ランドセルは使っていない。昔はどこの女子小学生も使っていたらしいけれど。

 

今では使っていない学校もある。

 

家に戻る。

 

涼子の家は片親だ。

 

母親が浮気して出て行った。

 

それがばれたとき、母親は「真実の愛」がどうのこうのとか抜かしていたが。涼子ですら、相手がホストであり、金のために母親に甘い言葉をかけていたのはわかっていた。

 

あんたなんか親じゃない。

 

そう言い切ったとき、豹変した母親は涼子に花瓶を投げつけてきて、何かわめいていたけれど。

 

それが原因で余罪も追加されて、今では執行猶予中だ。

 

涼子の父は真面目に働いていて、家族のためにお金だって稼いでいた。そのお金を根こそぎホストにつぎ込んでいたカス。

 

そういうのがいるのを知っているから。

 

涼子は周りみたいに、ずるを平気でするような奴にはなれなかったし。

 

子供を産めば精神的に大人になるとか。

 

そういう寝言も一切信じてはいなかった。

 

家で、黙々と勉強をする。

 

さっさと自立して、最終的には弁護士か何かになりたい。

 

それには今のままでは駄目だ。

 

ただ、忘れてはならないのは。

 

あの母親のようになってはいけないということだ。

 

昔正義感はそれほど強い方ではなかった。

 

それでも、フェミニズムだとかいうのにはまって、父親の悪口ばかり周囲の「ママ友」に言いふらしていた姿は知っているし。

 

それを涼子に強要しようとしていたこともわかっている。

 

そして母親が慰謝料つきで放り出されたとき。

 

さっさとホストは逃げ出して。

 

それでありながら、周囲のママ友とやらは、母親の擁護ばかりをしていたのも忘れていない。

 

だから正義感が育った。

 

あんな大人にならないためにも。

 

涼子は身を焼くような正義感を持ち続けていなければならない。

 

デスクに向かうと、宿題は全て片付けてしまう。

 

実のところ、小六の勉強までは全て理解している。

 

中学受験をしてはどうかと言われたことがあるが、興味はない。

 

父は放任主義で、基本的に涼子に何か言うつもりはないようだ。今もしっかり稼いでいるし。

 

屑が家からいなくなったことで、むしろ生活は豊かだ。

 

黙々と勉強をする。

 

今の時点では、涼子も歪んでいるのかもしれない。

 

だけれども、「普通の人間」が如何に醜いかを知っているから。別に歪んでいても、どうでもよかった。

 

 

 

燐火は理科の勉強をしていて、ちょっと困っていた。

 

ケルベロスはだんまり。

 

わからないことについては教えてくれない。

 

それに、考えればできることについても、余計な口出しをするつもりはないらしい。

 

それでいいのだと燐火はわかっているけれど。

 

それでも、ちょっと困っていた。

 

おとうさんが防音室から出てきて、ぐったりした様子でソファにいる。

 

おとうさんの配信は見た。

 

十五も若い年の設定のキャラクターのがわをかぶって配信をしているのだけれども。ずっとリアクションをしていて、これは疲れるなというのがわかった。

 

のど飴も消費が激しい。

 

ちなみに似たようなVtuberが所属する会社にいるらしいのだけれども。

 

もっと稼いでいる人も珍しくないらしい。

 

昔、テレビタレントが稼いでいたくらいは稼いでいる人もいるそうだ。

 

昔と言われても。

 

燐火にはわからない話だが。

 

「燐火、苦労しているかい?」

 

「どうにか頑張ってみます」

 

「そうか」

 

ちょっと寂しそうだ。

 

理科の教科書を読み直して、ドリルをもう一度見る。やっぱりどうしても難しくてわかりにくい。

 

何度か苦労しながら空欄を埋めていくと、おとうさんが採点してくれる。

 

結構間違っている。

 

ちょっとため息が出ていた。

 

「うーむ、暗記は苦手かな」

 

「覚えることですか? 確かにちょっと苦手かもしれません」

 

「そうだね。 ともかく、理科も覚えて損がない分野だから、きちんと勉強しておこう。 ちょっと教科書を見せてごらん」

 

「はい」

 

そのまま教科書を出すと、さっと目を通すおとうさん。

 

おとうさんはVtuberとしては馬鹿なキャラクターをやっているのだが、実際にはとても博識だ。

 

ただそれはファンにはばれているらしくて。

 

ファンのコミュニティを見ると、明らかにファッション馬鹿だと言われているのがよくわかる。

 

ファッション馬鹿というのはよくわからないが。

 

どうもVtuberとしてのキャラクターとして、それで売っているらしい。

 

実際には厳格で真面目な人が、芸能人としてはいい加減な性格を装っているようなこともあったらしいから。

 

それに近いのだろう

 

珍しくおかあさんが早めに帰ってきた。

 

それで、疲れ切っている様子なので、教科書のこことここをよく読みなさいと付箋を貼り付けた後、夕食を作りに行った。

 

色々大変だ。

 

おとうさんだって、徹夜で配信とか普通にしているのに。

 

ただ、あの燐火を裸にして写真を撮ったり、触ったりしていた時の孤児院の先生みたいな、明らかに邪悪な目で見ていることはない。

 

今はそれがわかるから、ある程度安心はできていた。

 

「覚えるの苦手」

 

「ああ、どうもそうらしいな。 だが、俺が知る限り、理科の知識をきちんと身につけておくのは大事だ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。 今は世の中に、嘘の情報がたくさんあふれている。 これから理科はもっと難しい内容に触れていくが、それらをきちんと覚えていれば、だまされないような情報も多い。 それにそういう情報は、学校の勉強なんて全部忘れているような人間を狙い撃ちにしている。 燐火はそういう悪意に勝てるように、勉強をしておくといい」

 

それは、わかる。

 

確かにやる意味はある。

 

黙々と、勉強に戻る。

 

世の中には悪い人がたくさんたくさんいる。いや、悪い人の方が多いくらいだろう。

 

今の学校だって、先生がしっかりしているから。いじめがあったら、すぐに摘発されて。相応のペナルティがある。

 

それでもいじめがしたくてうずうずしている奴はいくらでもいる。

 

人間はそんな程度の生き物なのだと、燐火は少しずつわかり始めてきていた。

 

ただ、おとうさんとおかあさんみたいに、それにケルベロスみたいに。

 

ましな人も少しはいると信じたい。

 

「あの涼子という娘な」

 

「隣の席の。 興味があるみたいだけれど」

 

「あれとは仲良くなっておけ。 あれはスペックからして数年分は他の子供の先を行っている。 それに、見たところ境遇もあまりよくない。 ある程度、話は合うはずだ」

 

「わかった」

 

ともかく、今は理科を覚えるか。

 

おかあさんを寝室に連れていくおとうさん。

 

すぐ戻ってきた。

 

限界だし、すぐに眠らせたというわけだ。

 

少し聞いたのだけれど、今とても難しい事件が発生しているらしくて、警察はとにかく大変らしい。

 

理科の教科書を覚えていると、おとうさんは一瞥だけして、それで防音室に戻っていった。

 

まだまだやることがあるらしい。

 

明日の配信の準備とか。

 

自分が所属している会社への書類の提出。

 

それになかまとの打ち合わせ。

 

そういうのもあるから、あまり休む時間もない。

 

ただ、二人とも、きちんと燐火には親として接してくれている。

 

涼子も言っていたけれど、同級生に敬語を使うのはやめなさいと言っていたっけ。

 

ただ、燐火はまだまっとうな言葉を覚えるところからだ。

 

必要な勉強はなんとかできるようになってきたけれど。靴のひもを結ぶとか、そういうのも少しずつ順番に覚えているところだ。

 

まだまだなのである。

 

だから、一度に全部はできない。

 

ましてや、これは殴られながら仕込まれたことだ。

 

簡単には抜けない。

 

今、周りが平和になって、少しずつわかってきているけれど。あの環境は明らかにおかしかった。

 

今は、違う。

 

だから、環境を崩すのは、勇気がいるのだ。

 

仕事が終わったおとうさんが、おかしを出してくる。

 

それにケルベロスが反応したのがわかった。

 

ケルベロスはとてもあまいものが好きだ。

 

特に蜂蜜には目がないらしい。

 

蜂蜜入りのクッキーが好きだというと。おとうさんはいつもは出せないけれどと言ったけれど。

 

それでも時々、いいのを買ってきて食べさせてくれる。

 

燐火は実のところ甘党ではなく、どちらかというと辛党なのだけれど。

 

ケルベロスにはお世話になっているので。

 

甘いクッキーを食べるのは、お礼も兼ねていた。

 

「ありがとうございます、おとうさん」

 

「ああ、いいんだよ。 それにしても、チョコチップとかでなくていいのかい?」

 

「これがいいです」

 

「わかった、また買ってくるよ」

 

目を細めてこちらを見ているおとうさんは、くたびれ始めている。

 

体もしまりがなくなってきているし、髪の毛だって薄くなってきている。

 

それでも、家のために働いている。

 

おかあさんとは十歳くらい違うらしいけれど。

 

おかあさんもおとうさんのことは誰よりも信頼している。

 

いい夫婦なのだと思う。

 

だから、燐火は其処に水を差したいとは思わない。

 

おかしを食べ終えると、もう少し勉強だ。ケルベロスがご機嫌なのがわかる。それに、である。

 

ケルベロスが教えてくれた。

 

「甘いものは必要な栄養の一つでな。 特に考えるのには大事な役割を果たすのだ」

 

「そうなんだね」

 

「ああ。 食べすぎると毒にはなるが、それでもきちんと食べておかないと、大事なときに頭が働かないぞ」

 

「うん」

 

ただ、甘いものには必ずしも最初からわかりやすく甘いものだけではなく。

 

例えばご飯とかも甘いものに分類されるという。

 

口の中でずっとかんでいると甘くなっているから、試してみろと言われて。それで確かに甘くなるので驚いた。

 

そういうものなんだと知る。

 

それが理科になるのだと言われて、少し興味が出た。

 

興味を持つと勉強が進むのは事実だ。

 

ケルベロスも満足そうだ。

 

この様子だと、どうやったら燐火に興味を持たせられるのか、考えていたのかもしれない。

 

いずれにしても、理科の勉強は、それから進むようになっていった。

 

 

 

鏡の前に立つ。

 

顔にあったいくつかの傷は、もうきれいになくなっていた。

 

ケルベロスがいうままに、口の横に指をやって、つり上げてみる。笑顔を少しずつ作れるようにするためだ。

 

表情筋が死んでいる。

 

そんなことを言われた。

 

まあ、笑おうが泣こうが殴られていたからだろうとケルベロスはいう。

 

記憶にはないけれど。

 

燐火の血縁上の両親はそういうことをしていた可能性が高い。

 

虐待を受けた乳幼児は泣くことをしなくなる。

 

それは決してよいことではない。

 

そうケルベロスは言うけれど、覚えていないことだから、なんともいえない。

 

「少しで良いから笑えるようにならないとな。 面白いと思えることに、もう少し興味をさいてみると良いだろう」

 

「面白いがわからない」

 

「ああ、そうだったな。 今、興味を持ったことができるようになってきているだろう。 その延長線上だ。 お前の父、ええとVtuberとしてはなんだったか」

 

「火柱烈火」

 

そうそうと言いながらケルベロスは続ける。

 

おとうさんの配信に興味を持っているなら、どうして面白いのかを考えてみるといいと。

 

理科の勉強も、同学年においついた。

 

箸の使い方とか、少しずつできるようになってきている。

 

だが、次は五年生だ。

 

五年生のクラスでも、周りが理解がある人間かはわからない。

 

それもあって、ある程度周囲になじむ方法を覚えなければならないし。

 

自衛の手段もあった方が良い、というのだ。

 

周囲になじむ方法と言っても、前の学校みたいな場所になじむ必要はない。ただ、なじめるなら、なじんだ方がいい場所だってある。

 

そう言われると、そうかもしれない。

 

ずっと周囲ににらみを利かせてくれていた涼子には随分助けられた。

 

結局敬語は崩せなかったが。

 

それは、これから少しずつ改善していくしかない。

 

ケルベロスには普通にしゃべれているのだ。

 

親しい相手には、敬語でしゃべれるようになっていくのが今後の課題だとケルベロスは言う。

 

とにかく表情の作り方を練習した後、いくつか他にもやってみる。

 

人間は基本的に、相手が気に入らなければどんな屁理屈でもつけて排除にかかるとケルベロスは言う。

 

勿論相手に媚態を尽くす必要はない。

 

要は相手に侮られないことだという。

 

何かしら弱点や、他と違うものがあれば侮ってくる。

 

そういう輩に侮られないためには、力を身につけた方が良い。

 

そう言われた。

 

「一番良いのは母親に稽古をつけてもらうことだな。 俺が見たところ、あれはかなりできるぞ」

 

「自分と体格があまり代わらない男の人を簡単に制圧していたっておとうさんがいっていたよ」

 

「そうだろうな。 パンクラチオンでもやらせたら面白い試合をするかもしれん」

 

昔ギリシャで行われていた激しい格闘技らしい。

 

咳払いすると、ケルベロスはいくつか教えてくれる。

 

それから、少しずつ表情を作れるようにすること。

 

自分を自分で守れるようにすること。

 

少しずつできることを増やしていく。

 

体力がついてきたことで、体の動かし方は少しずつわかってきた。それを、ケルベロスの指導で少しずつやれるようにしていく。

 

体も柔らかくする。

 

体は普通にしていると、あまり柔らかくならないらしい。

 

人間の体はただでさえ戦闘向きではないらしくて、意図的に鍛錬しないとまともに動かせるようにはならないとか。

 

それもあって燐火は黙々と言われたとおりに体を動かす。

 

遊んでいる暇なんてない。

 

燐火はとても周りから遅れている。

 

一年ちょっとで取り戻しているのは、むしろ奇跡に近いほどだと言われているくらいである。

 

だが、それでもまだ足りないのだ。

 

燐火の心にはひびが入っている。

 

そうケルベロスには言われた。

 

だが、それは少しずつ修繕していくことができるらしい。

 

最終的には笑えるようになろう。

 

そう、言われた。







元々燐火は真面目なこともあり、ケルベロスや新しい両親のおかげでどんどん周囲に追いついていけています。

本来は眠っていたスペックが、今になって目を覚ましている。

そういうことですね。


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