魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、悪魔

翼持つ人影は奔放だった。

 

古くには、元々悪魔というものは、現在の一神教で言われるような邪悪の権化ではなかった。

 

一神教で聖人とされるソロモンが72柱の悪魔を従えていたと言われるように。

 

あくまで地獄の罪人を罰する存在であったし。

 

何よりも、そもそもとして規律に縛られるし、善良であるとされる悪魔だって存在していたのだ。

 

だが。

 

一神教が他の信仰を貶めていく過程で、悪魔はどんどん凶悪化していき。明確に邪悪とされ。

 

それどころか、邪悪の全てを押しつけられることとなった。

 

今では悪魔は、いや今でも。

 

西欧では、本当に恐れられているし。

 

悪魔呼ばわりは西欧では最大級の罵倒になる。

 

そういう状況で歪んだ翼持つ人影は。

 

だったらいっそ本当に邪悪の権化になってやろうと思った。

 

なんども魔祓いに倒された。

 

だが、西欧において悪魔に対する恐れが強くなれば強くなるほど、力もそれに従って上がっていった。

 

魔祓いを返り討ちにすることも増えた。

 

今では二桁の魔祓いを殺して、その顔を全て覚えている。

 

皮肉な話で。

 

脅かす者がいなくなった一神教の魔祓いは堕落するばかり。

 

力も衰えた。

 

特に今回のような複合魔を使える案件では、ほとんど脅威にならなかった。

 

多神教の魔祓いの方が手強いと感じるほどである。

 

さて、と。

 

燐火という子供。

 

あれの周囲で、危険な輩に憑依させたカコダイモーンを敢えて気配を強く出して、誘ってみた。

 

抗争にでも巻き込まれて流れ弾で死んでくれれば問題なかったのだが。

 

ケルベロスの加護は予想以上に強い。

 

それに、ケルベロスは一神教の全てを憎んでいる。

 

これは悪魔も例外じゃない。

 

そもそも魔から生まれながら、最終的に光側の守護存在となったケルベロスである。

 

それを考えると、確かに一神教の悪魔なんて、反吐が出る存在でしかありえないだろう。

 

ただ、悪魔の方でも言い分がある。

 

実際問題として。

 

今悪魔とされている翼ある人影は。

 

「おい」

 

「なんだ。 おお、貴様か」

 

声を掛けられた。

 

同胞だ。

 

今回、作戦行動をともにはしていない。

 

現状では悪魔に組織なんてものは存在していない。

 

流石にバチカンの辺りはリスクが高すぎることもあって、ほとんどは一神教徒があまり良く思われていない地域や。

 

一神教徒が堕落しきって、魔祓いが問題にもならなくなった地域で活動している。

 

この同胞もその一柱だ。

 

「久しぶりであるな」

 

「そうだな。 そちらは元気にやっているか」

 

「まあまあだ」

 

黒い犬の姿をした悪魔。

 

マルコキアス。

 

今はこの国で比較的おとなしくしている。この国の穏やかな環境、ある程度何でも受け入れる土壌。

 

何よりも、一神教の魔祓いがあまり来ない状況。

 

それが心地よいらしい。

 

「おまえ等の活動で、騒がしくてかなわん。 どっかよそでやれ」

 

「なんだ。 天使どもを蹴り落としてやりたいと思わないのか」

 

「そんなものは放っておいてもなされる」

 

マルコキアスは辛辣だ。

 

確かに、天使信仰が盛んになった結果、キリスト教では何体もの人気があった天使を堕天使扱いするという暴挙に出た。

 

元々ダークサイドの仕事をする天使はなんぼでもいたが。

 

そのあおりを食って、今ではほとんどが堕天使扱いされている有様だ。

 

マルコキアスが言うとおり、名のある天使はそのうち全部堕天使にされてしまうかもしれない。

 

今は若者すら教会に行かないとか一神教徒は嘆いていると聞く。

 

それは決して、絵空事ではないだろう。

 

「きな臭い世界情勢の中で、この国は心地が良い。 だからうるさいのはわざわざ破滅させて追い出しているくらいでな」

 

「なんだ、そんなことをしていたのか。 この間俺が実験に使った連中は」

 

「既に仕込みはしていてな。 あそこまでしなくても、全部まとめて破滅するように仕込んでいたんだよ」

 

「そうだったのか。 それは済まなかったな」

 

同胞に対しては謝れる。

 

ため息をつくマルコキアス。

 

「ともかくだ。 繰り返すが、あまり無茶をしてくれるなよ。 貴様が何体かの神格とつるんで悪さをしているのは分かっている。 俺もあまりにもやり過ぎるようなら動かざるをえん」

 

「分かった分かった。 ある程度は抑えよう。 同じ、貶められた者同士だ」

 

「悪魔は契約と言葉に縛られる。 言葉の抜け道を突くような不義理はしてくれるなよ」

 

「……」

 

マルコキアスが去る。

 

翼持つ人型は、少しばかりやり過ぎたかと思った。

 

くだらないスクールカーストなどというもので、人材をすりつぶしている今のこの国は。悪い意味での混沌にあって、翼持つ人影には心地よい。

 

だがこの国の良いところを、居心地が良いと思っている同胞もいる、か。

 

いずれにしても。

 

大望を諦める気はない。

 

燐火という奴には要注意だと分かった。

 

フリッグを倒したときの情報を得たが、本当に小学生かと思うほどの手練れだ。あれは化ける。

 

放っておけば、後々大きな脅威になるだろう。

 

出来れば今のうちに堕落させておきたい。

 

だが、一度どん底を見て、そこから這い上がった人間というのは強い。

 

もう一度堕落させるのは難しい。

 

あの年頃の、いやもう少し年をとれば、女は簡単に甘言を垂れ流す男に狂って破滅したりするのだが。

 

燐火というあの子供。

 

見た感じその手も使えないだろう。事実フリッグも色々やっていたが、隙がなかったようだし。ケルベロスも隙を見せまい。

 

さて、どこから崩すか。

 

翼持つ人影は、悪魔らしい方法で。

 

燐火をどう壊すか。それでいながらマルコキアスなどの同胞に同迷惑を掛けないかも。考え始めていた。

 

 

 

(続)







第二の刺客は悪魔。つまり一神教の悪魔ですね。

ただし此奴はフリッグとはかなり方法論が違います。

やがて燐火と対決する事になる悪魔は。

決して悪魔のメインストリームにいるとはいえない存在なのです。




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