魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない 作:dwwyakata@2024
決戦開始です。
ついに足場を完全に崩された悪神が勝負を挑んできます。
勿論燐火は、奴を許すつもりはありません。
堕落したのが人間のせいであったとしてもです。
敢えて、山の中を行く。
仕掛けてくるのなら、其処だろうと判断したからだ。
エヴァンジェリンさんはかなりもたもたしていたので。ひょいと日女さんが担いでしまう。
日女さんはたくましくなる一方だ。
ともかく、辺りを確認しながら進む。
今回はカトリイヌさんも菖蒲さんも来てくれている状態で、総力戦が出来る態勢を整えている。
一応、最悪の場合は林西さんらがバックアップに出てきてくれる約束だが。
それはそれとして、現れたようだった。
巨人だ。
呻きながら、こちらに来る。
それは極めて凶暴な顔をしていて、口の中は乱ぐい歯だらけだった。
エヴァンジェリンさんを下ろす日女さんが言う。
「何度か俺がやりあった鬼のどれよりも危険な気配だな」
「あれはグレンデルだ」
「グレンデル……」
エヴァンジェリンさんが解説してくれる。
英国の英雄ベオウルフの伝承に出てくる悪しき巨人で、一神教の聖典に登場するカインの子孫という説もあると言う。
騎士達の抵抗をものともせず人間を食らい悪事を為す凶悪な巨人で、しかもグレンデルの母はその比ではない強さであるとか。
だがグレンデル親子はそのベオウルフに首をはねられ。倒されることとなる。
しかしながら凶悪極まりない伝承から未だに有名な怪物として残り続けていると言うことだ。
雄叫びを上げるグレンデル。
だが、気配はケルベロスより小さい。
日女さんが視線を送ってくる。
警戒を続けろ。
そういう意味だ。
燐火も頷くと、即座に壁を展開するカトリイヌさんの後ろに。
セバスティアンさん達も、壁を展開。グレンデルを囲む。
見るとそれほど実体化は出来ていないらしい。
名前は知られていても、具体的なエピソードは知られていない。そういう怪物は、どうしてもああいう曖昧な姿で実体化してしまう。
そうエヴァンジェリンさんが言う。
いずれにしても、魔祓いのためにルーンを切り始めるエヴァンジェリンさん。
巨人グレンデルが光の壁につかみかかるが、凄まじい雷光が走る。
カインの子孫という伝承があるなら。
一神教の天使は、決して相性が悪いわけではないのか。
はじかれて、唸るグレンデル。
だがダメージになっている様子はない。
燐火は警戒を続ける。
その時、反射的に飛び退いていた。
炎が辺りをなぎ払う。
腐葉土がぼっと燃え上がり。
燐火が着地して見たのは、以前図鑑で見たヒグマよりも更に巨大な巨体だった。
あれは、ドラゴンか。
「ファーフニールだ」
「それはどういうドラゴンですか」
「こちらはジークフリートの伝承に出てくるドラゴンだな。 元は人間だったという話もある。 ジークフリートは此奴を倒すとき、その血を浴びて、ほとんど無敵になったという伝承がある」
「……」
伝承通りで出現したのなら、大変な強敵なのだろうが。
見た感じ、ドラゴン以上でも以下でもない。
翼が生えている訳でもないし、空も飛べそうにない。
そもそも昔の絵に出てくるようなドラゴンは、騎士が充分に対応できそうなサイズであり。
騎乗した状態で、見下ろせる程度のサイズしかなかったりする。
これはドラゴンという存在が、蛇の神の系譜としてどんどん貶められていった結果であって。
いにしえの強大な伝承から、人間がどうにでも出来る程度の相手に落ち着いていった過程なのだろう。
更に、姿を見せる存在。
こいつが本命だな。
それは人型だったが、やがて豊満な肉体を持つ女へと変じていった。
悪神だ。
気配でわかった。
涼子に悪戯をしていたのは、間違いなく此奴だ。
殺意のボルテージが上がる中。
もう慈悲とか愛とかは全て失ってしまったそれは。歪みきった笑顔を、燐火に向けてくる。
「たかが番犬のそのまた犬風情が、随分と私の愉しみを邪魔してくれたな」
「涼子ちゃんに……他にもたくさんの人に悪さをしていたのは貴方ですね」
既にカトリイヌさんが連絡を入れている。
残りの端末の位置はわかっている。
此奴が釣れ次第、この間の頼りないおじいさん達も含めて、日本に来ているドルイド系魔祓いが対処する。
対処できるように、道具が渡されている。
いずれもが、エヴァンジェリンさんが作ったものだ。
即座に飛びかかって頭をたたき割りたい気持ちを抑える。まずは、正体を探るところからである。
「貴方の名前は。 私は平坂燐火といいます」
「ほう、名乗りか。 この国の古い戦闘文化であったな。 面白い、郷に入っては郷に従うの精神で応じてやろう。 我が名はフリッグ」
「!」
オーディンの妻か。
しかしだとすると、オーディンの妻はオーディンと袂を別ったというのか。
フリッグはフレイヤの係累だ。
性欲を神聖視する豊穣神信仰の流れをくむもの。
おそらく嘘はついていない。
神が人間……格下と見なしている相手に嘘をつくというのは、それだけ致命的なことである。
それは既に、色々な人から聞いた。
相手を嘘をつかないと対応できない相手と認めるようなものだからだ。
これに対して、存在そのものが闇である魔は、嘘を平気でつくらしい。これは嘘が彼らと親和性がとても高いから、だそうだ。
「旦那さんとは別行動ですか」
「あんな宿六は知らぬわ。 一神教に破れ、物語に墜ちた後も未練たらしくまだ己の王国を作ろうともくろんでいる。 力など残っておらず、この国で人気があるというそれだけを頼りにな。 何がアスガルドの王か。 今のオーディンなど、ただの哀れな負け犬にすぎぬ。 そのような者に、もはや魅力など感じぬわ」
「そうですか」
男として魅力を感じない。
だから別れた、か。
馬鹿馬鹿しい。
こういうのは、アホみたいな理屈で男を選べると思っているフェミニストだかと同類だ。
今この瞬間、燐火は何かどうしようもない理屈で動いているのかもしれないという考えを全て捨てた。
此奴は。
ただのゴミだ。
とりあえず、やることは決まっている
事前に既に打ち合わせは済んでいるのだ。
フリッグに対しては、燐火が時間稼ぎをする。その間に、作戦を進める。
それだけである。
魔法のステッキ(鉄パイプ)を構えると、フリッグはふっと笑う。それで何が出来るというのか、という表情だ。
「私は戦士の文化であがめられた神だ。 おまえが素人以下の実力しか持たないことなど、一目でわか……」
「かっ!」
踏み込むと同時に、長広舌を振るっているフリッグの面に、鉄パイプをたたき込む。
効かないことは分かっている。
今やったのは。
此奴に、今と昔は時代が違うと言うのを示す事だ。
確かにフリッグは、凶猛な北欧の戦士達が作り上げた神話の女神だ。フレイヤの系統であるのなら、それは当然戦神としての要素も残っているだろう。
恵まれた体格を持つ戦士達の世界。
最近では北欧では女性も戦士として活動していたことが分かっている。それもかなり地位が高い戦士の女性もいたらしい。
民族全てが戦士。
それがノルマンだったのだ。
だがそんなノルマンの民も、今では福祉を売りにして国家を飾って見せ。それも実態は上辺だけだったり。
ロシアの影に怯えて、欧州の国々と連携して必死に身を守っている有様だ。
昔は最強だったかもしれない。
筋肉の塊みたいな戦士達にあがめられていて、強かったかもしれない。
だが、今は、ただの物語の女神。
更にである。
欧州では武術なんてものは、今ではマニアしかやっていない。
剣もフェンシングが主流であるように。
銃やボウガンが作り出されてから、個の戦士の価値は落ちた。武勇というものの価値が下がった。
その結果、廃れたものは見向きもされなくなった。
勿論今でも必死に伝統を継いでいる者達はいる。
だが、剣道や、その前身となった様々な流派の剣術のように。
長い間磨き抜かれてきたものとでは、どうしても差が出てきてしまうものなのである。
面を入れられたフリッグは、飛び退いて。
困惑し。
そして、みるみる怒りに顔を紅潮させていった。
どんと、凄まじい音がする。
キレたな。
全身から凄まじい悪運を噴き出している。
それでいい。
燐火は、すっと青眼に鉄パイプを構えたまま、静かに言う。
「一神教が北欧の神々を事実上滅ぼしたとき。 貴方は確かに神々の女王と言える存在だったのでしょうね。 ですが今の貴方は、悪魔より下劣で、どんな悪人と並べても恥ずかしい、ただの屑です」
「き、き、貴様、わ、私の顔に……!」
「掛かってきなさい屑」
「お、おのれええええっ!」
涼子にしていた悪戯を断ち切られた後の行動で、こいつが沸点が低いことは分かっていた。
後は、必死にいなすだけでいい。
グレンデルとファフニールは皆がいなしてくれる。
ケルベロスが、静かに言った。
「相手は衰えたりとは言え油断できる相手ではない。 俺が幸運で支援するが、最後にものをいうのは技だ。 蓄えた技をたたき込んでやれ」
「うん!」
フリッグが手にしたのは、何かの剣だ。
両刃で、とても巨大だ。
これでかち割ってやろうというのだろう。
結構結構。
重量武器と言うのは、初速が遅いが、速度が載ると凄まじい。破壊力も重さに比例して跳ね上がる。
だが、二メートル以上あるトゥーハンデッドソードはほとんど実戦では使い物にならなかったという話もある。
あれも、見かけ倒しだ。
燐火は前に出る。
突きかかってくるフリッグの一撃を回避する。やはり物理干渉力を持っているな。だったら。
そのまま前に出て、刈り取りに掛かってくる一撃を跳躍して回避。
腐っても戦士達の女神。
だが、そのまま飛び膝をたたき込み。
顔をゆがめながら振り払おうとするフリッグに対して、着地。剣を凄まじい勢いで振り回してくるフリッグだが。
遅い。
充子の剣筋と比べたら、まるで素人だ。
何度もはじく。
既に多数のダイモーンを屠っている鉄パイプは、淡く光を帯びていて、それで充分にフリッグが持っている剣に対応できる。
火花が散る中、フリッグはこっちに完全集中している。
逆に燐火は、周囲に注意を払う余裕があった。
カトリイヌさんが連絡を受けているのを横目で見る。
暴れ狂っているグレンデルは菖蒲さんの愛染明王が押さえ込み、炎を吐き散らしているファーフニールは、日女さんが神おろしで袋だたきにしている。
だが、それでも倒れる様子がない。
分かっている。
あれらはこの国の魔じゃない。
多分複合魔だ。
まだ仕掛けるな。
そうエヴァンジェリンさんが、先に打ち合わせで言った。
手抜きできる相手ではないが、まだ魔祓いをしていい段階ではない。
「こ、このガキっ! このガキが! ケルベロスが力を貸し与えているとはいえ、この私と! 渡り合うというのか!」
「何か勘違いしているようですね屑」
「ふ、ふざけ……」
「燐火が知っている本物の達人だったら、貴方なんか既に五十回は斬られていますよ」
驚愕して動きを止めるフリッグの懐に入ると、合気で肝臓に一撃入れる。
下がったフリッグに、下段から近づいて、多段蹴りをたたき込む。
吹っ飛んで転がるフリッグだが。
燐火が跳躍してから首を折りに蹴りをたたき込んだのを、必死に回避する。実体化している以上、ダメージにはなるらしい。
勿論決定打にはならないのだろうが。
「ありえん! こんな平和ボケした国で、おまえ以上の達人がいるだと!」
「その人はおそらく貴方が知っている全盛期のノルマンの民相手でも全く苦労せず勝つでしょうね。 気迫は虎のごとしという奴で、燐火では何やっても勝てませんよ。 世界はどれだけでも広い。 海を渡りあちこちで海賊をしていたノルマンの民はそれを知っていたはずです。 それを忘れた貴方に、勝ち目なんてありません屑」
「屑屑と、おのれ……!」
よし。
更に挑発して、気を燐火に向けさせる。
今、ヘラクレスさんも動いてくれている
此奴はヘラクレスさんが出てきたら即時撤退を選ぶだろうから、この場には来て貰っていないのだが。
全て作戦通り。
程なくして、カトリイヌさんが叫んでいた。
「端末、全て排除完了ですわ!」
「よし! 大地の神ハッグよ、我に力を! この悪に落ち果てし不埒なる元神に、引導を渡す!」
たんと、鋭い音が響いた。
カトリイヌさんが地面に手を突いて、大きめの魔祓いの術を発動したのだ。
凄まじい悲鳴を上げるフリッグ。
根が、たたれた。
これで逃げることも、力の供給を得ることも出来ない。
ここからだ。
燐火は動揺しているフリッグに、渾身の正拳をたたき込む。
まだ此奴は全力を出し切っていないが、出す前に可能な限り頭に血を上らせて、冷静な判断力を奪う。
ふっとんだフリッグが、藪の中に突っ込む。
その間に、全員が攻勢に出ていた。
エヴァンジェリンさんがルーンをたたき込み、悲鳴を上げるグレンデル。カトリイヌさんが、祈りの言葉をたたき込む。
「Amen!」
ドミニオンの光を得て、もがき苦しむグレンデル。燐火も聖印を切る。それでグレンデルは、木っ端微塵に爆散していた。
やはり悪魔の力と、ダイモーンの力が混ざっていたのだ。
そのまま、次に仕掛ける。
ふるぼっこにたたきのめされていたファーフニールだが、動きが鈍ってはいるが、それでも日女さん相手にかなり戦えている。
炎を吐き、尻尾をたたきつけ、前足の鋭い爪を振り下ろす。
翼がないから立体的な動きは出来ないが、でかくて堅くて火を吐くだけでも、充分に強いのだ。
だが、ぱんと胸の前で手を合わせた日女さんが、ギアを一つあげる。
燐火も、まだフリッグが立ち上がってこないのを見て、そっちに。
聖印を切る。
エヴァンジェリンさんも、ルーンを。更にカトリイヌさん達も、また浄化の祈りをたたき込んでいた。
ファーフニールが崩れていく。
確か一神教はドラゴン退治の逸話がたくさんあるはず。
それもあって、対ドラゴンの魔祓い効果は大きいのだろう。相手が悪竜限定ではあるだろうが。
ファーフニールが崩れた。
皆がフリッグを囲む。
しかし分かっているはずだ。
フリッグといえばオーディンの妻である。
極限まで堕落して悪神と成り果てたとはいえ、こんな程度でどうにかなるような相手ではないだろう。
凄まじい力が吹き上がる。
どうやらキレたらしい。
藪を吹っ飛ばして、それが姿を見せる。既に物理的な衝撃を与えられるくらい、力が強くなっていると言うことだ。
自衛隊が既に展開して、避難誘導を開始してくれている。
暴走した悪神……日本では荒神というらしいが。
それになったと見て良いだろう。
「おのれおのれおのれ……いちいちかんに障る者どもだ……! あの現実が見えていない宿六といい、英雄気取りのトールといい、ただの悪戯の神に落ち果てたロキといい! どいつもこいつも、こんな連中に好き勝手に弄くられて! 結局神としての矜持を失った! フレイヤに至っては、もはやただの淫売でしかない! 私が! この私が! 神々の復権を為さねばならん!」
お怒りはごもっとも。
燐火は心中でつぶやく。
ケルベロスも似たような愚痴をつぶやいていたことがある。
すっかり物語の存在と成り果てたゼウスは、ただのスケベ爺と成り果てた。それはユーモラスであるかもしれないが、同時に神としての尊厳を全て失った姿でもあるのだと、ケルベロスは何度もぼやいていた。
ギリシャの神々は皆そういう末路をたどった。
ローマで名前を変えて信仰されて。
それで物語として残らなければ。
今ではすっかり、辺境の邪教として一神教に過去の存在とされていたかもしれない。南アメリカの神々がそうされてしまったように。
だが、物語の存在となることで。
ほとんどの神々は道化と成り果て。
それで神々の尊厳を失ってしまった。
それでもなんとか取り戻そうとあがいていたものもいたが。
長い年月の果てに、その存在は結局のところ道化である事を受け入れてしまった。
ゼウスは今では名前は知られているが。
信仰する人間など誰もいない。
そういうことだ。
ケルベロスに至っては、歪んだ形で一神教に解釈されたあげく、地獄の番犬にされてしまった。
だから地獄の番犬と言われるとキレる。
その怒りも悲しみも、燐火は側にいるからよく分かっている。
だが。
それでもなお、今フリッグがやっていることは、許される事ではないのだ。
ずるり。
そう、何かが這いずる音がした。
そして、姿を見せたのは、巨大な蛇の一部に、フリッグだった存在がこびりついている……それもバラバラになりながら、という異形だった。
歪んだ形での永劫輪廻。
豊穣の形。
それがこういう存在になり果てるというのか。
それはまた、狂っている。
そして許せない。許せないし、終わらせてやらなければならないだろう。
大きさは近年発見された史上最大の蛇であるヴァースキにも匹敵するか、それ以上とみていい。
ただの蛇ではなく、美しかった女性……それも全裸……の体の一部が、あちこちに蛇体に張り付いている。
そういう異形だ。
おそらくこれを見て、美しいと思える人はいないだろう。
しかも美の基準は今と昔で違う。フリッグの姿は、現在基準の美しいものだった。
ケルベロスに壁画などをネットで探して見るように言われて見たが。
ビーナス像やアフロディーテ像は、現在の基準で美しいとはとても言えないものだった。
現在基準で美しくなってくるのは、ローマ時代、それからずっと時代を下ってルネサンス期くらいからで。
古代の美の基準は、現在とは違った。
そしてそれは日本でも同じだ。
つまりあのフリッグの姿は、お察しと言うことである。
ふうと燐火はため息をつく。
歪んだ思想の先。思考の果て。その挙げ句に醜く成り果てる。
それはどうも人間も神も同じであるらしい。
いや、神なんて人間が作り出した神話に依存する。
ならば、なおさらなのだろう。
「何が魔祓いだ! 貴様等全員、食らってやる!」
「総力戦用意」
菖蒲さんが声を掛ける。
同時に、皆が一斉に空気が変わった。
ここにいるのは、皆歴戦の魔祓いだ。
いや、歴戦とはいかないにしても、それぞれが実戦経験を積んでいる魔祓いなのである。
特に穏やかそうなお嬢様であった菖蒲さんは、完全に正体を現したというか。根本的に雰囲気が変わっていた。
いつもの穏やかそうなお嬢様はどこかに行ってしまい。
鋭い目で蛇体の悪神をにらむ、戦士となっていた。
「ゆくぞ! 貴様等全てくらい果たしたあと、この国を私たちで新たな王道楽土の足がかりとしてやる!」
フリッグが吠え猛る。
もはや其処には。
豊穣の神だった存在の名残はなかった。
※フリッグについて
北欧神話の最終的な主神、オーディンの妻です。
元々北欧神話はいくつもの神話を混ぜ合わせたもので、信仰対象も二度代わっている事もあり。それを上手に整理できなかったため、極めてカオスな代物となっています。
フリッグは人気があった女神フレイヤがそのまま派生した神で、名前だけ変えてオーディンの妻になっているという存在。つまり、フレイヤの方が格上なのですね。
これはフリッグだけではなく、オーディンも同じ。オーディンも元はオズという神で、これから派生した存在です。
オーディンの前にトールが最高神だった頃は、取るに足りない存在でした。
それが個人武勇の時代が終わり、戦争に勝つための神が求められて祭り上げられた。
その過程で一緒に祭り上げられたのがフリッグなのです。
様々な神話と比べてもアフロディーテと並び神話世界最悪のビッチオブビッチ、全ての神の恋人とまで言われているフレイヤから派生したフリッグは、その残りかすみたいな神であるわけですね。