魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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市原家の終わりっぷりを確認した燐火。

今回の対応では専門知識を持つ元警官の母を頼ります。

正確には児相を巻き込んでの作戦開始です。





悪魔ですら鼻白む
序、相談した結果


二学期が始まった。

 

その少し前に、市原さんの家が終わっていることをおとうさんとおかあさんに話した。明らかに市原さんがネグレクトを受けている事についてもだ。

 

思うに体育について市原さんが燐火に聞いてきたとき。

 

最後の勇気を振り絞っての行動だったのだろう。

 

あのとき燐火が粗雑に扱っていたら、多分市原さんは、精神的に死んでいたとみて良い。危ないところだったのだ。

 

結論としては、おとうさんに相談して良かった。

 

おかあさんも、具体的にどうすれば良いかを丁寧に教えてくれた。

 

質にはかなりばらつきがあるが。

 

いずれにいても、今児相と言うところから来た人と、先生を交えて、市原さんと一緒に話をしている。

 

燐火が市原さんの家庭について、いくつか気づいたところを順番に説明していく。

 

市原さんは蒼白になっている。

 

それにしてもだ。

 

金木家に支配されていたあの街だったら、児相なんて何の役にも立たなかっただろうなと思う。

 

児相自体が機能していなかっただろうし。

 

市役所も警察も金木家の影響下にあったのだ。

 

あの金木家のカスどものせいで何人も自殺に追い込まれていても動かないくらいだ。児相なんか、何の役にも立たなかったのも当然だろう。

 

だから燐火としては、あまり信頼は出来ないという不信感があるのだが。

 

おかあさんは、児相には当たり外れがあると言う話をしてくれた。

 

やはり役に立たない児相はまるで役に立たないらしい。

 

警察に関しても、似たようなところはある。

 

だから、おかあさんが知り合いを手配してくれた。

 

非常に堅実そうな、厳しそうなおじさんが来た。

 

今、市原さんが一つずつ丁寧に話をしている。

 

それを聞いて、おじさんの眉間にしわがどんどん寄っていくのが分かった。

 

「なるほど、概ね状況は理解しました。 市原さん。 こちらでも調査します。 いずれにしても、肉体的な暴力などはないにしても、許せない話です」

 

「お、お母さんを呼んで話したりとかはしないんですか」

 

「今、市原さんは、ここでお母さんに話して、それで何か解決すると思いますか? しません。 逆恨みして、おそらく肉体的な暴力を伴う加害が始まるでしょう」

 

その通りだ。

 

詳しく話を聞いて驚いたのだが、夕食なんかも兄と完全に差別化されて、残りカスみたいなものしかもらえていないそうだ。

 

兄をベタベタにかわいがっているが。

 

その兄は母の溺愛を鼻で笑っているらしく、多めにもらっている小遣いをあからさまな悪事にばかり使っているようである。

 

夜遊びをしているところも目撃されているようで。

 

高校での素行も最悪だそうだ。

 

いずれにしても、崩壊家庭だな。

 

燐火はそう思う。

 

市原さんに、もう一度勇気を出そうと説得したのは燐火だ。

 

そしてお膳立てをした。

 

先生もぶち切れている。

 

これは、大事になるだろうな。

 

そう思ったが、口にはしない。

 

いずれにしても、市原家は終わりだ。

 

児相の人は、全く表情を変えずに市原さんにいう。

 

「まず、市原さんはこちらで預かります。 大丈夫、寂しくないように児相の職員が常に話し相手になります。 それとも、お母さんのところが良いですか?」

 

「いえ……」

 

これはもう。

 

市原さんも、あの母親には愛想が尽きているな。

 

燐火をゴミみたいな目で見てきたなあいつ。

 

視線を返したら、露骨に怯んでいたっけ。

 

市原さんは面白い子だ。

 

それをこんなに萎縮させて。

 

結局のところ、家庭にまでスクールカーストで醸成されたような価値観を持ち込んで。娘に対してそれを使っている。

 

ガキのままだ。

 

子供を二人も産んでも、人間は全く成長しない。

 

どうせあの様子だと、キモいだのなんだの主観的な理由で市原さんの事を否定していたのだろう。

 

子供を産んだら成長する。

 

それが都市伝説に過ぎない良い証拠だろう。

 

ともかく、いくつかの話を済ませる。

 

興信所も動き始めているようで、裏取りを開始するそうだ。ちなみに市原家には、これから児相のおじさんが警官と先生とともに出向いて、話をしに行くそうである。

 

まあそれもそうだろうな。

 

今回の事に踏み切ったのには理由がある。

 

燐火が手伝って終わらせた宿題が、明らかに人為的にビリビリに破かれていたのである。

 

市原さんは朝起きたらこうなっていてと悲しんでいたが。

 

学校で最近市原さんに手を出せる生徒はいない。燐火がにらんでいるだけで、誰もが近づかない。

 

それもあって、学校ではない。

 

気にくわない相手に、ガキ以下の行為をしているというわけだ。

 

更には、燐火が出向いた日には夕食も露骨に減らされる日も多かったのだと聞かされた。

 

運動神経が鈍いのは、無論それだけが理由ではないだろうが。

 

いずれにしても、充分に虐待に値すると。相談した燐火に、おかあさんは説明をしてくれた。

 

だから、対策を聞いた。

 

今、それが動いている。

 

とりあえず、今日から児相の保護施設で市原さんは過ごすことになるが。帰り道で、軽くそれは涼子に話しておく。

 

涼子は涼子で、市原さんに何かしら起きていることは悟っていたようで、やはりという顔をしたが。

 

それ以上は何も言わなかった。

 

まだ残暑が非常に厳しい。

 

そんな中、帰路を行く。

 

途中で児相の人が来ていたので、市原さんはそちらに行って貰う。優しそうな女性だ。今日、あのおじさんが市原家にいって、市原さんの荷物をあらかた持ち帰ってくるそうである。

 

ここからが修羅場だが。

 

いずれにしても、燐火はこれ以上手を出せる状態ではない。

 

ただ、ケルベロスがいる。

 

ケルベロスが、幸運をくれている。

 

今回はそれで、児相に関しても当たりを引いた。いじめと称する犯罪が、人を殺すまで発展しても警察すら動かない事すらある今。

 

これはとても大きな幸運だ。

 

とりあえず、三人別れて、一人で帰る。

 

ケルベロスが、吐き捨てていた

 

「あの見た目だけ繕った家、燐火が思った以上に腐り果てていたのだな」

 

「どうしようもないね」

 

「ああ、その通りだ。 今、貴族やら金持ちやらに夢を見ている人間がいるが、俺が信仰されていた時代から、実態はこんなものだった。 愚かしくて反吐が出るわ。 人間は歴史を積み重ねてきたのに、どうして過去に学ぼうとしない」

 

「耳が痛いかな」

 

燐火も人間だ。

 

どれだけ浮世離れしていたとしても。

 

いずれにしても、もっと早く大人にならないとな。

 

こんな理不尽、一つでも力尽くで解決できるようにならないといけないだろう。

 

そして、である。

 

ケルベロスに言われるまでも無く、脇道にそれる。

 

さっさと着替えると、魔法のステッキ(鉄パイプ)片手に走る。ダイモーンだ。それも結構強い。

 

走った先は、繁華街の裏手である。

 

あれは確かラブホテルだのいう場所だろう。

 

なんだか嫌な予感がする。

 

まあ燐火ももうあれがどういう場所かは知っているので、あのラブホテルだかにカコダイモーンが絡みついているのをみて。

 

市原家の父も母も浮気三昧であるのを知っているので。

 

まさかとは思ったが。

 

まあいい。

 

とにかく魔祓いだ。

 

聖印を切る。

 

以前はヘラクレスさんが対応しなければならないレベルのカコダイモーンだったが。もはや燐火でも対応できる。

 

ただし、簡単ではない。

 

七度聖印を切り、それでようやく全身が爆ぜ始める。

 

こちらを振り返るカコダイモーン。

 

唇が、異様に蠱惑的だが。その唇の中からのぞいているのは、蛇の舌だ。蛇が悪いイメージに俺を使うなと怒りそうであるが。

 

まあ神話的なイメージというのはそういうものだ。

 

更に聖印を切る。

 

胴の辺りが爆ぜ割れて、膨大な悪運が辺りに降り注ぐ。コールタールのように、ラブホテルが悪運に浸されていく。

 

悲鳴を上げながら、大量にある足……人間のようで、指先は幼児のようであるそれをせわしなく動かして、カコダイモーンが迫ってくる。

 

聖印を立て続けに切る。

 

逃げない理由は簡単。

 

倒しきれるからだ。

 

二十三回目の聖印で、ついに力尽きたカコダイモーンが竿立ちになり。

 

そして全身爆ぜ割れ、木っ端微塵に打ち砕かれていた。

 

辺りにコールタールみたいに悪運がぶちまけられる。

 

ケルベロスが言う。

 

「そろそろ悪運を燐火でも祓ってみるか」

 

「出来るんだね」

 

「これだけ力がついたならな。 俺の指示通り、別の聖印を切ってみろ。 ちょっとばかり消耗が大きいがな」

 

「分かった」

 

以前カトリイヌさんや日女さんに聞いたのだが。

 

魔祓いと、こういうぶちまけられた汚染の除去は得意分野が違うという。

 

魔祓いには凄まじい力を発揮できる人が、悪運などの魔による汚染の除去は大の苦手だったりする。

 

燐火は魔祓い特化型だが。

 

悪運の除去も出来るには出来る。

 

ただし、力が強くなってきた今だからだ。

 

消耗も、魔祓いに比べて大きい。

 

別の聖印を切る。

 

それで、確かに悪運をかなり排除できたが、消耗が凄いな。ただ先に連絡を入れていたこともある。

 

カトリイヌさんが到着。

 

汚染の除去をしてくれた。

 

さて、問題はここからだ。

 

着替えて軽く様子を見ていたら。ラブホテルから出てきた二人……いや四人か。それが修羅場になっていた。

 

凄まじい形相で怒鳴り合っている。

 

あれは……市原さんの父母だ。

 

どっちも同じラブホテルで不倫していたのか。燐火は思わず、流石に鉄面皮と言われる顔が引きつるのを感じていた。

 

こんなのが親では、市原さんが可哀想だ。

 

病気ではないか。

 

「悪魔だったら手を叩いて笑うのかな」

 

「いや、悪魔でも流石に鼻をつまんで視線を背けるだろうな」

 

「……屑が」

 

「まったくだ。 所詮悪魔など、人間が考えた悪に過ぎん。 真の邪悪、真の醜悪は人間であるのさ」

 

ケルベロスの言葉の通りだ。

 

つかみ合いの喧嘩になっている市原さんの両親。あんなのは、それぞれ破滅した方が良いだろう。

 

不倫相手のうち、市原さん父の相手の女は早々に逃走。

 

市原さん母の相手の方は、市原父に殴りかかり。顔面に拳をたたき込んで、歯が何本か折れたようだった。あからさまな反社だ。あんなのを相手に不倫か。いずれにしてもそれで警察が来て、三人を引きずって連れて行った。

 

悪運が消し飛んだのだ。

 

これは更にややこしいことになるだろうな。

 

そう思う。

 

それはそれとして、繁華街の汚染除去をやってくれているカトリイヌさん達に軽く話をしに行く。

 

カトリイヌさんは、ラブホテルの周りにぶちまけられている高濃度の悪運にうんざりしながら、天使と一緒に除去をしてくれていたが、

 

話を聞いて、はあと呆れた声を上げていた。

 

「ダブル不倫にネグレクト。 役満ですわ。 親失格というよりも、はっきり言って人間失格ですわね」

 

「父親の方は年収1500万とかで、ビジネス誌で特集されたとかいう人間らしいです。 正体見たりという奴ですね。 それともビジネス誌なんか真面目に読んでいるような人は、浮気は男の甲斐性とかほざくんでしょうか」

 

「そんなもの、今やわたくしの国でも真面目に読んでいる人はいませんわよ」

 

「ですよね」

 

多少、会話が柔らかくなったか。

 

カトリイヌさんは燐火を年の離れた友達と見てくれているし。

 

燐火もカトリイヌさんに対する初対面の悪い印象はもうなくなっている。

 

ポンではあるけれど立派に仕事をしてくれる人だ。

 

早めにカトリックの腐敗を見せてくれたのは嬉しかったし。今では信頼も感じる。燐火も信頼しているし。

 

この関係を、このまま続けていきたいものだ。

 

軽く打ち合わせをして、汚染除去を燐火も手伝ってから、帰る。

 

少し遅れたが、帰ってから鍛錬のルーチンをこなす。

 

それから、夕食の調理を手伝う。

 

自立のためだ。

 

いくつかの下ごしらえはしておく。

 

おとうさんはこれから耐久配信で、明日の朝までは動けない。もしおかあさんに何かしらあったら、燐火が対応する。

 

今日は久々に戻ってきているが、明日からまた入院だ。

 

一応、予定日近辺は、おとうさんも会社と相談して、仕事に空きを作ってくれているけれども。

 

流石にこれだけ予定日が近くなってくると。

 

何があっても不思議ではないのだ。

 

とりあえず横になって貰っているおかあさんの前で、鍛錬の成果をいくつか見せる。おかあさんは、少しだけ喜んでくれた。

 

「随分腕を上げたね」

 

「ありがとう……ご、ご……。 ありがとうおかあ、さ、ん」

 

「よし、良く耐えた。 もっと自然にしゃべれるようにしていこう」

 

「は……う、うん」

 

まだ敬語が出るのを抑えないと厳しいか。

 

おかあさんはおなかをなでている。

 

この家で生まれる子は幸せ者だ。

 

燐火もこの二人から生まれたかったな。

 

そう思うが。

 

年齢的にあわないか。

 

ただ、血はつながっていなくても、ちゃんとおとうさんとおかあさんは、燐火の両親だ。それは今や、揺るぎのない事実である。

 

いくつか話をする。

 

市原さんについても話す。ただ、ラブホテルで見た騒動については黙っておくことにする。

 

あれは修羅場になるだろう。

 

更に市原さん兄も、この様子ではおそらく警察の捜査の手が伸びる。悪さをしていたようだし、まあ無事では済まないだろうな。

 

悪徳の家。

 

潔癖症に片付けられていた家だったのに。

 

潔癖だったのは、それこそ表面だけだったのだ。

 

そう思うと、見かけを繕うことなんて、どれだけ意味があるのだろうと思えてくる。燐火には、最低限しかやはり興味が湧きそうにない。

 

メールが来た。

 

市原さんからだった。

 

居心地が驚くほど良いという。

 

夕ご飯もちゃんと出てきて、食べられないものとかも丁寧に聞いてくれたという。

 

他の子はいなかったが、それでもこれなら寂しくないと、市原さんは喜んでいるようだった。

 

しかも珍しい動物の高価な図鑑があって。

 

何時間でもそれで時間を潰せると、本気で喜んでいた。

 

今までどれだけの鬱屈をため込んでいたのだろう。

 

市原さんのスマホは、兄の型落ちだった。

 

それも徹底的にロックを掛けられて、使える機能は制限されていた上、あの母親に検閲までされ。

 

メールの内容なども全部見られていたとか。

 

動物の話題をメールで出した翌日、あざを作っていたときがあった。

 

あれはまさか。

 

動物に興味を持つことを、あの母親は単に気持ち悪いという理由だけから否定し、暴力まで振るっていたのか。

 

そう思うと、怒りが噴き上がってくる。

 

だが、先に怒ってくれたのはケルベロスだった。

 

「あの売女が。 許せん」

 

「同感だね。 ああいうのをまさか世間的には自立した強い女性とか言っているんじゃないだろうね。 だとしたら、そういう価値観自体が狂ってる」

 

「燐火の言うとおりだ。 俺もそんな思想がはびこるようなら、絶対に許せん。 この仕事が終わった後、地獄で問題提起をする」

 

それでいい。

 

それにだ。

 

そういう思想を蔓延らせている連中は、だいたい何らかのお金儲けとつながっているのが普通だ。

 

末端で騒いでいるのは猿の群れだが。

 

それを統率しているのは邪悪な詐欺師である。

 

それについてはおかあさんから聞かされているし。自分でも調べたし。

 

ケルベロスがバッカス信仰というもので、実例について示してもくれた。

 

ため息が出る。

 

とにかく、これから児相がきちんと動いてくれて。市原さんが幸せになれることを祈るしかない。

 

まずはあの毒親のくびきからの解放からだ。

 

燐火は大きくため息をつく。

 

物心ついた頃には、周りの大人に何もかも滅茶苦茶にされていて。それが故に、そいつらには期待なんぞ何もしていなかった燐火よりも。

 

まだ実の親の側にいたから。

 

それで色々と生物的な本能からすがってしまっている市原さんの方が重症なのかもしれない。

 

そうとさえ、思えた。







クソ崩壊家庭がまた一つ終わりました。

市原の姓を今後は日根見さんは捨てることになります。

真面目な話をすると、この年齢になるともう親に依存する性質が子供から消えています。

こんな親には愛想を尽かせるし、尽かして良いのです。

まだ少し時間は掛かるかもしれませんが。


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