魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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忙しい夏休み(休めない)開始。

元々燐火のおかあさんは空手柔道剣道などで警察で師範役を務めていたくらいの腕前。

中学生に教えるくらいは余裕です。





2、夏休みは休めない

小川先輩と鈴山さんが二人そろってきた。どういうわけかカトリイヌさんもまた一緒である。

 

カトリイヌさんと小川先輩はなぜか意気投合したらしく、既にSNSでのアカウント交換をして、頻繁にやりとりをしているそうだ。

 

カトリイヌパイセンと素直に慕ってくる小川先輩に対して、カトリイヌさんは悪くない気分のようである。

 

まあ、何が良いかは本人達次第だ。

 

燐火の知ったことではない。

 

鈴山さんは派手な小川先輩と、これまた外国の人であることが一発で分かるカトリイヌさんに挟まれて、おろおろするばかりだったが。

 

ともかく、鍛錬をすることとする。

 

数時間ほどだが、おとうさんが時間を取って、杏美を見てくれる。

 

まずは道着に着替えて、おかあさんが三人の動きを見る。

 

とにかく指導が丁寧だ。

 

燐火は淡々とルーチンをこなしていたが、ついでだから一緒に見てもらう。

 

とにかく褒めるスタイルの八子さんとは違って。

 

おかあさんは恐らく技量の有無が生死に直結するだろう警察で指導をしていたから、だろうか。

 

とにかく細かい実践的な説明をして。

 

具体的にどうするかを、丁寧に教えていた。

 

鈴山さんは、それを聞いて頷いてメモを取っている。

 

真面目な子だ。

 

一方小川先輩は。かなりやりこんだのだと思う。短時間でものすごく上達していた、けれども。

 

おかあさんから、待ったが掛かっていた。

 

「上手になっているけれど、これは練習量を減らさないと駄目だね」

 

「えっ。 でも大会が間近っすけど」

 

「駄目。 このままだと疲労骨折する」

 

「!」

 

ケルベロスも時々そこまでと燐火に待ったを掛ける。

 

鍛錬はすればするほどいい、というものではないのだ。

 

少年漫画とかだと、体を壊すような鍛錬をして強くなるようなシーンがあるが、あれは迷信だ。

 

現在では超回復などの現象を用いた科学的なトレーニングが主流になっており。

 

伸ばせる範囲で伸ばすのが最適という解が出ている。

 

小川先輩は、やっとまともな先生に会えたといううれしさもあったのだろう。その原則を逸脱してしまった。

 

結果、今おかあさんに色々指示をされている。

 

「とりあえず、今日は動きを見られたから充分。 はっきりいってこれ以上ない速度で伸びているから、これ以上を求めては駄目だよ。 大会に出て成果を出すにしても、それで体を壊したら意味がないからね。 今日はここに来る前もルーチンをこなしたでしょう、これは」

 

「う、ウス。 その通りっす」

 

「ならば今日はここまで。 帰りは歩いて帰ること。 走るのは厳禁」

 

随分と厳しいな。

 

更におかあさんは小川先輩に鍛錬のメニューを聞いて。それから、腕とか足とか丁寧に触って状態を確認した後、メニューを大幅に修正した。

 

これ以上は絶対にやるな。

 

ちょうど良い量。

 

これだけは最低やれ。

 

その三つの数字を指定して、小川先輩にメモを作って渡す。小川先輩は思ったより少ないなと顔に書いていたが。

 

ともかく、礼をして引き下がっていた。

 

「それで、今日は空手の大会でのこつみたいなのも聞きたいっすけど……」

 

「近代格闘技は、別に古代の格闘技と比べて優れている訳でも劣っている訳でもないの。 漫画に出てくるような絶技は、普通の技として今では当たり前のケースもあるしね」

 

例えば、ボクシングのコークスクリューなんかはその典型例であるらしい。

 

あれは本来は絶技レベルの技らしいのだが。

 

今では勿論訓練は必要ではあるものの、普通に技術として普及しており、ボクサーの間では当たり前のように使われている。

 

それもあって、かっこいい奥義で勝ち進む、みたいな展開は期待しない方がいいそうだ。

 

「燐火に話を聞いているけれど、空手部の方に来てくれた外部講師の人、立ち会いも見てくれているらしいね。 その立ち会いと同じようにやってごらん。 現状の実力だと、それ以上背伸びして、必殺技で勝とうなんて考えても駄目だよ。 まずは基礎から習得して、当たり前のように試合で生かせるようにする。 そこから。 天才だったら試合でぶっつけ本番の大技を成功させられるかもしれないけれど、私もそんな天才は見たことないから」

 

「オス! 分かりました!」

 

物わかりがいいな。

 

おかあさんも頷いていた。

 

これくらい物わかりが良いと、教えていて気持ちが良いのかもしれない。

 

それからカトリイヌさんだが。

 

これは今見て分かったが、バリバリのフルコンタクト空手だ。

 

ただそれは、警察で教えているのと同じだろう。

 

警官も悪漢と格闘戦をするケースがある。

 

柔道は弱いように思われている場合もあるが、あれは畳が下になっている時に衝撃が小さいだけであって、アスファルトなどでの投げ技は簡単に致命傷になる。勿論受け身もろくに出来ない人間がアスファルトが下の時に柔道をやっている人間から投げ技を食らえば、それだけで行動不能になる。

 

カトリイヌさんは名家のお嬢らしいし。

 

身を守るために武道をやっているのだろう。

 

これに関しては正解だと思う。

 

名家にあぐらを掻いて、何もかも。学業成績も名声も金で買うような輩が幾らでもいる中。

 

カトリイヌさんは、名家にふさわしい人間であろうと努力している訳なのだから。

 

立派である。

 

まあ時々ポンだけれど、それくらいの方が愛嬌があっていい。

 

カトリイヌさんもかなりうまくなっているようで、おかあさんはそれでも細かい部分の指摘をしていた。

 

「セバスティアンの言うことと全く同じですわ……」

 

「あちらさんも相当な使い手だろうからね。 全盛期に勝負してみたかったわ。 今はもうちょっと無理かな」

 

「実はセバスティアンも同じ事を……」

 

セバスティアンさんも既に全盛期の実力はないらしい。

 

そうか。

 

杏美を産んだばかりで弱体化しているおかあさんと、加齢で弱体化したセバスティアンさんは似たような状態なわけだ。

 

最後は燐火だ。

 

燐火に関しては文句をつけるところが見当たらなかったようで、そのまま続けるようにとだけ言われた。

 

小川先輩が口をとがらす。

 

「いいなあ。 でもこんな凄いママがいるなら、それは専属コーチが側についているのと同じだよねー」

 

「羨ましいですね……」

 

鈴山さんがぼそりという。

 

おかあさんは何か言いたそうにしたが、それで終わりにした。

 

まあ、おかあさんも他の存在(ケルベロス)が事実上の師匠で、トレーニングなどの厳格な管理をしてくれている事は分かっている。まさかケルベロスであるとは分からないだろうが。

 

だから、基礎はたたき込んだが。

 

それをここまでに仕上げてくれたケルベロスはどれだけ凄いのだろうと思っているのだろう。

 

まあ猛獣の性能については、日根見ちゃんから聞かされている。

 

人間の頭脳を持った猛獣であるケルベロスが仕込んでくれたのだ。それは強くなるに決まっている……燐火の元の性能が高ければ……である。

 

とりあえず、大会前の最終調整はこれで終わりだ。

 

小川先輩は大会に出る。一応、鈴山さんも腕試しで出てみると言う。

 

大会の日時は分かっている。

 

既に聞いている合宿と日にちは被らない。

 

出来れば、見に行くつもりだ。

 

 

 

それから数日。

 

予定通り、魔祓いの夏合宿に出向く。

 

これは二回目だ。

 

前とだいぶ面子が代わっている。これはある程度魔祓いをして稼いでいる有望な若者だけが来ているらしく。

 

それ以外はなかなか来られないという事情があるそうだ。

 

燐火は通帳にここに来ても余裕なだけの残高が入っているので、別に問題はない。それにここであれば。

 

現在の実力を、一線級の魔祓い達から鍛錬を受けながら、客観的に確認することが出来るのだ。

 

今回も合宿は山奥である。

 

今回は状況も良くないので、最悪途中で戻ることになる。

 

迎えに来たまだ若い陰陽師の人は、以前「迷子」の痕跡を探ったときに一緒に仕事をした陰陽師親子の親族らしい。

 

今でも陰陽師をやっている人間はそれなりにいるらしく。

 

魔祓いをしている者もいて、その中では一番の腕前として国に評価を受けているのだとか。

 

とりあえず現地では、ほとんど知っている人はいない。これについては、事前に日女さんと約束した通りだ。

 

今回の。フルーレティを倒した後に動き出した相手は、恐らくだが燐火にこだわりを持っていない。

 

むしろ介入しようとしているオーディン一派を潰そうともくろんでいる様子だが。その先に何がしたいか分からない。

 

八百万の神々という思想に対して、敵意があるようには思えなかった。

 

それどころか、ウェウェコヨトルの話を聞く限り、むしろ好意を抱いているのではないかと感じた。

 

ともかく、今は出方を見るしかない。

 

たまに出るダイモーンに対応が出来ないと困るから。

 

合宿を引き延ばすわけにもいかない。

 

ともかく。初日から今回は飛ばしていく。まずは合同での連携魔祓いだが。これについては前回より更に技量を上げたこともある。

 

ほとんど苦労なく、適切な処置を出来た。

 

採点をしている一線級の魔祓いの人は、あれは神職だな。

 

男性の神職だから、日女さんとはちょっと格好が違うが。いずれにしても、かなりの凄腕だし。

 

強力な神の加護も得ているようだった。

 

午後の乱戦を終える。

 

また何人かが強制帰宅させられている。どれもやはり、都会でのぬるい魔……幽霊とかそういうのを相手にして、調子に乗るばかりだった者達のようだ。それが才能があると勘違いしていた。

 

それで今回、力の差が分かって目が覚めるのなら良かったのだろう。

 

その可能性もないと判断されたのだとみていい。

 

まだ喚いている者もいたが。

 

ごっつい警備員にバスに詰め込まれて、強制的に連れて行かれていた。あれは魔祓いとしては廃業だろうな。

 

それだけ思う。

 

軽くルーチンをこなしていると、声を掛けてきたのは。

 

前回、「道」で一緒になった神楽坂輝さんだった。

 

「久しぶり。 燐火ちゃん、背伸びたね。 十㎝はのびた?」

 

「11㎝です。 今まで発育が悪かったのを取り戻そうとしているみたいに伸びています」

 

「はー、伸び盛りとはいえ凄いなあ。 筋肉痛とか大丈夫?」

 

「問題ありません」

 

あるにはあるが。

 

我慢できる範囲だ。

 

燐火は生理痛もそれほど重い方ではないので、その辺りはほとんど影響は出ない。これが厳しいと。どれだけ頑健でも動けない日が出てきてしまったりするのだが。

 

軽く話をする。

 

輝さんは更に実力を伸ばしているらしい。ただ年齢的に、合宿参加は今年が最後であるそうだ。

 

なんでも八年間合宿に参加していたらしく。一番最初に参加したのは小学校低学年だったとか。

 

それだけ古くから魔祓いとして活躍していて。

 

期待されていた、ということだ。

 

確かに汎用性が高い魔祓いだ。重宝されていてもおかしくはないだろう。

 

「今回は多分燐火ちゃん、明日は最高難易度コースに送られると思うよ」

 

「そうなると、現役で活躍している人たちの力が見られるんですね」

 

「前向きだね。 前の道よりも危険度が高いから気をつけてね」

 

「分かっています」

 

さて、他の面子はどうか。

 

高校生らしい魔祓いが何人かいるが、実力はまばらだ。前回菖蒲さんが参加していたので、レベルが引き上げられていたらしい。

 

この様子だと、菖蒲さんレベルはいないか。

 

いや、ケルベロスが注目している人がいる。

 

燐火と同年代に見えるが。

 

あれは多分高校生だ。

 

ものすごく陰気で、隅っこで膝を抱えている。周りに人魂が浮かんで見えそうなほどのいわゆる陰のオーラを醸し出しているが。

 

まあ、燐火は別にそれでどうこうと思うつもりはない。

 

「あれは強いぞ。 今回参加している中では最強だろうな」

 

「そうだね。 言われて気づいた。 明日は一緒になるのかな」

 

「さあな。 燐火もかなりいい線は行っているが、今年で最高難易度に送り込まれると、来年がどうなるか分からないからな。 来年はもう良い、ということになるかもしれないが」

 

まあ、それはそれで。

 

進歩したと言うことで、燐火としても悪くない気分である。

 

良く休んで、翌日。

 

燐火は予想通り、最高難易度のコースに入った。

 

陰のオーラ全開の人と一緒だ。

 

他にはある程度経験を積んでいそうな人と一緒だが。

 

いずれもが、とても頼りにはなりそうもなかった。

 

日女さんや菖蒲さんとは比べるのもおこがましいレベルである。

 

さて、今度は何をやらされる。

 

そう思ったのだが、意外にも滝行だ。

 

監督役の魔祓いの人。

 

これもまた仏教系のようだが、林西さんなみの使い手だと一発で分かる人が、なぜ滝行かを丁寧に説明してくれた。

 

魔祓いには精神力が必須である。

 

他の者達は戦闘経験が足りないが、ここの面子は戦闘経験はある程度積んでいる。それについては確認が取れている。

 

故に、基礎能力を上げる。

 

滝行といってもこの滝は霊水によるもので、非常に消耗が激しいものの、耐えきれば一気に基礎能力を上げられる。

 

だから、耐えきれ。

 

ただし滝行はあまりにも厳しい状況でやると、倒れる可能性がある。

 

駄目だと判断したら即座に止めるので、そのつもりで。

 

そういう事だった。

 

まあ燐火としては、何ら異論はない。

 

青ざめている他の皆とは違って、更衣室でさっさと着替える。陰のオーラの人も、青ざめてはいるが臆してはいないようだった。

 

そのまま滝行へ。

 

そういえば輝さんはここではないのかなと思ったが。

 

あの人は直接戦闘向きじゃない。

 

だから余計に、今は直接戦闘を鍛えているのかもしれない。

 

まあ、それでいいのだろう。

 

燐火はともかく、夏ですら冷たい滝壺に足を踏み入れる。

 

滝壺といっても滝の規模がたいしたことがないので、はっきりいってどうということもない深さだが。

 

ただ、足からビリビリ感じる。

 

霊水というのは本当のようだ。

 

「この辺り一帯が魔に相反する聖の領域だが、ここはそこから直結している水源のようだな」

 

「ケルベロスは大丈夫?」

 

「俺は問題ない。 テューポーンとエキドナの子として生まれた俺だが、最終的には魔から離れた。 今はこちらの方が心地よいくらいだ」

 

「そっか。 それはよかった」

 

ともかく滝の下に。

 

陰のオーラ全開の人は、更にものすごい負のオーラを纏いながら、のしのしと滝に向かって歩いて行く。

 

燐火も同じように。

 

そして険しい目つきで監督役が見ている中。

 

二時間ほど滝行をしたが。消耗が凄まじく、それだけで丸一日動けなくなった。

 

ただ、これで相当な基礎能力向上につながると思えば安い。

 

全身が脱力でもしたかのようだが。

 

陰のオーラ全開の人はまだまだ余裕そうだ。

 

それどころか、四時間も平気で滝行をしていて。それが終わった後は、けろっとして部屋の隅で相変わらず座っていた。

 

同じように滝行をした面子は、誰も一時間程度しかもたなかったのに。

 

監督役の人が、今年はレベルが低いなとぼやいていたが。

 

菖蒲さんがいないのだから、仕方がないのかもしれない。

 

ただこの陰のオーラ全開の人、或いは魔祓いとしては菖蒲さん以上かもしれなかった。

 

話しかけてみる。

 

顔を上げて見てくるが。

 

燐火以上に無表情で、じっとこちらを見てくる。

 

そして、ぼそりぼそりという。

 

「話しかけてくるのは面白いわ。 貴方確か平坂燐火ね。 去年の合宿で、初参加で大暴れした」

 

「大暴れかは分かりませんが、去年から参加しています」

 

「私は七年目。 滝行は去年からしているの。 私の名前は蠱毒欄。 名前から分かるかもしれないけれど、呪術使いよ」

 

くつくつと笑う。

 

なんでも呪術を使っていると、どうしてもそれに色々と引っ張られてしまうらしい。ド陰キャでしょうと言われて、流石に反応に困る。

 

笑顔一つ浮かべない燐火だって、陰キャに分類されるかもしれないので。

 

それでも、話しかけているのを見て、周りがおののいている。

 

どうでもいいことだが。

 

何でも欄さんはダークサイドに近い神を行使して、遠距離から魔祓いを行い。アウトレンジによる圧殺を得意としているそうだ。

 

呪術の破壊力は凄まじく、今まで悪神を八柱粉砕した実績があるという。

 

そういう一族であるとかで、先祖の中には日本三大怨霊の一角を倒したものまでいるのだとか。

 

それは凄いな。

 

日本の場合は邪神より大怨霊の方が恐れられている傾向がある。

 

恐れられると言うことは力を受けると言うことで。

 

つまりそれは、それだけ強力だと言うことでもあるのだから。

 

「アドレスを交換しても良いですか」

 

「良いけれど、私ほとんど政府の関係者としかやりとりしないわよ。 いつもは東北の奥地で引きこもりだし」

 

「何かあったら連絡しあいましょう」

 

「私も良いかな?」

 

いきなり会話に参加してきたのは輝さんだ。

 

輝さんと欄さんは知り合いらしく、ふっと欄さんが笑う。まるで怨霊が笑ったかのようだった。

 

「物好きねあんた達。 でもしつこく話しかけてくるようならブロックするわよ」

 

「しないしない。 実際嫌そうだったら話すのやめていたでしょ? こっちとしても欄さんの凄まじい霊力には結構敬意を抱いているんだ」

 

「好きにしなさい」

 

ともかく、連絡先を交換しておく。

 

合宿で、強力な魔祓いとやりとりをするのは有益だ。輝さんとの直アドレス交換なんて、誰がやれるだろう。

 

勿論、それをよそで喋る訳にはいかない。

 

あと、輝さんがサインをささっと書いて、欄さんに渡していた。

 

物好きねといって。それでも欄さんは大事そうにしまっていた。

 

或いはだけれども。

 

輝さんの配信を、見ている人なのかもしれなかった。

 

 

 

合宿最終日。

 

やはり陰陽師の人の式神と渡り合う。今回はかなり基礎能力を上げてきているらしく、前回と同様、かなり激しい戦いになった。

 

しかも今度の相手は、侍は侍でも、多分中身が違う。

 

恐らくだけれども、名のある武人だ。

 

激しい鍔競り合いのあと、弾きあう。何度も鉄パイプと、相手の持っている薄く輝いている刃がぶつかり合う。

 

これは強い。

 

充子と同等か、それ以上だ。

 

それでも、剣道じゃない。

 

それに奥義の歩法を駆使して、とにかく徹底的に攻め込む。

 

歩法を見て、式神はかなり驚きつつも、的確に対応してくるが。途中から、本気を出さないと勝てないと判断してくれたらしい。

 

大上段に構える。

 

なるほど、一撃必殺の構えか。

 

燐火は歩法を駆使して、ぬるりと相手に近づく。

 

その時には本気だからか。紙束にしか見えなかった式神が、完全に鎧武者へと代わっていた。

 

燐火の知識だと、どの時代の鎧かは分からないが。

 

大鎧の迫力がものすごい。

 

それに実戦であれば、大鎧が相手だ。生半可な剣道なんかでは、通用しないだろう。大鎧は見かけだけが凄いのではない。

 

急所への一撃は確実に防げるように出来ている。

 

そう、師範が言っていたっけ。

 

大上段からの、流星のごとき一撃。

 

これは、回避できない。

 

だから、真正面から受け止める。

 

ガンと、激しくぶつかり合う。吹っ飛ばされるが、それでも踏みとどまる。至近。迫ってきていた式神。

 

だが、踏み込むと同時に、胴を払いに行く。

 

第二撃を放とうとした式神が、其処で膝が砕ける。

 

元の体だったら、こんなことにはならないだろう。

 

だが、その急あしらえの体では、所詮はこんなものだ。

 

ガツンと胴が入ると、其処までと声が掛かった。

 

「見事! 私の奥義、星堕としを良く耐えたな。 あのまがつ星の悪神に痛打を浴びせた自慢の一の太刀だったのだが」

 

「ありがとうございます」

 

「星の悪神か……」

 

ケルベロスがぼやく。

 

後は、互いに礼をして、鍛錬終了。

 

そして採点をして貰ったが、今回は滝行でかなり減点されていた。

 

燐火は戦闘訓練は十分出来ているが、魔祓いとしての底力が足りていない。精神修養は出来ているが、それもまだ発展途上だそうである。

 

ともかく、どうすれば良いかの細かいメニューを貰ったのでありがたく受け取る。

 

厳しい評価だったが。これで更に伸びるのなら、安いものだ。

 

後は帰ることにする。

 

今回の合宿では、帰路に襲撃を受けることはなかった。

 

だが、有意義であったことに変わりはない。

 

帰路、日女さんに連絡は入れる。

 

幸いダイモーンは出ていない。

 

そうなると、帰る早々、ダイモーンに遭遇してもおかしくはないなと思いながら。高速道路の左側に広がる雄大な森を、燐火は見つめ続けていた。







忙しい夏休みはあっという間に過ぎていきます。

中一の夏合宿は、短いながらもそれほどの波乱はなし。

問題はここからです。


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