魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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燐火に妹がとうとう生まれます。

ただ、守るべきものが出来ると……

必ずしも人間は強くなりません。





2、お祝いと隙

おかあさんが入院している産婦人科に呼ばれる。どうやらもう生まれるようだった。

 

予定日より少し早いが、許容範囲内だ。

 

燐火は学校を出ると、まっすぐ産婦人科に向かう。黙々と病室の外で、おとうさんと一緒に待つ。

 

おとうさんの方が胃痛で死にそうな顔をしているが。

 

勿論一番大変なのはおかあさんだ。

 

燐火は座って待つ。

 

燐火の実の両親は、性欲のままに何も考えずに燐火を作り。ほぼ世話もせず自身の快楽を優先し。薬のやり過ぎで死んだ。

 

そんなのは血縁があるかもしれないが、親ではない。

 

今のおとうさんとおかあさんが、燐火の両親だ。

 

だから、血がつながっていなくても。

 

生まれてくる子は、燐火の大事な妹である。

 

しばらく待っている。

 

おとうさんはうろうろしたりしているが、それも仕方がないだろう。声を掛けることはしない。

 

燐火は背筋を伸ばして座り、精神を集中していた。

 

それを見て、おとうさんは言う。

 

「燐火は立派だな。 おとうさんは怖くて慌てるばかりだよ」

 

「家族のためにしっかり働いているおとうさんは、燐火の自慢のおとうさんです……だよ」

 

「もう少し自然に敬語が出るといいね」

 

「……うん」

 

少しずつ、燐火もならしている。

 

家ではもう、大分普通にしゃべれるようになった。

 

だが外ではまだ難しい。

 

ケルベロスが、ふうと嘆息する。

 

「昔は出産で命を落とすことも多かったが、この国の医療は優れている上に誰でも受けられる。 ただ医師の負担が大きいようだな」

 

「それも含めて、なんとかしないといけないんだろうね」

 

「古くには産後の肥立ちがうまくいかずに命を落とす者も多かった。 この病院に死の気配はほとんどない。 立派なことだ。 後はもっと多くの人間が子供を作れば、もっとマシになるのだろうが」

 

そういう話をされると。

 

燐火も少し苦笑いしてしまう。

 

それについては分かってはいる。

 

今の時代は、とにかく子供を誰も作らないことが問題になっている。それは明らかすぎるほどだ。

 

ただ経済的に色々厳しいのだ。

 

馬鹿な企業人事が、人材に何でもかんでも求めるからこうなった。

 

人材の代わりは幾らでもいると思い込んでいるからこうなっている。

 

とにかく、そういうのを全部改善しなければいけないのだろう。

 

総理大臣になれば。

 

いや、それも難しいか。

 

総理大臣を見ていても、自由に振る舞えるようには燐火にすらとても思えない。そう考えていると、やがてケルベロスが言う。

 

「生まれたぞ」

 

「!」

 

看護師が部屋から出てきた。

 

3194gの女の子だという話だった。

 

おとうさんと一緒に、部屋に入る。元気よく泣き声を上げている。

 

おかあさんが相当な豪傑であることもある。

 

燐火と将来は話が合う、武闘派になるのではないかと、ちょっと期待をしてしまったが。

 

勿論妹の人生は妹の人生だ。

 

だから、燐火がそういうことを決めるべきではない。

 

「名前は決めたんだよね」

 

「ああ、そうだよ。 杏美(あずみ)だ。 今日から燐火の妹だよ」

 

「よろしく、杏美」

 

気をつけるようにといわれて、おとうさんに続いて抱き上げる。

 

しばらく泣いていた杏美だが、それは赤ん坊の仕事だ。

 

泣かないような赤ん坊は、何かしらの虐待などを受けているケースがあるという話も聞いている。

 

或いはだが。

 

燐火もそうだったのかもしれない。

 

だから、泣いていい。

 

燐火は、疲弊しきった様子のおかあさんと、妹を見て、そう思った。

 

 

 

とりあえずおかあさんはしばらくまだ入院。

 

杏美もだ。

 

赤ん坊としては未熟児ではなく、ごく普通。大きすぎると言うこともない。後は適切に看護師が世話をすることになる。

 

昔はこういうので医療事故が起きることがあったらしいのだが。

 

今はそういうことも減っているようだ。

 

勿論ろくでもない病院はこの国にもあるので、そういう場所ではどうなるかは分からないけれども。

 

少なくとも燐火が見ている限り、この産婦人科は大丈夫そうである。

 

それで、だ。

 

今、燐火は着替えて、産婦人科の外。

 

既に秋の紅葉が始まった山の中で伏せて、ダイモーンを祓いに掛かっていた。

 

産婦人科の周辺で六度。

 

一週間で、である。

 

流石に偶然ではないだろう。

 

ヘラクレスさんの話も少し前に会って聞いたのだが、日本の端っこ……北海道や沖縄で超大物のダイモーンが出ていて、東奔西走の状態であるらしい。ヘラクレスさんの機動力でも、縦に長い日本列島を行き来するのは骨であるそうだ。

 

明らかに陽動。

 

それに、無視していい陽動ではない。

 

燐火が対応できないレベルのダイモーンは、ヘラクレスさんが対応するしかないのだ。

 

ケルベロスがダイモーンは引き寄せてくれている筈なのだが。

 

それすら無視していると言うことは。

 

やはり、この間から動いている、悪魔が何かしら影響を与えているのだろう。これはケルベロスに言われるまでも無く、分かることだ。

 

とりあえず、ダイモーンを片付ける。

 

いつでも産婦人科を狙っているぞ。

 

そういうような、脅迫にすらとることが出来る頻度だ。

 

燐火もダイモーンを祓い、そしてそれがばらまいた悪運を浄化すると、小さくため息をついていた。

 

「大丈夫か燐火」

 

「大丈夫。 それよりも、出所を突き止めないとどうにもならないねこれは」

 

「ああ」

 

ダイモーンを始末するたびに、ケルベロスはそこから記憶を取り込んでいるのだが。やはり肝心なところは読み取れないようで、そう簡単に「迷子」には行き着けないようである。

 

こればかりは仕方がない。

 

ましてや迷子がどこかに捕らえられているとなると。

 

なおさら厳しいだろう。

 

ダイモーンを倒して記憶をたどれるのなら。捕らえている連中が、それを対策していないとは思えない。

 

とにかく着替えて戻る。

 

汗も掻いていない。

 

燐火一人の家だ。今日はおとうさんは病院に泊まり込む。

 

あんまりこういうことは推奨されないらしいが、不安になる母親のために、ということだそうだ。

 

燐火は黙々と出来合を食べる。

 

昨日おとうさんと買い物に行って、それで買ってきた。

 

来年からはお買い物をするお金を預けて貰い、それで晩ご飯などを買うようにし始めるという。

 

燐火の独立志向を知って、おとうさんとおかあさんが先にそれを決めてくれていた。

 

おかあさんが最初はつきそうそうだが。

 

お金は、使うのに責任をともなう。

 

だから、それに異論はなかった。

 

黙々とルーチンをこなしていると、家に日女さんが来た。珍しい。上がって貰う。防音室などは見せないが。

 

居間で軽く話をするが。

 

ダイモーンだけじゃない。

 

日本系の魔も、活発化しているそうである。

 

「吉野からの帰りでやりあった悪魔の親玉が、何かしているとみて良いな。 ダイモーンだけではなくて、日本の魔もこれだけ出てきているとなると、ひょっとすると日本系の邪神も相手側にいるのかもな」

 

「それは厄介ですね」

 

「ただ、どうも敵側はそれぞれが単独で動いている節がある。 おそらく違う文化圏の悪神や魔がつるんでいるから、連携して動くことは難しいんだろうな」

 

「だとすれば各個撃破の好機ですね」

 

頷く日女さん。

 

ただ、戦闘の逸話があまりないフリッグがあの強さだった。

 

悪魔となると、今でも西欧では恐れが現役で、それを考えるともっと実力は格上かもしれない。

 

吉野からの帰りで打ち倒した悪魔は、はっきりいってたいした相手ではなかったが。

 

それでも大量の悪辣な妖精を従えていた。

 

有名な悪魔だったりしたら、それこそ大量の雑魚悪魔を、使役したりするのかもしれない。

 

ただカトリイヌさんが、有名な悪魔はあらかた魔祓い済みだという話もしていた。

 

だとすると、ある程度弱体化した状態と戦えるかもしれないが。

 

それはいわゆる希望的観測とみて良いだろう。

 

「俺はこれから菖蒲姉と一緒に対策を練ってくる。 ここ最近ずっと産婦人科の側でダイモーンが出ているんだろ。 色々大丈夫か?」

 

「問題ないですよ」

 

「いや、冷静さを保てるか」

 

「……はい」

 

少し自分でも怒りが鬱屈しているのは分かる。

 

相手が的確に燐火の弱点を突けることを暗に示すように動いているからだ。

 

西欧の悪魔は嘘つきであると聞く。

 

ケルベロスに聞く限り、古くはそんな存在ではなかったらしいのだが。時代が下るにつれてどんどん邪悪の権化とされていったらしい。

 

そういった人間の信仰の変遷。

 

悪魔はその影響を受ける。

 

だが、それですら人間の本物の悪意には及ばない。それは燐火も分かっているつもりだ。

 

本当の人間の悪意はこんなものではない。

 

以前、いじめと称する事件で自殺者が出た学校に、暴行の様子を映像として撮りネットに拡散する行為は犯罪であるなどと言うポスターを配った鬼畜外道がいた。言うまでもなくそれこそ犯罪の隠蔽であり、弱者が泣き寝入りどころか、殺されても闇に葬られる可能性が極めて高い悪辣な行為である。

 

そのような悪逆は、人間にしか思いつかない。

 

あれは人間ではない、というような言葉があるが、違う。

 

人間でなければ、其処までの底知れぬ悪意にはたどり着けないのだ。

 

ただ、それでも。

 

人間に比べればまだマシだとしても。

 

悪魔の悪意に、腹が立つのもまた、事実ではある。

 

日女さんは、それを冷静に指摘していると言えた。

 

「とりあえず、悪魔についてはカトリイヌと連携して当たるとしてだ。 今まで奴らの親玉が何者なのかが分かっていねえ。 カトリイヌが取りこぼした大物悪魔がいないか調べているようだが、俺の見立てでは、多分相手は一般的に知られている大悪魔じゃねえな」

 

「一般的に知られている、ですか」

 

「七つの大罪だとかに対応する悪魔とか、ソロモン王72柱とか、そういう悪魔は一般的に知られているだろ。 だがな、それ以外に設定だけ強大な悪魔ってのがいるんだよ。 設定しか存在していないが、強大だってされているような奴がな」

 

神話には、名前しか出てこないような神様も多い。

 

ケルベロスも、ギリシャ神話の神々にはそういうのがたくさんいるという話をしていた。

 

ケルベロスが以前教えてくれたギリシャ神話の地獄……タルタロスも、分類的には神になるという。

 

地獄……タルタロスという世界そのものが神になっていると言う訳だ。

 

似たような発想は一神教にもあり、アバドンという体内が地獄になっている悪魔が存在するのだとか。

 

このアバドンは蝗害を単一の悪魔としたものだとする説が強いらしく。

 

似たような発想は誰でもするのだろう。

 

ともかくだ。

 

神としてのタルタロスは、人格もなく。

 

タルタロスという場所としてほぼ扱われている。

 

名前が出てくるだけまだ良い方で。日本神話にもただ名前しか存在せず、最初にちょっとだけ出てくるだけ、という神はかなりいるのだそうだ。

 

一神教の悪魔も同じだそうである。

 

「そういう設定だけ強力な悪魔は、悪魔狩りを熱心にやった一神教の魔祓いでも、取りこぼしている可能性がある。 今、カトリイヌが洗ってるが、俺たちの方でも尻尾はつかまないとまずいだろうな」

 

「そうですね。 前に遭遇した悪魔、燐火単独で倒せるかは微妙でしたし」

 

奴単体ならどうにでも出来た自信はある。

 

ただ、奴は多数の取り巻きを展開していた。

 

それもあって、残念ながら勝てるとは断言しづらいのも事実である。

 

いずれにしても、フリッグの時も、名前がはっきりしたから打ち倒すことが出来たし。

 

奴の悪辣な仕掛けを解析したから、倒すことが出来たと言うこともある。

 

今度の奴も、何か仕掛けている可能性がある。

 

出来れば手下が仕掛けてきたとき、拷問でもして聞き出したいところだが。

 

まずは、相手を見つけなければならないだろう。

 

日女さんの方でも、色々調べてくれているらしい。

 

政府でも今回のダイモーン騒ぎの背後に、フリッグだけではなく悪神や魔が複数いることは把握しているようで。

 

それもあって、ある程度一緒に動いてくれているようだ。

 

この国の政府は腐っている部分もあるが。

 

それでも政治的な公正度は、世界的に見るとかなりマシな部類であるというのだから、おかしな話である。

 

ともかく、今はおかあさんと杏美、それにおとうさんに、指一本触れさせない。そのために動く。

 

家に戻る。

 

おとうさんは予定通り、以前に告知していた休暇を消化中だ。

 

おとうさんのファンが色々憶測をSNSで流しているようだが。おとうさんがまだ若い男性で、実年齢24くらいという予想が多いらしく。

 

実際にはそれより倍近く年齢があり。

 

しかも今回の休暇が産休の手伝いというのを知ったら、特に女性ファンは発狂するのではないかと思う。

 

ただ、一部ではおとうさんを妻帯者で、しかも中年男性だとずばり予想しているファンもいて。

 

そういうファンは肩身が狭いようだ。

 

燐火としては複雑である。

 

それで正しいよとは言えないのだから。

 

ちなみにおとうさんは、公式アカウントの方は時々更新していて。特に重篤な病気ではないし。

 

必ず復帰するとも言って、それでファンを安心させているようだ。

 

色々気苦労が絶えないだろうに。

 

それでもちゃんとファンサをしているだけ、おとうさんは立派な社会人である。

 

一昔前はVtuberはまっとうな職業ではないという考えまであったようだが。

 

あり得ない話だ。

 

これだけしっかり稼いで、仕事に真摯に向き合っているのだ。

 

サラリーマン以外は人間ではない、みたいな風潮の弊害なのだろうか。

 

燐火としても、ため息が出るばかりである。

 

ともかく、勉強をし、ルーチンをこなし。

 

そしてダイモーンを倒す。

 

時々産婦人科に杏美の様子を見に行く。

 

杏美は健康そのものだが、多分まだ何も分かっていない。愛想を振りまいてはいるが、それだけだ。

 

燐火はあまり杏美を本能的にかわいいとは思えない。

 

これはおそらく、燐火が子供自体を好きではないから、というのが理由であるのだと思う。

 

だからといって、好き嫌いで相手への接し方を変えるようでは。金木のカス一家や、スクールカーストの女帝を気取っていたアホと同じだ。

 

燐火はそうはならない。

 

そう決めているのだ。

 

だから、できるだけ苦労しながら、笑顔を作る。

 

それも、とても難しかった。

 

敬語を使わないだけでも難しいのに。

 

笑顔なんて、どうすれば良いのか。途方に暮れてしまう。

 

ケルベロスがだから表情筋を使う訓練をしておけと言っていただろうとぼやくのだけれども。

 

返す言葉もないというのが事実だ。

 

これでも練習はしてきたのだが。

 

こういう点だけは、奇声を上げて走り回るだけのアホな子供に劣っている。

 

それもまた、事実だった。

 

ともかく、それでしばし時が流れる。

 

十月が終わり。

 

十一月に入った頃。

 

変化が、生じていた。

 

 

 

連絡を入れてきたのは菖蒲さんだ。

 

悪魔の軍勢が確認されたという。

 

ソロモン王の従えていた72柱の悪魔については勉強した。

 

それぞれいい加減な階級が設定されており、そして地獄の軍団を何十個従えているとか、そういう設定もある。

 

ただその軍団数は適当に考えたとしか思えないいい加減さで。

 

ケルベロスも、奔放な想像力で生み出された適当な数字だと断言していた。

 

悪魔、特に一神教で高位とされる悪魔には、そういった軍団を従えているという設定が記されている事が多く。

 

つまりだ。

 

恐らくは、本命が動き出したとみていい。

 

それも何十体ではなく。

 

何軍団である。

 

古い時代の一軍団がどれくらいの数かは分からない。

 

近代……例えば第二次大戦の頃だと、一軍団は百万人にも達することがあったらしい。師団と呼ばれる万人単位の部隊の、更に上の単位。

 

それが軍団である。

 

だが、古代だと、そんな戦力であったかは疑問で。

 

例えばローマ帝国などでは、一軍団が一万人くらいの規模で。これが各地でそれぞれ独立軍単位で活動していたらしい。

 

一神教をモーセが作ったのはもう少し古い時代だが。

 

これがしっかりした形で「一神教」として成立していったのはだいたいローマ帝国が勃興した時期だそうである。それまでは、雑多でいい加減な代物だったのだ。

 

一神教はどちらかというと信仰としては新興宗教に当たると、ケルベロスは言う。

 

特にキリスト教の場合は、成立と発展は更に遅い。イスラム教に至っては更に後だ。

 

まあ、ケルベロスから見ればそうなのだろう。

 

燐火としても、それに異論はない。

 

「今、エクソシストの総力を挙げて対応に出る準備をしているの。 燐火ちゃんも、それを手伝ってほしくてね」

 

「分かりました。 ただ、陽動の可能性はありませんか。 悪魔はずっと燐火を狙っているように見えました」

 

「……それはちゃんと考慮済み。 燐火ちゃんの周囲の人物には、相応の手練れを貼り付けているから、安心して」

 

「了解です。 すぐに行きます」

 

着替える。

 

神器鉄パイプを持つ。

 

まだおかあさんは産後で体が上手に動かない状態だ。

 

おとうさんは今日は病院から帰ってくるようだが。それでも配信復帰は先になる。

 

杏美はまだまだ右も左も分からない。

 

そんな状態の家族だ。

 

守るのは、燐火しかいない。

 

すぐに出る。

 

全力で走る。

 

ケルベロスが、ナビをしてくれる。

 

相手の気配がどちらにあるかは分かる。

 

確かにぞっとするほど濃い魔の気配だ。燐火も五感を研いでいるから、そういうのは分かるようになってきている。

 

ケルベロスは道をどう行くか、障害物、転びそうなもの。

 

そういうものを対策してナビしてくれる。

 

それだけで充分。

 

それに幸運という観点でも支援してくれる。

 

バッドイベントが途中で起きて、現地到着が遅れることは、可能な限り防いでくれる筈である。

 

見えてきた。

 

戦場になりそうなのは、駅の近くの山か。

 

この辺りは、線路が間を縫っているようにして、あちこちに山が林立している。

 

山は人間の領域ではない。

 

森もしかり。

 

欧州では、森は魔女や狼男が住む場所だと長らく恐れられてきた。

 

それはドイツなどでは、森を通って南北の海から海へと行けると言われたほど森が濃かったからでもあり。

 

ある戦いでは、ローマ軍がこの特有の深い森に誘い込まれた挙げ句、全滅するという記録的な大敗を喫したことがある。

 

当時世界最強の軍隊だったローマ軍にとっては衝撃的な出来事であり。

 

それが恐れへとつながっていったのかもしれない。

 

ただ、それでも。

 

悪魔の大軍が、町中に入り込んで暴れるよりはマシだ。

 

現着。

 

既に自衛隊の部隊も出てきている。

 

ただ、表向きにはそう悟らせないようにしているが。

 

燐火は検問で、名前を言うと、即座に通してくれた。

 

向こうでドカンドカンと戦闘音がしている。

 

気配からしておそらく林西さんと菖蒲さんが、そろって暴れているな。

 

ただ相手の数が数だ。

 

それに悪魔は、ダメージを与えることが出来ても祓えない。一神教の魔祓いの、一線級の人がたくさん必要になる。

 

ただ、カトリイヌさんくらいの人では、悪魔の軍団を相手にするのはおそらく厳しい筈だ。

 

最低でもセバスティアンさんや、同格の人が十数人は必要だろう。

 

戦地に突入。

 

体が崩れている悪魔を早速発見。

 

魔法のステッキ(鉄パイプ)で問答無用で殴り倒す。

 

うちの家族に。

 

手を出させるか。

 

吠えると、燐火は乱戦に飛び込む。

 

そして阿修羅のごとく、暴れ始めていた。







※仕掛けてきた悪魔の軍団について

これはソロモン王72柱の伝承などで設定的に触れられている下級悪魔の軍団のことですね。だいたいの著名な悪魔はいくつの軍団を従えているとか明記されています。

古くには悪魔は一体で一個師団の力を持つとか言われていたようですが。

まあ、設定だけですね。

設定だけで空虚な存在なので、実際の実力ははっきりいってお察しです。


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