魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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4、実力は内に秘める

ダイモーンを祓う。

 

今日は休日だが、これで五体目だ。町中で出現している。それもあって、ずっと走り回っていた。

 

当然、日女さん達も出ている。

 

この数の、同時出現。

 

ちょっと尋常ではない。

 

悪運をばらまくダイモーンは、簡単に人間を堕落させる。本来はここまで邪悪な存在ではないし、アガトダイモーンとなればむしろ人に有益ですらあるのだが。

 

これらのダイモーン。明らかに様子がおかしかった。

 

ともかく、次に向かう。

 

カトリイヌさんも勿論抑えに出てくれている。

 

指揮を執っている菖蒲さんから連絡。

 

大きな気配だという。

 

「後十二カ所、ダイモーンを祓ったら来てくれる?」

 

「分かりました。 必ず」

 

「これはどこかしらの神格ね。 魔祓いがそろうまでは、私でどうにか抑えるわ。 こんな時に父さんがいてくれればね……」

 

確かに強烈な気配だ。

 

ケルベロスが、最短路を示してくれる。

 

面倒なことに、複合魔は一体もいない。

 

まだフリッグ一派には最低二柱の魔もしくは悪神がいる。

 

だとすると、複合魔を出してきてもおかしくないのだが。

 

いずれにしても、燐火にしか対応できない。

 

走り回る。流石に二十㎞以上走ると、疲れがたまってきた。とりあえず、十四体目。後三体だ。

 

抑えに回っていた魔祓いも、菖蒲さんの援護に続々向かっている。

 

気配がどんどん大きくなってきている。

 

これは、急がないとまずいな。

 

車が来る。

 

公安からの指示で、自衛隊が回してくれたようだった。

 

とりあえず乗せて貰い、魔祓いの体力を温存する。

 

ケルベロスが車かと言いながら、それでも最適路を指示してくれる。渋滞などを完全に回避するのを見て、自衛官が目を見張っていた。

 

車での移動中、消耗を少しでも回復するべく、スポーツドリンクを口に含む。

 

そして残り三体。

 

どれもたいした相手ではなかったが、即座に祓った。

 

流石に息が上がる。

 

ケルベロスが、次が本番だと気を引き締めるように促してくる。それは分かっている。だから、今必死に頑張っているのだ。

 

現地に向かう。

 

雷がドカンドカンと墜ちているが。

 

ともかく現地に到着すると、嫌な予感がした。

 

雨は降っていないのに、何度も雷が落ちている。現地の近くで。日女さんが負傷して、うずくまっていた。

 

「日女さん!」

 

「燐火か。 気をつけろ。 菖蒲姉でも苦戦する相手だ。 こんな時に一線級の魔祓いがあらかた出払っているなんてな」

 

「これは、生半可な神格ではないぞ。 燐火、飛ばしていけ」

 

「分かってる」

 

ケルベロスに言われるまでもない。

 

すっと息を吸い込むと、短期決戦のつもりで出る。

 

山の中。

 

自衛隊員が、倒れた魔祓いを運び出している。もう何人もやられているようだ。死んでいないならそれでいいが。

 

傷口が炭化している者もいる。

 

再起不能者も出ているかもしれない。

 

最前線にいくと、凄まじい斥力を感じた。

 

これはひょっとすると、体が進むなと警告してきているのか。

 

ともかく、それでも進む。

 

やがて、がっぷり四つに愛染明王と組む……なんだあれは。

 

ともかく、何か良くわからないものが見えてきた。

 

カトリイヌさんが目を回して転がっている。

 

セバスティアンさんだけ残っている。若い方の護衛の人がカトリイヌさんを担いで、離脱していった。

 

「ダイモーン、全て片付けました」

 

「お流石にございますな。 相手は北欧神話の上級神格。 ご油断召されぬように……!」

 

エヴァンジェリンさんが、必死にルーンを組んでいるのが見えた。

 

つまり押さえ込んでなお、菖蒲さんと互角以上にやりあって、横やりを片っ端から返り討ちにしているのかあのモヤモヤ。

 

何者だ。

 

トールだとしたら、しゃれにならないのだが。

 

燐火も無言で突貫。

 

そいつが、雷撃を放ってくるのを悟り、横っ飛び。

 

その瞬間、仕掛けたのはセバスティアンさんだ。ソロネから放たれた光がモヤモヤを直撃。

 

その体を貫いていた。

 

「む、ぐうっ!」

 

「面ッ!」

 

燐火が面をたたき込む。

 

鉄パイプの火力を最大限生かした一撃は、モヤモヤに明らかに痛打を入れていた。

 

がっぷり四つに組んでいた愛染明王が見るとボロボロだ。

 

どれだけの死闘だったのか、一目で分かる。

 

モヤモヤが形を為す。

 

まだ若い神か。

 

極めてマッシブで、一目で強いと分かる。

 

だが、此奴も消耗している。

 

菖蒲さんとの死闘、無駄ではなかったのだ。

 

エヴァンジェリンさんが正体を特定した。

 

「北欧系で雷神、そしてこの力量。 しかしトールではないとなると、天才たる私は見抜いたぞ。 貴様トールの息子のどちらかであるな」

 

「ふっ、その通りだ。 俺こそはマグニ。 ラグナロクを生き残……」

 

「死ね」

 

不意に割り込んだ第三者の声。

 

全員が備える暇もなく、マグニが一瞬で首をはねられ。更には、全身をズタズタに切り裂かれていた。

 

神だからそれでも滅びることはないだろうが、消滅レベルのダメージだ。

 

割り込んだ何者かは、忘れるはずもない。

 

スコルだった。

 

首だけになり、転がりながら。消滅しつつもマグニが恨み節を述べる。

 

「き、貴様……! フェンリルの……!」

 

「覚えておけ脳筋野郎。 戦略というのは、他に選択肢をそいでいき、確実に勝てるように手を打っていくことだ。 人間を利用しおまえを弱らせ、更にはダイモーンを活用して人間の消耗も加速させる。 そしておまえが倒れることで、面倒なオーディンは更に手駒を失った。 どうせヴィーザルが倒れた後は、大駒を切るのをオーディンが惜しむのは分かっていた。 オーディンに嫌われているおまえが次は来るだろうともな」

 

「ぐ……う……っ」

 

「次はトールをよこすんだな。 ま、親子そろって脳筋である以上、我らの敵ではないが」

 

即座に鉄パイプをたたき込む燐火。

 

思わぬ一撃に、痛打をぶち込まれたスコルが、即座に飛び退き。

 

更にエヴァンジェリンさんのルーンを受けたが。即座にルーンで縛られた左後ろ足を切断して離脱。

 

逃がしたか。

 

エヴァンジェリンさんは、倒されたマグニを浄化して封印する。

 

誰もが冷や汗を掻いていた。

 

ここになって存在感を出し始めたオーディン一派。

 

そして、躊躇なく足一本を捨てて逃走したスコル。

 

これは手強い相手だ。

 

フリッグともフルーレティとも違う。もしもスコルの後ろにフェンリルがいるとすると。

 

今までとは比較にならない、恐ろしい戦いになるかもしれなかった。

 

 

 

(続)







ヴィーザルに続いてマグニを倒される北欧の神々。

ラグナロクでフェンリルを打ち倒すヴィーザル、トールの息子として活躍するマグニ、それぞれを失ったのは極めて大きな痛手です。

物語と化して衰え始めているオーディンが、焦りを募らせていきます。

それが思うつぼであるというのに。




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