魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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ついに戦闘形態になったフリッグとの死闘!

燐火は今までの所業を許しません。

ついに対悪神との激戦が開始されます。魔祓いだけは非暴力ですが、其処までの過程はガチンコでいきます。





2、悪神退治

蛇は瞬発力に優れるが、持久力には劣る。

 

これは蛇の尾を持つケルベロスに聞かされたことだ。そういえばケルベロスだけではなくて、市原さんからも聞いた。

 

これは蛇の生物としての戦略に起因するらしい。

 

元々蛇は変温動物であり、十分な熱を取り込まないと動くのが難しいという問題がある。これは持久戦には不利だ。

 

常に熱が確保できる訳ではないのだから。

 

そこで蛇は、種としては、待ち伏せや、サイレントキリングを狙う生物に環境適応していった。

 

進化と聞いたら、市原さんは違うと言った。

 

厳密に人間が考えているような、より強くなるような種の変化なんてものは存在しないのだという。

 

実際にはその環境に生物は適応していく。

 

孤島などで飛ぶことが出来ない鳥がしばしば登場するのは、それは生物としての堕落ではない。

 

飛ぶという行為は、鳥としては体のほとんどをそれに適応させなければならないほど高いリスクを背負っているらしく。

 

もしも飛ばなくていい環境があるのだったら、飛ばない方向に適応するだけなのだという。

 

そうして飛ばない鳥は出現する。

 

それは外来種から見れば弱者なのかもしれないが。

 

その鳥がいる環境では、むしろ飛ぶというリスクをなくしたことで、存分に繁栄できる戦略なのだという。

 

蛇の先祖も、そうやって短期戦とサイレントキリングに特化した戦略を選択した。

 

そういうことであるらしかった。

 

巨大な口を開くフリッグ。

 

その口の中に多数の眼球が存在していて、それでうっとカトリイヌさんが呻く。

 

真っ先に仕掛けたのは、日女さんだ。

 

左右に残像が出来るほどの速度でステップを踏みながら、間合いを詰めると。神おろしで強化されている拳をラッシュでたたき込む。

 

がっと、体を揺らして。

 

それを最小限に防ごうとするフリッグ。

 

だが、側面に回り込んでいた菖蒲さんが、愛染明王で押さえ込みに掛かり。

 

更にはカトリイヌさん達が、天使を総動員して壁を作る。

 

押さえ込まれるフリッグだが。

 

即座に、その全てを弾き飛ばしていた。

 

ごうと、凄まじい悪運が吹き付けてくる。

 

「たぎる! たぎるぞ! 人間どもがフレイヤから派生させ、女神などと言う存在に押し込めた事によって封じ込まれていた力! 原初の神格となることで、こうもたぎるのか! 最初からこうしておけばよかったわ! あの宿六に愛想を尽かしてからも、人型などを保っていたのが馬鹿馬鹿しく思えてくる!」

 

「ただハイになっているだけだ。 冷静に動け」

 

「うん」

 

燐火はフリッグの右後ろに回り込む。

 

フリッグはそちらに視線を向けて追ってくるが、其処にルーンがたたき込まれた。

 

今のを木を盾にしてやり過ごしたエヴァンジェリンさんが、必殺の気合いで放ったのである。

 

フリッグはうるさそうに、丸太みたいな尻尾でルーンをはじき返す。

 

それでいい。

 

燐火は走りながら、フリッグの視線を誘導する。

 

勿論フリッグの蛇体の全身についている体のパーツも侮らない方が良いだろう。あっちにある顔も、視界を有しているかもしれない。

 

かっと、丸呑みに掛かってくるフリッグ。

 

それはそうだろう。

 

燐火に散々煮え湯を飲まされたのだ。

 

頭にきていない筈がない。

 

だが、燐火はその一撃を、全力で集中して、飛び退いて交わす。

 

蛇の攻撃は、そう長くは続けられない。

 

完全にハイになっているフリッグに、それを気づかせてはならない。

 

「ハッ! さっきまで私に吐いていた暴言はどこへやった! 所詮は巨大な神の畏怖に打たれて逃げ回るだけの小娘ではないか!」

 

「畏怖? それは違いますね」

 

「何だと」

 

「貴方は神としての尊厳も矜恃も捨て去った。 今の貴方に燐火が感じているのは、ただの侮蔑です。 貴方が宿六と呼んでいるオーディンでさえ、今の貴方よりはマシでしょうね」

 

ぶちりと音がした。

 

本当に血管が切れた。

 

フリッグの蛇体にくっついている、元の頭の一部から、出血している。

 

おそらくあっちは構造がもろくなっている。

 

それで、血管が切れたのだ。

 

木を蹴って飛ぶ。

 

木にフリッグが噛みついたのは、コンマ一秒前だ。

 

一瞬の差。

 

木をかみ砕きながら、尻尾をたたき込んでくるフリッグ。

 

菖蒲さんが割って入ると、愛染明王がその尻尾をつかんだ。そして、ガツンと凄まじい音を立てながら、防ぎきる。

 

ウィンクする菖蒲さん。

 

まだそんな余裕があるのがすごい。

 

ただ、汗をだらだら流しているのは、消耗が凄まじいからだろう。

 

フリッグが正確に、また後ろに回り込む動きをする燐火を視線で追ってくるが。

 

その蛇の頭部に、日女さんが上から肘を打ち下ろしていた。

 

巨大な蛇体が、地面にたたきつけられる。

 

衝撃波が生じていたように見えたが、凄まじい。

 

だが、日女さんも消耗が激しい。

 

即座に離れる。

 

フリッグが、腐葉土を吹っ飛ばしながら、上空に跳ね上がる。

 

そして、襲いかかってくる。

 

殺す殺す殺す。

 

そう喚いている。

 

完全に我を失っているが、はっきり言ってどうでもいい。怖いとなど、微塵も感じない。

 

燐火の感覚が麻痺しているのではない。

 

こいつは人間が作り出した都合が良い思想の果てに。

 

こうも歪み果ててしまった哀れ極まりない悪神。

 

更にそれが誇りも矜恃も捨て。

 

信仰を捨てた人間への憎悪をたぎらせた挙げ句、凶行の限りを尽くした唾棄すべきカス。

 

そんなものに。

 

感じる恐怖など、微塵もない。

 

またルーンがたたき込まれる。

 

距離をとったエヴァンジェリンさんが、連続してルーンを打ち込んだのだ。それらをうるさそうにはじき返そうとして。

 

フリッグが、不可解そうに首をかしげた。

 

ルーンははじき返した。

 

だが、確実に動きが鈍り始めている。

 

その隙に、燐火が間合いを詰めて。

 

蛇体についているフリッグの人間の顔の一部に、思い切り魔法のステッキ(鉄パイプ)をたたき込んでいた。

 

気合いは全力で投入した。

 

顔が、砕けた。

 

元々柔らかくなっているのだ。それで、おそらく激痛が走ったのだろう。凄まじい悲鳴を上げながら、フリッグがのたうち回る。

 

燐火はそのまま態勢を低くすると、それに巻き込まれないように飛び退く。

 

立ち上がったカトリイヌさんが、ドミニオンに指示して、壁をまた展開。うるさいと喚きながら、フリッグは壁をたたき割った。

 

頭にどんどん血を上らせろ。

 

日女さんと連携して、上から仕掛ける。

 

こっちを見るフリッグの横っ腹。

 

人間の形だった時の足がある辺りに、日女さんが思い切り蹴りをたたき込んでいた

 

体を突き抜けて、衝撃波が出る。

 

フリッグが、燐火を丸呑みにしようとしていた口を思わず閉じ。

 

燐火は、その口を蹴りながら、とんぼを切りつつフリッグの体。蛇体に憑いている、人間の形だった時の腕に、渾身の一撃を入れていた。

 

「お、おのれおのれっ! ふ、不敬であるぞ! 神々の女王に向かって!」

 

「それを捨てたはずなのに、何を言っているんですか」

 

「その通りだ。 今のおまえは神々の女王なんかじゃあない。 全ての神としてのあり方を捨てた、獣以下だ」

 

日女さんが冷静に指摘すると。

 

半狂乱になったフリッグは、真上から燐火を丸呑みにしようと大きく体をしならせる。

 

だが。其処にセバスティアンさんともう一人のカトリイヌさんの護衛が立ちはだかり、ソロネ二体ぶんの壁を張る。

 

がんと、巨大な蛇体が跳ね返されていた。

 

「もはやお嬢様とは呼べませんな。 貴方は醜い化け物です」

 

「同感」

 

セバスティアンさんに、もう一人の護衛が言う。

 

てか、あの人しゃべれたのか。

 

初めて声を聞いた。

 

さっと散開して、三人ともその猛攻から逃れる。

 

フリッグは尻尾を唸らせながら振るう。

 

だが、それを菖蒲さんの愛染明王が、完全に受け止めて。フリッグが何っと叫んでいた。更に、菖蒲さんが読経をする。

 

全身から、凄まじい力がほとばしっているのが分かる。

 

愛染明王の全身の筋肉が膨れ上がると、ついにフリッグを振り回して、そして投げ飛ばしていた。

 

地面にたたきつけられたフリッグが、哀れっぽい悲鳴を上げるが。

 

今更それで同情を誘えると思うか。

 

着地した日女さんが、燐火と並んで走る。

 

「ここからは、魔祓いだ」

 

「はい」

 

よし。

 

思考を切り替える。

 

フリッグが飛び起きて、襲いかかろうとするが、愛染明王に引っ張られ。更に地面にたたき込まれる。

 

もはや女神とは思えない悲鳴を上げながら、それでも愛染明王に巻き付こうとするフリッグだが。

 

それがとても最初に比べて弱々しいのを。

 

燐火は見逃さない。

 

やはりだ。

 

蛇の神としての形になった以上。

 

どうしても蛇の特性に引っ張られる。

 

これがドラゴンだったら話は違ったかもしれない。

 

だが、古い時代の人は、生物学なんてものは分かっていなくて、蛇が脱皮を繰り返してなんぼでも生きるなんて思い込んでいたとしても。それはそれとして、蛇の習性をよく見て知っていた。

 

だとすれば、その性質は現実の蛇にリンクする。

 

フリッグは豊穣神系統の神だから、蛇の姿にリンクすれば、どうしてもその影響を強く受ける。

 

そして本人が、それを自覚できていない。

 

敗因は、其処にある。

 

皆が全力で魔祓いの印を切り始める。

 

それを見て、フリッグが、必死に愛染明王の腕から逃れようとしながら喚く。

 

「な、なぜだ! 私は己の全てを力に変えた! それでなおも及ばないというのか!」

 

「その力の源泉はもはや信仰にあらず! 貴様がもてあそんだ人々の悲しみと苦しみであろうが!」

 

凄まじい一喝。

 

一喝を放ったのは、日女さんだ。

 

圧倒的な一喝に、フリッグがひっと明らかな悲鳴を上げていた。

 

菖蒲さんが、愛染明王をせかして、フリッグの頭を押さえ込む。

 

やはり持久力に欠けるフリッグは、それでもう動けず。哀れっぽく悲鳴を上げながら、もがくばかりだった。

 

聖印をたたき込む。

 

効く。

 

やはりダイモーンを取り込んでいるんだ。

 

ルーン文字。

 

日女さんの祝詞。

 

更には読経。

 

ついでに一神教の神を讃える言葉。

 

それら全てがたたき込まれて。確実にフリッグの全身が砕かれていく。悲鳴を上げて逃げようとするが。

 

もはやその力はない。

 

「ば、ばかな、ばかな、私がこの程度の人数の、戦士でもない者達に破れるなど! 私は、凶猛なるヴァイキングの民が信仰した神だぞ! それが、それが……!」

 

「そのヴァイキング達は好き勝手に己の凶暴性を肯定してくれる神として貴方を作った。 元の素材を粘土をこね回すみたいにして。 その結果が歪んだ自尊心を拗らせ何をやっても自己正当化する貴方みたいな屑だ。 貴方は負けるべくして負ける。 そして、それは今、ここでです」

 

燐火が冷静に指摘すると。

 

いやだ負けたくない死にたくないと、フリッグが泣きわめく。

 

エヴァンジェリンさんが、声を掛ける。

 

「悪神祓いの最強のルーンを天才たる私がたたき込む! 皆、総力で魔祓いを!」

 

応。

 

皆が答えた。

 

燐火も立て続けに悪神が取り込んでいるダイモーンに対して、聖印を打ち込む。どれほどの膨大なダイモーンを取り込んでいるのか分からないほどだ。

 

それだけじゃない。

 

フリッグの体から、何か逃げ出していく。

 

日女さんが後で教えてくれるだろう。多分日本の雑多な邪神や妖怪だろう。それも、日女さんの祝詞で、片っ端から消し去られていくようだ。

 

見る間に縮んでいくフリッグ。

 

その姿が、太ってむくんだ中年女性のものへと変わっていく。

 

きつそうな性格ではあったが、それなりに美しかった元の姿は結局のところ見栄から作り出したものか。

 

まあ、それは分かる。

 

そもそも若い女性や涼子みたいな子供まで相手に性欲を啜りとっていたような輩である。淫魔に近い。

 

確か女性が性欲が一番強くなるのは、十代半ばと三十代はじめだと聞く。

 

フリッグはそれらの性欲過剰の時期を乗り越えられずに、醜く年老いた姿になってしまったのだろう。

 

人は美しく老いることも出来る。

 

それは見たことがあるから知っている。

 

フリッグはそれが出来なかった。

 

本人の体質に関係する問題ではない。

 

本人の性根が腐りきっていたからだ。

 

神だったらなおさらだろう。精神的な存在なのだから。性根が腐りきっていなければ、そうはならなかったはずだ。

 

巨大なルーンがたたき込まれたとき。

 

フリッグはひときわ情けない悲鳴を上げ。

 

燐火が立て続けに皆と一緒に聖印をたたき込んでいく中。

 

オーディンの妻であった悪神は。

 

その姿を、宙に溶けさせていった。

 

 

 

何かの壺を取り出すと、厳重に封印をするエヴァンジェリンさん。あれにフリッグだったものを封じ込んでいるのだろう。

 

全員ヘトヘトだ。

 

燐火もかなり疲れた。

 

自衛隊の部隊が来て、即座に現場の検分と、皆に補給物資を配ってくれる。ぬれタオルがありがたい。

 

まだそれほど暑い時期ではないのだけれども。

 

ただ、まだ体は若いのだ。

 

それもあって、体の回復も早い。スポーツドリンクを飲んで、配られた栄養ゼリーを飲んでいると。

 

もう、ある程度は動けそうだった。

 

ケルベロスが言う。

 

「良くやってくれたな」

 

「うん。 どうにかなったね」

 

「神は最低まで堕落するとああなる。 そしてそれは、人間にとっても他人事ではない」

 

分かっている。

 

燐火もそういう例があることは分かっているし。

 

自分だってそうならないとは言えないのだ。

 

燐火はおぞましいものを嫌と言うほど見てきた。だから、ああはならないと心には決めている。

 

だが、人間は良い意味には滅多に変わらないが。

 

悪い意味では簡単に変わる。

 

スクールカーストに染まって、弱者をなぶり殺しにするのを満面の笑みでやるようになったような人間が。

 

本当に最初からそうだったのだろうかと。

 

最近、ちょっとだけ思うこともある。

 

いや、金木の屑一家のようなのはおそらく何をやってもああだっただろうとは思うのだが。

 

もしも違った場合。

 

人間は、それこそ自分で自分を壊し。

 

悪へと望んで身を捧げていることになる。

 

ましてや今の時代は、悪の方が生きやすい時代だ。犯罪者には際限なく甘く、犯罪被害者はろくに守られることもない。

 

そんな状況だ。

 

身を持ち崩す人は、決して少なくはないだろう。

 

悩みがもやもやと来る中。燐火は、へばって臨時でおかれた机で溶けているエヴァンジェリンさんに声を掛ける。

 

「大丈夫ですか」

 

「も、問題ない……。 天才たる私は、この程度の疲労はものともしにゃい……」

 

「重症ですね」

 

「ちょっと休ませて……」

 

なんだかとても情けない声が聞こえたが。

 

まあ、そのくらいは良いだろう。

 

とりあえず小休止と、応急手当を終えると。

 

自衛隊の現場復旧部隊が来て、戦闘の痕跡を消し始めるのを尻目に、一旦移動する。エヴァンジェリンさんはふにゃふにゃに溶けていたので。燐火が背負っていく。その途中で聞いたのだが、なんと菖蒲さんと同年齢だそうである。

 

まあ、色々な理由で発育が良くない人はいるので、それでどうこうというつもりはないが。

 

ただ、体が軽いな。

 

ちょっと心配になるくらい軽いので、燐火は背負っていて、壊さないか心配になってきた。

 

とりあえず、そのまま麓の寺に移動。

 

戦闘が行われている外側を、三十人ほどの魔祓いが囲って、いわゆる結界を展開していたらしい。

 

フリッグを逃がさないためだ。

 

もしもフリッグが燐火達を倒していた場合でも、林西さん達が出てきて、どのみち倒されていたのだろう。

 

王道楽土だかなんだか知らないが。

 

フリッグが望んだものなど、実現はしなかった。

 

周囲での分厚い守りを見る限り、それが分かる。

 

この国は腐っていたりあちこちガタが来てはいるが。それでも簡単に悪神に屈するほど脆弱ではないということだ。

 

そこで休憩をさせて貰う。

 

日女さんは体をマッサージしている。

 

八幡神を下ろしたこと、それも長時間最前衛で戦ったこともある。体への負担がとても大きいらしい。

 

普通のガタイがいい男子高校生くらいだったら、苦もなく制圧するらしい日女さんだが。それでも翌日は筋肉痛確定だそうで。

 

それを少しでも緩和するために、こうして頑張っているようだ。

 

菖蒲さんは既に正座をして、読経をしている。

 

今日の魔祓い……外道退治というらしいが。

 

それに対する愛染明王の活躍を仏様に報告し。その偉大な活躍を褒め称えるための読経であるそうだ。

 

カトリイヌさんはちょっと落ち着かない様子だったが。

 

日本の家屋や寺でのマナーを知っているらしいセバスティアンさん達が指導して、それでやっと落ち着いたらしい。

 

貫頭衣をとると、綺麗な髪がこぼれ出る。

 

ただし激しい戦いの後だ。

 

汗でぐっしゃぐしゃだったが。

 

髪の毛の手入れを無言で始めるカトリイヌさん。

 

タオルを被って微動だにしないエヴァンジェリンさんは、多分気絶するように死んでいる。いや、死んだように気絶しているだった。

 

住職がお茶を出してくれたので、ありがたくいただく。

 

トイレも借りるが、ちゃんと洋式だったので安心した。

 

この辺りにもまだわずかだけくみ取り式便槽が残っているという話を聞いたことがある。たまにバキュームカーが行くので、それは知っていたのだ。

 

トイレを済ませると、だいぶ楽になる。

 

そもそもとして、体内の老廃物を流し出すのが尿らしいので。

 

激しい戦闘の後だ。

 

それが色々と体内に残っていた老廃物を出せば、すっきりするのは、色々な意味で理にはかなっていると言えた。

 

とりあえず燐火がトイレから出てくると、日女さんが代わりに行く。

 

苦笑い。

 

女子は連れションが大好きだとおかあさんが言っていた。今の時代はそれもなくなったらしく、一昔前の習慣らしいが。

 

後は、しばらく休ませて貰う。

 

ケルベロスが、疲れがとれてきた燐火に言う。

 

「分かったことがある」

 

「うん」

 

「やはりフリッグには協力者がいる。 それも最低でも二体はいると見て良いだろうな」

 

「……」

 

一体は日本神話系の邪神だろう事はほぼ間違いない。

 

それはケルベロスが断言した。

 

それに、一神教系の堕天使も協力しているかもしれない。

 

フリッグには、皆での総力魔祓いが全部効いていた。コアになっていたのは北欧系のようだが。

 

ダイモーンは接着剤として機能していた。

 

最大出力でのエヴァンジェリンさんのルーンがぶち込めたのも、皆での魔祓いが同時に行われたから。

 

日本以外だったら、とても難しかっただろうなとケルベロスは言う。

 

八百万の神々が存在し。

 

あらゆる信仰が(他の信仰を攻撃しなければ)比較的に寛容に受け入れられてきたこの国だったから。

 

あれが出来た。

 

ただ、もしも中東とかであったら。

 

そもそもフリッグが好き勝手は出来なかっただろうとも、ケルベロスは言う。

 

確かに他の信仰は全部邪教と考えていて、女性には全身を覆う服を強制するような国では。フリッグのような神は、力を振るうことは厳しかっただろうが。

 

「迷子の人も、これは関係しているよね」

 

「間違いないだろうな。 協力しているとは性格的には考えにくい。 捕獲されているとみて良いだろう」

 

「……」

 

フリッグみたいな屑に捕まっていた……いや、おそらくだが、フリッグの場合は堕落した結果屑になったのだろうが。

 

それでも、心配だ。

 

「とにかく、少しでも早く助けてあげないと。 それに……」

 

「ああ。 カコダイモーンによる悪運のばらまきを、少しでも阻止しないといけないな」

 

ケルベロスの言うとおりだ。

 

燐火もそれに異存はない。

 

気合いを入れ直す。

 

そして、皆に帰ることを告げた。

 

手続きなんかは、菖蒲さんがまとめてやってくれるらしい。とてもありがたい話だ。

 

信頼もしていいだろう。

 

後は、ただ。家に帰って、しっかり休んでおくだけだった。







死闘の末についに怨敵悪神化フリッグを地獄にたたき落とした燐火。

悪神の所業にふさわしい無様な最後をフリッグは遂げることになりました。

しかし敵はまだ複数が健在……!

戦いはまだ終わらないのです。


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