魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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燐火に悪魔憑き化した金木の馬鹿息子をけしかけた屑神父の事件の余波。

そしてさらなる異変の発生。

既に非日常に両足突っ込んでいる燐火ですが。

意外にも上手に適応できています。

子供はたくましいですね。





大地の神だった者
序、異変


どうやら、金木の馬鹿息子を悪魔憑きにさせて、燐火にけしかけた神父が判明したらしい。

 

国でどうしようもない更生しようがない犯罪者を処理してしまうことはあるらしいのだが。

 

その仕組みを悪用して、燐火にけしかけてきた。

 

それも、ただ背後関係もなく。

 

教会で不遜な態度をとられて恥を掻かされたから。

 

それだけの理由であったらしい。

 

いわゆるノブリスオブリージュというのは燐火も聞いたことがある。人々に教えを説く筈の聖職もそれを持っていてしかるべき存在である筈だ。

 

だがカトリイヌさんが情けないと言っていたのも今ならわかる。

 

むしろ社会の上層にいる人間は、そんなの持っていないのが普通。

 

貴族のプライドがどうのこうのといって、結局不正と蓄財ばかりに励む。

 

神の救いがどうの民を導くがどうのと言いながら、裏では不正と蓄財にばかり励む。

 

一緒だ。

 

それはカトリイヌさんが、あのような有様を見せておきたいと考えるのも、納得がいった。

 

とりあえず、人間として燐火をおとしめようとしていた、或いは殺そうとしていた大人はこれでいなくなった。

 

おかあさんも退職前に色々警察で調べてくれていて。

 

今まで燐火がたたきのめした連中に何かしらの背後でのつながりがないか、とか。

 

金木家の残党が何かしていないか、とか。

 

そういうのも調べ上げ終えてくれていた。

 

今は引き継ぎもほとんど終わっているらしく、今までにないほど早く家に帰ってくるようになった。

 

おかあさんのおなかも少しずつ目立ち始めている。

 

燐火は別に子供をかわいいとは思えない。

 

そういう意味では、母親になるべき人間ではないのかもしれない。

 

ただ、おかあさんの子供だったら、それは大事にしなければならないと思う。

 

燐火の真似をさせるつもりはないし。

 

こうなってほしいとも思わない。

 

ただ、世話になっている分の恩くらいは返したいのだ。

 

こういうことを考えているから。

 

子供らしくないと言われるのだろうが。

 

神父の末路を聞いた後。

 

カトリイヌさんと会う。

 

燐火の背が随分伸びたと、カトリイヌさんは驚いていた。まあ、伸び盛りだ。中学になれば、もっと伸びるだろう。

 

燐火は小柄な方だったが、今では背丈についても女子の中ではかなり高い方になってきている。

 

今まで抑圧されていた体が。

 

今までの成長を取り戻すかのようだ。

 

或いは最初からまともな親のところにいたら。

 

今頃、もっと体格的には優れていたのかもしれなかった。

 

カトリイヌさんは護衛のうち、今回は若い方だけを連れてきている。おしゃれなカフェで話をしていると、咳払いされる。

 

大事な話、ということだ。

 

「少し大事な話になりますわ。 一応、盗聴器などは調べてありますけれど」

 

「わかりました。 それで何かあったんですね」

 

「……燐火さんを貶めようとした神父は死にました」

 

「はい」

 

それについては聞いている。

 

ただ、妙だとは思っていた。

 

死ぬほどの理由があったのか。

 

話を聞く限り、そもそも日本人を人間と思っているかすら怪しいような輩だったようだし。

 

「血筋が優れていない」子供の命なんか、それこそゴミとも思っていないような輩であったようだ。

 

それが人を殺した程度で自殺なんかするか。

 

一応、対外的には自殺と言うことにされているようだ。

 

まあ年ばっかり無駄にとって、最低限のエクソシストとしての能力しかないようだったから。

 

カトリイヌさん達一神教の魔祓いとしても、厄介払いが出来たのではないかと思っていたが。

 

確かに不審な点が多すぎる。

 

「実は、死に様があまりにも凄まじかったのです。 自殺などではありませんでしてよ」

 

「一体何があったんですか」

 

「破裂して飛び散りましたわ。 骨も肉も。 護送車はまるで挽肉をぶちまけたような有様だったとか」

 

「……」

 

それは、凄まじいな。

 

燐火もそもそもケルベロスとあったときは、死の臭いをこれ以上もないほど間近で嗅いだ。

 

それ以降も、色々と修羅場をくぐってきている。

 

死の臭いに近いものは、時々足を運ぶ充子の道場で、師範と相対した時にも嗅ぐことがある。

 

実力差がありすぎるのと。

 

凄まじい剣気を浴びて、身が危険を訴えているのだと思う。

 

いずれにしても、燐火はそんなことがあったのなら、確かに公開は出来ないなとは思った。

 

「燐火を襲った悪魔憑きは、それこそ人の原型をとどめていませんでした。 そういうことはよくあるんですか?」

 

「いえ、確かに強力な悪魔が人を異形に変えてしまうようなことはありますけれども、流石にこれほどの事は滅多にありませんわ。 エクソシストも何もしていなかった訳ではなく、名が知れているような強大な悪魔はあらかた現代までに祓ってしまいましたので」

 

「……だとすると、それらとは別口と」

 

「天罰を受けたのだという話もありますけれども。 今まで側に天使達がいて、悪行を見ていたのに、今更ですわね」

 

その通りだ。

 

ケルベロスがうっとうしそうに言う。

 

「そこのドミニオン。 おまえは天罰という意見についてどう思う」

 

「私はそうは思わないな。 神の御心であれば、もっと違う形で、しかるべき罰が下された筈だ。 あれはどちらかというと……」

 

「どちらかというと?」

 

「捕食されたように見えたな」

 

なるほどね。

 

捕食か。

 

だとすると、何かしらの別の神格とかが食ったのだろうか。いずれにしても、爆弾で自爆とかそういうのではないのだろう。

 

日本の警察は捜査能力が極めて高く、科学捜査に関しては世界でもトップクラスだと聞いている。

 

爆弾なんか使ったのなら一発でわかるだろう。

 

それが通常の警察ではなく、魔祓い関係でも同じ筈である。

 

「何かしら仮説はありますか」

 

「いえ、全く。 ガルドヴィ神父……貴方を襲わせた神父ですが、彼が持ち出していた対魔兵器は事前に回収済みです。 ましてや如何に堕落していたとしても、まさか黒魔術の類に手を出していたとも思えません。 念のためにカトリックから腕利きを派遣して調べてもらいましたのですけれど、その痕跡もなくて」

 

「いずれにしてもそんなことをやるようなカスだ。 どうせ余罪も山のようにあったのであろう」

 

「ええ。 その辺りの後始末もあって、直接謝罪に来るのが遅れましたわ」

 

頭を下げられる。

 

燐火としては、カトリイヌさんに恨みはない。

 

それに、実態を見てほしかったというのは事実だったのだろう。

 

それに関しては、燐火も有意義だったと感じているし。特に不満はない。

 

もしあるとすれば、だ。

 

「今、燐火の周りでどうも北欧系の悪神が動いている節があります」

 

「北欧系ですの?」

 

「はい。 もしかしたら、それに関係していないかなと思って」

 

「北欧……」

 

考え込むカトリイヌさん。

 

無口な若い護衛が、耳打ちする。

 

それで、頷いていた。

 

「北欧神話は、荒々しい人々の作り出した野性的な神話ですけれど、既に信仰されていたのは過去の話。 それもあって、ギリシャ神話と同じく、「物語」と化しているのが実情ですわ」

 

「それはケルベロスにも確認しました。 日本ではやたら知名度が高いこともあって、少しは力が発揮できるそうですね」

 

「ええ。 不可思議な話で、現地よりもこちらの方が力を発揮できるまであるとか」

 

「それはまた……」

 

妙な話ではあるが。

 

そういえば、菖蒲さんに言われたっけ。

 

仏教も発祥の地であるインドでは既にほぼ誰も信仰していない少数信仰と化してしまっており。

 

むしろ東南アジア、中央アジア。中華や日本が、その信仰の主体であるという。

 

北欧神話も13世紀には既に信仰は駆逐されて、その神殿はあらかた破壊されてしまったという話だが。

 

それと似たような傾向なのかもしれない。

 

ちょっと考え込む。

 

オーディンは日本ではなんだか格好良い神様と思われていて、もしもそれで降臨できたとしたら。

 

或いは確かに、今の北欧よりも、信仰してくれる人が出るかもしれない。

 

だが、それはあくまで物語として、だ。

 

今の日本人は、基本的に世界的に見て極めて異質な信仰をしている。

 

仏壇を家におき、神社に拝みに行き、クリスマスを祝う。

 

そんなことをやっているのは日本人くらいだそうで。

 

厳格な一神教徒から見れば、明らかな異端も異端、意味がわからない世界だという。

 

そういう混沌の中にオーディンをはじめとした北欧の神々が混ざるのは。無理だとは言わないが。

 

他の神々と同じように、祭壇でも作ってもらうのが精々だろう。

 

神社に飾ってもらったら、それで信仰してくれる人もいるかもしれないが。

 

精々お賽銭をもらって。

 

それで何か願いを叶えてくださいと言われるだけ。

 

日本では日女さんについている八幡神や、そのおばあさんに憑いている稲荷神をはじめとして。

 

多数の神様が、そういった素朴な信仰を受けている。

 

降臨したスレイプニルは実際それを理解できていないようだったし。

 

仮にオーディンが神威を示しても。

 

それが人々に最高の神として信仰されるかは、完全に別の問題である。

 

「どうもオーディンとは違う神が、変な動きをしているのではありませんか?」

 

「オーディンとは別の神ですの?」

 

「はい。 燐火はそれほど北欧神話に詳しくはないのでこれから調べますけれど」

 

「北欧神話ではロキという悪神がいますけれど、そいつはどちらかというと悪戯の神様であって、場を引っかき回して面白がるトリックスターに過ぎませんわ。 誰かしらの側で粘着して、悪事を重ねるような輩ではなく、気の向くまま悪事をして回るような神でしてよ」

 

なんだその迷惑な奴。

 

まあ、それが今のイメージと言うことなら、それはそれでいいが。

 

ともかく、そのロキはちょっと違うような気がする。

 

他にもいくつか情報交換をしておく。

 

今、日女さんにドルイドの手配をしてもらっているが、日本に来るまで一月くらいはかかるそうである。

 

前に呼んだドルイドのおじいさんは、まるで役に立たなかった。いや、役には立てたが、問題解決にはつながらなかった。

 

ただ、何か北欧系の神格が悪さをしている。

 

それだけは確かだ。

 

情報を交換して、それで戻る。

 

カトリイヌさんが所属しているカトリックは、魔祓いとしては世界最大の組織であるらしい。

 

まあエクソシストと言えば有名だし、そういうものなのだろう。

 

それで何かわかることがあれば良いのだが。

 

ともかく家に帰る。

 

ケルベロスが、ぼそりと言った。

 

「気づいていたか、燐火」

 

「なにが?」

 

「あの娘、また随分と美貌に磨きがかかったな。 後、性格が多少は落ち着いたようだ。 ドミニオンが影響を受けていた」

 

「そういえば、少し大人っぽくなっていたね」

 

既に社会人として働いていると言うこともある。

 

日本基準の年齢だと今女子高校生の筈だが、飛び級で大学を出ているという話だから、その分社会の最前線で経験を積んでいると言うことか。

 

ただ、一時期アホな会社の社長が、中卒の方が社会経験が多くて使えるとか言う寝言をほざいていた事があったらしく。

 

それは実質、体育会系の言うことを聞くだけの部下で回りを固めるだけが目的だったらしい。

 

必ずしも社会に出るのが早いほどいいと言う訳ではないが。

 

カトリイヌさんもギャグキャラみたいな性格で青春を謳歌している暇もなく、大人になってきていると言うことだろう。

 

まともな大人なんて滅多にいないのが現実だから。

 

それで立派な大人になれるのなら、それでいいのではないのだろうか。

 

「まあ、ポンはまだ直っていないようだったがな」

 

「何かあったの?」

 

「……いずれわかる」

 

よくわからないが、ともかくそれはいい。

 

家では鍛錬を続ける。

 

この間、道場で師範に教えてもらった細かい調整をしておく。その話はケルベロスも聞いていてくれたので、燐火としても調整はしやすい。

 

本当に細かい調整をするだけで、剣筋がよくなる。

 

的を激しく打ち据えるが、鋭い音がして、実に心地よい。

 

おもりをつけた竹刀に、更におもりを追加するか。

 

鉄パイプを用いる場合は、もっと腕力があった方が良い。握力は鍛えられなくても、腕力はそうではないのだから。

 

 

 

夕方になって、ダイモーンが出る。大物だ。急いで着替えて、現地に向かう。既に冬は終わって、春になってきているが。

 

格好はいつもと同じだ。

 

ちょっとずつ丈を調整しているが、変身(着替えるだけ)の格好はあまり変わらない。

 

ただもらったお小遣いで白い布を買って、それを加工してもっと布の品質を上げたので。より激しい動きにも耐えられる。

 

ただしその激しい動きは、あくまで現地まで走って行くためのもの。

 

それに顔を隠しているから、白仮面呼ばわりされることに変わりはない。

 

山を抜けて、一気に商店街に。

 

おっと、あれは。

 

確かよくない噂がある政治家の事務所だ。

 

燐火も街の情報を集めているが、色々ろくでもない政治家はいる。

 

支持者を票田というらしいのだが、それがカルト団体だったり、或いはほぼ非合法の思想団体だったりするケースがあるらしく。

 

あの事務所は、その典型だ。

 

それに絡みついているのは、四つも首がある大物のダイモーンである。

 

前だったら、手に負えなかった。

 

ヘラクレスさんが対処する相手だっただろう。

 

だが、今なら。

 

文字を虚空に、つまり聖印を切る。

 

立て続けに、聖印をたたき込む。

 

爆ぜるカコダイモーン。首をふるって、凄まじい悲鳴を上げた。聖印の力が明らかに上がっている。

 

この魔法のステッキ(鉄パイプ)もそれだけ手に馴染んできたと言うことだ。

 

連続して聖印をたたき込み。

 

そのたびに、巨大な体が破裂した。

 

「いいぞ。 以前とは比較にならない火力だ。 一気に押し切れ」

 

「うん!」

 

そのまま、立て続けに聖印をたたき込む。

 

もがきながら、カコダイモーンがこちらを見る。

 

なんだ。

 

一瞬だけ、違和感を感じたが、容赦なく追撃を行く。少なくとも、あのカコダイモーンは倒せるだろう。

 

聖印を切るのも、以前よりずっと早くなっている。

 

それでいながら、一つ一つの火力も上がっている。

 

それだけあらゆる意味で鍛えたからだ。

 

徹底的に。

 

だが、まだ足りない。

 

燐火に妹か弟が生まれる頃には。

 

更に力を上げておきたい。

 

それは、燐火としての義務の一つ。

 

後、おとうさんとおかあさんには、敬語でなくしゃべれるようにしたい。そうして普通にしゃべれる相手を、少しずつ増やしたい。

 

それも本音だった。

 

悲惨な悲鳴を上げて、カコダイモーンがはじけ飛ぶ。

 

多少息が上がったが。

 

これでヘラクレスさんの負担も減るはずだ。

 

「見事」

 

「ありがとう。 ただ……」

 

「どうした」

 

「今のダイモーン、ちょっと違和感があった」

 

いずれにしても、これであの政治家には悪運が途切れた。

 

すぐに警察が来るようなことはなかった。ただ、おそらく今までの悪運が全て消え去り、反動が来るだろう。

 

何がおきてもおかしくない。

 

家に戻る。

 

そして翌日、ニュースが出ていた。

 

あの政治家の票田となっているカルト団体が一斉摘発を受けた。そしてあの政治家が多額の献金をしていたことも明らかになった。

 

早速市議会で締め上げられたらしく、議員除名はほぼ確定。

 

さらには余罪がボロボロ出てきたらしく、恐らくは確定で逮捕だそうである。

 

もう年が年だ。

 

刑務所から出てくることはないだろう。

 

悪運で今まで散々やりたい放題をしてきた人生だ。だが、詐欺などにも手を染めていたらしく。

 

資産はほとんど没収。

 

家族も離散だそうである。

 

燐火としては、そうかとしかいえない。

 

まあ、自業自得だし、それが裁かれない社会の方が問題だ。

 

だからそれでいいし、その後のことには興味もなかった。精々惨めな老後を牢屋の中で送れば良い。

 

そうとだけ思った。

 

ただ、あの違和感がやはり気になる。

 

燐火の周りで、何かおきているのかもしれない。だったら、何があっても対応できるように。

 

やはりもっと鍛えなければならなかった。







以前は手も足も出なかったダイモーンに対処できるようになっている燐火。

確実に腕が上がっている証拠ですね。


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