魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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良い意味でも悪い意味でも、見かけで人間は相手を決めつけます。

良い方向で決めつけられているのが鈴山さんですね。

小川さんとは逆方向のレッテルが貼られているその人生は、とても生きづらいと思います。





2、スイッチが入る

鈴山さんと組み手をする機会があったので、淡々とこなす。

 

腕は上がっているが。

 

ただそれだけだな。

 

決定的な一打が足りない。

 

無言で礼。

 

八子さんが丁寧に指導をしているので、燐火は必要ないか。いずれにしても、組み手でも勝負にすらならなかった。

 

真面目清楚系。

 

小川先輩の台詞だが、燐火にはよく分からない。

 

清楚なんて実在するのだろうか。

 

あくまで見た目だけの話だろうに。

 

確かに綺麗に整えた髪も格好も立派だが。

 

その割には、どうしてもやはり乾いて見える。

 

ルーチンをこなして帰る前に、軽く話をする。

 

「勉強について、小川先輩に教わるのに抵抗があるのなら、燐火が教えましょうか」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「……大丈夫にはあまり見えませんが。 今度そちらの家に伺って教えても良いですが」

 

「……っ」

 

明確な恐怖というか、拒否反応が顔に浮かんだ。

 

ああ、これは色々あるな。

 

そう悟ったが、それ以上は追求しない。

 

ただ、ケルベロスが言う。

 

「まずいなあの鈴山という娘。 死相が出ている」

 

「死相ってあるんだね」

 

「ある。 というか、気づいただろう。 あれは日根見と同じパターンだ。 虐待を確定で受けているだろうな。 格好だけ繕っているが、ただそれだけだ」

 

それは、不愉快だな。

 

今の時代は、家の位置などを調べるのは難しいが。

 

仕方がない。

 

帰り道、鈴山さんをつける。

 

今の燐火だったら、警官くらいだったら余裕で尾行できる。それもあって、特に難しくもない。

 

家の位置は特定。

 

非常にこぎれいな家だが。

 

あれはかなり築年数が経過しているな。

 

恐らくだが、家ぐるみで受け継いでいるものと見て言い。

 

だが、その割には車などはそれほど高価な品じゃない。

 

両親も、帰ってくるのが随分早いようだった。

 

仕事なんか、定時で帰るのが当たり前だ。本来は、それで仕事を回すべきである。

 

だが、あれはちょっと雰囲気が違う。

 

ずっと険しい顔をしている二人だ。

 

そして、大分遅れて兄らしいのが帰ってきた。

 

太って堕落しきっているのが分かる。

 

高校生のようだが。

 

あれは両親を舐めきっているな。

 

なるほど。だいたい分かってきた。ついでに兄らしい二人が話しているのをちょっと聞く。

 

両親を徹底的に馬鹿にしている。

 

鈴山さん。巡さんを更に馬鹿にしている。

 

安月給だの無能だの。

 

そういう話をして。

 

妹については、あの役立たずがとか、口を極めて罵っていた。それも半笑いで、である。

 

いずれにしても円満な家庭ではないな。

 

とりあえず、さっさと切り上げる。

 

家に戻った後、ルーチンをこなす。

 

淡々とこなしていくと、杏美が泣き始めた。

 

世話をして、少し時間を浪費するが。

 

おかあさんはちょっと疲労でダウンしている。おとうさんはさっきまで杏美の世話をしていたが。

 

燐火に代わって、配信に戻った。

 

配信の苦労を考えると、燐火もそれにどうこうはいえない。

 

熱ヨシ、おむつヨシ。

 

高い高いをしていたが、しばらくぐずって困った。おかあさんに世話してほしかったのかな。

 

そう思って、ちょっと困ったが。

 

とりあえず、ケルベロスがアドバイスをくれる。

 

「これは単に虫の居所が悪いだけだな」

 

「一番たちが悪いね」

 

「普通は子供はそういうものだ。 どんなに良い子であっても、そういう時は普通だったらある」

 

「そうなんだね」

 

燐火も機嫌が悪くなることはあるが。

 

それは全部自己分析できるので、不可解に感じることはない。

 

ともかくやっと寝始めたので、ベビーベッドに寝かせて、勉強に戻る。

 

ふらふらのおかあさんが仮眠を終えて起き出してきたので。杏美の状態を引き継ぎして、交代。

 

風呂に向かった。

 

これは当面は二人目どころではないだろう。

 

警察をきちんと辞めてきたのは正解だなと燐火は思うが。

 

それ以上は言わない。

 

黙々と勉強を終えて。

 

杏美のチェックをおかあさんがし始めたのを見ると、外で武道のルーチンをこなす。歩法については、更に課題が多いが。

 

まだまだ、鍛錬そのものが足りていないと、鍛錬をすればするほど分かる。

 

力に溺れたアホは幾らでも見てきた。

 

それらが反面教師になってくれている。

 

それをよしとするべきだ。

 

ルーチンをこなす。

 

ケルベロスが言う。

 

「体も出来てきたし、そろそろルーチンを増やすぞ」

 

「やっとだね」

 

「ああ。 成長痛も一段落しただろう。 それで……」

 

具体的なメニューについて言われたので、頷く。

 

ただし明日からだと、釘も刺された。

 

余力がなくなっている状態でダイモーンが出ると厄介極まりない。

 

ケルベロスの判断は妥当である。

 

鍛錬を終えたので、家に。

 

風呂に入って、それから夕食に。

 

実は、平坂家では家族で食卓を囲むことは滅多にない。おとうさんがああいう不定期な仕事をしているから仕方がないのだけれども。

 

今日はおとうさんの配信が短めのものだったらしく。

 

夕食は、久々に杏美も交えてすることになった。

 

もう杏美は離乳食を始めているので、おかあさんが食べ方を指示しながら、一緒に食べる。

 

勿論まだ離乳食以外を与えるのはよろしくないので、他の家族の食べ物を口に入れないよう見張っていないといけない。

 

また、離乳食には絶対厳禁のものもたくさんある。

 

蜂蜜辺りが有名だが。

 

そのあおりを食って、蜂蜜を最近ケルベロスは口に出来ないため。

 

それでケルベロスは、子供のためだから仕方がないといいつつも。

 

ちょっと不満そうにしている事が時々あった。

 

まだ片言だが、スプーンは意外と器用に杏美は使えるようになってきている。

 

これはそろそろおむつも卒業かな。

 

そう思って、少しだけ嬉しくなる。

 

うちは布おむつを使っているのだが。これが洗うのが結構大変なのである。

 

いずれにしても、人間はこの年頃は何も出来ない。

 

それはどんな英雄だろうと同じ事である。

 

もう少しすれば立って歩くことも出来るようになるだろう。

 

少しずつ出来ることが増えていけば。

 

その時は、燐火とも話せる事が増えていく筈だ。

 

夕食を淡々と終えて、それで。

 

ダイモーンが出た。

 

嘆息して、ちょっとランニングしてくるとおかあさんに言って、外に。

 

そして、現地に向かう。

 

かなり大物だ。

 

既にカトリイヌさんが出て、押さえ込みに掛かっているが。見かけ巨大なコウガイビルである。

 

雨の日などにブロック塀などに張り付いている事が見られる品種だが。

 

あちこちに人間の目がついていて、カトリイヌさんが青ざめていた。

 

「燐火、現着!」

 

「早かったですわね。 ともかく、急いでくださいまし」

 

「了解」

 

カトリイヌさんは、こういうの苦手みたいだし、さっさと聖印を切る。

 

破裂するダイモーンの体。

 

だが、二三度ではこのサイズになると倒せない。

 

体長十五mはある相手だ。

 

発見されている史上最大の蛇であるティタノボアやヴァースキと並ぶレベルの相手である。

 

それは簡単には倒せない。

 

連続して聖印をたたき込む。

 

昔は数度聖印を切ると随分疲弊していたが、今ではなんでもない。

 

うるさそうに突進してきたダイモーンを、カトリイヌさんのドミニオンが光の壁ではじき返す。

 

だが、明らかにずり下がっていた。

 

「重……っ!」

 

「同サイズの実在した古代蛇は、体重が一トンを超えていました。 あれが同じくらいの質量だとすれば、不思議ではないかと」

 

「あ、あんな大きな蛇が実在しましたの?」

 

「そういえばそうですよね。 知らなくても不思議ではないですね」

 

ともかく聖印を立て続けに切り。

 

全身が破裂していくダイモーン。

 

三十度ほどで、ついに完全に爆ぜたが。

 

何度もその間に壁で防いでいたカトリイヌさんは、息も絶え絶えになっていた。

 

へたり込んで、ぐったりしている。

 

しゃんと音がした。

 

菖蒲さんが側に来ていて、錫杖を地面に。

 

それで、悪運が浄化されていく。

 

コールタールのように広がっていた悪運は、すぐにかき消えていった。

 

ダイモーンが大量に湧いていた事もあり。

 

それらで悪さをしていた悪党もこの辺りには結構いた。

 

だがダイモーンが滅びることでそれらが巻き添えを食って片っ端から破滅していった結果。

 

最近はダイモーンを倒しても、それで直後に大事件というのは減りつつある。

 

菖蒲さんが祓ってくれたので、礼を言う。

 

レポートは。カトリイヌさんが書くそうだ。

 

「壁にしかなれませんでしたから、せめてそれはやっておきますわ」

 

「そうですか。 無理はなさらずに」

 

「おっと、そうだ。 相談があります」

 

菖蒲さんを呼び止める。

 

小首をかしげた菖蒲さんに、鈴山さんの状況を説明する。そうすると、ああと、皮肉そうに言った。

 

これは知っているな。

 

「あの堕落した高校生、有名人なんですか」

 

「悪い意味でね。 確か学校での勉強がぬるすぎるとかで、授業をまともに受けず、それでいながらテストで好成績を出しているから、それで目をつけられているらしいの。 しかも夜遊びをしている姿も目撃されているとか」

 

「それは大概ですね」

 

「勉学が出来るなら目をつぶる、というのが高校の方針らしいのだけれども。 話を聞く限り、それらを社会の上層につけたら絶対にろくな事にならないね。 ちょっとこっちでも調べておくね」

 

菖蒲さんがそう言ってくれると頼りになる。

 

燐火の方でも、もう少し色々とやっておきたいことがある。

 

とりあえず帰る。

 

途中で勿論着替えておく。

 

今回は、移動中のダイモーンだったらしく、誰かに悪運を注いで、破滅させて力を増していた訳ではないらしい。

 

ただ時間を経て強くなった古い個体らしかった。

 

それが何かしらの悪さをする前に片付けられて良かった。

 

ともかく、今は家に戻る。

 

そして、後は寝る。

 

まだ体は伸びる。

 

急成長は終わったかもしれないが。

 

まだまだ体を伸ばすために、睡眠は必須だった。

 

 

 

空手部を鈴山さんが休んだ。

 

何かあったらしいと、噂が流れている。

 

まあ、今は部活はそこまで一生懸命やるようにとは言われていない。別に一度や二度サボったところで、どうこうされるいわれはない。

 

ただ、小川先輩が教えてくれる。

 

「札付きの高校生が補導されたらしくてね」

 

「……それって、ひょっとして鈴山さんの」

 

「察しが良いね。 ひょっとして話を聞いてる?」

 

「少しだけ事情は知っています」

 

小川先輩が、生臭い話をしてくれる。

 

鈴山さんの家が、エリートコースから脱落したらしい事。

 

鈴山さんの一族が、エリートコースを出している一族で、その鼻つまみ者扱いであるらしいこと。

 

兄二人は勉強が出来る反面、学校で暴君そのものとして振る舞い。

 

それで学校でも手に負えないと困り果てていたらしいこと。

 

なんでも鈴山兄が行っていた学校は、最近良い大学に進学した生徒を出しておらず。鈴山兄がそれを為してくれたらと言う期待もあり。それでかなり悪行を多目に見ていたらしいのだが。

 

なんと繁華街で覚醒剤を買っているのを捕まり。

 

補導されたということだ。

 

しかも尿からも高濃度の覚醒剤が出たらしく、常習していたのは確定だそうだ。

 

覚醒剤となると、補導だけではすまないだろう。恐らくは、証拠が固まり次第逮捕だろうな。

 

家宅捜索も入るはずだ。

 

それは鈴山さんも部活どころではないはずである。

 

「色々大変みたいですけれど、鈴山さんは大丈夫でしょうか」

 

「なんとも。 今警察の方で保護されているらしいけれど。 あの家、評判悪かったからね」

 

「やっぱり……」

 

「どうしても話が聞こえてくるんだけど、家の外まで怒鳴り声が毎日のように聞こえてきてたって。 高級住宅街だから話題になってたらしくて」

 

ため息が出る。

 

問題は、この後だ。

 

馬鹿兄どもが逮捕となると、大学進学どころではなくなる。

 

それを溺愛していた親どもも、はっきりいって無事ではすまないだろう。

 

問題は鈴山さんだ。

 

日根見ちゃんの時の事がある。

 

それもあって、備えなければならないだろう。

 

ともかく、小川先輩に説明はする。

 

鈴山さんは恐らく何も悪くないし、被害者だと。それを聞くと、小川先輩も頷いていた。

 

「分かる。 あたしもどっちかというとそうだ。 派手な見かけだからって、スクールカースト自称上位のカスどもに、パパ活やってるとか噂流されてさ! カスみたいな兄貴のせいで、巡っちがどうこう言われる筋合いはないよね!」

 

敢えて大声でいう小川先輩。

 

今、小川先輩は空手部で上位の実力になっている。

 

三年の男子でも組み手で勝てるか勝てないか、というところだ。

 

部長は例外とする。

 

空手だけなら、燐火と互角に近い実力者だ。

 

だが。その空手部の部長が、次は小川先輩を部長にすると、この間指名した。それに、誰もが納得していた。

 

実際、二年では勝てる生徒もいない。

 

それに見かけで損はしているが、授業をサボったりもしていないし。

 

空手部での鍛錬も誰よりも真面目にやっている。

 

それを見て、小川先輩の噂を信じていたような生徒が、謝りに来ることも多いようだった。

 

「とりあえず、鈴山さんに手を出すような奴がいたら、ぶち殺す方針でいいかな……」

 

「本気でやりかねないからやめろ。 今回に関しては心配はないと思うぞ」

 

「ケルベロス、何か知ってるの?」

 

「……既にいくつか俺の耳で話を拾った。 どうも教師達には話が行き渡っているようでな。 鈴山巡の事情は、とっくに知られていたらしい。 高校の側でも、色々やらかしていることについては把握していて、それで対策を練っていたらしい。 それで今回の事件もある。 関係者に通達が回ったようだな」

 

まあ、覚醒剤なんかやったら一発アウトだな。

 

鈴山家は終わりだ。

 

だが、巡さんはどうするのか。

 

またどこかしらに養子に出るのか。それとも。

 

それから数日して、追加の情報が入ってくる。

 

それで、あっと声が出た。

 

鈴山の馬鹿兄弟が捕まったのは、燐火がダイモーンを祓った辺りだったそうである。だとすると、あのダイモーン。

 

あちこちを放浪して、それでケルベロスに呼ばれて来て。

 

挙げ句、死に際にぶちまけた悪運を浄化され。

 

その浄化に、馬鹿二人が巻き込まれて。一気に悪運を喪失したのかもしれなかった。

 

だとすると、因果応報と言う奴か。

 

意図的にやったことではない。

 

だが、ケルベロスが周辺の幸運を操作してくれているのも分かっている。

 

数日後、更に続報が入る。

 

鈴山家両親、どっちも逮捕。

 

鈴山父の方は、地方銀行での閑職にいたそうだが。パワハラを部下に対して常態的にやっていたらしく。

 

息子が覚醒剤で逮捕されたタイミングで部下達が一斉に告発。

 

自衛のために映像を残していたことも。更にはこのタイミングであったことも災いして、会社を首。

 

更には逮捕となった。

 

パワハラ程度ではたいした罪にならないのが不愉快な話だが、それでもこれで銀行マンだったか。

 

そういうエリート様としては終わりだ。

 

更に鈴山母だが、閑職に回されていたが。その腹いせに、たちが悪い「福祉団体」に金を横流ししていたらしい。

 

前の上司の人脈を使っての悪行だったようだが。

 

小遣い稼ぎにそれをやっていたらしく、それが発覚。

 

こちらも解任。

 

ついでに逮捕となった。その悪辣な「福祉団体」とやらも家宅捜索されたが。この団体が覚醒剤をばらまいていたらしく。

 

挙げ句、「保護」した生活困窮者に売りつけて稼いでいたらしく。

 

団体の関係者も根こそぎ逮捕されたようだった。

 

芋づるである。

 

これはおかあさんが警察にいたら、数日は帰ってこられなかっただろうな。そう思って、燐火はげんなりした。

 

ダイモーン……かなり大物だったが。

 

それを祓った結果、凄まじいことになった。

 

まあそれはそれで構わないか。

 

カスがそれで消えたのだから。

 

問題は鈴山さんだが。

 

翌日には、空手部に来た。随分とすっきりした顔をしていた。

 

なんでも、鈴山家の親族に、真面目な老夫婦がいるらしく。

 

他の親族に対して非常に強い権力を持っていて。今回の件で騒いでいる親族をまとめて一喝。

 

そして、自身で鈴山さんを引き取ったらしい。

 

非常に厳しい人たちであるらしいのだが。

 

それはそれで、老人になってから子供に甘くもなったのだろう。

 

鈴山さんにはかなり優しいようだ。

 

空手部で話を聞かされる。

 

「ちゃんとした晩ご飯を食べれたのなんて、いつぶりか分からないよ。 勉強についても、今までみたいなおかしなプレッシャーを掛けられなくなったの」

 

「それは良かったですね」

 

「うん……」

 

空手も好きにやって良いし、次にある冬の大会を楽しみにしているし見に行くとも言ってくれたそうだ。

 

まあ、権力の上位層に影響を持っている人間だと、何を考えているか分からないので、手放しで喜ぶことは出来ないだろうが。

 

老人が子供に甘くなるのは、一種の習性だとケルベロスが教えてくれる。

 

なんでもケルベロスの話によると、三世代で家庭を作る習性を持つ人間は、仕事の前線から離れる老人世代になると、子供を育てるためか甘くなりがちだという。

 

これはもう習性だという話だ。

 

勿論そうではない人間もたくさんいるが。

 

菖蒲さんから連絡が来る。

 

「こっちでちょっと調べて貰ったら、とんでもない大蛇が藪から出てきてね。 うちになんだかいう高級官僚がお菓子もって謝りに来たよ」

 

「ということは、これはひょっとして大問題の氷山の一角ですか」

 

「そうなるね。 多分近々、大臣が一人辞任することになると思う」

 

「……」

 

大臣の辞任なんてしょっちゅう起きているイメージなので、それで終わるのかとだけ思ったが。

 

まあ、それももう少し年を取れば、印象も変わるかもしれない。

 

ともかくだ。

 

それを引き起こした鈴山の馬鹿兄貴達と。

 

意図的にそれを甘やかしていた馬鹿親どもは、もうこれは日の当たる場所を歩けないだろう。

 

連絡を終えると、帰路で鈴山さんと話す。

 

「とりあえず、今後はどうするんですか?」

 

「おじいちゃんとおばあちゃんとても優しいから、何も不満はないよ。 将来についても、前はガン詰めされてたけど、おじいちゃんとおばあちゃんは好きにすれば良いって言ってくれたの。 普通の会社員にでもなれたらいいと思ってる」

 

「鈴……巡っち。 肩から力が抜けたね」

 

「そうだと嬉しいです」

 

小川先輩も嬉しそうだ。

 

他人事ではないから、なのだろう。

 

ともかく、意図せず問題が解決したのは良かった。馬鹿どもはそろって豚箱に放り込まれて。

 

後はずっとドブの底にいればいいのだ。

 

燐火はカスをたくさん見てきた。

 

だからそういった連中には際限なく冷たくなれる。そういった連中が、何をやらかしているのか。周囲にどれだけの害をばらまいているか。

 

知っているから、だった。







鈴山家崩壊。

今回は燐火が其処まで手を下すまでもありませんでした。

いずれにしても鈴山さんが救われたのは良かったですね。


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