魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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燐火の激動の小学生活が終わり。

中学生活が開始されます。

ちなみに燐火は自覚はありませんが、既に恐れられまくっていて、破壊神とか周囲に言われています。

以前高校生三人を単騎でぶちのめしたのが要因ですね。それに尾ひれがついて噂が拡散したためです。

それはそれとして。

小学生活最後に、やることがあります。







1、小学生活の終わり

おかあさんが杏美を連れて帰宅した。随分久々に思う。

 

さっそく訓練を一緒にやって見る。

 

ブランクがあるとはいえ、おかあさんの技量は流石だ。空手にしても合気にしても、まだ燐火より練度が全然上である。

 

しかも、ブランク分を短時間で取り戻している。

 

本当にこの人の子供として生まれていたらな。

 

そう燐火は、一緒に鍛錬をしながら思う。

 

正拳を二人並んで、的にたたき込む。

 

子供が生まれて、体が安定してすぐ。

 

それでもおかあさんの技量は凄まじく、正拳を打ち込むときの音が重い。ガタイの違いも勿論あるけれど。

 

それ以上にやはり、積み重ねてきた練度が違うのだ。

 

燐火は達人が教え、ケルベロスが指導してくれたことによって、短時間でここまで腕を上げることが出来た。

 

だがおかあさんの場合は天才で。

 

しかも天才が努力を欠かさなかったのだ。

 

それは簡単に追いつくことが出来るわけがない。

 

杏美もひょっとすると。

 

まあ、それはいい。

 

ともかく、鍛錬を終えて残心。

 

後は奥義の歩法を夕方くらいに一人で鍛錬する。

 

理論は理解した。

 

だが、それを即座に再現できるかは話が別。とにかく今は、淡々とやれることをやっていくのみだ。

 

三学期に入って、もう中学に備えている。

 

燐火は結局受検が必要ない、そこそこの私立に行くことになった。

 

中学は涼子と別だ。

 

だが、涼子とは連絡を取り合うつもりであり。

 

今後も友達である。

 

最初に燐火と友達になってくれた存在。

 

だから、これからも大事な存在だ。

 

一方、日根見ちゃんはやはり燐火と同じ中学に進学することになった。この辺りは、既に養子縁組の話を進めている師範が決めてくれたらしい。

 

家ではやっぱり凄まじい厳しさのようだが。

 

しかしながら、理不尽な厳しさではなく。

 

新しいおとうさんは、とにかく細かいところまで丁寧に教えてくれて嬉しいと、日根見ちゃんは学校で言ってくれている。

 

児相は良い仕事をしてくれた。

 

元の家族がそろってゴミカスだった事もある。

 

それらは全部忘れて。

 

新しい環境で、日根見ちゃんがうまくやって行ければ良いなと思うばかりである。

 

とりあえず、最後の宿題などを片付けておく。

 

後は中学の準備だ。

 

制服については、最初から少し大きめのを着ることになる。

 

がっつり鍛え。

 

食事などにも気を遣った結果、燐火は同世代の男子よりも少し背が高いくらいである。まだまだ伸びている。

 

中三くらいで女子は背の伸びが止まることが多い。

 

それを考えると、これより更に伸びるかはちょっと分からないが。

 

いずれにしても、背が伸びることを前提に、制服を買っておいた方が良いだろう。

 

燐火が裏で魔祓いを続け。

 

毎回十万単位で稼いでいることは秘密だ。

 

もしも何か家にあった場合、こっそり融資するつもりだが。

 

おかあさんはこれから、警察に指導役として出て、パート代わりに稼いでくるつもりであるらしい。

 

ただし杏美がもうちょっと育ったら、の話になるし。

 

もし更に次の子が出来るようなら、それも駄目になるが。

 

おとうさんは既に配信を再開。

 

しっかり稼いでいる。

 

とりあえず、燐火と杏美の学費は全く問題ないそうだ。後は家族が老後暮らしていけるか、だが。

 

それについても、燐火が稼いでいるし。

 

正式に公務員になって、それで自宅に最悪の場合はお金を入れる。

 

おとうさんにもおかあさんにも、実の両親と違って本当に世話になった。

 

だから、それは何の問題もなかった。

 

制服に袖を通して、それで着込んでみる。

 

ブレザースタイルのものだ。

 

夏用のものも既に用意してある。

 

靴などはもうちょっと実用的なものがよかったなと燐火は思ったが、まあそれはどうでもいいか。

 

動きやすさについて、確認しておく。

 

縫い目などを自分で補強。

 

激しく動く場合、破損するようでは意味がないのだ。

 

おかあさんが着こなしを喜んでいるが。

 

燐火としてはスカートなんてものは無駄なひらひらであまり好きではない。だからスカートの下にスパッツをはくことにした。

 

「昔はセーラー服というのが制服だったんですよ……だよね。 どうしてこんなに変わった……んだろう」

 

「良く耐えたね。 馬鹿な連中が、性的な云々だとか難癖をつけて、それで変わったの」

 

「そんな連中の寝言を真に受けた……の? 馬鹿みたい……だね」

 

「そう、馬鹿みたい。 セーラー服自体、元々は海兵の制服だったもので、別にアイコンでもなんでもなかったのにね。 人権がどうのと言っている人たちの何割かは、それでお金を稼ぐことしか考えていない。 それの指示で動いている人たちは猿の群れ。 それについては、昔から変わっていないんだよ」

 

おかあさんは警官として、そういうカスと接してきたからだろう。

 

それもあって、少し寂しそうだった。

 

ともかく、制服は問題なし。

 

後は、時間を見て学校を見に行く。

 

場所はそれほど離れていない。

 

これだったら、特に問題はないだろう。

 

無言で歩きながら、道の様子を確認しておく。

 

日根見ちゃんはちょっと遠いか。

 

いや、最近鍛えているし、走るのも前に比べてぐっと早くなってきた。多分大丈夫だろうと思う。

 

それもあって、日根見ちゃんはこの距離が嫌だとは思っていないようだし。

 

それは本人の問題だから、どうこういうつもりはない。

 

ちなみに涼子の行く中学も見に行く。

 

ちょっと高級そうな建物だ。

 

だが、これは。

 

涼子も踏み台に使うつもりだな。

 

司法試験を受けるのであれば、それなりに勉強が出来るとされる学校を通っていた学歴が好ましい。

 

涼子は既に高校の勉強も始めている。

 

来年……いや来年度だから今年か。

 

中学に入ってからは、司法試験の勉強も始めるつもりのようだ。

 

弁護士になるよりは、裁判官になってほしい。

 

そして、カスみたいな弁護士が犯罪者ばかり擁護するのを、一刀両断してほしいものである。

 

まあそれはあくまで燐火の考えだ。

 

涼子には、涼子の考えがある。

 

干渉せず。

 

これからも、刺激を与え合う友人でありたかった。

 

フルーレティは懸念点だが。

 

まだ仕掛けてこない。

 

おそらくだが、分霊体を潰されたことで疲弊したダメージを回復しているのだとみて良いだろう。

 

だが、燐火もここしばらくで力を上げている。

 

特に奥義の修得は大きい。

 

無言で家に戻って、残った時間も鍛錬を続ける。

 

その間、杏美の世話もする。

 

まだ泣くことしか出来ないし。

 

世話をしなければ生きていくことが出来ないが。

 

哺乳類の子供というのは、基本的にそういうものなのである。

 

だからそれでいい。

 

それに、子育ての経験を積んでおくのも、これもまた立派な勉強だ。だから、しっかり全て覚えておく。

 

泣き方で何をすればいいのか。

 

どうすれば泣き止むのか。

 

そういうのを覚えていく。

 

ケルベロスもアドバイスしてくれるが、ぼやく。

 

「核家族化とかいったか。 三世代で暮らしている間は、そもそも祖父母が母にこういうのを教えていたし、負担も軽減していたのにな。 それを人権が家制度がとか騒ぐ連中が、本来の人間の強みを潰してしまった訳だ」

 

「そうだね。 人間はどこまで馬鹿なんだか。 過去の失敗には学ばないし、どれだけの愚行でも正当化するし」

 

「燐火もそうなるなよ」

 

「分かってる。 それで、揺らし方はこのくらい?」

 

ケルベロスは、もう少し心なしかゆっくり、と教えてくれる。

 

勿論子供によっても好みが違うのは分かっているが。

 

燐火もだんだん杏美の好みが分かってきた。

 

それで、だんだん世話に習熟してきた。

 

これならば、もう一人出来ても問題はなさそうだな。

 

そんな風にも思った。

 

 

 

小学校の卒業式を終える。この学校の先生は、燐火が最初にいたクソ学校とは大違いだった。

 

最近知ったが、あの学校は人員が総入れ替えになったそうだ。

 

それはまあそうだろう。

 

自殺などをもみ消しまくっていたし。

 

金木家のカスどもに都合良く成績まで偽造していた。

 

腐った会社なんかでも、似たようなことをしている場所は決して少なくないという話は聞いたことがある。

 

だがいずれにしても。

 

燐火はそれについては自業自得だし。

 

事件に関わっていた教師と呼ばれていた害獣が、全部適切な処置を受けることを望むだけである。

 

あの学校で教わった学問など一つとしてない。

 

実際問題、今の小学校で、一から全て勉強し直したのだ。最初はずっとドリルばかりやっていた。

 

あの学校で知ったのは。

 

人間というのが如何に邪悪で、際限ない悪意に満ちているか、ということだけ。

 

それを幼い頃からたたき込んでくれたことだけは感謝する。

 

代わりにもしあの学校の関係者と会うことがあったら……いや、今の学校は正常化しているようだから、元関係者か。会うことがあったら。

 

お礼に再起不能になるまでぶっ潰してやる。

 

それが今の燐火の素直な気持ちである。

 

ともかく、今の学校はそれとはまったく真逆で、本当の意味であらゆる点で世話になった。燐火にとってはケルベロスとおとうさんとおかあさんと同じで、足を向けて眠れないレベルである。

 

カスもいたけれど、学校でもきちんとそれらに対応してくれた。

 

敬意を込めて、学舎に礼をする。

 

先生達にも、世話になった人には礼をして回る。

 

変わった先生も多かったけれど。

 

みんな燐火の勉強を根気強く支援してくれたし。

 

燐火が制圧したクソどもに、相応の制裁をしてくれた。ちゃんと大人が大人としての仕事をしていた。

 

それだけで、どれだけ貴重な場所だったのか。

 

燐火はここを忘れないだろう。

 

涼子と日根見ちゃんと、途中まで一緒に行く。

 

それで、涼子とはまた時々直に会うことを約束して、それで別れる。日根見ちゃんは前よりも帰路で一緒になる時間が長い。

 

春になり始めている今。

 

色々な鳥がいて。

 

それについて、いちいち細かい知識を教えてくれるので、燐火としても助かる。細かい知識は、何一つ無駄にならないのだ。

 

さて。

 

それはそれとして、ついに来たか。

 

小学校最後の大仕事だ。

 

日根見ちゃんと別れて、それで、さっさと着替える。

 

歩法はどうにかマスターした。

 

その後の一連の動きは、およそ七割というところだ。

 

なんとかやれるか。

 

いずれにしても、相手はどうやら、燐火との一対一を望んでいるようだ。最近は奴が繰り出したらしい悪魔も出てこなかった。

 

燐火と本気で一対一の勝負をするつもりになったというわけで。

 

それを袖にするわけにもいかない。

 

もしも袖にしたら、どんな八つ当たりを始めるかも分からない。

 

ここで。

 

小学校の総決算として。

 

勝負をつける。

 

山の中を行く。

 

山の中の、少し開けた場所。

 

其処で、腕組みして、フルーレティは待っていた。

 

充溢した力。

 

前に悪魔の軍団とやり合ったときと、ほとんど力は変わらないように思う。つまり、分霊体を切り離して消耗した分は、回復済みと言うことだ。

 

鞄を木陰におき、魔法のステッキ(鉄パイプ)を抜く。

 

一定の距離をおいて止まる。

 

しばしの沈黙。

 

ケルベロスが、気をつけろという。

 

確かに、悪神化し、何もかも終わり果てたフリッグのようなただのゲスと違う。

 

此奴は燐火を認め、油断していない。そして、今。全てを賭けて、一騎打ちに望んできている。

 

油断してはいけない。

 

そして、こういう相手には。

 

相手が今までどれだけ卑劣なことをしてきていたとしても。

 

敬意を払うべきだった。

 

「改めて名乗ろう。 俺はベルゼバブ麾下、フルーレティ」

 

「平坂燐火です。 本当に一対一でやるつもりなんですね」

 

「ああ。 俺も本物になりたいんでね」

 

「……本物、ですか」

 

フルーレティの境遇は分かっている。だから、燐火はそれについて茶化すような事をするつもりはない。

 

すっと青眼に構える。

 

フルーレティはだらんと両手を垂らしたまま、その場に立っているが。

 

隙がないな。

 

じりじりと、わずかずつ動く。

 

相手も燐火に隙を見いだせないらしい。

 

四ヶ月ほどで、多数のダイモーンを駆逐した。

 

その中には、少し前だったら燐火では対応不可能で、ヘラクレスさんでないと手に負えなかったような相手もたくさん混じっていた。

 

それもあるが。

 

その期間の鍛錬で、ぐっと燐火自身も技量を上げた。

 

少し前におかあさんと並んで鍛錬をして、まだ及ばないとは悟ったが。

 

それでも、今の技量なら。

 

空手を適当にかじった程度の高校生男子くらいなら、問題なくひねれる自信がある。

 

構えを中段に。

 

そして、下段に切り替えつつ、ゆっくりと右に。

 

フルーレティもわずかずつ移動しながら、仕掛ける隙を狙ってきている。

 

ふっと、大きな音。

 

恐らくは凄まじい気迫のぶつかり合いに驚いた鳥が、それで飛び立ったのだ。恐らくはムクドリだろう。

 

それが、勝負の引き金となっていた。

 

うおん。

 

空気が唸る。

 

即座に間合いを両者ともに詰める。

 

そして、互いの武と武を。

 

蓄積させた全てを。

 

激突させていた。

 

 

 

大量のつぶて……雹が、周囲に漂っている。遠距離戦は自殺行為だ。好きに雹を操るという逸話がフルーレティにはある。

 

フルーレティは両手を氷の刃に変えて、体中に氷の刃をまとって、燐火とつばぜり合いをする。

 

がっと火花が散る。

 

氷と魔法のステッキなのに。

 

それくらい凄まじい激突。

 

気迫のぶつかり合いということだ。

 

強いな。

 

燐火はそれを素直に認めた。

 

フルーレティは実態がない悪魔だ。地位ばかり設定されているが、何一つ神話的な裏付けもないし。

 

実際に悪魔として恐れられたこともない。

 

空っぽの器。

 

本物になりたいという心は、それが故に生じてくる。それは燐火にも分からないでもない。

 

だからといって、今までの行動は許せない。

 

フリッグ一派に加担して、やってきた悪事も相当にあるだろう。

 

だからここで。

 

終わらせるのだ。

 

「剣道はやっとうとか言って江戸時代では遊びと破落戸に笑われていたらしいな。 その割にはつええじゃねえか」

 

「そうですか。 ありがとうございます」

 

「やりづれえなオイ……」

 

「こちらもです」

 

ふっと踏み込むと、まずいと判断したらしいフルーレティが距離を取ろうとするが、させない。

 

此奴に距離を取らせたら、アウトレンジから雹の滅多打ちであっという間に肉塊にされるだろう。

 

燐火は鍛えてきたが。

 

残念ながら魔祓いとしての能力は限定的だ。

 

下がった分詰める。

 

フルーレティはそれを逆手にとって右腕の氷の刃を抉り上げてくるが、がつんと音を立ててはじき返した。それは読んでいる。

 

続けて飛んできた抉るような上段蹴りを回避すると、下段から足を払いに行くが、すっとフルーレティは浮き上がる。だが、それを待っていた。

 

フルーレティは翼を持っているが、今までの戦闘で分かった。

 

飛ぶ以外に、活用方法を知らない。

 

上空から雹を降らせようとしたフルーレティが、飛ぼうとする。

 

その上。

 

態勢を低くすると同時に跳躍し、木々を蹴って更に上を取った燐火が。

 

相手の反応より早く。

 

一撃をたたき込んでいた。

 

「ぐおわっ!」

 

翼と両腕を交差させて防ぎに行くフルーレティだが、残念ながら軽いとは言え燐火の体重全てと、更には上空からの落下エネルギーに加え、渾身の上段。

 

それも剣道で師範にたたき込まれた、呼吸とタイミング全てを乗せた一撃である。

 

更にそれに加えて、魔法のステッキはあまたの悪魔も悪神もダイモーンも既に屠ってきている。

 

まとっている力は、フルーレティの防御を貫くには充分だった。

 

地面にたたき落とす。

 

腐葉土をはねのけながら飛び退こうとするフルーレティの頭を狙って、鉄パイプをたたき込む。

 

必死に逃れるフルーレティ。

 

間合いを即座に侵略する。フルーレティはざっと飛び退こうとするが、吸い付いたように離れない。

 

焦りが顔に浮かぶフルーレティだが。

 

次の瞬間、死角から繰り出された氷の錐を、燐火は鉄パイプではじき砕いていた。

 

「ちっ! 切り札だったんだがな」

 

「逃げ方がわざとらしいので、狙っているのは分かっていました」

 

「その年でどんだけ修羅場くぐったんだテメーは!」

 

「少なくともあの世の入り口に一度は行きましたので」

 

返す刀での顔面での一撃を、必死に腕にまとわせた氷で防ぎに行くフルーレティだが、それも氷をぶち砕く。

 

その瞬間で、やっと立ち上がったフルーレティは、全身にまとった氷を更に強化していく。

 

本気になったか。

 

本気になったからといって、今まで失った体力が戻る訳でもない。

 

燐火も青眼に構え直すと、大きく深呼吸した。

 

まだまだ。

 

こっちは体力に余裕は充分にある。

 

マラソン大会とかで、最近は一位常連だ。男子でも燐火には現状勝てない。中学三年とか高校になると話は変わってくるかもしれないが。

 

現時点での同学年の男子なんて、問題にもならない。

 

フルーレティは態勢を低くすると、奇声を上げて躍りかかってくる。

 

攻勢に出てきた。

 

あらゆる体術を使い。まとった氷の刃を四方八方からたたき込んでくる。距離を取らせてはくれない。

 

そう悟っての、接近攻撃策だ。

 

燐火はそれを鉄パイプでことごとくいなしながら、機会をうかがう。

 

時々意図的に作られた隙には引っかからない。

 

悲鳴が上がった。

 

誰かがたまたま山に入り込んでしまったらしい。それに対して、フルーレティが一喝していた。

 

「さっさと逃げろ! 巻き込まれるぞ!」

 

誰かは知らないが、転がるように逃げていく。

 

それでいい。

 

フルーレティとの決戦が近い事は既に連絡はしてある。

 

おそらく公安の方で対処してくれるだろう。この戦いは、燐火がやらなければならない。増援が来たらフルーレティはおそらく逃げる。その場合、決着が先送りになり、フリッグも属していた一派は戦力を温存する。

 

それではまずいのだ。

 

「意外ですね。 まさか避難を呼びかけるとは。 悪魔に向いていないんじゃないですか」

 

「おまえ等よりは倫理的にマシだってだけだ。 オラ、そっちもそろそろ本気を出しやがれ! 温存してるのが見え見えなんだよ!」

 

「そうですね……」

 

猛攻を裁きながら、燐火は認めた。

 

フルーレティはフリッグとは違うようだ。

 

だとすれば、こっちも。

 

師範から教わった奥義で答えなければ、むしろ無作法というものだろう。

 

すっと意識を切り替える。

 

ケルベロスが頷いてくれるのが分かった。

 

今。燐火は。

 

魔祓いとしての力と同時に。

 

武道家としての練り上げてきた蓄積を、解放する。







フルーレティとの決戦開始!

短期間ではあるものの、師範から受け継いだ奥義を、実戦投入する時が来ました。

なお、燐火はフルーレティを悪くは思っていません。

フリッグと違い、悪行はしたものの途中からやり方を切り替え正々堂々と挑んできた以上、正々堂々と迎え撃つつもりでいます。


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