魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、最後の一人

金木家は文字通り全員が投獄された。大人達は二人が死刑。残り全員が無期かそれに近い刑を受け、残りの一生を牢獄で過ごすことになる。

 

街を私物化し。

 

其処で悪逆の限りを尽くした人間達としては、当然の報いである。

 

というよりも、そうしなければ法の意味がない。

 

犯罪者の人権を守ることだけが法ではないのだ。

 

そして、子供らのうち、上二人は既に死んだ。

 

最後の一人。

 

金木家崩壊の原因となり。

 

一度は燐火を殺した者。

 

末の娘、麗美。

 

それは、今精神病院の隔離病棟で、髪を振り乱して暴れ狂っていた。

 

こういった危険な患者を隔離する病棟は、昔は鉄格子などがはめられている事も多かったのだが。

 

今は独房のようになっている。

 

いずれにしても暴れ回って手が着けられない事もある。

 

食事からは塩分などが抜かれているが。

 

それでもまだ、暴れ狂う。

 

それもあって、看護師達は手を焼いていた。

 

隙を見せれ噛みついたり引っ掻いたりする。

 

しかも今の時代、こういった人間も「人間的に」扱わないと、どんなところから変なクレームが飛んでくるかしれたものではない。

 

人権団体などと言うのは、実際には弱者の権利なんて守っていない。

 

それを、こういう場所で働いている人間は、嫌でも悟ることになる。

 

ともかく、起きれば暴れ、疲れ果てても暴れる。

 

もはや言葉にならないわめき声を上げながら、辺りに暴力を振るう。ドアに体当たりをして、こじ開けようとする。

 

最近では食事もまともにとらず、放り投げることも多い。

 

この凶暴さは異常だ。

 

そう診察した医師は判断していた。

 

その診察も、看護師達が苦労して押さえつけて、拘束衣を着せた上でやらせなければならなかった。

 

それくらい厄介だったのだ。

 

いずれにしても。これは隔離病棟から出すわけにはいかない。

 

そういう報告が上がり。

 

国でも受理された。

 

暴れ回るせいで全身があざだらけ。食事をとらないから、体も治らない。それでも、何もかも壊れるまで暴れ回る。

 

そんな意思すら感じさせる金木麗美は。

 

完全に人間として壊れていた。

 

否。

 

本来これが本性だった。

 

それが皮を被って、人間の振りをしていた。それだけの存在だった。しかも金持ちの娘というだけで、その異常性が許されていた。

 

スポイルされてこうなったのではない。

 

元から、これはこういう存在だったのだ。

 

しばらく暴れ狂って、それでやっとおとなしくなる。

 

その耳元に、何かがささやきかけていた。

 

「おまえの兄貴二人は死んだぞ」

 

「……っ! ぎいひっ、ひぎゃああああああっ!」

 

また吠え、喚き始める麗美。

 

名前とは真逆のその姿は、もはや完全に制御不能の狂獣だった。

 

更に耳元に、何かがささやく。

 

上の兄は熊の餌になった。

 

そして下の兄は、あの燐火に殺された。

 

それを聞くと、その瞬間。

 

怒りが頂点に達した麗美は、興奮しすぎて、脳の血管を切った。

 

鼻血を垂れ流しながら、床に倒れる。

 

監視カメラで見ていた看護師は、死んだふりを何度かされて、そのたびに噛みつかれていた事もある。

 

慎重に様子を見てから、その様子を見に行き。

 

そして、重度の脳出血で、麗美が死んだのを確認した。

 

誰も悲しまなかった。

 

金木家の未来は、これにて完全に絶えたのだった。

 

 

 

金木麗美の魂がたどり着いたのは、地獄の十王の前だった。

 

暴れようとする金木麗美を鬼が苦もなく取り押さえる。もっと危険な悪霊を何度も取り押さえているのである。

 

いくら頭のリミッターが外れていても、子供一人取り押さえるのなんて、鬼には朝飯前だ。

 

十王の一人であり、死者の処遇を決める裁判官でもある秦広王は、不動明王とも関連付けられる存在であるが。

 

普通地獄での審理は、罪が重い場合は次の審理に回し。最終的に閻魔大王が裁くことになる。

 

閻魔大王が恐れられるのは、最も罪深い罪人を裁く存在だからで。

 

別に閻魔大王自身は地獄における最高裁判官で、魔王でもなんでもない。

 

ともかく秦広王は、軽く金木麗美の罪を確認して、それで判断していた。

 

閻魔大王まで回す必要すらもないと。

 

「これは論外だな。 地獄行き。 大焦熱地獄」

 

「わかりました」

 

金木麗美が何か喚く。

 

もはや言葉にもなっていなかったが、不当裁判だとか、弁護士を呼べとか喚いていたようだ。

 

残念だが地獄の審理に弁護士はつかない。

 

というのも、十王は罪人を裁くためにいくつかの道具を持っており、それで生前の罪を見ることが出来るからだ。

 

それで金木麗美は地獄に落ちた。

 

他の兄二人は、それぞれ別の地獄に落ちたので、二度と会うこともない。

 

後は文字通りの地獄の炎が全てを焼き尽くす大焦熱地獄にて。

 

ほとんど永遠に近い時を、焼かれる苦しみを味わい続ける。

 

ただそれだけだった。

 

人倫に反し続けた一族の末娘は。

 

その腐りきった人格にふさわしい罰を受けたことになる。

 

世の中には子供だからとか言う理由で罪を軽くしようとする輩がいるが。

 

子供だろうが悪意を持って人を殺せば裁かれるのは当たり前。

 

ましてや金木麗美はどれだけの人間の人生を狂わせたかもわからない。

 

だから、これは妥当な罰であったといえた。

 

ただ、秦広王は小首をかしげる。

 

最期に金木麗美に何かささやいた存在がいる。それが何かまではわからなかった。

 

一応今連携して動いているケルベロスに、連絡だけはしておくことにする。

 

それで、今は良いはずだ。

 

 

 

(続)







こうして金木の一族は文字通り断絶しました。

まあ、自業自得の末路ですね。

残っている大人も、残りの余生は牢屋。

死んだら地獄行きです。




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