魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、苦境はどちらも

フルーレティは舌打ちしていた。

 

燐火の脅威を皆に伝えた。そうしたら、そうかとだけ言われたのだ。

 

確かに片方は「魔獣」という概念ではおそらく世界の神話で最強の存在。

 

もう片方も、邪神としてはかなり強大な存在。

 

最近生まれたフルーレティとはモノが違う。

 

魔獣の方は特に顕著で、元が神話から物語に成り果ててしまった今であったとしても、その実力は凄まじい。

 

生半可な悪魔では、手も足も出ない。

 

そういう次元の存在だ。

 

フリッグのアホはともかくとして。

 

フルーレティも明らかに下に見ている。

 

だが、その言葉はしっかり受け取ってはいるようだ。

 

古豪であるが故だろうか。

 

ともかくだ。

 

多数の配下軍団を呼び出したが、想像以上に弱体化していたし。それらもほぼ失ってしまった。

 

この国の魔祓いの実力を正直見くびっていた。

 

特にトップ層は、魔境に等しいこの国の邪神や悪霊、魔とやりあってきただけの事はある。

 

あれは一神教で最強の魔祓いよりも下手すると格上かもしれない。

 

戦闘で冷静に相手の実力を見切ったフルーレティは。

 

燐火と一対一の対決をする決意を決めていた。

 

ただ、分霊体を使ったり、更には配下軍団を呼び出したこともある。

 

力は既に、相当に墜ちていた。

 

出来ればカスみたいな人間の悪意を吸収して、多少力を戻したいところではあるのだが。

 

今、フルーレティはどうしてか、武人としての心がたぎっていた。

 

まだ小六。しかも女子。

 

それであの凄まじい戦意と技量。

 

単純に燐火とやり合いたいという気持ちもあるのである。

 

技量だけの勝負であれば、フルーレティとしても、どうなるかちょっと分からない。単純な力で、今は押し切れる自信がある。

 

だが、それはそれだ。

 

やりあってみたい。

 

そういう、武人としての、戦士としての本能。

 

創作悪魔に過ぎないフルーレティだからこそ、それが滾っていたのかもしれない。

 

燐火は迷惑そうにするかもしれないが。

 

それはそれとして、滾るのも事実だった。

 

電柱の上に座り込んで、思索にふける。人間に興味を持ったのは何時以来だろう。都合良く自分を創作した愚図生物。そうとしか考えていなかったのに。

 

いや、人間に興味を持ったんじゃない。

 

あの地獄みたいな目をした、燐火という一個体に興味を持った。

 

生物としての雌としてではなく、戦士としてだ。

 

電柱の上で考え込む。だが、思索は長くは続けられなかった。

 

「おい」

 

「む……」

 

声が掛かる。

 

マルコキアスだった。

 

黒い犬の姿をした悪魔は、苛立ちを隠そうともしていない。

 

確かにあまり派手に騒ぐなと釘を刺されたのに。

 

それをフル無視したのと同じだ。

 

苛立つのも無理はなかった。

 

「随分と暴れてくれたな。 どう落とし前をつけるつもりだ」

 

「……少し待ってくれるか」

 

「ほう」

 

「この間の戦いを見ていたか」

 

マルコキアスが黙り込む。

 

見ていたのだと判断して良さそうだ。

 

「俺は戦士としての力を試したくなった。 あの燐火というギリシャ系魔祓いと、一対一で勝負するつもりだ」

 

「どういう風の吹き回しだ」

 

「言葉通りだ。 あの凄まじい技量、しかも短時間で身につけたと聞く。 俺は創作された設定だけの悪魔だ。 誰も俺を恐れていないし、俺の武勇の逸話も一つもない。 だからこそ、俺は本物の戦士として目覚めつつあるものと、やり合ってみたくなった」

 

「そうか。 そういうことであれば止めはしない。 ただ……」

 

マルコキアスが、苛立ち紛れに言う。

 

やはり、暴れすぎだと。

 

確かにフルーレティは配下軍団……実体も何もないから、どれもただの張りぼて悪魔だったが。

 

それを使って、これだけの騒ぎを起こした。

 

魔祓いが警戒態勢に入るのも当然で。

 

やっと魔祓いの手から逃れて、のんびりと隠遁生活をしているマルコキアスには面白くないだろう。

 

フルーレティだけではなく、他の同志も含めてだ。

 

「我も流石にそろそろ我慢の限界でな。 我と同じように考えている者も多い。 物語に堕した駄犬風情と、過去に無敗だった邪神であろうが、今この国の寛容な信仰で居心地良く過ごしている我と似たような立場の存在は他にもいる。 今までのように暴れ続けるなら、我も流石に看過できん」

 

「そうだな。 ……分かった。 肝に銘じておく」

 

「そうしろ。 では、一対一の勝負、武運を祈っているぞ。 同じ一神教系の悪魔としてな」

 

マルコキアスが消える。

 

元々格上の相手だ。

 

設定だけならフルーレティの方が強そうだが、そんなものは設定だけの話である。

 

悪魔としてずっと古く、ずっと格上。

 

それを考えると、マルコキアスの方が強いに決まっている。

 

フルーレティもあらがうつもりはない。

 

それに、そろそろ潮時かもしれなかった。

 

本物にはなりたい。

 

それはある。

 

だが、同志と違って、フルーレティは今は。

 

燐火との戦闘で、自分を証明したくなっていた。

 

それにだ。

 

あれほどの戦士と、最高の条件で戦って勝ったのであれば。

 

それは自分を証明したことにならないだろうか。

 

そういう気持ちもある。

 

悪魔として、正々堂々はおかしいという意見もあるかもしれないが。

 

古くには善良と明記される悪魔や。

 

真面目であったり、有益である悪魔は幾らでも記載がある。

 

一神教で邪悪の権化にされる前は、悪魔とは別に邪悪の権化ではない存在だったのだ。

 

だからフルーレティも。

 

そういった、必ずしも邪悪の権化などではない。

 

「霊」としての悪魔になりたいと、思っていた。

 

 

 

(続)








※マルコキアスについて

こちらも出所がしっかりしている悪魔です。フルーレティとはそういう意味で土台が違っていますね。

マルコキアスは現在日本の八百万の神々という思想を気に入っていて、悪魔ではありますが基本的に人間を殺すなどの悪さをするつもりはありません。ここでなら、なんとなく存在していることが可能だからです。

土台がしっかりしている悪魔とは言え、一神教で散々もてあそばれてきた存在なのは事実。

だからこそ、フルーレティの苦悩は理解できるのです。




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